企業と生活者懇談会
2012年11月1日 大阪
出席企業:ダイハツ工業
見学施設:ヒューモビリティワールド

「人・地球にやさしいクルマづくり」

11月1日、ダイハツ工業のヒューモビリティワールド(大阪府池田市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員14名が参加しました。同社概要について説明を受け、ヒューモビリティワールドを見学。その後、質疑懇談を行いました。
ダイハツ工業から、グループCF部の善野誠主査、ヒューモビリティワールド館の大川秀樹館長、高山隆政副館長、見学アテンダントの吉山紀代氏が出席しました。

ダイハツ工業からの説明
■ダイハツ工業の沿革■
 ダイハツ工業(ダイハツ)は1907年(明治40年)の創業です。創立時の社名は発動機製造株式会社でした。欧米からの輸入に頼っていた内燃機関の国産化を志す研究者、実業家により起業され、工場や灌漑の動力源となるガス発動機、ディーゼル機関などを製造し、後にオート三輪で自動車市場にも参入しました。 
 第二次世界大戦後は自動車事業に注力し、1950年代後半に、大型化する三輪自動車と運搬能力に限界のある二輪車との間との潜在需要を狙った軽三輪自動車ミゼットを開発、市民の生活を応援し身近で愛される軽三輪として大ヒットしました。 
 1967年(昭和42年)にトヨタ自動車と業務提携し、以来、トヨタグループの一員として、軽自動車を中心とするスモールカーの開発と生産に従事しています。1977年度(昭和52年度)日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠を手にしたリッターカーの先駆け「シャレード」、第3のエコカー「ミラe:S(イース)」に代表されるように、多様化するユーザーのニーズを的確にとらえた、安全と環境に配慮したクルマづくりに努めています。 

■軽自動車とは■ 
 軽自動車※1は小型で使い勝手に優れます。燃費が良く、税・道路料金なども安いため経済的です。その利用状況や特徴について、全国軽自動車協会連合会の調査に基づき具体的にご説明しましょう。 
 まず利用者ですが、地域別に見ると、公共交通機関が未発達な地方の市町村での普及率が高いです。ユーザーの65%は女性です。72%のユーザが「ほとんど毎日使う」と答えています。軽自動車は、通勤、買い物など日々の生活に欠かせないものとなっています。 
 環境にもやさしいクルマです。軽乗用車の平均燃費は23.1 km/Lと、乗用車全体(軽乗用車を含む)の数値19.9 km/Lを上回ります。また軽乗用車の重量は普通・小型乗用車※2の約62%に過ぎません。このため道路の損傷度も普通・小型乗用車の7分の1と少ないです。多くのお客さまに支持された結果、自動車総保有台数に占める軽乗用車・軽商用車の割合は、今では約37%(2012年(平成24年)3月末)を占めるようになりました。 

※1 排気量660cc以下、横幅1.48メートル以下、全長3.4メートル以下、全高2.0メートル以下、定員4名以下と規定された自動車
※2 普通乗用車とは通称3ナンバー車、小型乗用車とは通称5ナンバー車のこと


■第3のエコカー■ 
 2011年発売の「ミライース」のコンセプトは「第3のエコカー」です。ハイブリッド車でもなく電気自動車でもない、もう一つのエコカーです。ガソリン車として最高水準の環境性能(JC08モード走行燃費30km/L)を誇りながらも、誰もが買える低価格(ベースグレード80万円以下)を実現しました。 
 リッター30キロは、一つの技術で実現したわけではありません。エンジン、車体、エネルギー制御の3つの観点から見直しを行い、新たに開発した数多くの技術の積み重ねの成果です。まとめて「e:Sテクノロジー(Energy Saving Technology)」と呼んでいます。 
 例えば、車体は従来の「ミラ」に比べて60キログラム——大人1人分ほど減量しました。「新eco IDLE」というアイドリングストップ機能にも一工夫あります。クルマが停止する直前(車速が7km/時以下)になるとエンジンを止めることで、アイドリングストップ時間を延長しました。減速時の転がるエネルギーを電気に変えてバッテリーを充電することなどによりガソリン消費量を減らすエコ発電制御も備えます。 
 軽量化の一方で、安全性はしっかりと確保しています。第三者機関による衝突安全性能試験の結果、「ミライース」は4つ星の高評価を得ています。 
 
■クルマの一生を通じてエコ■
 「ミライース」をはじめとする軽自動車は、低燃費なだけでなく、シンプルかつ小型なので省資源です。走るときだけでなく、つくるとき、メンテナンスのとき、そして最後の廃車・リサイクルのときと、クルマの一生「LCA(ライフサイクルアセスメント)」を通じて、必要なエネルギーや排出する二酸化炭素(CO)も少なくて済みます。 
 当社によるひとつの試算値ですが、ガソリンエンジンの普通乗用車、ハイブリッド車(ダイハツ製ハイゼット)、「ミライース」の3車についてクルマの一生を通じたCO排出量を比べてみると、ガソリン車を100とすると、ハイブリッド車は80、「ミライース」はさらに低い60という比率になります。軽自動車は、その一生を通じてエコです。
見学の様子
■ヒューモビリティワールド■
 ヒューモビリティワールドは、主に小学校高学年生を対象に、クルマの原理、環境問題、未来のモビリティ社会を紹介するために、ダイハツ創業100周年を記念して2007年(平成19年)に開館しました。 
 2階から3階はダイハツの歴史がテーマ。まず迎えてくれたのは重さ約2.6トンの大型機械。昭和初期の灌漑用ディーゼル機関で、滋賀県で約20年間にわたり稼働しました。ダイハツの原点を語る企業遺産です。3階には日本の自動車史に輝くエポックメイキングなダイハツ車「ミゼット」「シャレード」「ミラ」などが並びます。走っていたころの暮らしや街の風景が思い出されるのでしょう、参加者の皆さん、熱心に見学していました。
 4階は、クルマの今と未来を展望するフロア。製造工程や安全・環境技術を学べるよう、カーデザイナーによるスケッチやクレイモデルの実物、産業用ロボット、風洞試験のデモ機などが展示されています。 
 シアターでは、研究開発中の「貴金属フリー液体燃料電池自動車(PMfLFC)」の技術が紹介されました。通常の燃料電池自動車は水素を燃料としますが、化学反応が酸性の環境で起きるため、さびないよう電極に白金などの貴金属が必要となります。一方、ダイハツが開発中の「貴金属フリー液体燃料電池自動車」は、水素の代わりに水加ヒドラジンを液体燃料とします。腐食の心配はなく、電極にニッケルなどの身近な金属が利用可能で、低コストが期待できるとのことです。実用化が待ち遠しく感じました。 
ダイハツ工業への質問と回答
社会広聴会員:
今後の技術開発の方向性を教えてください。電気自動車の研究開発は行っていますか。 
ダイハツ工業: 
自動車の核であるパワートレーン(動力源)の環境性能をさらに追求していきます。第3のエコカー「ミライース」に搭載された新エンジンが、いわばファーストステージ。ヒューモビリティワールドでご紹介した「貴金属フリー液体燃料電池自動車」がサードステージです。 
この間のセカンドステージには、もう一つガソリンエンジン(次世代軽自動車用エコエンジン)を計画しています。ガソリンエンジンにはまだまだ改善の余地があります。「ミライース」では燃費30km/Lを達成しましたが、セカンドステージでは35km/Lを目指して、鋭意開発を進めています。 
もう一つの道筋として電気自動車(EV)の開発も進めています。2011年の東京モーターショーには新発想2シーターEVコミューター「PICO」を出展しました。また、ガソリン軽商用車「ハイゼットカーゴ」をベースにした商EVを開発し、生産拠点のある滋賀県、大分県のご協力をいただいて2012年4月から実証試験をしているところです。
 
社会広聴会員:
「貴金属フリー液体燃料電池自動車」の燃料となるヒドラジンは自然界で採れるものですか。実用化に向けた技術的な課題も教えてください。 
ダイハツ工業: 
 ヒドラジンは、自然界にそのままの形で無尽蔵に存在するものではなく、加工してつくるものです。ヒドラジンは液体で揮発しにくく、ガソリンスタンドなどの従来インフラを有効活用できるメリットもあります。走行中に出すのは窒素と水で、COは排出しません。 
技術的な課題は出力です。まだ実用レベルの出力をきっちりと出せていません。
 
社会広聴会員:
昔販売されていた1000ccディーゼルエンジンを積んだ「シャレード」が印象に残っています。ディーゼルエンジン搭載車の開発の予定はありますか。
ダイハツ工業:
最近、日本でも再び、ディーゼルエンジンを搭載した普通・小型乗用車が発売されています。近いうちに製造・販売する予定はありませんが、市場の動向は注視していきます。
 
社会広聴会員:
節電に向けた取り組みを教えてください。また、電力問題に関連して、海外に生産拠点を移すことを考えていますか。 
ダイハツ工業: 
この夏、関西電力管内では前年比15%減の節電目標が示されました。寄せ止めといわれる、2つの製造ラインを1本にまとめたり工程を短くするなどの改善を進めることで目標を達成しました。こうした取り組み全般を、ダイハツでは工場の「SSC(シンプル・スリム・コンパクト)化」と呼んでおり、今後も継続していきます。 
電力供給不安や料金見直しの動きなどに伴い、海外に生産拠点を移すといった計画はありません。
 
社会広聴会員:
スモールカーの開発・製造技術を生かして、欧州や米国に進出する計画はありますか。 
ダイハツ工業:
 ダイハツは、米国・欧州ではなく、インドネシア、マレーシアなど東南アジアを主なターゲットとしており、すでに現地生産も行っています。インドネシアは大家族が多いため3列シートを備えた1500cc程度の多目的車が売れ筋ですが、今後は1000ccクラスのコンパクトカーのニーズも増えると考え、生産を開始したところです。軽自動車そのものの輸出ではなく、軽自動車づくりで培った技術を生かしながら、各国の市場・ニーズに応じたクルマを開発・販売していきます。
 
 
社会広聴会員:
軽自動車の開発にはメインユーザーである女性の視点を盛り込むことが大切かと思います。女性の採用・活用は進んでいますか。 
ダイハツ工業:
ご指摘のとおり、開発には女性の能力・視点が欠かせません。実際にダイハツでは、クルマの開発に多くの女性従業員が加わり、設計やデザインをリードしています。買い物袋を下げるためのフック、簡単に手の届くティッシュボックス収納など、気の利いた装備は女性のアイデアですし、全体デザインや設計にも女性デザイナーが携わっています。現在のところ女性役員はいませんが、商品企画だけでなく総務、広報などの他部署でも多くの女性が働き、管理職としても活躍しています。
 
社会広聴会員:
先日、軽自動車に乗る友人に購入価格を尋ねたところ、小型乗用車と変わらない価格で意外でした。 
ダイハツ工業:
軽自動車のマーケットは二極化しています。生活や仕事に欠かせない足として経済性重視で軽を選ぶお客さまがいる一方で、普通・小型乗用車から軽自動車に移ってくるダウンサイジング志向のお客さまが増えています。こうしたお客さまは普通・小型乗用車と遜色のない使い勝手や装備を求めます。 
例えば当社の「タント」はこのようなニーズに応えるクルマです。上級グレードは約140万円台と確かに比較的高価ですが、助手席サイドの前席窓と後席窓との間にある柱を省く設計とすることで、乗り降りしやすく、室内を広く感じさせています。 
ダイハツは軽自動車を主力事業とする会社ですので、経済性重視の方、装備重視の方、どちらのお客さまにもお応えできるように様々な価格帯やデザインの軽自動車をご用意しています。
 
参加者の感想から
●ヒューモビリティワールドを見学して、ダイハツが発動機の製造からスタートし、エンジンをより小型でより高馬力なものへと進化させてきたことがよく分かりました。技術者の方々の熱い気持ちが、見学に訪れる子どもたちにしっかりと伝わっていくことを願っています。 
 
●主に小学校高学年向けの見学施設とのことですが、懐かしのクルマが並ぶコーナーでは、私たち参加者は小学生以上に盛り上がっていたかもしれません。長きにわたり地道にモノづくりを続けてきているダイハツを、地元住民として誇りに思います。 
 
●日本のクルマの主流になろうとしている軽自動車をめぐる競争は激しくなっていくでしょうが、懇談会で、ダイハツの意気込みを強く感じるとともに、同社が今後も業界をけん引していくと確信しました。 
 
●軽自動車の開発・製造で培った技術が、インドネシアほかアジアの国々でのクルマづくり・国づくりに役立っているのはうれしい限りです。ダイハツのますますの頑張りを期待しています。 
 
●今日、省資源・省エネルギーは重要なテーマです。これからも、第3のエコカー「ミライース」のような思い切った新商品で、クルマの「低燃費・低価格・省資源」を進めていってもらいたいです。
ダイハツ工業ご担当者より
 社会広聴会員の皆さまには、ご見学いただきありがとうございました。当社、ヒューモビリティワールドの主なお客さまは、小学校高学年生です。今回の懇談会のようなお客さまと触れ合う機会は少ないため、大変勉強になり良い機会でした。ありがとうございました。
お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
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