企業と生活者懇談会
2013年1月29日 千葉
出席企業:キッコーマン
見学施設:キッコーマン食品野田工場

「キッコーマンの約束」

1月29日、キッコーマンのキッコーマン食品野田工場で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員17名が参加しました。 
同社概要の説明を受けた後、野田工場内の「もの知りしょうゆ館」と「御用蔵」を見学しました。午後は「しょうゆづくり体験コース」に参加し、続いて質疑懇談を行いました。 
キッコーマン食品野田工場から、阿部悟常務執行役員生産本部長兼野田工場長(兼キッコーマン常務執行役員)、春日正史製造第1部長、香西陽一郎製造管理部設備グループ長、キッコーマンコーポレートコミュニケーション部から、長島宏行工場見学グループ長・もの知りしょうゆ館館長、中村卓史氏、中井陽一氏、岡村弘孝社会活動グループ長が出席しました。

キッコーマンからの説明
■キッコーマンの歩み■ 
 ここ野田の地では、今からおよそ400年前に、しょうゆの製造が始まりました。その原料は、近くを流れる利根川、江戸川を使って集められました。大豆は今の茨城県から、小麦は今の群馬県や千葉県から、また塩は江戸川河口の行徳から運ばれました。完成したしょうゆは江戸川を下り、大消費地である江戸におよそ半日で到達できたそうです。 
 江戸・東京の発展とともに成長してきた野田・流山の醸造家8家は、1917年(大正6年)に合同で野田醤油株式会社を設立、これが当社の前身です。 
 1964年(昭和39年)には、社名もしょうゆの商標と同じキッコーマン醤油株式会社に改めました。1960年代からデルモンテトマトジュースやマンズワインの製造・販売などの多角化を図り、1980年(昭和55年)にはキッコーマン株式会社に社名変更しています 
 
■野田から世界へ■ 
 1957年の米国での現地法人設立を皮切りに、海外展開に力を注いできました。日本の食文化を広める地道なマーケティング活動が功を奏し、日本を代表する調味料であるしょうゆは、今や世界100カ国以上で消費される世界の調味料となりました。 
 現在、キッコーマングループの海外売上は45%を占めます。海外5カ国(米国、オランダ、シンガポール、台湾、中国)に7つの生産拠点を持つに至っています。 
 
■野田工場について ■ 
 野田工場は、年間約13万キロリットル(2011年度)の生産量を誇る日本最大のしょうゆ工場です。今は「世界一のしょうゆ工場」でもありますが、国内需要が減る一方で米国での需要は順調に伸びているため、米国の工場に近くその地位を譲るかもしれません。 
 製造したしょうゆは、地下パイプラインを通じて東武野田線を挟んで立地するもう一つの工場に輸送され、容器に詰められ出荷されていきます。 

■しょうゆづくり■
 しょうゆは、①原料処理、②製麹、③発酵・熟成、④圧搾、⑤詰めの5つの工程を経てつくられます。 
 原料処理では、大豆を蒸し、小麦は炒って砕きます。次は、麹菌を加え、製麹室で温度と湿度を管理しながら3日間かけてしょうゆ麹をつくる製麹工程。麹菌には、受け継いできたキッコーマン菌を使います。 
 出来たしょうゆ麹に食塩水を加えます。これをもろみといい、タンクに移して発酵・熟成させます。麹菌の繁殖は止み、麹菌のつくり出した酵素が働き出します。大豆のタンパク質は分解され、しょうゆのうま味成分となるアミノ酸が生まれます。小麦のでんぷんは糖分に変わり甘みとコクを生みます。さらにアミノ酸と糖分に乳酸菌と酵母が作用し、味や香りの成分をつくる乳酸発酵、アルコール発酵を繰り返します。半年間にわたり微生物が交代しながら活動し、しょうゆが出来上がります。 
 圧搾は、もろみからしょうゆを搾り取る工程。もろみは幅3メートル、長さ2800メートルの長大な濾布に包み、4階建ての建物ほどの高さにまで折り畳み上げます。最初はその自重でしょうゆがにじみ出ます。その後、プレス機で圧搾ししょうゆを搾り取ります。搾りたての生しょうゆは数日間静かに休ませてしょうゆと油を分離させます。生しょうゆに熱を加え(火入れ)、色、味、香りを整え、酵素の働きを抑えます。 
 最後に詰め工程と検査を経て、出荷されます。 
見学の様子
■しょうゆ工場■
 見学コースでは、製麹や圧搾の様子を見ることができました。工程は自動化され、清潔な場内には、人の姿を見ることはありませんでした。 
 微生物の働きを見詰め、助けるのがしょうゆづくりのポイント。場内の製麹室は温度36~39度、湿度100%に管理され、麹菌の成育を促します。もろみは、屋外に立ち並ぶ大小約600本のタンクの中で熟成されていますが、タンク内部はしっかり温度管理されています。適宜、圧縮空気を送り込んで中のもろみを撹拌し、微生物の発酵を促しているそうです。 
 
■御用蔵■  
 御用醤油醸造所(御用蔵)は、現在も伝統的な製法でしょうゆを醸造し宮内庁にお納めしているしょうゆ蔵です。戦前から江戸川沿い(野田市中野台)で操業していましたが、老朽化が進んだため、その仕込み蔵が野田工場内に移築されました。  
 昔の道具や設備を見学しながら、かつては原料と麹菌を人手で混ぜ合わせていたこと、製麹中は人が付きっきりで窓の開け閉めや火鉢によって温度・湿度を調整していたことなどを聞きました。ここでは今も発酵・熟成には杉桶を使い、人が櫂を使って、中のもろみを撹拌する作業(櫂入れ)が行われています。 
 昔のしょうゆづくりは、多くの人の労苦とベテランの“五感”が頼りでした。今日それらは機械・空調設備、センサーに置き換えられましたが、現在も、昔と同じ工程でキッコーマンしょうゆがつくられていることを学びました。 
 
■しょうゆづくり体験■
 見学後はエプロンを着けて、「しょうゆづくり体験」です。原料の大豆や小麦、半製品である麹やもろみに触れながら、しょうゆが出来るまでを駆け足で体験しました。製麹中の麹には菌糸が生えて、少し熱を感じます。熟成が進んだもろみは、粒がこなれ細かくなり、アルコールが香ります。 
 しょうゆづくり体験を通じて、しょうゆが目に見えない無数の微生物の働きのたまものであることを実感できました。 
キッコーマンへの質問と回答
社会広聴会員:
キッコーマンのマーク・社名の由来は。 
キッコーマン:
「亀甲」は亀の甲羅の六角形です。これに「鶴は千年、亀は萬年」という縁起の良い故事にならって、真ん中に萬の字を配したのが、六角形の「亀甲萬」のマークです。これを野田のしょうゆ醸造家茂木佐平治家が考案者から買い取り、1820年ごろから同家の代表銘柄として使っていました。野田醤油発足時には合併8家合計で200種以上のしょうゆの商標がありましたが、最も評判の高かった亀甲萬ブランドへの統一を進めました。
 
社会広聴会員:
この会場の正面に掲げられている「産業魂」という書について教えてください。 
キッコーマン:
「産業魂」は、1928年(昭和3年)、当時の経営者が制定した社是です。長期に及んだ労使争議の教訓として打ち出されました。その骨子は「企業は、利潤を得るだけの場ではなく、社会の公器である。経営者は、株主以外の、従業員や地域社会など多くのステークホルダーにも配慮すべき」であり、CSRを先取りするものでした。 
今日までその思想は受け継がれています。ご覧いただいたように工場は高度に自動化されていますが、機械化は従業員数を見ながら、漸次進められてきました。キッコーマン総合病院の運営、野田市の小・中学生の英語教育支援などの地域貢献活動にも継続的に取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
発展途上国にも販売を進めていく予定ですか。
キッコーマン:
しょうゆは、製造に高度な技術と長い期間が必要なので、調味料の中では比較的高価な部類です。このため欧米先進諸国から普及が進みました。近年は東南アジアやインドなども、しょうゆ需要の拡大が十分期待できるほどに経済的な発展を遂げていますので、今後は一層の拡販を図っていきます。 
 
社会広聴会員:
暑い気候の国でも製造できるのですか。 
 キッコーマン:
今日では、麹菌が生育・活動できる環境を人工的に整えてあげることができます。実際、シンガポール工場で製造しています。 
もっとも1970年代に米国で最初のしょうゆ工場を操業した時には苦労したと聞いています。先人の様々な努力の恩恵で、今日、世界中で、野田と同じ品質のキッコーマンしょうゆをつくり、販売しています。 
 
社会広聴会員:
成熟する国内市場に向けた商品・販売戦略を教えてください。
キッコーマン:
しょうゆという基礎調味料を核としながら、新しい家庭用調味料を提案しています。例えば「うちのごはん」。材料と一緒に混ぜたり炒めたりするだけでおかずが出来上がる和風料理の素です。若い世代に向けた商品ですが、子どもが巣立って夫婦二人というご家庭にも好評をいただいており、家庭用調味料の可能性を感じています。 
しょうゆは家庭だけでなく、外食や中食でも使われます。外食産業や惣菜加工業者向けの業務・加工用には十分な伸びしろがあり、力を注いでいます。
 
社会広聴会員:
原料の原産地を教えてください。 
キッコーマン:
大豆は主に米国産、小麦は米国・カナダ産、塩の大半はメキシコ産を使用します。 
 
社会広聴会員:
異物混入の防止のために製造工程でどのような対策を取っていますか。 
キッコーマン:
醸造の工程では、様々な箇所にストレーナー(濾し器)を設置し、原材料への異物混入を防いでいます。最終の詰め工程では、何層ものフィルターを通してからパッケージします。従業員は、全身を覆うユニフォームを着用し、エアシャワーでほこりを除去した上で入場します。 
 
社会広聴会員:
電力不足への対策について教えてください。 
キッコーマン:
東日本大震災のあった2011年(平成23年)は、夏の電力不足に対応するため、冷房負荷や消費電力の大きい作業同士が集中しないように、時に早朝・夜間に操業を行いました。対象期間の使用最大電力は前年同期比15%以上の削減を達成しました。 
万一の停電の際に野田工場全体をバックアップするだけの自家電源設備は持っていませんが、危機管理の一環として、停電時の対応・操業にかかるシミュレーションは行っています。
 
社会広聴会員:
最近話題の生しょうゆと、普通のしょうゆとの違いを教えてください。 
キッコーマン:
生しょうゆは火入れをしません。代わりにフィルター(ろ過膜)を通すことで酵母などの微生物を除去しますが、通常のしょうゆよりも酸化が進みやすいのです。これを、しょうゆが空気に触れない二重構造容器と弁付きのキャップでカバーしたのが「いつでも新鮮生しょうゆ」シリーズです。 
生しょうゆの味わいはマイルドです。お刺身に付けて食べるときなど、直接しょうゆを味わう場合に向いていますが、「これでなくては」というルールはありません。お好みに応じて使い分けていただければと思います。 
 
参加者の感想から
●グローバル企業として発展しながら日本の伝統調味料を世界に広めていくキッコーマンの事業展開を、今後も期待を込めて見ていきたいです。 
 
●キッコーマンが、昔から地域貢献に配慮しながら経営してきたことが、よく理解できました。また、米国の工場の生産規模が、現在最大の野田工場を抜く日も近いと聞いて驚きました。 
 
●ご説明や案内に社としての一体感が感じられ、「産業魂」の精神が脈々と受け継がれていると思いました。 
 
●しょうゆは細心の注意を払いながら半年もかけて製造されるという苦労を知り、しょうゆを、もっとしっかり味わってみようと思いました。 
 
●オートメーション化された工場の清潔さに感心しました。キッコーマンの商品への信頼度が一層増しました。 
キッコーマン ご担当者より
 このたびはキッコーマン食品野田工場にご来場いただきまして、誠にありがとうございました。社会広聴会員の皆さまからの貴重なご意見やご感想を今後のキッコーマングループの事業活動にぜひ生かしてまいりたいと考えております。これからも皆さまにおいしい記憶をつくっていただける企業として努力してまいります。
お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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