企業と生活者懇談会
2015年8月5日 宮城
出席企業:トヨタ自動車東日本
見学施設:本社・宮城大衡工場

「東北を基盤に地域と一体となったトヨタのクルマづくりを学ぶ」

8月5日、トヨタ自動車東日本(以下、同社)の本社・宮城大衡工場(宮城県黒川郡大衡村)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者11名が参加しました。同社概要、宮城大衡工場概要について説明を受けた後、車の製造ライン、同社が地域と一体となって進めるスマートコミュニティ事業「F−グリッド」、PRホール「結[YUI]ギャラリー」を見学し、質疑懇談を行いました。 
トヨタ自動車東日本からは、総務部総務室の山田浩昭室長、総務部総務室広報・渉外グループの持田善彦グループ長、トヨタ自動車からは、広報部の山岡正博主査が出席しました。

トヨタ自動車東日本からの説明

■トヨタ自動車東日本の概要■
 トヨタ自動車東日本は、関東自動車工業・セントラル自動車・トヨタ自動車東北の3社が統合し、2012年(平成24年)7月、中部、九州に次ぐ、トヨタの国内第三の拠点として設立されました。「東北を基盤に、世界一の魅力あるコンパクトカーをお届けする」ことを目的に、コンパクト車の専門集団として企画・開発から調達・生産まで一貫して行っています。事業所は、東北に本社・宮城大衡工場、宮城大和工場、岩手工場の3拠点、静岡に1拠点の計4拠点、海外はタイとブラジルにそれぞれ設備工場と車両部品工場を有していて、従業員は約7400名です。
 本社・宮城大衡工場のコンセプトは「コンパクト・フレキシブル・ハーモニー」です。コンパクトは生産設備の考え方を見直し、効率的でコンパクトな生産体制をつくること、フレキシブルは生産変動に素早く対応できるフレキシブルな工夫をすること、ハーモニーは人と機械がうまく調和した職場環境づくり、また自然環境との調和を目指すことを表しています。
 日本のモノづくりのアドバンテージは、現場の技術力の高さにあると考えており、当社では、現場の作業者一人ひとりが自ら考え、工夫し改善する技能を高めていくことを大切にしています。その取り組みの1つとして、企業内訓練校のトヨタ東日本学園があります。ここではモノづくり現場の中核人材を育成することを目的に、1年間にわたって技能実習、心身教育、総合教育を行っています。定員は毎年20名で、うち15名は当社社員ですが、残りの5名は東北の企業の若手社員に入学いただき、一緒に東北のモノづくりのルーツを学ぶなど、東北に根差した教育を行っています。

見学の様子

■工場内に、ヤギ?■
 本社・宮城大衡工場では、車の製造ライン、同社が地域と一体となって進めるスマートコミュニティ事業「F−グリッド」、PRホール「結ギャラリー」を見学しました。 
 工場内の敷地は広大で、バスに乗って移動する途中、木の柵で囲まれた草むらを見掛けました。柵の中にはヤギが3頭放し飼いにされていて、草を食べたり、寝そべったりと、とてものどかな雰囲気でした。工場内でヤギを飼っている理由は、除草剤を使用せず、雑草をヤギに食べてもらうためという環境にやさしい取り組みとのことです。ヤギには「はっと」「あずき」「ずんだ」と、東北にちなんだかわいい名前が付けられていました。 

■組立工場、ボデー工場見学
 かわいいヤギたちと別れた後は、組立工場、ボデー工場の順で車の製造ラインを見学しました。
 組立工場では、塗装を終えて運ばれたボデーにエンジンやシート、ランプなどの部品を組み付けていきます。ボデーは室内の部品を組み付けやすくするためドアが外され、シートなどの重い部品の取り付けには補助装置を利用し、人と機械が連携して、確実に組み付けていきます。作業をする一人ひとりが次々に部品を組み付けていく様子はまさに職人技。てきぱきと動く姿に、従業員のプロ意識を感じました。
 組み立てが終わった車には、厳しいチェックが待っています。外観検査では細かな傷や塗装の状態を、走行検査では、時速120キロまでスピードを出し、エンジンから異音がしないか、メーターが正しく動くかなどを確認します。最後に大型台風並みの水しぶきを四方から浴びせ、水漏れがないかをチェックします。検査ラインでは、約1200項目もの検査が行われるそうです。
 次に訪れたボデー工場では、1枚の鋼板をプレス機で抜いたり曲げたりし、各パーツの部品に変えていきます。溶接工程では、プレス工程でつくられた部品が溶接され、ボデーの骨格が形づくられます。ここでは多くのロボットがプレス作業や溶接作業を行っていました。たくさんのロボットが、まるで生きているかのように複雑に動き、あちこちで火花が散る様子は、さながら映画の1シーンのような迫力でした。 

■工業団地、地域と取り組むエネルギーマネジメント■
 続いて、工場内にある「F(エフ)−グリッド」のガス発電施設を見学しました。「F−グリッド」とは、「個々の工場」だけでなく、「隣接する工場間」「工場と地域」が協力してエネルギーを「うまくつくって」「貯めて」「賢く使う」仕組みです。工業団地内の各工場にエネルギーマネジメントシステムと蓄電池を導入し、電力会社から購入する電力と、ガス発電施設・太陽光発電からつくった電力・熱を工業団地内で分散して使用することで、工業団地全体の経済性・環境性を向上させます。
 同工場内にある「F−グリッド」の核となるガス発電施設は、車のエンジンと同じ構造で発電します。発電出力7800キロワットに相当する大型のコージェネレーションシステムです。コージェネレーションシステムとは、発電後の排熱をムダなく利用する省エネルギーシステムで、ここでは、排熱で蒸気や高温水をつくり、同工場の塗装工程や、工業団地内にある日本最大級のパプリカ生産法人「ベジ・ドリーム栗原」の温室維持などに有効活用しています。
 また、非常時には、「F−グリッド」で発電した電力を電力会社を通じて、防災拠点となる大衡村役場などの周辺地域に供給することができます。他にも、「PRIUS」のPHV(プラグインハイブリッドカー)を4台準備し、工場負荷の低下する時間帯に蓄電を行い、非常時には電灯・コンセント用の電力源として活用するなど、地域と工業団地が一体となった安全で安心な街づくりを目指しています。
 同社が行う先進的な取り組みの説明に、参加者は熱心に耳を傾けていました。 

■地域と企業を“結ぶ”空間■
 次に、参加者は同社のPRホール「結ギャラリー」を見学しました。このホールの名称には、ここが地域の方々と同社を“結びつける”空間でありたい、という同社の思いが込められています。 
 訪れた参加者を迎えたのは、ホール中央にある分解された「AQUA」です。普段は見ることのできない車の内部の展示に、熱心にカメラのシャッターを切る参加者の姿が見られました。この展示には、東北生まれのコンパクト車が世界中に広まっていくようにとの願いが込められています。
 ギャラリーには、電動車いすの展示もありました。この電動車いす「パトラフォー」は、同社が独自に開発した技術を使用し、優れた走行安全性と走破性を実現した4WD電動車いすです。電動車いすを使用する方々が、より安全に、かつアクティブな生活を過ごしていただくことを目的に開発されたもので、地域とのつながりを大切にしたいとの考えから、東北6県へ5台ずつ寄贈しています。 
 車の開発工程についての展示もありました。車づくりは、まずデザインのスケッチから始め、次にそのスケッチをもとに粘土でクレイモデルを製作します。使用する粘土は温めると柔らかくなり、冷えると固くなる特殊なもので、当日は温めた粘土を準備していただき、冷えた粘土との感触の違いを確かめることができました。ギャラリーには5分の1スケールのクレイモデルが展示されていましたが、実際は重さが1トンにもなる実物大のクレイモデルを製作するそうです。
 他にも、ギャラリー内には「シエンタ」の最新モデルや「MR−S」「レクサスSC430」など往年の名車が展示されていて、運転席に座ったり、写真を撮ったりと、参加者は楽しいひとときを過ごしました。

■従業員は発明家■
 ギャラリーの一角には、同社のからくり紹介コーナーがありました。「からくり」とは、現場の作業員の創意工夫により、コストを抑え、生産性を高めるために発明された装置です。一度回すと必ず決まった数のボルトを取り出せるからくりや、ボルトの向きを揃えるからくり、以前はロボットを使ってひっくり返していた鉄板を、動力を使わずに自重でひっくり返るようにしたからくりが展示されていました。参加者は、からくりが実際に動く様子を感心しながら見学していました。

懇談会の概要

社会広聴会員:
ハイブリッドカーや電気自動車など、環境にやさしい車が登場していますが、今後の開発はどのように進んでいくのでしょうか。
トヨタ自動車: 
省エネルギーやCO(二酸化炭素)削減に向けた取り組みは、今後ますます進んでいくと考えています。トヨタ自動車では、ハイブリッドカーや電気自動車、PHVに加えて、FCV(燃料電池自動車)の開発にも取り組んでいます。水素は電気に比べてエネルギー効率が良く、貯蔵や輸送も容易にできるため、将来の有力な燃料として注目されています。昨年(2014年)、FCV「MIRAI」を発売したところ、多くのお客さまからご注文をいただき、現在生産が追い付かず、お待ちいただく状況になっています。環境にやさしい車を皆さまにお届けできるよう、今後も開発、生産に力を入れていきます。
 

社会広聴会員:
安全な車づくりに向けた取り組みを教えてください。
トヨタ自動車:
究極の願いになりますが、交通死傷者ゼロを目標にしています。事故が発生してしまったときのエアバッグなどの衝突安全と、そもそも事故を回避する予防安全の両方に力を入れています。予防安全では、衝突の回避や衝突時の被害軽減をサポートするプリクラッシュセーフティシステムや車線逸脱による事故を防ぐために、ウインカー操作を行わずに車線を逸脱しようとするとアラームが鳴るレーンディパーチャーアラートなどがあります。
 

社会広聴会員:
地域と一体となった企業を目指しているということですが、地元からの採用率はどのくらいですか。
トヨタ自動車東日本:
2013年(平成25年)の時点で約7割が東北からの採用です。今年(2015年)の4月に入社した社員は、9割超が東北からの採用になります。
 

社会広聴会員:
「F−グリッド」は他の地域でも展開していますか。
トヨタ自動車:
 「F−グリッド」は2013年に始まったばかりで、現在日本で展開している地域はここだけと聞いています。他の地域への導入も検討していますが、この事業は燃料となる都市ガスの値段や電気料金によって採算が変わるという課題があります。今後、事業としての安定性を高めることで、各地域への普及が進むと感じています。
 

社会広聴会員:
「からくり」は、社内で公募しているのですか。
トヨタ自動車東日本:
社内に「創意工夫提案制度」があります。従業員が働く中で、“もっとこうすれば良くなるのでは”ということがあれば、自主的に提案し、良い案を表彰するものです。また、国内各拠点のトップが他の拠点の改善内容を実際に見るという活動も行っています。車の生産工程は基本的にどこの拠点でも同じですので、良い改善は他の拠点でも積極的に取り入れ、企業全体でレベルアップを図ることを意識しています。
 

社会広聴会員:
本日の見学では、同じ製造ラインで様々な車種、色の車を製造していましたが、同じ車種、色の車をまとめて製造した方が効率が良いのではないでしょうか。
トヨタ自動車東日本:
ご質問のとおり、同じ車種、色の車をつくり続けた方が効率的です。しかし、国内における車の製造は、基本的に受注生産で、毎日販売店から注文が入って、初めて製造する車種、色が決まります。本日見学いただいた製造ラインを流れていた車は、そのほとんどがお客さまにご注文いただいた車というわけです。現在の車は車種、色だけでなく内装もバリエーションが増えていますので、全てが同じ車というのは実はあまりありません。

参加者の感想から

●トヨタ自動車東日本の「東北の復興」「社会貢献」「地域貢献」というコンセプトに心より共感いたします。まさに地方創生のモデルであろうと思います。 

●環境に配慮された美しい工場で、ロボットと人間がお互いの足りないところを補いつつ働いていることがよく分かりました。

●工場の中にヤギがいて、働いている方のマスコットになり、環境にも従業員にもやさしい工場でした。

●災害時の地域との協力体制はとても素晴らしいことであると思いました。また、地元からの採用割合が高いのも良いことだと思います。

トヨタ自動車 トヨタ自動車東日本 ご担当者より

 このたびは、トヨタ自動車東日本 本社・宮城大衡工場にご来場いただき、ありがとうございました。 
 トヨタ自動車東日本では、これまでトヨタ自動車を代表する数々の小型車を生産しており、「東北を基盤に世界一の競争力を持つ魅力あるコンパクト車をつくる」を目指し、様々な活動に取り組んでいます。今回、その一端をご紹介できたと思っておりますが、参加者の皆さまからも、貴重なご意見を頂戴いたしました。今後も“がんばろう東北”を合言葉に東北のみならず、日本の元気、そして笑顔のために、力を合わせて、共に頑張っていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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