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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’14/2月7日〜’14/3月13日)
 この期間に発表された昨年第4四半期のGDP(国内総生産)は、前期比年率で予想より低い1.0%の成長となり、2年目に入ったアベノミクスが期待通りの成果を上げていない、息切れしたのではないかという見方が社説などで論じられた。また、安倍首相の進める集団的自衛権行使容認への議論やNHK会長らの歴史認識関連の発言をめぐって、安倍政権の危険な「ナショナリズム」だとする批判が、この期間も一部のメディアで繰り返された。
 
 FT(2/18)社説は「(GDPの)期待外れの数字を受けて、首相の経済政策『アベノミクス』が軌道から外れつつある兆候だと判断するのはまだ早いだろう。しかし、首相と日本企業は景気回復の足取りを止めないよう、すぐに行動しなければならない……全体として、2013年通年のGDP成長率はまずまずの1.6%増と、3年間で最高の伸びとなった。もっとも今後の見通しについては不安がつきまとう。政府は4月に消費税を5%から8%に引き上げる……これはその後の消費増加を抑えるという犠牲を伴う」と慎重な見方を示している。
 その上で、「アベノミクスにとって大きな障害は日本企業だ。円安の恩恵を享受する企業は、輸出や海外で上げた利益のほとんどを経済に還流させていない。企業は投資意欲を失っているだけではなく、従業員への恒久的な賃上げを避けている」としながらも、「しかし、アベノミクスの将来が日本企業にかかっていると考えるのは誤りだろう。法人税の一時的な引き下げを通じて消費増税の影響を弱めるなど、政府ができることはもっとある……構造改革も不可欠だ。これまでのところ、アベノミクスの『3本の矢』のうち最も期待外れなのが構造改革だ。例えば、日本の非効率な労働市場に変化をもたらすに至っていない」と述べている。
 WSJA(2/19)社説も、2013年最終四半期のGDPは、「日本の経済成長が予想外に鈍化していることを示した」もので「期待外れ」としながら、「景気回復に向けた大胆な実験として導入された『アベノミクス』が1年以上経った今、日本が現在目にしているよりもずっと強い効果を期待することはもっともなことだが、10~12月期の脆弱な数字は、安倍首相にとって、まだ実現していない経済改革の『第3の矢』を推進する時間が限られていることを示している」と述べて成長戦略の早急な実行を迫っている。
 FT(2/26)でアダム・ポーゼン米ピーターソン国際経済研究所所長は、安倍首相がやろうとしている経済政策の方向は正しいが、それをもっと大胆に強力に進めることが必要だとして「(経済回復に寄与している)、日銀の金融政策は安倍首相の経済対策『3本の矢』のうちの1本にすぎない。同時に重要なのは、財政再建と構造改革である。これらの取り組みも、適切な優先順位をもって正しい方向に進んでいる。ただし、金融政策と同じように、それらを成功させるには大胆なものである必要がある」と述べている。
 そして、「安倍首相は重要な改革を優先的に取り上げている。特に女性の労働市場への参加拡大、農業強化のための農地の集約、労働市場の正常化、医療分野の競争促進である。これらは理にかなった対策であり実現可能である。今必要なことは、これまで進めてきたことをもっと進めることである。政府の考えていることは正しいのだ。新しい政策を考え出す必要はない。既存の計画に沿って一段と意欲的に取り組むことが必要なのだ……(その上で)消費税を今後数年で、せめてOECD(経済協力開発機構)諸国並みの20%まで引き上げることを、コミットすべきである」と主張している。
 安倍首相やその政権の言動や歴史観について、NYT(3/3)は再び、「安倍氏の危険な歴史修正主義」との見出しの社説を掲載し、「安倍首相のナショナリズムは日米関係にとってますます深刻な脅威となりつつある。彼が歴史修正主義を主張することは、東シナ海や南シナ海での領有権争いにおける中国の攻撃的な姿勢にすでに苦闘している周辺地域に対する危険な挑発である。しかしながら、安倍氏は、この現実や(日米安保)条約に則って日本防衛をコミットしているものの日中の紛争に巻き込まれたくない米国の利害のことを忘れているように見える」と批判している。
 さらに、「安倍氏は戦争の歴史をごまかして美化している。安倍氏とそのほかのナショナリストたちは、今でも1937年の旧日本軍による南京大虐殺は全く起きなかったと主張している。金曜日(2月28日)には政府は、旧日本軍に強制されて性的労働に就かされた女性に対する謝罪(いわゆる河野談話)を見直し、撤回する可能性もあると発表した」と非難した。政府は事実誤認だと抗議し、NYTは後日(3/5)「(河野談話を)撤回する」の部分をこの社説から削除して訂正した。
 WP(2/12)社説は、NHKの籾井新会長や百田NHK経営委員の歴史問題に関する発言について、「安倍首相も自分の考え方を説明すべきだし、NHK問題に対する責任は重い」と述べて、次のように論じている。
 「安倍首相が掲げる政策課題の大部分は日米同盟にとってもっともなものだ。安倍首相は経済を再生し、米国その他の太平洋諸国との自由貿易協定の交渉を行い、軍事費を増額し、米国の同盟国としての役割をより良く果たすために法の解釈を変えようと努力している。しかし、NHKの騒動のようなことで、これらの政策に対する評価は下がってしまった。歴史の書き換えは、国際的な役割を積極的に果たすための日本の正当な努力を危険な軍国主義とみなす人々に口実を与えている。米高官も安倍首相の本質が国家主義者なのか改革主義者なのか、分からなくなってきている。報道の自由を支持し、破壊的な歴史否認主義を否定できるのは、安倍首相だけである」。
 FT(2/10)社説は「歴史修正主義の立場から、戦時中の残虐行為について日本が不当に批判されてきたと考える安倍氏は、今国家主義的な政策を前面に押し出し始めている。この動きは、日本の民主主義にとって憂慮すべき意味合いを持つ」と述べている。
 靖国参拝や、秘密保護法、NHK人事などをめぐる首相の手法を批判した上で、「安倍政権は公の議論の幅を狭めようとしており、中国の日本批判はそれを後押ししている。国民の多くが受け身で意見を主張しない日本では、世論を操作しようとする安倍氏の政策は危険だ。日本にとって議論すべき課題は多い。『集団的自衛権の解釈を変更し、同盟国などが攻撃された場合、自衛隊が同盟国の救援に動けるようにするのは理にかなっている。世界中で事実上唯一戦争する権利を禁じた憲法9条の改正の議論も正当だろう……日本の近隣諸国にとって安倍氏の存在は危険だとする中国の主張はほとんどナンセンスだが、首相は日本にとって危険な存在になりかねない。中国の脅威が、開かれた社会を攻撃する口実として利用されることがあれば悲劇である」と論じている。
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