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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/7月12日〜’13/8月15日)

 この期間、大方の予想通り与党自民党の圧勝に終わった7月21日の参議院選挙について、英米の主要紙誌は、東京特派員の記事で選挙結果を報道し、本社の社説で論評している。ほとんど全てが選挙結果を政治の安定に繋がるとして前向きに評価している。それらの論点は、次の3点に整理できよう。

 ①与党自民党の圧勝は、国会のねじれ状態を解消し、2006年以降頻繁に首相が交代する状況に終止符を打ち、政治的安定に繋がるので歓迎だ
 ②選挙結果は、アベノミクスに対する国民の支持であり、安倍首相は国民から与えられた負託を、構造改革などの成長戦略を推し進め経済成長を加速するために使うべきだ。
 ③安倍首相は、選挙で得た政治権力を、憲法改正、軍事力増強、集団的自衛権の行使のための憲法解釈の変更、アジアの歴史の修正などナショナリスティックな政策に使って、中国や韓国など近隣諸国との関係を悪化させるべきでない。米国もこれを懸念している
 このほかに、消費税増税は、始まったばかりの景気回復を台無しにするので、急ぐべきではないとする論調(NYT社説、IND社説)や、中国は尖閣諸島の領有権をめぐる日中首脳会談開催の前提条件を取り下げてトップレベルの対話再開に応じるべきだ(FT社説)などが目立った。
 
 米国の主要紙の中では、WSJ、WP、NYTがそろって安倍首相のナショナリスト的傾向に警戒感を示して、構造改革など経済に集中するよう主張している。
 中でも、WSJ(7/22)社説は、「安倍首相の改革の幕開け――首相にとって必要なのは経済成長の加速であり、中国との戦いではない」との直截的な見出しで次のように論じている。
 「参院選挙での安定多数を獲得し、勝利を手にした今、安倍首相は経済改革を推進しなければならない。これからの課題は、安倍首相が日本の改革の『第3の矢』と呼ぶ成長戦略をどれだけ強力に推進していくかである」。
 「安倍首相は経済政策に専念することが賢明だろう。アジア地域にはこれ以上の不安定要素は無用であり、自らもナショナリズムのカードを切る口実を探しているかもしれない中国政府を挑発しないように注意すべきである。安倍首相の安全保障上の目標のほとんどは、米国から適切な兵器を購入し、すでに緊密な米国との防衛協力関係を一層強化することで達成できる。安倍首相が日本の安全保障のためにできる最大の貢献は、経済成長を加速させることである」。中国に対して毅然とした論調で支持されていたWSJではあるが、中国と事を構えたくないというオバマ政権の姿勢を反映しているのであろうか。
 WP(7/22)社説も「安倍首相はより深い改革を実行できるか」の見出しで「自民党は6年ぶりに衆参両院で過半数を獲得することになった。問題は、安倍首相がこの機会をどのように利用するかである。その答えには米国の利害も関わっている」と述べて、首相が経済の活性化、構造改革だけでなく、集団的自衛権の行使を可能にするための憲法解釈の変更などにも取り掛かれば、近隣諸国との関係にも悪影響が出る、と懸念を示しながらも、期待も込めて論じている。
 「安倍首相は近隣諸国の怒りをかきたてる方向に精力を費やすことはしないだろうと、首相の側近たちは見ている。米国民もそうであることを願っている。北朝鮮が核兵器の国際社会の要求を無視し、中国がますますわがもの顔に振る舞っている中で、健全な日米同盟こそがアジア地域の安定への最大の望みなのだ。その日米同盟は日本経済の繁栄および日本が米国の友邦国、特に韓国との少なくとも友好な関係維持の上に成り立っている」。同じことを論じながらも、ここには日本を励ます思いも行間から感じ取れる。
 NYT(7/23)社説は、「日本の機会とリスク」の見出しで、「日曜日の参院選は、安倍首相と、首相が就任後実施してきた成長を促すための財政と金融政策を強力に信任する選挙となった。安倍首相は、これで首相のナショナリスティックな第二次世界大戦の歴史の修正解釈、中国に対する扇動的なレトリック、そして、より強力な軍事行動を認める憲法改正の試みなど、右派の外交政策の考えが承認されたと思わない方がいい。今回の選挙は経済政策をめぐっての選挙だったのだ」と強調している。
 さらに、「日本の最も重要な貿易相手国である中国との貿易を続けるためには、安倍首相は第二次世界大戦の傷口をこするのをやめなければならない。それにはA級戦犯を合祀する靖国神社参拝も避けなければならない。そしてこの政権は軍事力の増強に財政を投入すべきではない。政治的に異論の多いこれらの分野に踏み込めば、安倍首相が努力して手にした経済成長と安定が約束されたリーダーシップは消滅してしまう」と警告している。
 
 英国の主要紙誌では、FT(7/23)社説が「安倍政権と世界――米国、中国、ロシアは日本の首相と関係を強めよ」との見出しで、異なる視点から論じている。参院選での与党の圧勝の結果、国会のねじれは解消し、安倍首相は2016年まで首相を務めることができるようになり、オバマ大統領も、習近平国家主席も、プーチン大統領も安定政権の安倍首相と本気で関係を強める必要がある、という。そして、「中国政府は、日中首脳会談の実現を妨げてきた、領有権を争う島々をめぐる前提条件を脇にやり、トップレベルの対話再開に合意すべきだ。世界第2位と第3位の経済大国の関係は凍結状態にしておくには重要すぎる」と中国に呼び掛けている。
 また、FT(7/31)は、「安倍首相は消費税引き上げを断行せよ」の社説を掲げ、「消費税増税を予定通り行うかどうか、気持ちが揺らいでいる安倍首相」に、予定通り進めるべきだと論じている。
 IND(7/23)社説は、米紙と同様に、「日曜の参院選挙での与党自民党の圧勝は安倍首相に、世界第3位の経済を新しい、より力強い基盤に置くために必要な長期的改革を実行するまたとない機会を与えた。そのような機会が無駄にされないことが極めて重要だ。そしてまた、最近では例のない国民の負託を与えられた安倍首相は、日本を近隣諸国とのナショナリズムの対立に導かないことが極めて重要である」と述べている。
 ECO(7/27号)社説も、「有権者は毎回選挙で分裂国会を選択してきたが、今回ようやくひとつの党に負託を与えた。これにより、日本は今後少なくとも3年間、政治が安定するはずである。安倍首相は大きなチャンスを与えられた。決して無駄にしてはならない。日本国民は、大胆な金融緩和、財政刺激策と構造改革を組み合わせた、『アベノミクス』に支持票を投じたのだ」として首相はそれに応えて経済に集中するべきだと論じている。
 「超保守派の安倍首相は、第二次世界大戦の敗北後に日本に押し付けられた憲法を改正し、屈辱的な部分を消し、日本を、自己主張を強めている中国などと渡り合える『普通の国』にしたいと思っている。しかし、安倍首相は選挙で得た支持を背景に、持てる全ての力や駆け引きなどを駆使して経済に取り組む必要があり、憲法改正で冒険をする余裕はまったくない。安倍首相はナショナリストとして日本の国益を守ることが最重要だと主張しているが、であれば、全精力を集中して喫緊の課題である経済を再生してみせるべきだ」。 

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