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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/5月10日〜’13/6月13日)

 この期間、アベノミクスの効果・影響が様々な形で出始めたのを受けて主要紙誌のほとんどが、社説やコラム、特派員記事で論評している。その多くは、株高、円安や第1四半期の高い実質経済成長率などはその初期の効果であり、アベノミクスはこれまでのところ成功しているとして、5月の株価急落や長期金利の上昇についても、それらは問題ではないと見ている。一方、これまでに明らかにされたアベノミクスの「第3の矢の構造改革に関する提案については、各紙が不十分だとして批判し、参議院選挙後にさらに大胆な改革案が打ち出されることを期待している。
 
 NYT(5/23)のコラムでポール・クルーグマン米プリンストン大学教授は「最近、我々はみんな、経済用語でいう『日本化』しているのだ。だから、日本の継続中の経済実験は、日本にとってだけでなく、世界にとっても非常に重要なのである。ある意味では、アベノミクスに関して本当に注目すべきことは、先進国の中で他に誰も同じようなことをしようとしていないことである」と高い評価を示している。
 そして、アベノミクスの成果について、初期の兆候は良い。木曜日(5月23日)の株価急落はその筋書きを変えるものではない」と述べ、今年第1四半期の「驚くほど高い経済成長」を評価し、「たった1四半期の数字を大げさに取り扱うのは嫌だろうが、我々が見たいのは、そういうものなのだ……長期金利の上昇について、金利はまだ1%以下なのに、警告する向きもある。しかし、金利の上昇と株価の上昇の組み合わせは、そのどちらもが日本の支払い能力についての懸念ではなく、楽観的見方の高まりの反映を示唆するものである」と論じている。
 「アベノミクスがうまくいけば、それは、日本には大いに必要とされる経済の上昇をもたらし、世界には、それ以上に必要な政策の無為無策への対抗策を示す、という2つの目的を果たすことになる」として期待している。
 FT(5/29)のコラムでマーティン・ウルフFTチーフ経済コメンテーターも、「日本経済を活気付けようとする試みは先週、難しい局面に突入した。債券利回りが上昇し、株価が下落したのだ。すると早速、安倍首相が打ち出した改革『アベノミクス』は失敗だという声が一部で上がった。これには失笑を禁じ得ない……日本経済が復活するなら、その時には債券利回りが上昇しなければならない。また株式市場というのは大きく変動するのが常だ。大いに必要とされているこの日本再生プログラムにはリスクが伴う。しかし、先週の一連の出来事は、そうした危険について何かを物語るものではない」と述べている。
 NYT(6/9)のブログで米コロンビア大学のスティグリッツ教授も、アベノミクスをあらためて高く評価している。
 「アベノミクスがどこまで徹底してやれるかについて疑念が出ている中、株式市場は5年ぶりの高値から急落した。しかし、我々は短期の株式の変動から何かを読み取るべきではない。アベノミクスは、紛れもなく、正しい方向に向けた巨大な一歩なのだ」。
 「アベノミクスの第2の矢である、財政による刺激は非常に重要である。刺激策は総需要を増やすのに必要である。しかし、それはまた構造転換を完成させるのにも必要である。アベノミクスの批判者たちは、GDP(国内総生産)の2倍以上の債務を抱えた日本は、新しい経済政策の重要な柱である財政政策を進める立場にはないと主張する。しかし、低成長の原因となったのは債務ではなくて、低成長が赤字を招いたということだ。政府が景気刺激を講じてなかったら、経済成長はさらに低くなっていただろう」。
 「より平等な収入、より長い寿命、低い失業率、子どもの教育や健康に対する投資の拡大、さらには労働者一人当たりの高い生産性など、多くの分野で日本は米国よりもうまくやってきている。それは多くのことを我々に教えてくれるアベノミクスが、期待した半分でも成功すれば、そこからももっと我々に教えてくれる」。
 一方、WP(6/7)社説は、「水曜日(5日)に安倍首相がこれらの構造問題に対する期待外れのアプローチで3本目の矢を説明した時に、市場ががっかりしたのは当然だ。農業に言及せず、負担の多い労働市場の規制に関する説得力ある提案もなく、企業が規制に縛られずに活動できる国家戦略特区などの提案が本当に新しいものなのか、過去の提案をまとめ直しただけのものなのかが分からないぐらい詳細に乏しかった」と指摘している。
 そして、「今週、安倍首相が放った矢は勢いが足りなかったが、改革を通して豊かさを取り戻すという約束を果たすことは可能である。選挙で獲得する政治資本は、この目的達成のために利用すべきである。そうしなければ、外交と軍事力を強化するなどの野心的な政策はうまくいかないだろう」と述べている。
 FT(6/10)社説もアベノミクスを成功させるためには、改革に代わる道はない。持続的な経済成長なしでは、日本の政府債務の山は手に負えなくなる可能性がある。日本の成長問題は構造的だ。労働市場は歪んでおり、女性と若者に不利になっている。企業は現金を過剰にため込んでいる」と指摘して、次のように論じている。
 「安倍氏は賢明な目標を掲げたが、いかにして目標を達成するかは、まだはっきりしていない。残念ながら、安倍首相は最も野心的な改革を避けている。与党自民党にとっては、移民は『立ち入り禁止区域』だ。企業の内部留保に対する課税は論議されていない。課税すれば、企業は現金を投資に回したり、株主に還元したりするインセンティブを得るし、税金は国の債務を返済する有用な収入源になるだろう。楽観的な向きは、7月の参議院選挙の後に、もっと大胆な改革が打ち出されると考えている。日本がどこに向かうかは、安倍首相にかかっている。日本に革命をもたらすという安倍首相の選択は正しかった。途中でやめるべきではない」。
 WSJA(6/6)社説は「5日の講演の内容は寄せ集めだった。改革案は、『国家戦略特区』をつくるという計画から、都市部に、より高層のアパートを増やすために建築規制を変更するという約束まで、多岐にわたった。日本が直面している課題の重大さを考えるとこうした改革案のすべては、取るに足りないものであり、有権者や投資家の多くはアベノミクスとはこの程度なのかと思い始めている。計画があまりにもゆっくりと、分かりにくく小出しにされてきたので、政府周辺で出ている多くのアイデアのどれが3本目の矢の要素となり、どれがならないのかを特定するのは難しい」と批判している。 

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