企業と生活者懇談会
2005年5月27日 新潟
出席企業:北越製紙
見学施設:新潟工場

「生活の基盤を支える企業を考える」

5月27日、新潟市にある北越製紙新潟工場で「企業と生活者懇談会」を実施し、社会広聴会員11名が参加しました。
当日は、無塩素漂白によるパルプを使って高級紙をつくる製造ラインを見学し、午後の懇談会では、紙のリサイクル、バイオマスエネルギーの利用、地域貢献活動などを中心に質疑懇談を行いました。
北越製紙からは、大野司常務取締役新潟工場長、矢澤秀男事務部長、小野田荘平工務部長、立石寛文環境管理室長、目黒敬人工務部部長、清水幸一工務部課長、金川貴宣総務担当課長が出席しました。
北越製紙からの説明
■北越製紙新潟工場の歩み■
 北越製紙は1907年(明治40年)に創立された、紙パルプ産業の中で3番目に歴史のある老舗企業です。新潟工場は1914年に設立され、その後、北越板紙、北越パルプを合併し業績を拡大させてきましたが、1964年(昭和39年)に新潟地震で製造第一部が壊滅し、抄紙機4台を廃止する被害を受けました。しかし、翌年には3号機を新設、1966年には生き残った2号抄紙機を移設し運転再開するなど復旧に努め、現在では7台の抄紙機により年間約100万トンの生産能力を持つ日本有数の製紙工場となっています。

■エネルギーを有効利用している製紙産業■
 新潟工場は、チップを煮てパルプを取り出しそれを紙に変える一貫工場ですが、そのメリットはエネルギーを有効に利用できることです。木材チップの半分は木材繊維で、紙の原料のパルプとなりますが、残り半分の樹脂などは液の中に溶け出します。その溶け出した液をグツグツと煮詰め、ボイラーで燃やし、エネルギーとして取り出し電気をつくります。さらに、残った熱は紙を乾燥させる工程で使うなど、非常に効率よく利用しています。
 実際、この工場で使う電力の90%以上は工場内でつくられています(自家発電)。その電気エネルギーのもとは木材に含まれる樹脂で、その木材は自然林ではなく植林木を積極的に使っています。自然の破壊どころか、むしろ植林をして林を増やす。その林から採れた木を使って工場を稼働させています。
 製紙産業は相当なエネルギーを使いますが、非常に環境にやさしいバイオマスエネルギーを導入しており、パルプ製造工程で使用する薬品も再利用しています。

※植林木
先進国では厳しい森林管理のもとで成長量に見合った適正な量を伐採している。北越製紙は、国際的第三者機関FSC(森林管理協議会)が管理認証したチップを使用し、特定ブランドにて紙を製造している。また、自社の社有林もFSCから森林認証を取得している。

※バイオマスエネルギー
木材、生ゴミなどの生物・植物有機体に由来するエネルギーで、再生可能エネルギーの一種。新潟工場では化石燃料に替え、パルプ製造の際に発生する樹液を燃料としている。


■日本初の無塩素漂白パルプ■
 パルプをつくる工程は、まず、細かく砕いた木材を煮て木材中の樹脂を溶かし出す「蒸解」、溶かし出した樹脂分と繊維を分離する「洗浄」、木の繊維を白くする「漂白」の段階があります。この取り出した繊維を白くするときに、従来は塩素を使っていました。塩素を使うと、化学反応によって有機塩素化合物が出てきます。ところが、二酸化塩素を使うと全く反応が違い、有機塩素化合物などが出ません。その結果、空気中に出てくるクロロホルム(有機塩素化合物)は 100分の1程度になり、水中の有機塩素化合物は10分の1以下になります。北越製紙は1998年に大規模プラントにおいて日本で初めて無塩素漂白(ECF)を確立させ、2000年にはすべてのパルプ工程で、この無塩素漂白を実施しています。
北越製紙への質問と回答
社会広聴会員:
紙の消費が増え続けると森林資源が足りなくなるのではないでしょうか。
北越製紙:
今、世界で1人当たりの紙の消費量はアメリカが1年間300㎏、日本が240㎏です。中国は30㎏ぐらいですが、今後中国など成長市場では2倍、3倍になっていくと予想されます。したがって、天然林だけを使うという前提ならば、森林資源が枯渇することになると思います。
ところが、紙の原料木材は植林木が中心の時代になってきています。北越製紙の輸入木材は、本年8月からすべて植林木になります。紙は文化のバロメーターだといわれていますが、将来にわたって植林を推進し、資源を確保することが今後の重要課題となります。
 
社会広聴会員:
紙は何回までリサイクルできますか。
北越製紙:
紙の再生はおよそ3~5回が限度です。繰り返し再生していると表面が髪の毛と同じようにつるつるになり、ひび割れができ強度的に使えなくなります。また、量的にも回収率が70%とすると、3回ぐらい使うとなくなる計算になります。
 
社会広聴会員:
製紙工場特有の悪臭や排水など、環境汚染問題を最近聞かなくなっています。そこに至った企業側の努力と経緯を教えてください。
北越製紙:
1971年に環境保全委員会をつくり、その後、地元の自治会と新潟市と当社の3者が一体となって、山木戸公害防止協議会を発足させ、臭気や排水などを地域の皆さんと一緒に改善し、より新しく優れた技術を導入してきました。また、 1993年の「環境憲章」は、労使共同宣言で森林保護育成、環境負荷の低減、活資源・省エネルギーの推進という3つの基本方針を挙げています。
この中で、私どもは「今ある技術を最大限使って、今、私たちができる最高の技術、最高の設備で、自然環境や生態系に与える負の影響を最小限にしていく」ミニマム・インパクト・ミルという考え方を採っています。ちなみに、排水はその昔、醤油(しょうゆ)色でした。私どもが無塩素漂白でパルプをつくる前はビールぐらいの色だと思います。今はほとんど無色で、ちょっと色のついた吟醸清酒といった感じです。
 
社会広聴会員:
地域社会とのコミュニケーションはどのように行っていますか。
北越製紙:
近隣の皆さんとは、春の桜まつりや工場の裏側にあるお地蔵さんのお祭りに、社員が積極的に参加し交流しています。また、工場近郊の7つの小学校の3年生と4年生に、夏休み前に紙を配り、自由課題の絵を描いていただき、絵画コンクールを実施しています。
また、地元の町内会に、お祭りのチラシ用の紙を無償提供しています。去年1年間では、合計38万1000枚お配りしました。
学校や団体の工場見学は随時受け入れており、社会科見学や環境学習、あるいは職業指導などにご利用いただいています。
 
社会広聴会員:
無塩素漂白でつくった紙は、グリーン購入ネットワークの取り組みに適合していますか。
北越製紙:
グリーン購入ネットワークの取り組みに適合する紙は、かつては古紙が入っていることが条件でした。しかし、最近ルールが変わり、古紙でつくるもの、植林木でつくるもの、無塩素漂白でつくるものが適合品となりました。
したがって、北越製紙でつくっている、古紙が入っていないフレッシュパルプ100%の製品も、無塩素漂白で処理が行われた紙(エコパルプ)としてグリーン購入ネットワークの商品リストに掲載させていただいています。
 
参加者の感想から
●パルプから紙ができる過程を順を追って紹介していただきよく分かりました。白い状態のパルプから、製品としての紙になるまで、10分程度だということに驚きました。また、漂白されたパルプにじかに触れることができたのは、貴重な体験でした。白くて、まるで濡らした綿の固まりのようでした。その漂白ですが、塩素を使わない方式で行っているということ。北越製紙は日本で初めて、全社的に塩素を使わない漂白方法を取り入れたということで、環境に配慮する積極的な姿勢を感じました。

●じっくりと見た「8号抄紙機」は素晴らしいマシンで、まるで大きなロボットが動いているかの様子に、子どものようにはしゃいでしまいました。大きな爪がトイレットペーパーのお化けのようなロールを持ちあげて運んだり、次から次へと整然と正しく並んで運ばれていく製品たち……。一体パルプから出荷される状態になるまで、このマシンの中でどのくらいの距離を旅しているのだろう……などと思うと、何時間でも見ていたいと思いました。

●工場内は清潔で、ゴミひとつ落ちていなかったこと。先月完成したばかりの設備(回収ボイラー)の屋上に登らせていただいたこと。また、会社としては、製品をつくる設備にはお金をかけ品質向上や生産性向上を図る一方、会議室は元ボーリング場で、古い建物を有効活用していること。町内会やボランティア団体などの要請があれば紙を譲っているといったこと。このようなお話を通して、北越製紙の姿勢に触れることができ、好感を持ちました。
 また、常々気になっていた「古紙回収」について、分別の仕方などを丁寧に教えていただき、疑問が解けました。

●大野工場長が「環境問題への取り組みは、優等生だ」と思っていると自負していらしたのが印象的でした。労使で環境保全に取り組んでおられ、共同宣言をモットーに努力されており、素晴らしいことと思いました。原料となる森林施業も確実に進められ、国内の植林面積は業界トップとのこと。見えないところで努力されているのだと敬服いたしました。

●普段、顔を合わせる機会がない地域の方々とお話しできたのも貴重なことでした。
 エネルギーも自分のところでつくっているのですね。そして場内の清潔さ。また、何よりも仕事に対する皆さんの熱意に打たれました。
 地道に対話をすることによって、地域の理解も深まっていくのでしょうね。その一端を垣間見た思いでした。

●企業リーダーがより新しいものに乗り換えて歴史をつくってきたこと、それにエネルギーを自前で供給し、操業している環境にやさしい工場であることを実感できました。紙をつくるのに(1)持続可能な植林で(2)無塩素漂白で(3)古紙を守り、「きれいな紙はきれいな水で」をモットーにして生産している様子がよく分かり、消費者として応援していきたい。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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