地球上のCO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること、すなわち、排出量と森林などによる吸収量を等しくすること(ニュートラル/中立)をカーボンニュートラルといいます。
カーボンニュートラル実現のためには、生活や経済活動において、日本で排出される温室効果ガスの約9割を占めるCO2を出さないようにするか、CO2を出しても、その分のCO2を吸収しなければなりません。
CO2の排出を減らしていく際には、使用といった一つの時点でのCO2の削減ではなく、原材料の採取から、材料の加工、製造、流通、使用を経て、最終的に廃棄またはリサイクルするまで、ライフサイクルを通じてCO2を減らしていくという考えが重要です。
参考サイト
カーボンニュートラルの基礎知識[日本自動車工業会] 気候変動について考えて、行動するときに読む本[日本損害保険協会]国内外で深刻な異常気象が多発しています。地球温暖化が原因で、気象災害のリスクや海面の上昇がさらに高まると予測されています。気候変動を評価する主要な機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、今後、地球温暖化に伴い、豪雨災害や猛暑のリスクがさらに高まる可能性が指摘されています。
地球温暖化が原因と言われている温室効果ガス排出量を減らし、早期にカーボンニュートラルを実現することが重要です。
参考サイト
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書日本のCO2排出量は、中国、アメリカ、EU27か国、インド、ロシアに続いて世界で6番目であり、日本のCO2の排出量は、全世界の約3%です。日本では、産業、運輸、 業務、家庭、エネルギー転換の順になっています。
●日本の部門別二酸化炭素排出量の割合
2022年度(確報値)
出典:
国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ(1990〜2022年度)確報値」(2024.4)をもとに作成
日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガス削減目標を2030年度に46%削減、2035年度に60%削減さらに、2040年度までに73%削減とする目標を掲げています。
この野心的な目標は、気候変動問題の解決に向けた日本の強い覚悟を示すとともに、国際社会を主導する確固たる決意を表明したものと考えます。
一方、現状の取り組みの延長線では、この野心的な目標を達成することは容易ではなく、技術革新やコスト負担などの課題が山積する中、官民が力をあわせて取り組むことが不可欠です。
*各削減目標は2013年度比。
●温室効果ガス排出量の削減目標
出典:
資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方」(2021.4)/「2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」(2021.10)/環境省「地球温暖化対策計画-関連資料1 2030年度及び2040年度における温室効果ガス別その他の区分ごとの目標 及びエネルギー起源二酸化炭素の部門別の排出量の目安-」(2025.2)などをもとに作成
カーボンニュートラルを実現するには、経済社会全体の根底からの変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を進めていく必要があります。その際、「経済と環境の好循環」を創出し、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを経済成長につなげていくことが不可欠です。
一方、わが国は、エネルギー資源に恵まれているとは言い難く、また地理的制約から外国との間でエネルギーの融通が困難であるなど、諸外国と比べて大きなハンディキャップを背負っています。そのため、「S+3E(エネルギーに必要な『安全』+『経済性』『安定供給』『環境』の頭文字をとったもの)」を高い次元で確保したエネルギー転換に最大限取り組むことが必要です。
野心的なゴールの実現には、国民を含め、官民の総力を挙げて、GXを進めていくことが求められています。
●カーボンニュートラルの広がり
出典:
経済産業省ホームページ「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2024.10時点)
わが国における最大の総合経済団体である経団連は、GXへの挑戦を通じて産業競争力を強化し、世界をリードする決意のもと、2022年5月、わが国のGXに向けたグランドデザインとなる「GX政策パッケージ」の策定を求める提言「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」を取りまとめました。2024年4月には「経団連カーボンニュートラル行動計画」を策定し、2050年カーボンニュートラルに向けた各業種別のビジョン(基本方針等)を明らかにするとともに、実現に必要な革新的な技術開発を複線的に進めることとしています。 また、2030年に向けては、利用可能な最善の技術(BAT:ベスト・アベイラブル・テクノロジー)の最大限導入による削減努力を着実に進め、さらなる技術開発・導入も図りながら、2035年度60%削減、2040年度73%削減の実現に寄与するとしています。
このほか経団連は、2020年6月に、企業・団体によるイノベーションへのチャレンジを後押ししていくイニシアティブ「チャレンジ・ゼロ」を立ち上げ、これを強力に推進することで、イノベーションの競い合い、ESG投資の呼び込み、企業間や産学官の連携を推進することとしています。
●国内事業活動からの排出削減の成果 2013~2020年度実績の推移
参加62業種中56業種のCO2排出量(電⼒配分後)の速報値の総計。CO2排出量の算出に⽤いる発熱量・炭素排出係数はそれぞれ調査時点で最新のものを使⽤。
海外への事業移管など、2013年度と2019年度・2020年度で集計範囲が異なる。
出典:
日本経済団体連合会「経団連カーボンニュートラル行動計画」(2021.11)
参考サイト
経団連カーボンニュートラル行動計画[日本経済団体連合会] チャレンジ・ゼロ[日本経済団体連合会]