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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/4月12日〜’13/5月9日)
 この期間、安倍首相の歴史認識についての発言をめぐって、韓国や中国の政府が激しく反発し、これに米オバマ政権も懸念を示した。麻生副総理はじめ閣僚を含む多数の国会議員が靖国神社を参拝したこと、それを擁護した安倍首相の発言、そして「村山談話」をめぐる首相の国会答弁で「侵略の定義は国際的に定まっていない」と述べたことを、歴史を書き換えようとする修正主義としてNYTWPFTが社説で批判した。この問題は、はじめから安倍政権をとかく批判的に見ている英米のマスコミだけでなく、共に米国の同盟国である日韓の関係悪化を強く懸念する米政権の意向も反映されているように見える。
 
 NYT(4/24)は、前日の多数の国会議員による靖国神社参拝を取り上げて、「日本の無用なナショナリズム」と題する社説で、「12月の首相就任以来、安倍首相と与党自民党は、経済の再生や2011年の東日本大震災からの復興、北朝鮮のような隣国との厄介な関係など一連の複雑な政策課題を処理しようとしてきた。これらと関係のないところで論争を引き起こすことは非建設的であるが、今回、安倍首相と国会のナショナリスト仲間がしたことは、まさにそういうことなのだ」と述べた。
 「火曜日(23日)、168人の、ほとんどが高い役職に就いていない保守派の国会議員が、第2次世界大戦後に処刑された戦犯を含む日本の戦没者をる東京の神社に参拝した。これは近年では国会議員による最大の集団参拝であった」と指摘した上で、「安倍氏は第2次世界大戦における日本の行為をこれまで擁護している。安倍氏やその同調者たちは、これが日本の20世紀の帝国建設・軍国主義の下で被害を受けた中国や韓国にとって、いかに傷付きやすい問題かということをよく知っており、その反発は予想できたはずだ」と述べている。
 そして、「日中両国は、領有権問題の平和的解決を図ることが必要である。北朝鮮や、その核兵器の問題を解決するのに協力して当たらなければならない時に、日本が中国や韓国に対して敵対心を煽ることは特に無謀に見える。安倍氏は、歴史上の傷を広げるのでなく、長く低迷してきた日本の経済を復活させ、アジアや広く世界において主要な民主主義国としての役割を強化することに重点を置いた日本の未来図を描くことに集中すべきである」と訴えている。
 WP(4/27)社説も、「歴史に向き合えない安倍晋三」と題して、同様の趣旨で論じている。NYTの批判も同紙としてはいつもより抑制されたトーンだが、WPは、安倍首相の歴史認識を批判しながらも、現在日本を取り巻く国際状況や、日本の防衛能力強化、憲法改正への首相の意欲には理解を示している。
 「今週、安倍氏は、これまでのすべての前進を危険にさらすのをわないかのような動きに出た。前世紀の朝鮮半島の植民地支配に対する1995年の政府の公式謝罪を見直すのかという国会での質問に対して、安倍氏はこのように答えた。『侵略という定義は、学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係において、どちらから見るかによって違う』」。
 「しかし、事実というものがある。日本は朝鮮半島を占領した。満州を占領し、やがて中国全土を占領した。マレー半島に侵攻した。侵略を行ったのだ。ドイツが歴史に率直に向き合って、欧州におけるその地位を確立してから何十年にもなるのに、日本では、なぜ事実を認めたくない人たちがいるのか? 我々は、韓国や、それ以上に中国が、時には国内の政治目的のために反日感情を煽るということを理解してはいる。だからといって、今週安倍氏が陥った種類の自滅的な修正主義を正当化することにはならない」。
 「歴史に向き合うことができなければ、韓国や中国は、安倍氏の、より理にかなった目標に対しても反対するだろうし、その達成が危うくなる。中国と北朝鮮の軍事費や自己主張を強める行動を考えれば、安倍氏が自衛隊の近代化を支持するのには正当な理由がある。第2次世界大戦後の米国占領軍によって押し付けられた日本の『自衛』憲法の下では、日本が十分な態勢で同盟国の助けに駆け付けることができるかどうかを、安倍氏が疑問に思うのはもっともである。しかし、彼が戦前の帝国へのノスタルジアを抱いているのがはっきりした途端、まだ国民の多くが懐疑的な国内の改革を進め、疑いの目で見ている近隣諸国を納得させる彼の能力は、がた落ちになるだろう」。
 FT(4/29)社説も、「先週、安倍内閣の閣僚数人が靖国神社を参拝し、安倍首相は供物を奉納した。さらにひどいのは、安倍首相は第2次世界大戦において日本が『侵略』をしたかどうかを問うような、右派が得意とする話題を持ち出した。憲法改正を容易にするためのキャンペーンも始めた。これらの行動に対し、近隣諸国は予想通りの反応を示した……日本の同盟国である米国さえも、安倍首相が厄介な問題を起こそうとしていることに苛立っている」と述べている。
 そして、次のように論じている。
 「安倍首相は、もっと大事なことに時間を費やすべきである。経済を甦らせるために、ここ何年かで最も勇敢な政策を実施している。2%のインフレ目標と、やる気のある日銀総裁の起用は、日本は状況を好転させることができるという実感を与えた。しかし、この実験は非常に大きなリスクを伴う。大胆な量的緩和の副産物である円安を容認してくれる他国の理解が必要なのだ。世界が日本に同情しなくなれば、これらの目標達成も難しくなる。安倍首相は経済の効率を高める構造改革も進めなければならない。歴史修正主義に手を出すことは、よく言って本筋からの逸脱であり、最悪、危険である。安倍首相は、今やるべき大事な仕事に集中すべきである」。
 一方、WSJは社説では取り上げず、ニュース記事だけで安倍首相の「侵略」に関する国会答弁と、それに対する中韓両国の反発などの事実を報道している。
 WSJA(5/3)トウコ・セキグチ記者の記事は「安倍内閣の閣僚による靖国神社参拝を受けて近隣諸国の感情が高ぶる中、安倍首相は、第2次世界大戦中のアジア周辺国への日本の攻撃や支配が『侵略』に当たるのか疑問を投げ掛け、周辺国の神経を一層逆なでした」と報じた。
 この記事は、安倍首相が閣僚や国会議員の靖国参拝を擁護して、「『国のために尊い命を落とした英霊に対し、尊崇の念を表するのは当たり前だ。わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。それ(靖国参拝など日本が戦死者に敬意を払う権利)を削れば関係がうまくいくという考え方は間違いだ』と指摘し、昨今の中韓両国の対日批判には、国内政治上の動機があるとの見方を示唆した」と述べて、国内の「保守的な支持者から何千件もの称賛の声が寄せられた」と指摘している。
 同時に、「朝日新聞の世論調査では、安倍首相の経済政策への支持が50%なのに対して、外交・安全保障問題へのスタンスへの支持はわずか14%だった」ことを引用し、「麻生副総理など、安倍首相に近い閣僚すら、経済から教育や憲法改正など、政府のアジェンダの方向転換を懸念している」と述べている。
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