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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/12月13日〜’14/1月16日)
今回は2013年12月13日~2014年1月16日までの紙誌面を分析したものである。
 この期間、年末12月26日、就任1年の節目の日に安倍首相が靖国神社に参拝したことについて、中国、韓国が激しく非難し、同盟国米国までもこれを批判する声明を発表、シンガポールやEU(欧州連合)からも批判が出された。米英の主要紙誌は社説などで一斉に、第2次世界大戦の戦犯を祀る靖国神社に参拝したことを挑発だと批判したが、WPWSJなど多くは、そもそも中国の行動が東アジアの緊張を高めているのだが、参拝が緊張をさらに高め、軍事力増強で覇権の主張を強める中国に口実を与え、それに対抗しようとする周辺諸国の協力を困難にすると、戦略面から批判している。

 
 WP(12/28)社説は、中国の防空識別圏設定に近隣諸国が一致団結して対応しようとしていたところに、「安倍首相は靖国神社に現職首相として7年ぶりに参拝することによって中国の好戦性に対するアジア地域としての効果的な対応を困難にし、緊張含みの雰囲気を不必要にもさらに悪化させた。それは挑発的な行為であり、安倍首相の国際的立場と日本の安全保障をさらに弱めることになりそうだ」と指摘している。
 そして、「中国や韓国の言動に照らせば、安倍首相が(防衛力増強や憲法改正などの)変革を追求し、米国とのより緊密な安全保障関係を求めるなど、もっともなところがある。しかし、安倍首相が、彼の政策を日本の戦前の帝国への郷愁に結び付けるのであれば、彼自身の大義を台無しにするだろう。そして中韓両国のナショナリストたちは参拝を最大限利用することになるだろう。中国は先の防空識別圏設定に対する否定的な批判をそらすのに使うだろうし、安倍首相との会談や関係改善策をとることを拒否している韓国の朴大統領の立場が強化されよう」と述べている。
 WSJ(12/27)社説も「安倍首相の靖国参拝は、日本の軍国主義復活という幻影を自国の軍事力拡張の口実に使ってきた中国指導部への贈り物だ。中国政府は、対外的には尖閣諸島の日本の領有権を積極的に脅かし、中国の軍事費に比べればわずかにすぎない日本の防衛予算の増額に強く反発している。一方、対内的には一党体制の正当性を強化すべく、反日ナショナリズムをあおっている」としながらも、そのような中国を利することになると、安倍首相の歴史認識について次のように述べている。
 「(靖国参拝への反発として)韓国は、無法な暴動よりも外交的に冷たい態度をとることで日本への敵意を表すだろう。それは自己主張を強める中国への対処、とりわけ中国の覇権を阻止できる可能性が最も高い米同盟国間の協力を損なうことになるため、そうした外交的不和がもたらす影響は極めて大きい。これは靖国参拝の重大な側面だ。日本政府の一部有力政治家が、個人的信仰、政治的迎合、またはその両方のために、化学兵器や性的奴隷など戦時の残虐行為の事実をごまかし続けるだけでも大きな問題だ。だが、真実に反する行為によって、志を同じくする国が平和で自由主義的な地域秩序を推進できなくなる時、それは日本にとって戦略的負担となる」。
 NYT(12/27)社説は、「日本が管轄している尖閣諸島をめぐる挑発的な中国の動きは、日本国民に中国が軍事的脅威であると確信させた。それにより、安倍首相は中国からのシグナルをすべて無視し、日本の自衛隊を、どこでも戦争ができる軍隊に変貌させるという目的を遂行する口実を得たのだ。靖国神社参拝は、その目的達成のための一部である。韓国が慰安婦問題について立場を曲げない日本に対して厳しく批判を続け、安倍首相との会談を朴大統領が拒否することで、日本国民の間に韓国に対する不信感が広まり、世論調査では国民の半数近くが韓国を軍事的脅威と見ている。有権者のこのような見方は、事実上安倍首相に中国や韓国の反発を気にせず行動できる許可証を発行したのである」と参拝への背景を説明している。
 そして、「中国と韓国のリーダーは安倍首相に会って、これらの問題について協議し、交渉し、そして解決すべきである。会談を拒否することは、安倍氏に自由に行動する余地を与えてしまうだけである。日本の軍事的冒険は米国が支持しなければ不可能である。米国は安倍首相の掲げる目標が、アジア地域の利益にならないことをはっきりさせるべきである。アジアに必要なのは、国々の信頼関係であり、安倍首相の行動は信頼関係を傷付けている」と述べている。
 FT(12/27)社説も、今回の安倍首相の靖国参拝に至るまでに、中国が尖閣上空に防空識別圏を設定し、尖閣諸島を巡回する監視船や偵察機の数を大幅に増やし、日本の実効支配の主張を崩そうとしてきたことを指摘して、ここには、中国が「日米安保条約に基づいて尖閣諸島を守るという米国の約束を試そうとしているフシがある。中国は、米政府が一握りの岩礁のために自国民の生命を危険にさらす気が本当にあるのか疑っている。今のところ、日米の間にくさびを打ちこもうとする中国の政策はうまくいっているようだ。米国政府は、中国の防空識別圏を無視するという日本政府の方針には追随しなかった」と述べている。
 そして、「中国が2013年に一定の成果を上げたこの戦略を2014年も進めるのは危険だ……(これを避けるための提案は幾つかあるが、)どれも実現の望みは薄い。日中は相互不信に陥っている。こうした状況でできることは、せいぜい両首脳の間にホットラインを設置することだ。両首脳は無条件の会談開催にも合意しなければならない。これに関しては、中国の習近平国家主席に責任がある。安倍首相との会談にさえ同意できないというなら、軍事衝突という想像を絶する手段のほかに解決の道はなくなる」と警告している。
 オーストラリアの全国紙オーストラリアン(12/29)社説は、「東アジア危機の深まるこの極めて危険な時期」の靖国参拝は「不必要な挑発」だとして、「日本の国際関係にとっては『オウンゴール』以外の何ものでもないように見える」と批判。そして、「尖閣・釣魚島の領有権をめぐる対立に対して危ない橋を渡って安倍首相を支持してきたオーストラリアのような友邦国や同盟国にとって、状況をより難しくしてしまった。安倍首相の行動は、アジア地域での自らの拡張主義を正当化するために、日本軍国主義の亡霊を利用しようとする中国指導者の思うつぼである」とオーストラリアの苦しい立場を述べている。その上で、「安倍首相の(軍事力強化などの)方針は、先の日本の軍国主義の被害を受けた国々からさえも支持を得ている。しかし、もし安倍首相が意図的に武力侵略を挑発していると見られたならば、支持は持続しないであろう。東アジアの危機には冷静さが必要である。さらなる挑発行為はその答えにはならない。オーストラリアのような、安倍首相の味方は、もっと責任ある行動をとる必要を彼にはっきりと理解させなければならない」と主張している。
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