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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/6月14日〜’13/7月11日)

 この期間、アベノミクスの「第3の矢」になる成長戦略が6月中旬に閣議決定されたのを受けて、市場やマスコミは期待外れとして、株価を大きく下げた。また、これと時期を同じくしてバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の緩和縮小を示唆する発言の結果、米欧の市場で株の下落、長期金利の上昇が起こり、円が上昇、日本株の大幅下落、乱高下を招いたことから、アベノミクスの限界かとする見方も出始めたが、これらに対して主要各紙誌が社説、コラムで取り上げている。
 
 ECO(6/15号)社説はアベノミクスの成長戦略について、「期待されていた構造改革に関する第3の矢は的の中心は言うまでもなく、大きく的を外した。あまりにもずれているので、アベノミクスはまともに始まる前に失敗してしまったのかと思ってしまう。医薬品のネット販売の解禁や公的年金の運用改革など、幾つか効果的な政策は盛り込まれていた。しかし、残りの政策の大部分は既に試され、失敗したことのある古い産業政策ばかりだった。意義のある規制緩和、労働市場改革とTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に向けての農業の競争力強化などはすべて棚上げされている。移民受け入れの促進など、真に勇敢な政策は全くアジェンダに入っていない」と指摘して批判している。
 そして「7月に重要な選挙を控え、自民党は頼りにしてきた農業従事者、医師やビジネスマンを怒らせないように安倍首相に圧力をかけている。しかし、本誌のように、安倍首相は日本を長い低迷から救い出せるかもしれないと期待している多くの人々にとって、安倍首相が消極的になっていることは残念なことである……安倍首相は(選挙後には成長戦略の第2弾を明らかにするという)約束を守り、TPP参加を決めた時のように、党内の改革に反対する議員を抑える必要がある。憲法改正にとらわれている余裕など全くない。まずは内閣を改革派で固め、党全体を主導すべきである。アベノミクスを見限るにはまだ早過ぎる」と述べている。
 ブルームバーグ(6/25電子版)社説は、成長戦略、構造改革の重要な政策のひとつとして移民・外国人労働者の受け入れを推進すべきだとして、次のように論じている。
 「(少子化・高齢化対策として)この国を地球上で最も同質の社会にしている移民に対する障壁をなくすことは、日本では政治的に不可能だとして退けられる。安倍首相でさえ、この問題に触れるのを拒否する。それが、アベノミクスの一部として提案されている構造改革に対して専門家たちが懐疑的であるひとつの理由なのだ。経済が成長し続けイノベーションや起業家精神を刺激する新しい労働者がいなくては、安倍首相やその支持者たちが期待するようなやり方で日本が復活することはありそうにない。安倍首相がこの戦いに勝てなければ――というより、そもそも安倍首相がこの戦いにとりかからなければ――ほかの既得権益に打ち勝つ見込みも低くなる」。
 WSJA(6/27)で「ビジネス・アジア」編集者のジョセフ・スターンバーグも移民政策の重要性を強調している。
 「新たな消費者や労働者を輸入する形になる移民は、企業による国内の設備投資を刺激する上で極めて重要である。納税人口が拡大すれば、日本政府の財政状況も改善される。移民には国外からの直接投資を推進し、生産性を高める効果もある。こうしたことから、移民政策は安倍首相が約束した大胆で根本的な変革そのものともいえる。ところが、アベノミクスにおいて移民政策が日本の将来にとって重要であるにもかかわらず、ほぼ完全にアジェンダから漏れている」。
 一方、アーカス・リサーチ社アナリスト、ピーター・タスカはFT(6/20)で、5月末の株式相場の急落は過熱気味の株式相場の当然の「調整」だったとして、今後日銀はさらに強力な緩和策をとるべきだと、次のように論じている。
 「投資世界の中でさえ、株価の急上昇や円相場の下落を、リフレ政策の成功の歓迎すべき兆候としてではなく、ひどい災難の前兆と見なす向きもあった。(安倍とハルマゲドンを組み合わせた造語の)『アベゲドン』――国債利回りの爆発と抑えの利かない通貨の暴落――を言い立てる人たちはこれまで以上に声高になっている」。
 「安倍首相の構造改革に関する『第3の矢』は、日本人の海外留学の奨励から農業の構造改革や外国の対日直接投資の倍増まで、これまでの日本の政権も、欧米の政府も、同時に取り組もうとしたことがないような、非常に多様な問題をカバーしているにもかかわらず、『期待外れ』だとして片付けられた。既に実体経済に改善の兆候が見える。消費者マインドは、ここ数年で最高レベルまで上昇、力強い企業の増益傾向、これは今日の世界ではユニークなことである」。
 「それでは、今何をすべきだろうか。どんなことでもするべきだ、というのが答えだ。『アベゲドン』が爆発するどころか、インフレ期待は減退しており、依然として円安でなく円高が問題である。市場は、日銀は十分なことをやっただろうかと疑問に思っている。その解決策はもっとアグレッシブになることである。これは、国債購入スケジュールを前倒しするか、ETF(株価指数連動型上場投資信託)購入比率を上げることで可能だ。事態は深刻である。患者が危機を乗り越えるためには、強力な薬が必要だ」。
 NYT (6/24)のコラムでポール・クルーグマン米プリンストン大学教授は、米国発の株価下落や長期金利上昇のきっかけとなったバーナンキFRB議長の量的緩和の出口発言は、金融引き締めの間違ったシグナルを送ったとして、次のように述べている。
 「最近FRBは、緩和政策をこの先今よりだんだん減らしていって(テーパーリング“tapering”)、通常の金融政策に戻りたいのだというシグナルをますます強く出してきている。FRBはこれまで一生懸命やってきたことに疲れ果てているという印象が、先週のバーナンキ議長の記者会見でQE3(量的緩和政策第3弾)を今すぐにも縮小するというメッセージを繰り返したことから、一層強まった」。
 「問題は、経済の現状を考えれば、これは非常に間違ったシグナルを送っているということである。我々はまだ依然として軽度の不況というべき経済状態にあり、FRBのまずいメッセージの出し方は、その不況から今すぐにも脱出する可能性を減らしてしまうということである。まず理解しなければならないことは、2007~09年の景気後退が正式に終焉後4年になるのに完全雇用から、はるかに及ばない状態にあるということである……緩和批判の人たちが言う金融緩和政策がバブルのリスクを高めるなどの副作用は、金利上昇とそれによって起こる失業の増加のもたらす弊害と比べれば取るに足らない」。

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