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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/11月15日〜’13/12月12日)

 この期間、中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を一方的に設定したことに国際社会から強い批判が出され、米英の主要紙誌はこれを「極めて挑発的で、緊張を高め、日本との直接の衝突の可能性を高める」行為として厳しく非難した。米国メディアは特に、日中の軍事衝突が起これば日米安保条約で日本の防衛義務を負う米国が巻き込まれることを懸念し、英国メディアには20世紀初頭のドイツをめぐる欧州の状況にイメージをだぶらせ危機感を表す論調も見られた。またその後の米国の対応がブレていて、中国非難や日本支援の姿勢が十分でないと懸念する論調も現れた。

 
 WP(11/26)社説は、「中国は防空識別圏設定を撤回せよ」との見出しで、「中国は突然、懸念すべき無謀なやり方で、日本が実効支配する東アジアの諸島をめぐって長いこと一触即発の状態にある領有権争いの危険度をさらに高めた……この識別圏は日本がすでに設定している防空識別圏と重なるもので中国による主権の主張にほかならない……中国の行動は、戦闘に繋がる事故や思い違いの危険を招き、そうなれば、日本の防衛をコミットしている米国を巻き込む可能性がある」と述べている。
 そして、「何年か前、中国の指導者たちは、経済大国としての台頭が、必ずしもアジア地域の内外で、軍事的により強硬な中国になることを意味しない、と世界に約束した。彼らはそれを『中国の平和的台頭』と呼んだ。しかし、週末の発表は、それとはほど遠いもののように見える……広い海域にわたって上空の飛行に突然制限を設けることは、『平和的台頭』でもなければ交渉する意欲の表れでもない。この防空識別圏が認められてしまえば、他の方法でも圧力を強めてもよいという気に中国をさせることになるかもしれない」と指摘している。
 NYT(11/26)社説も中国の「防空識別圏設定は、その海域にある島々の領有権争いを平和的に解決したいという中国の主張とは相いれない。緊張を高める極めて挑発的な行為であり、日本との直接の衝突の可能性を一層高める……防空識別圏の設定は、この地域で中国の権力が及ぶことを強硬に主張することによって、日本の実効支配にさらに挑戦するものである。それは、習近平国家主席の中国と関係を発展させようとする米国の努力を極めて困難にする」と非難した上で、「中国の、軍事行動の可能性という脅しを含む一方的な決定を受けて、米国は同盟国日本のために、また海や空の航行の自由の原則のために、そして東シナ海や南シナ海において中国と領有権争いをしているアジアの国々のために、立ち向かい、守らなくてはならない」と強調している。
 しかしその一方で、「安倍首相は、中国に対する過激な言葉や挑戦的な姿勢が目立つ、憂慮すべきほどナショナリスティックな外交政策を追求しており、これは日本にとっても、米国にとっても危険である。オバマ政権は、日本の利益を守る方法を見つけなければならないが、それは安倍政権を勢い付かせて中国との緊張を高めるような愚かなリスクを取ることがないような方法でなければならない」と述べている。
 FT(11/26)社説は、今回の防空識別圏設定により「中国は日本政府への圧力を徐々に強める戦略をさらに進めた……中国政府の今回の動きにより、偶発的または故意による日中衝突の可能性が高まる」と懸念を表明し、中国は尖閣諸島をめぐって日本への圧力を強める挑発行為をやめるよう呼び掛けている。そして「中国の行為は愚かだ。尖閣諸島は100年以上にわたり日本の実効支配下にある。中国は威嚇行為でその現状を変えようとしている」と述べている。さらに「中国は尖閣諸島を日米同盟に亀裂を生じさせる手段と捉えているのかもしれない。それは無責任なゲームだ」と断じている。
 WSJA(11/28)社説は、「オバマ政権が、尖閣諸島の領有権をめぐり攻撃的な姿勢を見せる中国に対して防衛策に努力する日本との連帯感を示して見せたことを高く評価する。米軍のB52爆撃機2機は中国が一方的に設定した尖閣諸島上空を含む防空識別圏を、中国への事前通告なしに飛行した。この飛行に対する中国からの挑戦はなかった。恐らく、オバマ大統領のアジア重視の政策が何らかの意味を持っているということだ」と述べて、日米の強力な連携を求めている。
 「今回、爆撃機が飛行するまで、尖閣諸島の領有権をめぐる中国の瀬戸際政策は1年以上続いていた。この中国の瀬戸際政策は、尖閣諸島周辺の海域と上空域の現状を変えることが目的だ。本当に防空識別圏が試されるのはこれからだ。数日後か数週間後に、中国軍が尖閣諸島周辺の監視目的で防空識別圏を盾に、日本の防衛力に挑戦してきた時だ。米国は尖閣諸島の防衛で日本を支援するという条約上の義務をさらに強固にすることで、武力衝突を防ぐ手助けができるだろう。それを行う最良の方法は、日本側と合同で海空域の監視行動を取ることだ」。
 しかしWSJ(12/5)社説は、その後の米国の姿勢について、「バイデン副大統領も、オバマ政権のほかの閣僚も、米国に防衛義務のある日本の領空に中国が設定した防空識別圏を受け入れられないと明言していない。その代わり米国は、衝突の可能性を最小限に抑える方法で防空識別圏が扱われることを期待しているというシグナルを中国に発した。それは米国と日本の立場に隙間を生む恐れがあり、これを中国に弱点と捉えられかねない。誰も対立を望んでいないからこそ、今はより強力な対応が求められる」と注文をつけている。
 FT(11/30)社説も、「東シナ海の緊張を緩和する方法が見つかることを希望するが、基本は、米国がきっぱりと日本の側に立って支持することが必要である。それができなければ、米国はアジア地域のすべての国に、米国は頼るに足らない同盟国になってしまったというシグナルを送ることになる」と米国の対応に警告している。
 ECO(11/30号)社説は、今回の中国の行動を「東アジア地域における憂慮すべき新たな動きを示すものだ」として、「このような(米中の)にらみ合いは、米中の戦略的対立がエスカレートし、1996年(の台湾海峡での米中対決)以降では最も懸念される状況にあることを示している」と述べている。そして、「現在の中国は、躍起になって東アジアの支配権を取り戻そうとしている。第2次世界大戦における日本の野蛮な占領の苦い記憶が、この願望を先鋭化している。現代の東アジアと20世紀初頭の欧州との間に類似点を指摘する声は多いが、そこにはこのような、新興の大国と既存の大国が衝突する可能性が背景にある。現代の東アジアでは、尖閣諸島が欧州のサラエボに当たるというわけだ」と一触即発の事態が世界に拡大することへの懸念を示している。  

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