企業と生活者懇談会
2005年4月13日 埼玉
出席企業:太平洋セメント
見学施設:埼玉工場

「生活の基盤を支える企業を考える」

4月13日、埼玉県日高市にある太平洋セメント埼玉工場で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。社会広聴会員16名が参加し、家庭ごみ再利用施設 「AKシステム」を見学した後、質疑懇談を行いました。太平洋セメント本社からは、IR広報部の喜多康部長、曽我鉄山様、埼玉工場からは倉田哲工場長、日下康生業務部長、金子比右馬製造部長、神長俊樹設備部長が出席しました。
太平洋セメントからの説明
■太平洋セメントの歩み■
 1881年(明治14年)に設立された「セメント製造会社」(後の「小野田セメント」)と、1923年(大正12年)に設立された「秩父セメント」は、 1994年(平成6年)に合併して「秩父小野田」となりました。これと、1883年(明治16年)に創業した官営セメント工場を母体とする「日本セメント」が1998年(平成10年)に合併し、発足したのが現在の太平洋セメントです。
 従来のセメント事業に加え、持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざし、循環型社会の構築に向けて「都市ごみ資源化事業」をはじめとする環境事業にも積極的に取り組んでいます。

■埼玉工場■
 埼玉工場は、1955年(昭和30年)に操業を開始しました。現在は、28万平方メートルの敷地内に、従業員90名(4月現在)が働いています。
 秩父市郊外の武甲山で石灰石を採掘し、約23kmのベルトコンベア(Yルート)で工場に直接運んでいます。良質なセメントの安定供給に努めるとともに、「AKシステム」による「都市ごみ資源化事業」に取り組んでいます。

■AKシステム■
 埼玉工場のある埼玉県日高市では、家庭ごみの焼却場が老朽化してきました。一方で埼玉工場では、セメント需要が減少してきたことで、2本のキルンのうち1本を休止していました。この休止したキルンを、日高市のごみ処理に活用できないかと考え、1996年(平成8年)に日高市と太平洋セメントで「都市ごみ研究会」を発足させるとともに、太平洋セメントで技術開発を進めていました。そして1年半の実証実験の後、2002年(平成14年)11月に、遊休キルンを転用した資源化キルンで処理された家庭ごみ=「資源化物」をセメントの原料として活用する「AK(=Applied Kiln)システム」を稼働させました。これにより、日高市は焼却場を廃止し、1日約60トンの都市ごみをAKシステムで処理し、セメント資源化しています。
 ごみをセメントの原料にするということは、決してセメント原料に不純物を混ぜているわけではありません。実はごみを処理した「資源化物」は、セメントの主要な化学成分を多く含んでいるため、セメント原料として有効に活用できるのです。
 AKシステムには4つの特長があります。1つ目は、ごみ収集車で回収された都市ごみが直接工場に持ち込まれてそのまま処理されるため、焼却場が不要となります。また、高温で焼成するため、可燃物やプラスチックといった分別も必要ありません。
 2つ目は、ごみの中の有機物が、資源化キルン内で発酵して完全に分解されるため、生成される「資源化物」を無害・無臭な形で処理することができます。また、発酵の際に発生するガスは、セメント焼成キルンの焼成用空気として活用しています。
 3つ目は、「資源化物」を常に1450度の高温で焼成し、急冷させるため、300~500度で生成するとされているダイオキシン類の発生が抑えられます。
 4つ目は、「資源化物」のうち燃える部分はセメント焼成の燃料として活用され、その灰はセメント原料として活用されるため、二次廃棄物が発生せず、最終処分場も必要としません。

※キルン
セメントの製造工程の一工程で、粉砕された石灰石などの原料を焼成する。
太平洋セメントへの質問と回答
社会広聴会員:
解体した建造物から発生する、廃コンクリートのリサイクルの取り組みについて教えてください。
太平洋セメント:
2000年(平成12年)に国土交通省がまとめたデータによると、年間で3500万トンの廃コンクリートが出ていて、そのうち実に96%が、主に道路の路盤材としてリサイクルされています。しかしこれからは、建造物の老朽化に伴い、廃コンクリートの量が増加する一方で、公共工事が減少すると見込まれるため、路盤材としてリサイクルされる量も減るものと見込まれます。そこで太平洋セメントでは廃コンクリートの新たな活用法を検討してきました。
そのうちのひとつが、廃コンクリートから新たに良質な骨材を製造する「TRASS(太平洋セメントグループ再生骨材製造システム)」というシステムです。現在ではコストの面から、商業ベースにはなっていません。この3月には、高品質再生骨材のJIS規格が制定されたので、今後は再生骨材の需要が増え、コストが下がるものと期待されます。

※JIS規格(日本工業規格)
工業品の形状、品質、性能、生産方法、試験方法などに関する統一規格。
 
社会広聴会員:
鉱山を採掘する一方で、鉱山の環境保全のために何か取り組んでいますか。
太平洋セメント:
例えば武甲山では、生息する希少植物の保護活動を行っています。武甲山には育成技術の確立されていない絶滅危惧植物があり、これらの増殖技術の研究にも取り組んでいます。この結果、2003年(平成15年)には、ミヤマスカシユリやムラサキといった希少植物の苗を培養して武甲山に植え戻しました。
武甲山だけでなく、鉱山の開発・操業にあたっては、このように環境や生態系の保護にも努めています。また、採掘が終わった後には、岩盤の崩落を防いだ後に緑化を進めています。
 
社会広聴会員:
AKシステムの導入にあたり、太平洋セメントと日高市で、それぞれいくらぐらい投資したのでしょうか。
太平洋セメント:
初期投資額は17億円で、すべて太平洋セメントが負担しています。もっとも、太平洋セメントとしては、大規模な設備を新造するのではなく、遊休のキルンを転用したので、投資としては比較的少額となっています。
また、ごみ処理費用として、1トンあたり3万9000円を日高市から受け取っています。
 
社会広聴会員:
AKシステムを全国に展開できないのでしょうか。
太平洋セメント:
AKシステムには、その都市のごみを処理できる容量を持つ設備と、「資源化物」を再利用できるセメント製造設備が条件です。また、自治体の事情や政策にも左右されますが、AKシステムに興味を持たれている自治体が毎年見学に来られ、私どももこのシステムの展開には関心を持っています。
太平洋セメントでは、AKシステムのほかにも「都市ごみ資源化事業」に取り組んでいます。例えば、熊谷工場では、埼玉県や熊谷市などと協力し、都市ごみの焼却灰を独自の技術でセメントの原料として活用する「灰水洗システム」を2001年(平成13年)から稼働させています。また、都市ごみの焼却灰などを主原料とした新しいセメント「エコセメント」の製造技術を1995年(平成7年)に確立し、2001年(平成13年)にエコセメント専用工場を千葉県市原市に新設しました。2006年には多摩地区でのエコセメント専用工場が稼働を予定しており、こういった都市ごみ資源化への取り組みを、各地域に適切な方法で導入しています。
 
参加者の感想から
●セメント事業に対する今までのイメージは、石灰石の掘り出し、生コン施設、生コン車、コンクリートなどくらいしかありませんでした。しかし今回の「企業と生活者懇談会」では、地球温暖化防止やリサイクル活動など地球環境保全活動の積極的な推進、さらにはダクタル(無機系複合材料技術)に代表される新素材の開発やセラミックス分野への業態拡大など、私ども生活者にも直結した将来への期待に、胸膨らませる展開に出会えました。

●余剰となった設備で生ごみを資源化するというのは、大変立派な着想だと思います。ただ、これを拡大していくのはなかなか難しいようですね。国が助成金を出すなり地方自治体が費用を出すなりして企業が取り組みやすい工夫をする必要があると思います。

●セメント産業の概況にはじまり、埼玉工場の現状まで詳しい説明をいただきよく分かりました。立派な環境報告書も、最初はなかなか理解しにくかったのですが、見学、説明の後では親しみをもって読むことができました。やはり、見学や懇談の効果があると思います。
 今回は仕事にも関係ある会社の懇談会なので、休暇をとって参加しました。他の会員の皆さんもぜひ、「休暇をとってでも参加する価値あり!」と思っていただきたいです。

●セメント業界の生き残り戦略として、またCSRの観点からも、太平洋セメントの都市ごみ資源化システムは、ビジネスモデルとして、また企業価値を上げるものとして大きく注目すべきことであると改めて実感しました。これからの循環型社会の企業のあり方のひとつとして大いに広報していくことが大切だと思いました。

●産業・家庭廃棄物・副産物などがセメント1トンあたり400kg以上活用されているとは驚きでした。セメント業界が環境問題に消極的だと思っていたのは大間違いで、このような努力を賞賛します。

●AKシステムは、自然との共生には理想的なものと思います。日高市のみならず各地にある各種の企業でも応用できる部分があると思われます。世界的に見ても類をみないビジネスモデルです。

●セメントを作り出すのに多くのエネルギーを要するため、しっかり省エネ対策をとっているのも大企業ならではと感心しました。日高市の近くに住む私にとって、埼玉工場は身近な所ですが、そういった情報は近隣の一般市民には入ってきません。もっと広報にも力を入れればと思います。

●AKシステムによりごみが新しい資源へと生まれ変わる様子は圧巻でした。スタッフの方々の懇切な説明によって理解を深めることができ、有意義な一日でした。
 AKシステムが全国の市町村で利用活用されていないという日本の実情は淋しいですね。日高市から全国へ展開されるように!将来、中国やインドのような人口の多い国々へ装置輸出できれば、世界の注目を浴びることに違いないでしょう。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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