経済社会全体の根底からの変革(GX:グリーントランスフォーメーション)には、イノベーション(革新的技術開発と社会実装)が不可欠です。
経団連では、「経団連カーボンニュートラル行動計画」ならびに「チャレンジ・ゼロ(チャレンジ ネット・ゼロカーボン イノベーション)」において、日本の業界や企業のイノベーションへの取り組みを明らかにしています。
また、アジア各国がカーボンニュートラルを進めるとの理念を共有し、エネルギートランジションを進めるために協力することを目的とする、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」が、日本政府のイニシアティブにより、ASEAN9か国と豪州をパートナーとして立ち上がりました。経団連は、この構想の推進に、強い期待を寄せています。
「経団連カーボンニュートラル行動計画」において、各業界は、2050 年カーボンニュートラルに向けたビジョンを示しています。その中では、目指す絵姿・将来像や、それを実現するためのイノベーションへの取り組みなどを示しています。
部門 | 業界/ビジョン(基本方針等) |
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エネルギー転換部⾨(エネルギーのCN化に向けた取組み) |
電⼒
S+3Eの同時達成を果たすエネルギーミックスを追求するとともに、確⽴した脱炭素電源(原⼦⼒や再⽣可能エネルギー)の最⼤限活⽤やヒートポンプ活⽤等、「電気の低・脱炭素化」と「電化の促進」を両輪とした取組みを継続しつつ、電⼒供給サービスのさらなる⾼度化に向けた課題解決を果たすための「イノベーション」を通じた⾰新的技術(⼩型モジュール炉、次世代太陽光、蓄電池、⽔素・アンモニア発電、CCUS/カーボンリサイクル等)の実⽤化に向けて、官⺠⼀体となって取り組む。 |
石油
サプライチェーンや製品の脱炭素化の取り組みを加速化し、既存インフラが活⽤できる⾰新的な脱炭素技術(①CO2フリー⽔素、②合成燃料、③CCS・CCU(カーボンリサイクル)等)の研究開発と社会実装にも積極的に取り組むことで、事業活動に伴うCO2排出(Scope1+2)の実質ゼロ(CN)を⽬指すとともに、供給する製品に伴うCO2排出(Scope3)の実質ゼロ(CN)にもチャレンジすることにより、社会全体のCN実現に貢献する。 |
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ガス
ガスのCN化を⽬指すとの⽅針の下、徹底した天然ガスシフト・天然ガスの⾼度利⽤、ガス⾃体の脱炭素化(e-methaneや⽔素利⽤等)、CCS/CCUに関する技術開発等に取り組む。 |
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産業部⾨(CO2を抜本的に削減する技術確⽴に向けた取組み) |
鉄鋼
カーボンニュートラルの実現に向けて、「COURSE50やフェロコークス等を利⽤した⾼炉のCO2抜本的削減+CCUS」、超⾰新的技術である「⽔素還元製鉄」といった超⾰新的技術開発への挑戦に加え、スクラップ利⽤拡⼤等、あらゆる⼿段を組合せ、複線的に取り組む。 |
化学
「化学」の潜在⼒を顕在化させることで、地球規模の課題を解決し持続可能な社会の成⻑に貢献するイノベーションの創出を推進・加速するとの⽅針の下、原料の炭素循環(CO2の原料化、廃棄プラスチック利⽤等)、エネルギー利⽤極⼩化へのプロセス、構造の転換(膜分離プロセス等)などに取り組む。 |
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セメント
クリンカ製造過程における排出量削減に向けたクリンカ/セメント⽐の低減、バイオマスを含む代替廃棄物の利⽤拡⼤や将来的な⽔素・アンモニア混焼等による使⽤エネルギーの低炭素化、及び効率的にCO2回収する製造プロセスとそのCO2利⽤としての鉱物化等のCCUS技術開発に取り組む。 |
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製紙
⽣産活動における省エネ・燃料転換を推進(省エネ設備・技術の積極導⼊、再⽣可能エネルギー利⽤拡⼤、⾰新的技術(⾼効率なパルプ製造⽅法の開発等)するとともに、独⾃性のある取組みとして、⽊質バイオマスから得られる環境対応素材(セルロースナノファイバー等)の開発・利⽤によるライフサイクルでのCO2排出量削減、植林によるCO2吸収源としての貢献拡⼤を進める。 |
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電機・電子
「技術開発」「共創/協創」「レジリエンス」の視点から、各社の多様な事業分野を通じて気候変動・エネルギー制約にかかる社会課題の解決に寄与するとの⽅針の下、次世代の省エネ・脱炭素化技術の⾰新(スマートグリッド、⽔電解⽔素製造、パワー半導体、急速充電・ワイヤレス充電等)、⾼度情報利活⽤ソリューション(⾃動運転⽀援システム、スマートファクトリー、⾼精度気象観測等)の社会への実装に取り組む。 |
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運輸部⾨関連(移動・輸送におけるCN化の取組み) |
自動車
電動⾞(HV、PHV、EV、FCV等)の普及と⽔素社会の実現(FCモビリティーの拡⼤等)等に取り組む。 |
海運
カーボンリサイクルメタン、アンモニア、⽔素など新燃料によるゼロエミッション船への転換に取り組む。 |
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鉄道
エネルギーを「つくる」から「使う」までのすべてのフェーズでCO2排出量実質ゼロにするべく、再⽣可能エネルギー電源の開発推進と導⼊の加速、蓄電池⾞両の展開、燃料電池⾞両の開発に取り組む。 |
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業務部⾨(エネルギーの効率利⽤の徹底に向けた取組み) |
不動産、ビル
2050年CNを実現した社会では「ZEB、ZEHをはじめとした省エネ・再エネに配慮した建物」、「環境負荷が低い建材を使⽤した建物」や、「再エネ設備、蓄電池、エネルギー融通等を組合せ、地域全体でCO2削減をできるまち」が広く普及していると想定し、建物単体ではZEB・ZEH化、HEMS・BEMSの活⽤、まち全体ではZET化、CEMSの活⽤等の取組みにより貢献する。 |
エネルギー転換部門
産業部門
運輸部門関連
業務部門
経団連では、イノベーションへのチャレンジを、国内外に力強く発信し、後押ししていくイニシアティブとして、「チャレンジ・ゼロ(チャレンジ ネット・ゼロカーボン イノベーション)」を立ち上げています。
カーボンニュートラルの実現に向けたイノベーションには、電化・電源の脱炭素化を同時に進める、水素を活用する、CO2を回収・固定する、カーボンニュートラル燃料を活用する、材料分野におけるカーボンリサイクルやケミカルリサイクルを進めるなどがあります。イノベーションを支える資金の供給(ファイナンス)や、イノベーションを通じた外国でのCO2削減への貢献も大切です。
さらに、現時点で代替技術がなく脱炭素化が困難な産業は、一足飛びにカーボンニュートラルに向かうことは難しく、CO2を段階的に減らしていく移行の取り組み(トランジション)も大変重要となります。
AZEC構想は、「脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障の同時達成」と「多様で現実的な道筋によるネットゼロの実現」を基本原則とし、パートナー国の事情に即した最適なエネルギートランジションを目指すものです。経団連は、AZECのパートナー国が、共同体として、「政策・制度面での連携・協調」と「個別プロジェクト支援」を両輪としてカーボンニュートラルに取り組むべきとの観点から、「AZECワイドで取り組むべき政策協調分野」「個別プロジェクトの推進に向けて日本をはじめパートナー国が取り組むべき支援策」「政策協調と個別プロジェクトの実施体制」について、提言を取りまとめています。
AZECに関するサイトを見る