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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/10月6日〜’13/11月14日)

 この期間、消費税引き上げが決定し、安倍政権の次の経済政策が注目されている中で出てきたコメの減反政策の見直しの議論をWSJは早速、日本の農業政策改革への一歩として歓迎した。大衆薬のインターネット販売の規制緩和や賃上げに関する安倍政権の積極姿勢についてもWPFTが取り上げている。
 
 政府が、コメの価格維持のための生産調整(減反政策)を5年後に廃止する方針を決めたが、その正式決定の前にWSJA(11/1)社説は、「日本政府は先週、動脈硬化症の農業市場、とりわけコメの生産のルールを一部見直すことを明らかにした。これは安倍首相が進める産業やサービス分野の改革の問題ではないが、首相が政治的にタブーのひとつを進んで取り上げようとすることを示すものである」と述べている。
 日本の農家が減反政策などによって、いかに手厚く保護されているかを詳しく説明した上で、同社説は「政府が考えている改革は日本の農業問題の大きさに比べればささやかなものであるが、それでも重要な第一歩となるだろう」と評価して、次のように論じている。
 「安倍首相は、都市部の有権者が、TPP(環太平洋経済連携協定)を含む、より自由な貿易を支持するようになってきているということにはっきりと気付いている。TPPは大幅な農業分野の開放を要求するだろうし、日本の農家が輸入農産物に太刀打ちできるようにするためには改革が必要となる。農業改革はアベノミクスが展開していく中で注目すべきテーマである。TPPは安倍首相の最も重要な改革となり得るが、それはより一層の競争を認める国内の改革に手を付けた時に初めて実現するだろう」。
 WP(11/9)社説もこの問題について、「安倍首相は極めて非効率で知られるコメ農家を統合し、高齢化する農業従事者たちから政府の補助金を切り離すという、やや野心的な計画を打ち出した。この計画によると、日本は2018年までに減反政策による生産制限をやめるというもので、世界で最も保護されている農業市場のひとつである日本の農業をTPPの下で、より広範な国際競争に開放しようとする重大な一歩になるものだ」と評価している。
 その一方で、「首相は薬剤師など業界の圧力団体の反対を受けて、最高裁の判決があるにもかかわらず、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売の完全な規制撤廃に尻込みしてしまった。そして政府は、消費者の安全を理由にして、一部医薬品のネット販売に規制を残した骨抜きの規制改革案を提案した。この問題は、特定の利益団体を抑え込む、政府の力量を測るシンボリックな試金石となる重要なものであったのだ」と指摘、「安倍首相の改革は国内の強い反対に直面しているが」、安倍首相は「やり過ぎることを恐れずに」改革を実行すべきだと論じている。
 FT(11/12)社説は、「安倍政権は、公約のデフレ脱却に向けて順調に進んでいるように見えるが、最近の物価上昇はエネルギー価格の急上昇に伴うもので、国内で生じたインフレではない。残業代や賞与を除く給与所得は9月に16カ月連続で減少し、日銀政策決定会合の一部の委員からも賃金低迷を懸念する声が上がっている」と指摘している。
 そして、「安倍首相は賃上げへの支持を取り付けるために政労使協議を立ち上げ、自らの役割を果たしている。これは労使間だけで賃上げを協議してきた日本では異例のこと。政府の積極的な改革姿勢は既に一部で成果を上げつつある。かつてほど手厚くはないものの、賞与は前年より増えている」と評価しながら、「政労使協議が失敗した場合、政府は自らの目標達成へ、さらに積極的な策を講じなくてはならない。既に検討しているように、賃上げと引き換えに企業に減税など財務面のインセンティブを与える策も有効だろう。法定最低賃金と公務員の賃金引き上げも議論すべきだ」と主張している。
 
 FT(10/15)でコラムニストのギデオン・ラックマンは、経済広報センターの招聘による1週間の日本訪問で、日本が欧米に先駆けて、高齢化や社会保障、それによる政府債務など様々な問題を抱えて苦闘している実情を取材した後のコラムで、次のように同情的に述べている。
 「アベノミクスという過激な経済実験が鳴り物入りで実行されたのは、この債務の問題に対応するためでもあった。安倍首相がインフレ率を年2%に引き上げようとしているのは、その後の経済成長が、増大する社会保障費を賄ったり対GDP(国内総生産)の債務比率を引き下げたりするのに必要な歳入の増加をもたらしてくれるとのもくろみがあるからだ」。
 「安倍首相の急進主義は国内の経済問題だけに駆られたものではない。日本は中国からの脅威が高まっているという認識に駆られて行動に出た面もある。中国経済は2011年に規模で日本を追い抜き、年を追うごとにその差が拡大している。中国も、一人っ子政策の結果として、間もなく国内で高齢化問題を抱えることになる。だが、日本の戦略実務者は、中国の年間軍事費は今や日本の軍事費の3~4倍に達していると指摘する」。
 「こうした大変な難題にもかかわらず、日本のムードはもう何年もなかったほど楽観的だ。安倍首相の発言は国家主義的に聞こえることもあるが、その精力的なリーダーシップは、日本が経済停滞から抜け出せるという希望を生み出した。経済は4%近いペースで成長しており、東京が2020年の五輪開催地に選ばれたことで気分が盛り上がっている」。
 
 小泉元首相が「原発ゼロ」を呼び掛けたことを、NYT(10/15)社説は次のように論評している。
 「小泉元首相は、原発を推進することは『あてもなく』『無責任』であると言う。日本は小泉元首相の主張を歓迎し、福島の大惨事が起きてから2年半の間、一度も行われていない原子力についての健全な議論を始めるべきである。国会は独自の調査を行い、福島の原発事故は人災だったと結論付けたけれども、この調査は国会での真剣な議論に発展しなかった」。
 「安倍首相はデフレ心理を改め、景気低迷から脱する必要があると強調している。確かに日本は、態度を変えることによって、低迷から脱することができるだろう。だから小泉元首相は、自民党が『原発ゼロ』の方針を発表すれば、『日本は世界に例のない循環型社会の創造へ結束する』し、国民感情も一気に高まると説得力のある考えを主張しているのだ」。 

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