企業と生活者懇談会
2003年8月8日 東京
出席企業:キヤノン
見学施設:キヤノンギャラリー

「企業と環境問題を考える」


キヤノンからの説明
■会社概要■
 1933年に東京麻布の六本木に「精機光学研究所」として設立されたのが、当社の歴史の始まりです。その後、1937年に会社設立し、1969年に「キヤノン株式会社」に社名変更をして、今年で創立66周年を迎えます。
 当社の社名である「キヤノン」は、もともと「観音」様に由来にしています。1934年に国産初の35ミリカメラを試作したのですが、このカメラの名前が「KWANON(カンノン)」でした。なぜ観音かというと、当時このカメラを設計した技術者が、仏教に非常に詳しい観音様の信者だったそうです。そこで、観音菩薩をモチーフにした印をカメラの試作機に刻んだのです。その後、観音カメラでは世界的に通用しないということで、発音が比較的似ている英語の「規範、基準」といった意味を持つ「CANON(キヤノン)」と名前を付けることになりました。
 キヤノンの主要製品として、皆さんはまずカメラを思い起こされると思います。これ以外にも多くの製品を取り揃えており、レンズ、ビデオカメラ、双眼鏡、プリンター、スキャナー、ファクシミリと、個人向けの製品があります。またオフィス用の複写機や液晶プロジェクター、産業用として半導体製造装置や液晶を作るための露光装置なども製造しています。この他にも医療機器として、眼底撮影用のカメラやX線関係の製品なども製造しています。
 このように幅広い製品を取り扱っており、キヤノンの歴史は多角化の歴史ともいえます。1934年の国産初の35ミリカメラの試作
に始まり、1964年には世界初のテンキー式電卓を発売。1970年には、ゼロックスの特許網をかいくぐって、国産で初めて製造にこ
ぎつけた国産初の普通紙複写機NP-1100を発売しています。カメラに始まり、計算機、複写機、プリンター、ファクシミリと次々に新しい商品を出しています。
 キヤノンの歴史はグローバル化の歴史でもあります。1955年にニューヨーク支店の開設を皮切りにグローバル展開を進め、現在キヤノングループ会社は全世界に255社を数えます。販売関係で142社、生産関係で55社、開発関係で14社、その他44社と日、米、欧、アジア、オセアニアにくまなくグループ会社があります。

■キヤノンの企業理念■
 当社の特長の一つに、研究開発が旺盛なことがあります。研究開発費に対して多額の金額をかけており、昨年度の実績で2374億円を研究開発に向けています。連結売上に対する研究開発費の比率については、現在8%程度ですが10%以上確保することを目標としています。このように多額な研究開発費を投じた成果として、特許の登録件数が非常に高くなっています。例えばアメリカにおける特許の登録件数では、過去10年以上、5位以下に落ちたことがありません。昨年度もIBMに続き、第2位の特許登録件数を誇っています。日本企業の中ではもちろんベスト1です。このようにキヤノンは多額の研究開発費を投じて特許を取り、それにより事業を守るという形をとっています。
 これらの企業活動を支えるキヤノンの企業理念、それは「共生」です。当社の考える「共生」とは、「世界の繁栄と人類の幸福のために貢献する」ことです。そのために、「事業の成長と発展を果たすこと」を目的としています。地域における共生、環境面では次の世代の方たちとの共生、こういったこと全てを考えながら企業活動を行っています 。

■環境への取り組み■
 地球環境との共生という観点から、環境問題はキヤノンにとって非常に重要な課題です。利潤追求や製品を通じて社会に利便性を提供するということと、環境問題というのは、相反するものではないかと世の中では言われています。しかし、当社は限りある資源を有効に使い、高い付加価値、高いサービスを皆様に提供する努力を絶えず続けています。
 当社は「中期環境目標」を設定しています。これは、3年から5年先のキヤノンがどうあるべきかということを具体的な数字で提示をしているもので、例えば製品であれば、キヤノンの製品は3年後はこうでなければいけないといったことを示しているものです。この目標に対して、各事業本部、各生産会社、販売会社が努力をする形をとっています。この目標の進捗を管理するために、業績を評価する連結業績システムを採用しています。これは各事業本部が、半年間の成果を売り上げ額など経営指標を用いて業績を評価していくものです。その業績評価の一つの指標として、環境に関する項目も入れています。半年ごとに、各事業部と関係会社の業績を、環境という側面からもチェックをしているのです。経営データをはじめとするいろいろなデータと横並びで評価されて、順位が社内的に発表されます。やはり下位にランクさせられていると、そこの責任者は気持ちがいいものではありません。トップを目指そうということになります。そういった競争原理を社内的に取り入れて、中期環境目標の達成に向けて努力をしています。
 今年の6月に2010年ビジョンとして、ファクター2という総合指標を設定しました。商品のライフサイクル全体でCOが排出されます。2010年の売上高をこのライフサイクルCO2で割った数値を、2000年の2倍以上にしようというものです。例えば、2000年と 2010年の売り上げが同じであった場合には、キヤノンが地球全体にかけている製品を含めたライフサイクルでのCO2の負荷を半分に減らそうということです。つまり、資源を半分にする、エネルギーも半分にする。要は半分のもので同じだけの価値、つまり売り上げを確保しようということで、現実的に可能であると考えています。当社の製品をお客様が使用する段階で、CO2の排出量を従来のものと比較して4分の1から5分の1にする技術はできています。こういったことを上手に組み合わせれば、現在のキヤノンの製品がかけている環境負荷を、2010年までに半分にすることができると考えています。非常に高い目標ですが、キヤノングループ全体で成し遂げたいと思っています 。
キヤノンへの質問と回答
社会広聴会員:
充電できるコピー機があったら良いと思います。企業などで電気代が安い夜間に充電しておいて、日中使う時にコンセントを抜いておけば、節電にも繋がります。私はファミリーコピアを自宅に持っていたのですが、夏だとコピーとクーラーを同時に使うとブレーカーが落ちてしまうこともありました。特に自宅用には、コピー枚数が多くなければ充電式で対応できるようになれば、使い勝手がとても良いと思います。
キヤノン:
電源も非常に大きな問題です。複写機で使っている電子写真という方式は、トナーを溶かして紙に定着をさせるために、200度近くまで温度を上げなければいけません。それも瞬間的に200度近くに上げなければならないために、かなりの電気を使用します。ご提案のように電池を使うとすると、かなりの電気を使うために、どうしても頻繁に取り替える必要が出てきてしまいます。それは結果として、環境的にもあまり芳しくありません。一方で、燃料電池など新しい技術がどんどん出てきているので、こういった新技術は積極的に採用していきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
リストラが叫ばれる中、終身雇用を堅持しているキヤノンさんは非常に稀有な存在ではないかと思います。これについての基本的な考え方を教えてください。
キヤノン:
一つの製品が市場に出て定着するまでに、非常に長い時間がかかります。研究開発から始まって、製造現場の人が慣れるまで実に多くの時間がかかるのです。当社は社員に対して安定した仕事の環境を与えることは、結果として会社にとって活力になり、高い結果を生み出すことになると考え、終身雇用を採用しています。ただし、終身雇用だけではなく、同時に実力主義も採用しています。単なる終身雇用だと会社の中の気が緩んで、何もしなくても会社が守ってくれるという、ぬるま湯的な感覚が芽生えてしまいます。キヤノンは創業当時から実力主義をとっていて、26歳で昇格試験があり、それに合格すると給与が上がるというシステムになっています。大学卒で40歳ぐらいでも資格を取っている人とそうでない人は、2倍くらいの給与差がついてしまいます。終身雇用を標榜しながらも、こういう形で社内を実力主義で刺激し、会社を運営しています。
 
社会広聴会員:
デジタルカメラが普及して、今までのようにカメラ屋さんに持って行ってプリントをしなくても、自宅のプリンターに繋げば簡単に綺麗にできるようになりました。今後こういったデジタル化は、我々の生活の中でどのように進んでいくのでしょうか。
キヤノン:
間違いなくデジタル化は進行していくと思います。皆さんが普段使われている電子メールなど、時間や空間というものをあまり意識しないで情報をやりとりできるのは、デジタル化の大きなメリットだと思います。例えば、イギリスで撮った写真をすぐに日本やアメリカへ送るといった楽しみ方ができるのは、やはりデジタルならではの特徴です。
今は文章や写真など、動画でないものがデジタルでのやりとりの中心ですが、これからのブロートバンド時代では取り扱うことのできる情報量がどんどん増えて、動画も送れるようになってきます。キヤノンも動画をスムーズに送ることのできる入出力の機器の開発をしています。
CDプレイヤーではなく、アナログレコードが好きだという方もいらっしゃるように、フィルム式のカメラが好きだという方もいらっしゃると思います。そういったお客様も当社としては大切にしていきます。デジタルに切り替わったからといって、アナログのカメラの製造を止めるということはしません 。
 
社会広聴会員:
主婦感覚のリサイクルと企業さんのリサイクルは、考え方が違うのだと感じました。これはキヤノンさんだけでなく、家電全般について言えることです。私たちの主婦感覚では、古い製品でも修理して、できるだけ長く使いたいと考えます。  しかし、故障した場合には、出張の修理費などを考えると、新しい製品を買った方がどちらかというと得になってしまいます。けれども、地球環境を考えるにあたっては、修理をして長持ちをさせたほうが一番良いのではないかと、私は思います 。
キヤノン:
ご指摘はごもっともだと思います。当社も製品のロングライフ化が一番だと考えています。製品のロングライフということで言えば、機能がどんどん上がっていく中で、ハードは変わらず、中身だけがどんどんバージョンアップされていくという形が、一番望ましいところです。当社としても最終的にはそういった製品を作りたいのですが、まだその段階にはありません。現状ではどうしてもハード自体を交換しないと、機能が上がりません。
故障という問題に関しては、過剰品質といわれるほどの品質を目指していますが、どうしても壊れるケースがあります。そのあたりが上手く片付けられなくて、苦労しているのは事実です。最終的に資源を本当に大切にしていこうという時代がくれば、ハードの物を次々と買っていただくのではなく、機能であるサービスを買い増していただくような時代が来ると思います。そういった時が来た場合でも、当社が皆様のお役に立てるように頑張っていきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
昨年、プリンターを購入しました。これを梱包する箱の中に、包装材料とマニュアルが2冊入っていました。プリンター自体を梱包するだけなら、箱はそれほど大きくなくて済むのですが、包装とマニュアルを含めると非常に大きく、ゴミにもなってしまいます。
キヤノン:
梱包材料がお客様の所でゴミになってしまうので、できるだけリサイクルしやすい材料を使おうと、取り組みを進めています。古紙を固めたようなパルプモールドという物で梱包しているものは、資源として出していただければよいと思います。しかし、パルプモールドというのは欠点があります。衝撃に弱いのです。その点でいうと、発砲スチロールにかなう緩衝材はないのです。発砲スチロールであれば、ある一定の高さから物を落としても十分耐えられるのですが、パルプモールドだと梱包を大きくしないと、十分な緩衝力は得られません。万が一お客様が購入してお持ち帰りになる途中で落とされて、壊れてしまったとお申し出があったら我々は対応せざるを得ません。そういうことを考えれば、お客様の手元にしっかりと届くまでは、やはりきちっとした梱包でやらざるを得ないのです。リサイクルに配慮した材料で梱包して、梱包材に紙であるとか、プラスチックだとか素材を知らせるマークを全部に付けています。それに従って、お客様のほうで分別をしていただければ、資源に回るという形で運用させてもらっています。
 
出席者の感想から
●意見の交換で、環境、特にリサイクルに関する意見が多かったと思う。これから一消費者として、どのような姿勢で製品を購入し、消費するか考えていこうと思った。

●私たち消費者は、商品の軽量化、機能、価格など目先のことにとらわれがちだが、タバコの箱大のカメラ一つとってみても、その裏に込められた企業理念の重さが随所にいかされていることを知った貴重な一日でした。

●環境配慮にはお金がかかるということ、そのお金は企業だけでなく、消費者も応分に負担するべきであるということを、皆さんあまり考えていらっしゃらないのかなと思ってしまいました。モノをつくる企業に環境配慮もすべてお任せというのは、ちょっと違うのではないかと懇談の話を聞きながら考えてしまいました。

●21世紀の製造業のあるべき姿として、単に製品を販売し利益を出せば良いという安易な考えではなく、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の実施が大切なことを思っていましたので、キヤノンでは正にそれを実践されており、感心しました。

●意見の交換で、環境、特にリサイクルに関する意見が多かったと思う。これから一消費者として、どのような姿勢で製品を購入し、消費するか考えていこうと思った。

●私たち消費者は、商品の軽量化、機能、価格など目先のことにとらわれがちだが、タバコの箱大のカメラ一つとってみても、その裏に込められた企業理念の重さが随所にいかされていることを知った貴重な一日でした。

●環境配慮にはお金がかかるということ、そのお金は企業だけでなく、消費者も応分に負担するべきであるということを、皆さんあまり考えていらっしゃらないのかなと思ってしまいました。モノをつくる企業に環境配慮もすべてお任せというのは、ちょっと違うのではないかと懇談の話を聞きながら考えてしまいました。

●21世紀の製造業のあるべき姿として、単に製品を販売し利益を出せば良いという安易な考えではなく、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の実施が大切なことを思っていましたので、キヤノンでは正にそれを実践されており、感心しました。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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