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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’14/1月17日〜’14/2月6日)

 この期間、安倍首相の靖国神社参拝を受けて、中国は世界の現地メディアや国際会合などの場を使って日本非難を展開し、日本もこれに応酬し非難合戦がエスカレートした。このような日中の非難合戦を日米主要メディアの多くが見苦しいと批判しているが、同時に、非難合戦が偶発的な軍事衝突や紛争に発展するのを懸念して、日中双方に自制するとともに対話による解決を探ることを求める論調や、中国の暴走を抑止するため米国の強い対応を求める論調も見られた。
 

 NYT(1/28)社説は、「東アジアの無人の小島をめぐって、中国と日本の間で始まった領有権争いが世界のPR合戦にまで広げた国家のエゴの戦いに発展してしまった。例えば、今月、中国の劉暁明駐英大使と日本の林景一大使は互いに相手の国を『ハリー・ポッター』の中の闇の帝王『ヴォルデモート卿』になぞらえて非難し合った。そうした子どものようなレトリックに訴えても2国間の意見の食い違いを解消するのに何の役にも立たない」と批判している。
 そして「昨年12月には、争いは歴史の領域に拡大し、両国の意見の食い違いがコントロールできなくなる恐れも出てきた。安倍首相は第2次世界大戦の戦犯を含む戦没者を祀った靖国神社を参拝した。中国は安倍氏が日本の軍国主義を復活させようとしていると非難し、両国の大使は世界で現地メディアを使ってPR合戦を展開、互いに相手が世界平和への脅威であると攻撃している……このような国のエゴをぶつけ合う中日の争いには、どちらかに味方したいと思う国はまずないだろう。歴史問題について繰り返し言い合っていないで、両国は意見の違いに折り合いをつけるために具体的な問題に取り組むべきである。そして、そのような問題はそれほど多くはない」と呼び掛けている。
 FT(1/24)社説は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での安倍首相の発言を捉えて、次のように論じている。
 「(ダボス会議で安倍首相は)日本と中国の対立関係を、第1次世界大戦前に英独間に存在していた対立と比較し、英独間の広範囲に及ぶ貿易も戦争を防ぐことにはならず、日中も今『同じような状況』にあると述べた……日本の首相が1914年の欧州との類似点を認めたことは、恐ろしく、怒りをかき立てるものだ」(この発言は通訳の訳が不十分であったと日本側から説明された)。
 「日中両国は、互いを威嚇するのをやめ、対話する努力を始めるべきだ。安倍首相が提案したホットラインは良いアイデアであり、実行に移すべきだ。ホットラインは、偶発事故や緊急事態が発生した場合に緊張を和らげることができるだろう。だが、首脳レベルで尖閣諸島について話し合うという差し迫った必要性には代えられない。今のところ、安倍首相と習近平国家主席は、そうした会談実現への道を阻んでいる」。
 「米政府は米国の安全保障の傘が尖閣諸島に及んでいることを日本に保証してきた。中国に対しても、中国による侵略があった場合には同盟国である日本を支援すると確実に警告しなければならない。一方、安倍首相が、国家主義的行動を慎む必要があることも明確に示さなければならない。手遅れになる前に、安倍首相と習主席はハルマゲドンから遠ざかる道を探るべきだ」。
 ECO(1/25号)は「日中の非難の応酬と中傷合戦は、(韓国を除く)世界中で、両国の評判を落としている」として双方をたしなめた上で、中国が日本の戦時中の残虐行為や「軍国主義の復活」を言いたてることを次のように批判している。
 「日本は70年にわたって平和を維持しており、戦時中のアジアの記憶はアフリカではほとんど共感を呼ばないにもかかわらず、中国はかつての戦争を取り上げて安倍首相のアフリカ歴訪を非難した。日本による占領を直接経験した国々にさえ、中国のアプローチは効果がないように見える。アジア各国は安倍首相の靖国神社参拝に不満だが、それでも安倍首相が計画している防衛費の増額に懸念を抱く国は少ないようだ。それどころか、中国の軍備増強と領海紛争に関する強硬な主張の方がはるかに心配だとして、日本の姿勢をひそかに歓迎している国がほとんどだ。安倍首相は就任1年目にアセアン加盟国10カ国をすべて訪問するなど、この地域の支持を獲得するため努力してきた。靖国参拝に対する彼らの怒りによって、その努力が台無しになることはなさそうだ……(しかし)靖国神社参拝により過去を呼び起こすことで、中国をはじめとする他国に遠い昔の戦争について何度も蒸し返す機会を与えてはならない」。
 WP(1/27)でフレッド・ハイアット論説主幹は、日中の非難合戦が、尖閣諸島を巡る実際の紛争に発展した場合の米国への影響に備えて、米国の取るべき態度を論じている。
 「中国の漁船が日本の海上保安庁の監視船の警告を無視して尖閣の島のひとつに接岸したとしよう。日本側が中国漁船の乗組員を検挙すると、中国側は彼らの釈放を要求し、発砲が起こり、日本は日米安保条約を発動する。その結果、中国と対決するか同盟国を見捨てるかという、米国の大統領なら誰もしたくない選択を迫られる。米国にとって、それは同盟関係の管理に関する古典的な課題である。すなわち、潜在的な敵国からのいかなる侵略も抑止するのに十分な断固とした態度を示すことだが、同盟国に無謀な行動を取る気にさせるほどのものであってはならないというものだ」。
 「そのような際どい政策を行うのに最良の方法は、この地域におけるプレゼンスを増やすことであって、減らすことではない。東アジアや東南アジアの国々が、米国のプレゼンスを頼りにすることができると分かっていれば、彼らは中国の弱いものいじめに静かに抵抗するために一致団結する可能性が高い。そして近隣諸国は米国が望む日本の軍事力の近代化について心配する可能性は低くなる。日本は中国の挑発に忍耐をもって対応するだろうし、中国や韓国は緊張を緩めるだろう。そのような計算が、米国のアジア・ピボット政策の背景にあったのだ。残念ながら、アジアの政府の多くは、今ではその政策がどの程度本物なのか確信が持てないようだ」。
 この関連でWSJA(2/6)社説は、「安倍首相が憲法の解釈見直しにより67年間禁止されてきた集団的自衛権行使の容認に動いている」ことを取り上げ、「日本が他国と正常に同盟を築くことができるとすれば……(欧州での独仏協定のように)日本が率いる民主主義国の連合は、中国から迫りくる独裁主義に対峙する一段と有効な勢力となり得る」とし、「安倍首相は、日本をアジアで主導的役割を果たすことのできる正常な国にしようとする取り組みにおいて称賛に値する。日本政府は平和に貢献し、この70年間で過去の行為を償ってきた。日本は民主主義のため隣国に安全を保証するという自らの役割を果たすべき時がきている」と強調している。  

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