企業と生活者懇談会
2012年6月14日 埼玉
出席企業:安川電機
見学施設:関東ロボットセンタ

「来て・見て・触って ロボット体験-産業と暮らしを支えるメカトロニクスを学ぶ」


6月14日、安川電機の関東ロボットセンタで、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員21名が参加しました。同社および関東ロボットセンタの概要について説明を受けた後、関東ロボットセンタを見学。その後、最新のロボット技術やその将来性、同社の経営方針について説明を受け、続いて質疑懇談を行いました。
安川電機のロボット事業部東部営業部から、尾崎博販売業務課長兼関東ロボットセンタ副センタ長、永井俊明営業技術課長、販売業務課業務担当渕本由紀氏、東京管理部から林田歩広報・IRグループ長、翠川宣之総務グループ長、総務グループ総務担当加藤大喜氏が出席しました。
安川電機からの説明
■安川電機の概要■
 安川電機は、1915年(大正4年)の創立で、2015年に創立100周年を迎える長い歴史を持つ企業です。創業当初は炭鉱用電動機(モータ)を製造していました。その後オートメーション、さらにメカトロニクスへと新しい技術分野を開拓しながら、日本の主力産業・先端産業を支え続けてきました。本社は北九州市八幡西区です。従業員数は臨時社員も含めて1万4305人、連結売上高は3071億円(2011年度)です。

■4つの事業■
 現在、大きく分けて4つの事業を展開しています。1つがサーボモータとインバータを製造・販売するモーションコントロール事業です。サーボモータは、当社の製品であるロボットの中だけでなく、半導体・液晶製造装置、工作機械など様々な製造装置の中で使われています。インバータとは、モータの回転数を自由に制御する装置で、産業機械の省エネ・小型化を実現します。各種産業機械や業務用のエアコン、エレベータなどに用いられています。
 2つ目がロボット事業です。ロボットは元来、油圧や空圧で動くものでした。安川電機はモーションコントロールで培った自社技術を生かした全電動式のロボットの開発を目指し、1977年(昭和52年)に日本初の全電気式産業用ロボットの第一号機「MOTOMAN(モートマン)」を製造しました。以来、生産現場の様々な作業を自動化するロボットの開発を続け、国内外の産業用ロボット市場をリードし、厳しい作業環境や単調な作業から人間を解放することに貢献してきました。
 メカトロニクスという言葉は安川電機が1960年代に考案しました。メカニズム(機械工学)とエレクトロニクス(電子工学)の融合技術分野を意味します。ロボット事業への進出は、メカトロニクスを象徴する取り組みでもありました。 
 3つ目は、システムエンジニアリング事業です。上下水道の水処理プラント、製鉄所のプラントなどで用いられる制御装置を開発・提供します。現在国内で稼働中のすべての高炉で当社の制御技術が採用されています。4つ目は情報部門で、当社のグループ会社で進めています。 
 産業用ロボット、ACサーボ※1およびインバータの3つの製品分野で、当社は世界シェアナンバーワンの地位を築いています。売上高を製品別に見ると、モーションコントロール事業が53%と約半分を占めます。また地域別では、売り上げの約半分は海外で、アジアとりわけ中国向けが拡大しています。

※1 交流電流(AC)で回転するサーボモータ。サーボとは追従機能のこと。サーボモータは、始動、停止、逆回転など、コントローラの指令どおりに動くモータである。

■ロボット事業■
 ロボット事業の主要顧客は自動車メーカーです。溶接ロボットや、塗装ロボットなどを納めています。 
 最近は、物流におけるハンドリング、パッキングといった作業を自動化するロボットや、液晶ガラス・パネルを搬送するロボットを開発・販売することにより、機械、電機、物流、食品など様々な産業に顧客を広げています。 
 これからは人間のように、組み立てなどの複数かつ複雑な作業をするロボットの需要が増えてくると考えています。こうした需要に応えるのが、新世代双腕ロボットです。片腕に7つの軸、すなわちモータが内蔵されています。この「7」とは人間の腕の関節の可動域の数と同じで、人間に近いスムーズで細かい動きができるのが特長です。 
 2011年度(平成23年度)までの累計出荷台数は約25万台と世界一です。また出荷の80%は海外向けです。世界の舞台で当社のロボットは活躍しています。

■関東ロボットセンタ■
 関東ロボットセンタは「来て・見て・触ってロボット体験」をコンセプトに、昨年(2011年)11月にオープンしました。産業用ロボットの導入を検討しているお客さまに、実機によるデモやテストを通じて仕様や動作への理解を深めていただいたり、ロボットの新しい活用方法を共に検討しご提案するための施設です。 
 ロボットを導入したお客さまの教育施設も備えています。ロボットのティーチング作業(ロボットにプログラミングなどを通じて作業を教え込むこと)をするには、労働安全規則に定められた教育を受ける必要があり、ここでその教育を行い修了証を発行しています。
見学の様子
 1階受付の近くは主要製品のショールームです。最も人目を引くのは、スカーフを巻いた新世代双腕ロボット。これは見学者がバラバラにしたルービックキューブの面合わせを行うようにプログラムされています。両腕を上手に動かして、45秒ほどで完成させてしまいました。キューブの色は、可愛らしい“目”ではなく、台の下にあるセンサーで把握しているそうです。 
 次に、メーン施設であるCSプラザに移動し、様々な産業用ロボット製品が動く様子を目の当たりにしました。どれも個性的で、ロボットの仕事の広がりに驚かされます。例えば、段ボール箱を組み立てて最後にガムテープでふたをする双腕ロボット。閉梱という作業は単腕ロボットでは難しいそうです。 
 ロボットというと硬いものしか扱えないイメージがありますが、特殊な紙でできたハンドで泡状のムースを上手にすくい、別の場所に移すロボットもありました。お菓子や食品の生産現場で使われているそうです。 
 レーザーを使った3Dビジョンセンサーによって、山積みの部品一つひとつの高さや傾きを把握して、取りやすさを判断して順番に1つの場所に集めていくロボットも印象的です。センサーを搭載すると、決められた部品が決められた場所になくとも作業を進めることができるそうです。センサー技術がロボットの可能性を広げることを学びました。 
 屋上では、太陽光発電装置用のパワーコンディショナ、駐車場ではEV用急速充電器と、今後安川電機が注力していく環境・エネルギー関連の製品を見ることもできました。
安川電機への質問と回答
社会広聴会員:
今後の戦略を教えてください。
安川電機:
創立100周年に向けた2015年ビジョンとして、2つの事業領域の開拓を進めます。 
1つは環境エネルギー事業領域。当社はモータを高効率・高精度で回すことを100年近く続けてきました。モータやインバータで磨いてきた技術を、自然エネルギーから効率良く電気をつくり活用する装置に応用します。先ほど屋上でご覧いただいた世界最高レベルの変換効率を実現する太陽光発電用途向けのパワーコンディショナや大型風力発電用発電機の開発・販売などを通じて、グリーンエネルギーの効率活用に貢献していきます。 
もう1つはロボティクスヒューマンアシスト事業領域です。これまで工場の中で働くロボットをつくってきましたが、将来的にはより人に近い分野で人と共存するロボットの実現を目指します。開発目標は3つ。まず人と共存すること。人と同じ環境で複雑な作業を行えるものをつくります。2つ目は人とのコミュニケーション。例えば人を案内できるロボットです。3つ目は人をアシストすること。搬送や移動の支援、パワーアシストを目指します。
 
社会広聴会員:
ヒューマンアシスト・ロボットの可能性について教えてください。
安川電機:
すでに実現している製品として、「TEM LX2」があります。これはリハビリを支援するロボットで、大学病院で活躍中です。ただしリハビリ支援や医療関連のロボットは審査も厳しく開発コストも掛かるため、拡販には至っていません。「RoboPorter(ロボポータ)」という荷物搬送支援ロボットも開発・販売しています。北九州空港での実証実験後に製品化し、実際にある会社で活用されています。
 
社会広聴会員:
二足歩行ロボットは開発していないのですか。
安川電機:
安川電機はロボットのアーム(腕)に関連する技術に強みがあります。当社のコア技術であるモータによってアームを駆使して仕事をするロボットの開発に注力しています。当社が開発した人の案内を行うロボット「SmartGuide(スマートガイド)」は自走しますが、車輪を採用しています。フラットなバリアフリー化された場所で働くことを前提としています。
 
社会広聴会員:
産業の空洞化や技術の国外流出が問題となっていますが、対策を教えてください。
安川電機:
現在ロボットは、日本で開発・製造し、海外では納入先の工場でのセットアップ、カスタマイズなどを行っています。 
当社は海外で必要な物は海外でつくるという基本方針です。将来、ロボットについては、設計や制御技術の開発は国内でのみ行う考えです。技術の根幹部分はしっかりと守ります。
 
社会広聴会員:
日本の自動車メーカーが海外工場をつくる場合、日本メーカーのロボットを採用するのですか。
安川電機:
そうとは限りません。競争の末に決まります。なお、メーカー各社それぞれが得意とする地域があります。安川電機は日本・アジアが比較的強いです。
 
社会広聴会員:
人件費が比較的安いといわれる中国でも、自動車メーカーではロボットを用いているのですか。
安川電機:
溶接など人手による作業では品質の確保が難しい工程では、ロボットが積極的に導入されています。しかし全体的に見て自動化の比率は低いです。今後ロボット化が進展する可能性は高いと見ています。
 
社会広聴会員:
日本のロボットメーカーの優れた点と劣っている点を教えてください。
安川電機:
日本のメーカーは、ロボットを制御する技術、主要部品であるモータの技術に優れます。他方、海外メーカーは、ロボットの新しい用途の提案や市場の開拓が上手であり、この部分の強化が日本のメーカーにとっての課題ではないかと考えています。
 
社会広聴会員:
技術的に得意とするところを教えてください。
安川電機:
液晶パネル・ガラス搬送用ロボットは、畳6畳、厚さ0.2ミリメートルという非常に大きくかつ薄いガラス板を運びますが、搬送の際にガラスが大きく揺れます。その揺れを止める制振制御技術がこのロボットの肝になりますが、安川電機はその技術を得意とします。また、複数のモータを同期を取ってコントロールするためのソフトウェア技術、制御技術の開発も得意です。
自動車の溶接を行うアーク溶接※2ロボットも世界的に高い評価を得ています。

※2 電気の放電現象(アーク放電)を利用した溶接法。
 
社会広聴会員:
販売や購入後のサポートについて教えてください。
安川電機:
営業・販売に改善の余地があると考えています。 
関東ロボットセンタをつくったのも、その強化のためです。このセンタを通じた産業用ロボットのマーケティング活動、新用途のご提案によって、付加価値の高い製品を提供し、収益率を上げていければと考えています。 
他方、アフターサービスに関しては世界一と自負しています。ロボットだけでなくインバータ、サーボモータも含め世界中のどこで使われていても26カ国のサービス拠点でしっかり対応いたします。
 
社会広聴会員:
YASKAWA未来クラブについて教えてください。
安川電機:
YASKAWA未来クラブは、創立90周年記念事業の一環として始めた社会貢献活動のひとつです。趣旨に賛同して自発的に入会した当社および当社のグループ会社所属の社員から、給与の一部を継続して拠出してもらい、集まった資金を医療・福祉、青少年の健全育成、環境保護・緑化運動に役立てていただこうというものです。一人ひとりから拠出される金額はささやかですが、多くの方が参加することによって大きな金額となって社会のお役に立てると考えています。金銭的な支援に加え、ボランティアも行っています。
 
参加者の感想から
●モータの製造から発展してその技術をロボットに転用して世界一になったことは経営者のみでなく、技術者がしっかりした理念を持っていたためではないかと思います。 

●疲れもせず、飽きもせずに働き続け、“人を単調作業から解放”するロボットの存在はありがたいです。医療・介護分野で働くロボットの開発が進み利用が広がっていくことを、大いに期待しています。 

●ロボットが、人の手以上に細やかに、正確に、そして素早く動作するのを見て驚くとともに、技術の進歩を実感しました。ロボットの作業範囲が広がっていることにも感心しました。

●サーボモータ、インバータを経営の柱とし、それを元に産業用ロボットというもうひとつの主力製品を育て上げた事業発展の過程がよく理解できました。コア技術をベースとする芯のぶれない経営が、安川電機の明日をつくっているのだと思います。
安川電機ご担当者より

 今回は当社の施設をご見学いただきありがとうございました。ご参加いただいた皆さま方にはロボットを含め当社の事業活動を十分ご理解いただけたのではないかと思います。懇談会では一般的なロボットに関する内容から当社事業内容・社会貢献の取り組みなど、幅広い視点でご意見いただき、大変貴重な経験となりました。
 皆さま方からいただいたご意見を今後の当社グループの活動に生かしてまいります。今後ともよろしくお願いします。

お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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