企業と生活者懇談会
2010年1月19日 大分
出席企業:ソニー
見学施設:ソニー・太陽

「ソニーグループの企業文化を知る」

2010年1 月19日、大分県速見郡日出町のソニー・太陽で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。生活者16名が参加し、同社の概要や設立の理念について説明を受 けた後、マイクロホンおよび業務用ヘッドホンなどの製造工場を見学し、続いて質疑懇談を行いました。
ソニー・太陽からは、長田博行代表取締役社長、総務部の佐藤いづみ担当部長、野田浩二人事総務課担当課長が出席しました。
ソニー・太陽からの説明
■ソニー・太陽について■
 ソニー・太陽は、1978年(昭和53年)にソニーと社会福祉法人太陽の家の共同出資により設立され、1981年(昭和56年)にソニーの特例子会社となりました。「世に身心障がい者はあっても仕事に障害はありえない。身障者に保護より働く機会を。」と考えた社会福祉法人太陽の家創設者の中村裕博士と、「障がい者の特権無しの厳しさで健丈者より優れたものを…」を目指したソニーの創立者の井深大の思想をベースに、働く障がい者のトップランナーを目指しています。
 現在、従業員は183名で、そのうち118名が障がいを持っています。
 なお、ソニー・太陽では「五体満足の人は単に『丈夫』なだけである」との井深の考え方を踏まえ「健常者」ではなく「健丈者」と表記しています。

■最高の技術で最先端の製品をつくり続ける■
 ソニー・太陽はソニーグループ唯一のマイクロホン製造工場です。
 ここでは、今から40年以上前に生産が開始された「C-38」というマイクを製造しています。漫才のテレビ番組で、中央にマイクが置いてあるのを目にすると思います。このマイクが「C-38」で、音響の現場からは名機中の名機と評価を得ています。
 また、プロのミュージシャンが録音の際に使用する「C-800G/ 9 X」もここでつくられています。このマイクは音の深みや柔らかさを表現できるものとして高く評価されています。
 そのほかにもプロ用のヘッドホンや大容量のメモリースティックの生産もしています。
 このような高品質のものづくりを可能にしているのが、部品や工具・治具を配置した「セル」と呼ばれる作業台で、設計から組立、出荷のための箱詰めまでの全工程を一人から数人で担当し、作業を行う「セル生産方式」です。
 当社では長年のノウハウの蓄積により「セル」の部品や工具・治具を一人ひとりの障がいに合わせて配置した「カスタムセル」による生産方式を確立しました。従来はベルトコンベヤー方式による生産を行っていましたが、社員一人ひとりが個人商店主のように製品をつくり上げる「セル生産方式」への移行により、生産効率が飛躍的に上がり、モチベーションや技術力も一気に向上し、2007年(平成19年)には「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞することができました。また、ソニー・太陽では、障がい者と健丈者が同じ社会で生活できることを目指して、これまで培ったノウハウをグループ内外へ伝える活動も行っています。

■「インクルージョンされた社会」の実現に向かって■
 ソニー・太陽では、身体障がい者、聴覚障がい者、視覚障がい者など様々な人が働いています。そこで、製造現場では一人ひとりの身体状態に合わせて「人が製品をどう造るか」を追求しています。
 例えば、聴覚障がい者と円滑にコミュニケーションをとるために、パソコンによる要約筆記が取り入れられました。また、それをプレイステーションポータブルの画面に瞬時に転送することで、全員が同時に会議に参加できるようにもなりました。
 当社では、製造現場はもちろん、間接部門やマネジメントに至るまで、各社員の障がいに応じて、「適材適所」の業務配置を心掛けています。こうした取り組みによって、性別や障がいの程度にとらわれない「インクルージョンされた社会」を目指しています。

見学の様子
■工場の工夫■
 フロアは、車椅子に対応するためすべて段差がない上、入り口の自動ドアはスムーズに出入りできるよう広く間口を取ってありました。工場では精密機器を製造しているため、車椅子のタイヤについた埃を取るための粘着シートが入り口に張ってありました。
 車椅子で従業員が不自由なく移動できるように通路は広く取ってありました。特にそれぞれの「セル」をつなぐ通路を広く取り、工場ではそこを「国道」と呼んでいました。「国道」では通路の端に線を引き、その中は通行の邪魔にならないように物を置かないよう
に特に注意しているそうです。
 また、通路の交差点の天井には衝突防止のために半球状のミラーが取り付けてありました。

■カスタムセルによる生産の現場■
 一つひとつのセルに「○○商店」というように個人名を冠した名前が付いていました。これは責任と自信を持って生産を行っていることの表れです。一つひとつのセルで製造が完結した製品がソニーグループの技術力の高さを示すものとして世に売り出されていきます。
 セルはそこで働く社員の障がいに合わせて高さや大きさ、部品の取りやすさが様々に工夫されていました。部品が置いてある棚もコンビニエンスストアの陳列棚からヒントを得て、各段が斜めになり、常に前面に必要な部品が出てくるようになっていました。
 このように工夫された「セル」もまた同じ工場の一角でつくられていました。まさに働く人に合わせたオーダーメイドの工場でした。

ソニー・太陽への質問と回答
社会広聴会員:
「インクルージョンされた社会」という言葉を初めて聞きました。
ソニー・太陽:
技術の進歩に伴い、障がい者が活躍できる分野はどんどん増えていっています。例えば外出が困難な人でも今はインターネットの活用による在宅勤務が可能に なってきています。将来、障がい者も健丈者も、女性も男性も人種も関係なく、同じように学び、同じように働く社会となってほしいと思います。
 
社会広聴会員:
給与体系や教育プログラムは健丈者と障がい者で違いなどはありますか。
ソニー・太陽:
給与、人事考課、教育プログラムはすべて同一の体系で運営しています。研修についても違いはありません。ただ、障がいの種類によっては短時間の勤務となる 場合もありますので、個別の体系も用意しています。
 
社会広聴会員:
製品の競争力の源はどこにありますか。
ソニー・太陽:
当社は使う人の「琴線に触れるもの」をつくることで成り立っていると考えています。それぞれの社員が、より高い技術の習得を目指しているので、そのための教育や訓練はとても重要であると考えています。つまり各社員が時間をかけて積み上げていく経験や技術が競争力の源になると思います。
 
社会広聴会員:
他の企業で障がい者雇用を進めていくために必要なことは何ですか。
ソニー・太陽:
まず、私たちがここまで歩んでくるまでに経験した苦労を多くの方々に伝えていくことが必要だと思います。そして、 企業の従業員や、そのトップの方にも障がい者雇用と、その先にある、人間の多様性を尊重する社会の実現に向けた活動の重要性を理解していただくことだと思います。
 
社会広聴会員:
ソニー・太陽のように、障がい者が生産、管理、全体の運営まで行う企業は海外にもありますか。
ソニー・太陽:
私どもが知る限りでは存在しないと思います。海外から、多数の方が当社の「セル生産方式」を学ぶために視察に来られることがあります。私たちは、「セル」 という形はまねをすることができますが「セル」をものづくりのシステムとして運営していくには、文化的背景や長年培った経験など、目に見えないノウハウが たくさん必要で、それをすぐにまねすることはできないと考えています。
 
社会広聴会員:
ソニー・太陽におけるCSR(企業の社会的責任)活動について教えてください。
ソニー・太陽:
私たちはCSR活動においても「インクルージョンされた社会」の実現につながることを目指しています。ソニーの「技術力」を使って、障がいを持った社員 が、社会とのパートナーシップを発揮できる活動に取り組んでいます。
例えば、「大分国際車いすマラソン大会」での運営ボランティアや地域緑化活動を実施したり、特別支援学校で、聴覚障がいを持つ社員が、同じ障がいを持つ 子どもたちにCDの原理を伝える活動をしています。また昨年(2009年)は小学校低学年向けに、手づくりICレコーダーをつくって遊びながら仕組みを勉強するワークショップを開催しました。
 
参加者の感想から
●健丈者と障がい者の区別のない社会づくりがソニー・太陽から広まればいいと思います。そのために私自身ができることを考え、行動しようという思いを抱きました。

●見学する前までは、障がい者の法定雇用率を確保するために障がい者を受け入れていると思っていましたが、お話を聞いたり、実際に見学をして、本当に一人ひとりのことを考え、人の能力を最大限に引き出すとても素晴らしい会社だと分かりました。たくさんの人にもっと知ってほしいと思います。そうすればきっと世の中が変わると思います。

●訪問した日の夜のテレビ番組で、ソニー・太陽で製造されたヘッドホンを見つけ、製造していた方のお顔が浮かんできました。きっとあの方も同じテレビ番組をご覧になって自慢されているのだろうと想像して思わず微笑んでしまいました。

●生産現場を見学し、生産工程をすべて自分の手元で行うという発想の素晴らしさに驚きました。セルの使用者と改善を重ねながらここまでこられたと思います。最終工程まで一人から数人で作業し、そこに責任感が生じ、結果として、安心して使える製品を生産している姿を間近に見せていただきありがとうございました。

●社長の「どの会社でも普通に障がい者が働くことが当たり前になり、『ソニー・太陽』がなくなる日が来るのが一番良い」という言葉が心に残りました。今日はとても視野が広がりました。

ソニー・太陽ご担当者より
 今回の「企業と生活者懇談会」では、県内外の地域住民の方へ、当社が目指している「インクルージョンされた社会」について、32年前の設立当初から今日に至る会社の変遷や、当社独自の障がいを持った社員が一人で製品を完成させる生産方式、障がいを感じさせない職場環境を直接ご覧頂き当社にとっても大変有意義な機会となりました。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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