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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/8月16日〜’13/9月12日)
 この期間、東京が2020年のオリンピック開催地に決まったことがおおむね好意的に報じられ、論評されている。安全とか都市が魅力的だとか、約束したことが守れるなど、日本の良いところ――日本のソフトパワー――が評価されたことも伝えられている。一方で、その開催地決定に大きな懸念材料となっていた東京電力福島第一原発の汚染水漏れとその対応について、懸念と不信感を強めている英米メディアの記事が多く見られた。このようなネガティブな報道も外国に多く流れているということだ。 
  
 2020年五輪開催地に東京が決定したことについてWSJA(9/10)社説は、「東京はイスタンブールやマドリードと比較すれば『安全な選択肢』だったというあまり積極的でない一部の見方に対して、我々はこの大会が日本、周辺地域、世界を奮起させるイベントになると予想する」と期待を込めて述べている。 
 そして、日本は2回目の五輪開催を、日本を世界に開放し、停滞する五輪ムーブメントを盛り上げる機会にしてほしいとして、次のように論じている。 
 「ロンドンが昨年示したように、正しく実行しさえすれば、五輪は国家的ムードを盛り上げ、自信を高める力を依然として持っている。日本がまさに必要としているのがそうした高揚力だ」。 
 「日本は、戦時の恨みを晴らさんとするかのような中国の台頭をはじめ、多くの課題に直面している。日本が経済的に復活し、民主主義を導く光となって周辺地域をリードできるかどうかは、これまでの日本の発展に大きく貢献してきた開放性を再び受け入れられるかどうかにかかっている。2020年五輪が日本の経済的・政治的復活に弾みをつけるきっかけとなれば、五輪ムーブメントにも新たな息吹が吹き込まれることになるだろう」。 
 ロイター(9/9電子版)は「東京の勝因のひとつには、力強いアジア経済に対する明確な支持、そして今後のスポーツ界でアジアが占める地位が挙げられる。東京は、ロゲIOC(国際オリンピック委員会)会長が評したように、『安心して任せられる』というだけでなく、世界で最も人口が多いアジア地域の経済力を引き出すチャンスにもなり得る」と述べている。 
 さらに「バッハ次期IOC会長は、今回の招致レースについて、伝統的な候補者と新興都市の選択だったと指摘。IOC委員たちは伝統と安定を理由に選んだと解説した。東京が招致活動で訴えたのは安全や伝統だけではなかった。日本の財政力や世界で最も躍動するアジアにおける位置付けもまた、非常に魅力的なものと評価された」と報じている。 
 GUR(9/9)社説は、「東京を褒めたたえて」と題して、東京の良さをひたすら説いている。「東京が2020年の五輪開催地に決まったことの最大の良いところは、世界で最も素晴らしい都市のひとつを何百万の人々に紹介できることである。ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』は日本の首都が……超近代的な都市であるという一般のイメージを決定付けた。しかし、世界最大のメトロポリス東京はそれよりもはるかに興味深い」と述べて、高層ビルの裏の小さな寺や豆腐屋、細い路地など町並みの素晴らしさを絶賛し「急ぐ用事のない観察好きの歩行者には素晴らしいご褒美が与えられる。そして、あの素晴らしい日本の食が……」。 
 FT(9/11)でジョナサン・ソーブル東京支局長は、安倍首相の2020年五輪開催の狙いについて次のような見方を示している。 
 「若い世代を中心とする日本人の多くは、建設や消費に熱中した1964年五輪当時の高揚感や、それを支えた重労働に共感を覚えることはない。『ポスト成長期』の日本の美学は、よく言えば人間味があり、見識さえ感じられる。裏返せば、国家衰退の処方箋でしかない。安倍首相の目標は、ポスト成長期の日本を葬り去ることだ。経済を再び拡大させるだけでなく、それに付随する生ぬるい態度を払拭することで、オリンピックに異なるストーリーを与え、自信と繁栄という古くて新しいテーマを描き出すのだ」。 
 東京の五輪開催は、問題も抱えていると指摘する記事、論評も多い。 
 NYT(9/8)ヒロコ・タブチ東京支局記者の「日本再生への期待と多くの難問」の見出しの記事は、「2020年五輪の東京開催決定は、2年前、大震災の津波と原発事故によって東北の太平洋岸地域を壊滅させられた日本にとっては歓迎すべき後押しになる。しかし、五輪開催決定は福島第一原発の放射性物質流出の封じ込めと汚染除去の努力に対する世界の監視が強まることになるだろう。最近明らかにされた、放射能汚染水漏れの問題は、東京の五輪招致争いに暗雲を投げ掛けていた。五輪開催はまた日本の財政立て直しを求める圧力を増すことになろう。政府の債務は国の経済規模の2倍以上に膨れ上がっているが、その大きな理由はますます進む高齢化に対応するコストである」と指摘している。 
 それでも、「五輪を開催することは、東京の社会的地位を復活させるなど、様々な効果をもたらすことになり、それは最終的には日本経済に流れ込む、とエコノミストたちは主張している。東京開催決定は日本国内のムードを明るくし消費者マインドを好転させ、個人消費を増やすのに大きな効果がある。これは日本の景気回復の過程で欠落していた部分なのだ」と述べている。 
 ブルームバーグ(9/10電子版)でコラムニストのウィリアム・ペセックは、「(安倍首相の祖父・岸信介が首相の時に招致した)1964年の東京五輪は、第二次世界大戦の敗北から日本が不死鳥のごとく復活したことを刻むイベントだった。専門家からは早くも、56年前と同じように安倍首相の下で日本が20年にわたるデフレ経済から復興を果たすとの見方が出ている。首相が進める改革の3本の矢のうち、大胆な金融緩和の第1の矢は、すでに成果を出しつつある。五輪に伴う大型支出は財政刺激策の第2の矢を活気付ける可能性がある。規制緩和と構造改革を含む第3の矢はまだ矢筒の中と言ってよい。東京五輪が政治的に困難な改革の実現を後押しできるか非常に興味深い。改革の有無がアベノミクスの成否、さらには日本が再び灰の中から復活するかどうかを決める」と述べて次のように論じている。 
 「最初にして最大の試金石は、東京電力福島第一原発の問題への安倍政権の対応だ。安倍首相はIOC総会で福島原発について、汚染水問題の解決を国際公約した。『IOC委員は問題が2020年までに解決するとの安倍首相の言葉を信じた。首相は世界の注目の中で約束を果たさなければならない』(テンプル大学東京キャンパスのキングストン教授)……2020年という期限が切られたことは、東電を国有化せざるを得ないという言い訳を安倍首相に与えたことになる」。 
   
 五輪招致でも問題となった福島第一原発の汚染水漏れ事故についてはブルームバーグ(8/25電子版)社説が要を得ている。「汚染水の流出を止め、福島原発の汚染除去を軌道に乗せることは、健康や安全のためばかりでなく、日本内外の原子力エネルギーの将来にとって、そして、安倍首相の政府の信頼性にとっても決定的に重要である……日本で最も熱心な原発推進者でさえも、福島原発の混乱にきちんとした対応ができなければ、再稼働の見込みはさらに遠のくことに気付くに違いない。そして、福島原発事故が、気候変動に好ましい原子力への支持に与える否定的影響は、日本国内にとどまらず、将来の日本からの原発輸入国にも及ぶ。安倍首相は、日本の原子力産業を支援し、日本経済を活性化し、2020年オリンピックの東京招致に放射能汚染問題が障害とならないようにしたいのであれば、原点に立ち返って福島原発の事故の解決に乗り出すことが必要だ」。 
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