企業と生活者懇談会
2005年10月11日 東京
出席企業:東京地下鉄
見学施設:建設部新宿工事事務所

「生活の基盤を支える企業を考える」

2005年10月11日、東京都新宿区にある東京地下鉄建設部新宿工事事務所で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。社会広聴会員19名が参加し、 「東京地下鉄13号線展示室」を見学し、13号線新宿三丁目駅(以下、13号線駅名はすべて仮称)の地下建設現場を約800メートルにわたって歩いた後、 質疑懇談を行いました。
東京地下鉄からは、新宿工事事務所の西村聡所長、船水武美総務課長、亀山勝技術課長、岡田龍二技術課長の4名と、広報課の今泉宗雅主任が出席しました。
東京地下鉄からの説明
■東京地下鉄の歩み■
 1927年(昭和2年)、東京の浅草-上野間に、日本初の地下鉄が誕生しました。この地下鉄の営業母体である東京地下鉄道と、東京高速鉄道が1941年(昭和16年)に合併し、帝都高速度交通営団として設立され、東京都およびその周辺における地下鉄ネットワークの整備拡充と運営に努めてきました。
 2004年(平成16年)4月には、政府と東京都が出資する東京地下鉄株式会社となり、完全民営化に向けての第一歩を踏み出しました。現在は、保有する8路線で1日569万人を運んでいます。
 新宿工事事務所は、地下鉄13号線の建設現場に隣接し、様々な模型やパネルを使って建設現場の解説をしている「東京地下鉄13号線展示室」も設置しています。

■地下鉄13号線■
 地下鉄13号線は、現在有楽町線として営業している和光市-池袋間を延伸する形で、池袋-渋谷間8.9kmに計画されている路線です。工事は2001年(平成13年)に着工され、2007年度の開業に向けて建設が進められています。
 開業時には、小竹向原駅で西武鉄道有楽町線・池袋線、和光市駅で東武鉄道東上線と相互直通運転を行う予定です。さらに、2012年を目途に、渋谷駅で東急東横線と相互直通運転を行う予定です。
 13号線の開通により、鉄道のネットワークの充実、埼玉県南西部と神奈川県横浜方面との直結、13号線と並行している鉄道路線や道路交通の混雑緩和などが期待されます。

■13号線の工事の特徴■
 地下鉄の工事方法には、大きく分けて「開削工法」と「シールド工法」があります。開削工法とは、主に駅の建設で用いられ、道路の上から地下に杭(くい)を壁状に打ち、上から土を掘り起こす方法です。シールド工法とは、開削工事で掘ったところを基地として、横向きに丸い筒状の機械(シールドマシーン)を使って土を掘り進め、コンクリートのブロックでトンネルの壁を造っていくものです。13号線の工事区間の中では、各駅間および雑司ケ谷駅、西早稲田駅で用いられています。
 新宿三丁目駅にはすでに、東京地下鉄丸ノ内線と都営新宿線が通っているため、13号線の工事にあたっては、地下の浅いところにある丸ノ内線と、深いところにある新宿線との間に駅を建設しなければなりません。また、都心部の地下には、ガス、電気、上下水道、電話回線などといった、人々の生活を支える様々な管が張り巡らされています。これらの管の位置がずれたり、切断したりすることがないよう、地下の配管の断面図などを確認しながら、管を上からつるしたり下から支えたりして、地下鉄の工事を進めています。
東京地下鉄への質問と回答
社会広聴会員:
地下鉄の車両はどうやって地下に運び込むのですか。
東京地下鉄:
東京地下鉄では、大きく分けて2つの方法で車両を運び込んでいます。ひとつは、地上にある車両基地や、当社の線路につながっている他の鉄道会社の線路を経由して地下に乗り入れる方法で、現在ではこの方法が主流になっています。
もうひとつは、台車と車体をトラックで陸送した後、地上からクレーンを使って地下に運び込み、中で車両を組み立てる方法で、他の路線とつながっていない路線では、この方法を用いています。
 
社会広聴会員:
なぜ株式会社になったのでしょうか。また、株式会社化でどういう効果があるのでしょうか。
東京地下鉄:
13号線の開通により、首都圏の地下鉄ネットワークがほぼ完成するため、当社は「鉄道を造って運営する」という役割をいったん終え、地下鉄ネットワークを生かして「お客さまの視点に立ったサービスを提供する」ことが、これまでにも増して求められます。そこで、事業を株式会社化し、13号線の運営が軌道に乗ると予想される5~6年後を目指して、株式上場の準備を進めています。
株式会社になったことで、単に鉄道を運営するだけでなく、社員一人ひとりがさらにお客さまを大切にするようになり、お客さまから評価される良質なサービスが提供できるようになります。
一方で、政府からの資金面での支援がなくなれば、一般の市場から資金調達をしなければなりません。そのためにも、お客さまからも市場からも高評価される鉄道会社を目指したいと考えています。
 
社会広聴会員:
地震が起こったときに地下にいると不安に感じます。震災対策にはどのように取り組んでいますか。
東京地下鉄:
東京地下鉄は創業以来、防災対策には特に力を注いできました。1995年の阪神・淡路大震災を受け、運輸省(現国土交通省)が鉄道事業者に求める耐震性の基準を見直しましたが、当社はそれを受けて、耐震補強などの対応がほぼ完了しています。また、自社で地震計を設置し、一定の大きさの地震を感知した場合には、全線を止めて係員がすべての施設を点検して初めて運転再開をするなど、安全に対して高い基準を設けています。
万が一、震災などで地下鉄がストップした場合には、指令所から乗務員に全体の情報を伝え、最も安全な避難方法を確認し、お客さまの避難誘導を行います。避難誘導の際には、基本的に列車を駅の間に止めずに、最寄りの駅で停車させるようにします。また、駅で震災に遭った場合に備え、非常用電源なども確保しています。
一般的には、地震の揺れの力が最も大きいのは、地上に接したところだとされています。従って、地下の構造物のほうが地上の構造物よりも比較的安全だといわれています。
 
社会広聴会員:
海外で公共施設を狙ったテロが発生しています。東京地下鉄のテロ対策について教えてください。
東京地下鉄:
テロはいつ、どういう形で発生するのか予測がつません。従って、普段からテロをいかに未然に防ぐかに力を入れる以外に対策はないと考えています。
1995年に「地下鉄サリン事件」が発生したのを受け、社内規程を整備したり、警察や消防を交え、同時多発テロへの対策を講じています。例えば、東京地下鉄の全168駅に約2400台の防犯カメラを設置し、係員が常時安全を確認したり、係員や警備員が構内を巡回しています。
こうした取り組みに加え、駅や車内での放送などを通じて、お客さまにもテロ対策へのご理解・ご協力をいただけるよう努めています。
 
社会広聴会員:
地面を掘って発生した土砂はどのように処分しているのですか。
東京地下鉄:
基本的には、発生した土砂はすべて有効活用しています。開削工法で発生した土は、埋め立てに用いています。また、「シールド工法」では泥水を循環させて掘り進めるのですが、この際に発生する泥水は、当社が持っている専用のプラントで加工した後、開削工法でトンネルを造った上から埋め戻すための材料などに、セメントや砂を混ぜて用いています。
 
参加者の感想から
●私が最も感嘆したのは、地下鉄工事における技術力の高さです。既設の丸ノ内線との交差部分を見学させていただきましたが、安全性を確保しつつ正確に掘削・建築を進めている様子には感心しきりでした。また、都営新宿線との交差部分は間隔がわずか1メートルと伺い、工事関係の皆さまのご苦労が伝わってきました。
 都市機能が集中している東京の地下には既設の埋設物も数多くありますが、その一つひとつを傷つけることなく保全しながら建設を進めている点も大変感心しました。

●民営化されて、経営努力されている様子が分かりました。私は消費生活相談員を務めていますが、地下鉄に対する苦情を受けた経験がありません。どうか今後も良い接客対応をしてほしいと思います。

●工事工法(開削工法とシールド工法)についての説明や、残土や余剰泥水の再利用など、お話一つひとつが生活者にも分かりやすく、とても興味深く感心させられました。
 東京地下鉄の方々の見学者への温かいお心遣いが随所に感じられ、ありがたく思いました。さすがプロの皆さんでした。

●地震があった場合でも、地下の揺れは地上ほどではなく、地下の方が安全度が高いということを初めて知りました。
 これまでの経済成長を支えてきた日本の技術力を今後も継承できるようにしていただければと思いました。13号線ができたときには、今回の体験を周りの人に自慢したいと思います。

●安全対策や危機管理体制の難しさを伺うことができ、とても有意義な一日を過ごすことができました。私たちの生活に密接な交通機関ですので、頂いた資料を見直し、大都市の交通網を安全に運営するのがいかに大変で大切なのかを再確認しようと思います。

●丁寧にご回答いただいたので、毎日通勤に利用している身として安心しました。
 日ごろ何げなく乗車している地下鉄もこうして建設されたかと思うと、地下の風景も違って見えるようになりました。開通後に乗車するのを楽しみにしております。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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