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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/9月13日〜’13/10月5日)

  この期間、2014年4月からの消費税の引き上げを安倍首相が決断したことについて、またそれによって起こるアベノミクスへの影響などについて、英米主要紙誌は主にニュース記事で報じ、一部はさらに社説やコラムなどで消費税増税の賛否、その影響への対策などを論じている。

 
 WSJA(10/2)社説は「消費税率引き上げ敢行という決断は、安倍首相が最近の前任者たちと同様に、財務官僚とケインズ主義経済学の囚人だということを露呈した」として、増税とそれを相殺するための景気対策を次のように批判している(WSJは日本の消費税増税に一貫して反対)。
 「財務省と財務族議員たちは、政府赤字を削減する手段として消費税増税を奨励してきた。それで日本の財政を立て直し、高齢化が進む人口に対して約束された年金も賄えるということを示唆してきたのだ。それにより年間8兆円を超す税収増が見込まれているが、安倍首相は、増税による影響を相殺する『景気刺激策』として公共事業や税金の還付に約5兆円を投じると発表した。要するに、安倍首相の財政・経済に関する考え方は日本にとって相変わらずだということだ」。
 「日本が自ら陥った財政の罠から抜け出すには、より急速で息の長い経済成長しかない。安倍首相には新たな改革計画――待望の第3の矢――で自らの経済プログラムを救うチャンスがまだ残っている。それなのに安倍首相は、今回の消費税増税でまた新たな逆風をつくり出してしまった」。
 ピーター・タスカ(アーカス・リサーチ アナリスト)もFT(10/1)で、「安倍首相は初めての政策の過ちを犯そうとしている」と述べて次のように批判している。
 「消費税率引き上げは専門家による経済財政諮問会議で承認され、内外のオピニオンリーダーから勇気ある決断だと評価されている。それでもなお、これは間違っている。『チーム・アベ』は金融市場のエコノミストの意見を聞くのでなく、市場そのものの声に耳を傾けるべきだ……日本は、構造的に貯蓄過剰であり、GDP(国内総生産)の50%以上に上る海外の金融資産を保有する国である。『アベマゲドン』などという債券市場破綻のシナリオは、(国債の平均利回りが下がっている日本には無縁の)パニック映画の部類に属するもののようだ」。
 そして、消費税増税の影響を緩和するのに安倍首相は、何よりも日銀の金融刺激策を拡充して円安を維持し、リスク資産市場の強化に力を入れるべきだと論じている。「アベノミクスの成功のカギを握るのは黒田日銀総裁だ黒田総裁には何の制約もない。日銀はいつでも好きな時に、量的緩和を強化することができる。これまで最小限に抑えられていた上場投資信託や不動産投資信託の買い入れを大幅に増やすことで、さらに強力なメッセージを市場に送ることができる。ことあるごとに米国市場を支援してきた『グリーンスパン・プット』や『バーナンキ・プット』のように、やがてその日本版である『クロダ・プット』を見ることになるだろう。黒田総裁が手持ちのカードをうまく、洞察力をもって切ることができれば、変革をもたらすだろう」。
 BLB(10/2電子版)でコラムニストのウィリアム・ペセックは、「世界最大規模の債務の圧縮を目指して消費税引き上げを決断した安倍首相に後世の人々が下す判断は、1997年の消費税増税で景気回復の芽を摘んだ橋本龍太郎首相に対する評価同様に厳しいものになるかもしれない」と批判的、悲観的に述べている。
 その上で、「消費税増税が日本の債務を圧縮させるどころか、増大させてしまうリスクもある。増税は消費の足かせになる上に、その悪影響を相殺するための景気刺激策を必要とする。それでは財政健全化には繋がらない。財政再建のために首相はむしろ、アベノミクスの最重要要素、つまり日本が1990年以来避けてきた規制緩和・経済改革こそを進めるべきではないか」と論じている。

 
 一方、ECO(10/5号)社説は、「安倍首相の消費税引き上げの決断は正しいが、日本の経済成長を押し上げるにはもっと対策が必要だ」と述べて、消費税増税は支持しながらも、大胆な構造改革や規制緩和を進める「3本目の矢」の実行を迫っている。
 同社説は、高齢化が急速に進む日本で、社会福祉関連支出が一般会計予算の3分の1を占めていることを指摘し、「このような状況では、消費税のわずかな引き上げを争点にするべきではない日本が財政の健全化を望んでいるならば、いずれ欧州のように消費税は20%まで上げることが必要になるだろう」と述べている。
 また、「消費税増税はここ何年も準備されてきたことである。延期すれば安倍首相が約束している財政規律に対する信頼性や、景気回復を実現するためのアベノミクスはうまくいっているという主張に対する信憑性も崩れただろう」と述べて正当化している。
 しかし、表面上はうまくいっているように見えるアベノミクスだが、経済回復はまだ暫定的だとして、「これらの不安定要素を考えると、長期的に日本の潜在成長率を上げると期待されている安倍首相の3本目の矢である構造改革は、もっと重視されるべきである。首相が6月に約束した大胆な改革は期待外れだった。今回は、農地整備、医療における競争の導入や雇用の規制緩和など、より革新的な改革を含めることが必要である。これらの本当に必要な改革の実施に比べれば、消費税増税は簡単かもしれない。安倍首相が主張する日本が戻ってきたかどうかを最終的に判断する手段となるのは、消費税ではなく、これらの改革である」と論じている。
 FT(9/13)社説は、すでに消費税引き上げの正式決定前に、「消費税増税判断は正しい」として、消費税増税や、増税の影響を相殺するための景気刺激策も、次のように述べて支持している。
 「日本の公的債務残高はGDPの200%を超えており、政府は巨額の財政赤字を解消するために新たな財源を見つけなければならない。5%という日本の消費税率は先進国の中で最も低い水準にある。これを8%に引き上げる計画は、例えば所得税の引き上げよりも、ゆがみの少ない方法で帳尻を合わせるのに役立つだろう」。
 「消費者と企業が価格上昇に直面して、増税がマイナスに作用することは避けられない。政府は景気刺激策を使って対処することになる景気回復はまだ確かなものではなく、これは賢明な措置だ ……政府と日銀は景気への打撃が予想以上だった場合に行動を取る態勢を整えておくべきだ。安倍首相は一時的な所得税減税を実施することで、5兆円程度と見込まれる小規模な経済対策を強化し、消費者に資金を還元できる。日銀は量的緩和の規模を拡大できる。日銀の黒田総裁は消費税増税を支持しており、必要に応じた対応を取る用意がある」。 

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