企業と生活者懇談会
2016年10月21日 埼玉
出席企業:三菱マテリアル
見学施設:横瀬工場

「環境に優しく、都市の骨格となるセメントづくりを体感しよう」

10月21日、三菱マテリアルの横瀬工場(埼玉県秩父郡横瀬町)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者14名が参加しました。セメント業界の概要、三菱マテリアルの企業概要、廃棄物の有効活用に積極的に取り組む横瀬工場の概要説明を受けた後、工場内の中央操作室や1450度にも達するロータリーキルン(回転窯)を見学し、その後、質疑懇談を行いました。 
三菱マテリアルからは、横瀬工場の水間誠一工場長、横山隆史副工場長、総務センターの妻鹿義明センター長補佐、業務課の長島教夫課長、生産課の伊藤公範課長補佐、総務センター総務係の高野潤一係長、経営戦略部門広報・IR部の鈴木徹部長、清水宏課長、セメント事業カンパニー企画管理部の三善顕部長補佐、セメント協会から広報部門の藤原恵美統括リーダーが出席しました。 

セメント協会からの説明

■循環型社会に貢献するセメント業界■
 セメント協会には全国のセメント会社が17社加盟しています。セメントの原料となる石灰石は全国各地で産出されている鉱物で、北海道から沖縄まで全国30カ所にセメント工場があります。生産量の半分以上は山口県以西でつくられており、大阪、名古屋、東京といった大都市圏へタンカーで輸送されています。セメントは国産100%のため、為替や国際情勢の影響を受けず、価格がほぼ一定で安定供給されています。
 また、セメント業界では、全国各地で発生する大量の廃棄物・副産物を受け入れ、セメント原料や熱エネルギーの代替物として有効活用しています。例えば石炭火力発電所から出る石炭灰、日々の暮らしで発生する下水汚泥、都市ごみ焼却灰などを活用しています。2015年度(平成27年度)では年間2800万トンの廃棄物・副産物を受け入れ、セメント生産量1トン当たり475キログラムもの廃棄物・副産物が使われています。これにより、ごみの最終処分場の延命化に貢献するなど、循環型社会に欠かせない産業となっています。

三菱マテリアルからの説明

■企業概要■ 
 三菱マテリアルは、1871年(明治4年)に三菱商会の前身となる九十九商会が鉱業部門に進出したのがルーツとなります。その後、高島炭鉱や端島炭鉱(世界遺産にも登録され話題となった軍艦島)を買収するなど事業の拡大を続けました。戦後は、石炭部門と金属部門に分社化されましたが、1990年(平成2年)に再度合併して現在に至ります。
 企業理念「人と社会と地球のために」を掲げ、セメント事業、金属事業、加工事業をはじめ、電子材料事業、アルミ事業、環境・エネルギー事業と幅広い事業を手掛けています。その中でもセメント事業では、環太平洋地区に事業を展開しており、中国、ベトナム、米国に進出しています。南カリフォルニア地域では生コンクリートに力を入れており、マーケットシェアでナンバーワンを誇っています。国内では、九州に日本最大規模のセメント工場を持ち、この規模を生かして、東南アジアからアフリカまでセメントを出荷しています。

■資源リサイクルに強い横瀬工場■
 横瀬工場は1969年(昭和44年)に完成した国内で2番目に新しいセメント工場です。同工場では、安定した品質を提供するために、各工程での生産物を自動で1時間ごとに分析する全自動品質管理システムを導入しています。また、同工場では、年間約50万トンの廃棄物を使用しています。セメント生産量1トン当たり525キログラムの廃棄物を有効活用しており、この数値はセメント産業の中でも高い値を誇っています。
 また、石炭や石油などの燃料の代替として廃タイヤや廃プラスチックを利用しています。最近では廃プラスチックを細かく砕いてエネルギー材料とする施設を設置するなど、化石燃料利用の削減を進めています。
 工場の立地自体も特徴の1つです。首都圏から近いため、多くの廃棄物を受け入れることができます。また、内陸部にあるため、湾岸部から離れた山梨県や長野県にも低い運送コストでセメントを届けることができます。

■セメントができるまで■
 セメントの製造工程は、原料工程、焼成工程、仕上工程の大きく3つに分かれます。原料工程では、原料となる石灰石、珪石、鉄原料、粘土などを所定の化学組成となるように調合し、原料ミルと呼ばれる機械で細かく粉砕します。次に、焼成工程では、先ほどつくられた原料を焼成していきます。まず、原料がプレヒーターと呼ばれる予熱機で850度まで暖められます。そして、廃棄物などとともに、1450度に達するロータリーキルンで焼成され、水硬性を持った化合物の集まりであるクリンカーとなります。最後に、仕上工程では、クリンカーに石こうを加え、仕上ミルで粉砕し、最終製品である粉末状のセメントが出来上がります。そして、セメントはトラックなどに積み込まれ全国各地の生コンクリート工場に運ばれます。そこで、砂や砂利、水などと一緒に混ぜることで生コンクリートとなり、ミキサー車で建設現場などに運ばれます。

見学の様子

 ■横瀬工場■
 今回は焼成工程をメインにそれぞれの工程にある設備を見学しました。
 まず、各工程の生産物の品質をチェックする全自動分析器を見学しました。各工程の製品を小さいビンに詰めて、X線装置や化学分析装置で1時間に1回という高頻度で分析を行っています。通常、2人程度が必要な作業ですが、横瀬工場では、機械化により無人で行うことができ、その結果はすぐに中央操作室に送られ、品質維持に役立てられているそうです。 
 次に、下水汚泥処理設備を見学しました。より多く処理するために、3年前に受入設備を増設し、現在では合計で1日400トンの処理能力を持っています。2015年度は、年間8万トンを受け入れており、約115万人分の年間排出量に相当します。
 ここで処理されたものは焼成工程の中でも、非常に高温で処理される工程に油圧で送られています。建屋のシャッターは極力短い時間しか開けず、常に建屋内に空気を取り込み、排出する空気も活性炭を通した上でセメントの生産工程に使うなど徹底した臭気対策が取られています。参加者は実際に、ポンプ車が建屋に入っていく様子を見学し、ものすごいスピードでシャッターが動く様子に驚きの声を上げていました。
 続いて、工場の目玉であるロータリーキルンを見学しました。焼成工程でつくられるセメントの素となるクリンカーをつくるためには、高温で材料を焼く必要があり、それを担う設備です。直径は4.6メートル、長さは約90メートルあり、中は1450度に達します。そのため、内部は耐火レンガが敷き詰められていますが、消耗品のため8カ月に1回、ラインを停止してレンガの交換作業を行っているそうです。また、発生する排ガスも1000度以上に達するのですが、そのまま大気に放出するのではなく、プレヒーターで原料を暖めたり、水分を含んだ原料を乾燥させたりすることで、より効率的に熱を利用しています。最終的には排ガスの熱は100度程度まで冷やされるそうです。セメント焼成工程で使われたエネルギーの80%近くが予熱等に有効利用されており、世界のセメント工場と比べても大変エネルギーロスが少ないそうです。
 また、このロータリーキルンの中を見ることができるバーナーフロアを見学しました。参加者は、一人ずつ耐熱板を持ってロータリーキルンに取り付けられたガラス窓をのぞき込み、炎が燃え上がる内部を観察し、驚嘆の声を発していました。
 次に、中央操作室を見学しました。セメント製造は24時間休みなく行われており、常に監視が必要で勤務は3交代制となっています。各班はリーダー、サブリーダー、工場内をチェックするパトローラー、中央操作室で設備の監視を行うオペレーターの4名でこの大きなセメント工場を動かしているそうです。中央操作室では、オペレーターがロータリーキルンの温度、設備の電流や圧力などの全ての数字をチェックしており、異常があった際には外にいるパトローラーに連絡し、設備の点検を行うことで安定した操業を可能にしています。基本的には自動制御されていますが、緊急時にはオペレーターが対処するほか、数字には表れない設備の様子はカメラで常時モニタリングされており、異常があればすぐに対応できる体制を取っているそうです。
 続いて、廃プラスチック粉砕設備を見学しました。ここは、石炭やコークスに替わるエネルギー材料となる廃プラスチック、車のシートに使われていた材料、木の廃材などを細かく砕く設備です。粉砕され、粉状になったものはロータリーキルンでエネルギー源として使われます。さらなる処理能力向上を目指して、4年前に金属と廃プラスチックを重さの違いで分ける設備を導入しました。東日本大震災で発生した木くずも受け入れて再利用しています。2015年度では、年間2万3000トンを使用し、化石燃料の熱エネルギーへの使用の低減に貢献しており、CO2で換算するとその削減量は2万5000トンにも及ぶそうです。
 最後に、仕上工程を経て、最終製品となるセメントがトラックに詰め込まれるセメントサイロを見学しました。1日平均して約3000トン、トラック200台以上のセメントが出荷されるそうです。

三菱マテリアルへの質問と回答

社会広聴会員:
セメントにはどのような種類があるのですか。
三菱マテリアル:
横瀬工場では大きく3種類のセメントをつくっています。1つは、ビルやダムなどの建築物に使われる建築土木用のセメントです。2つ目にセメント固化剤というものをつくっています。東日本大震災では、湾岸エリアで液状化現象が発生しましたが、そのような軟弱な地盤のエリアにビルなどを建てるためには、強固な基礎地盤をつくる必要があり、地盤改良剤として使われています。最後に、セメント高機能製品です。これはセメントに特殊な原料を加えることで、付加価値を持たせた製品となります。例えば、セメントは水と混ぜると熱が発生します。超高層ビルなど大量のセメントが必要となる場所では、この熱を防ぐためにあまり温度の上がらない低熱セメントといったものが用いられています。その他にも飛行場の滑走路や駅前のバスロータリーなど、より強度が必要とされる場所には特殊セメントが使われています。
 

社会広聴会員:
廃棄物を有効活用する際に苦労はありますか。
三菱マテリアル:
セメントは主にアルミ、シリカ、鉄、カルシウムからつくられています。そこに廃棄物を混ぜる場合、コンクリートの品質を維持しながら利用しなければなりません。例えば、一般ごみには塩化ビニールがよく混ざっていますが、この中に含まれる塩素は鉄筋コンクリートの鉄筋を腐食させてしまいます。その他にも、廃棄物の種類によって軟らかい、固い、水分量などにばらつきがあるため、そうした不安定な材料を継続的に使っていく技術が重要となっています。
 

社会広聴会員:
今後のセメント需要について教えてください。
三菱マテリアル:
横瀬工場のセメント生産量は1990年度に180万トンでしたが、2015年度は91万トンとピーク時の約半分程度となっています。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて建物の建設や道路整備が活発になるため、ある程度需要は伸びていくと考えています。また、老朽化したインフラの大規模な整備も計画されており、高機能製品である道路補修剤などの需要も伸びていくと考えています。また、こうしたセメント供給だけではなく、廃棄物の循環利用という面でも、「天然資源の温存」「最終処分場の延命」「温室効果ガスの削減」といった点で、循環型社会の形成に大きく貢献していきます。
 

社会広聴会員:
セメントの材料となる石灰石を武甲山で採掘していると伺いましたが、自然環境保全の取り組みはされていますか。
三菱マテリアル:
武甲山での石灰石採掘はグループ会社である菱光石灰工業が隣接する2社と協同で採掘しています。武甲山は下から見上げますと、段状となっている部分が白く見えますが、この部分にはフサザクラ、バッコウヤナギなど武甲山に沢山生えている木を植栽しており、順調に育っています。また、菱光石灰工業では、社有地内に武甲特殊植物園を設置し、専門家の指導を仰ぎながら、チチブイワザクラ、ミヤマスカシユリなどの稀少植物の保護・増殖活動を行っています。このような自然環境の保全活動を通じて、地元に貢献していきたいと考えています。

参加者の感想から

●懇談会に参加し、廃棄物の再利用、有効活用に非常に熱心なことが伝わりました。「人と社会と地球のために」というスローガン通りに実践している会社だと思いました。

●石灰石などの原料を高温で焼成する巨大なロータリーキルン内の灼熱の炎を間近で見ることができ、大変迫力がありました。

●セメントの原料等は国産であり、製造工程で廃棄物を再利用している事実を知り、循環型社会に貢献する、日本になくてはならない産業だと改めて納得しました。

●武甲山の採掘後も、植林するなど自然環境にも配慮していると聞き、地球に対する配慮が感じられました。

●一番驚いたのは資源リサイクルです。循環型社会の構築が世間の関心となっていますが、この工場で実際の現場を見てその実態に触れることで社会の進歩に目を見張りました。

三菱マテリアルご担当者より

 このたびは三菱マテリアル横瀬工場にご来場いただきまして誠にありがとうございました。 
 セメントは建物・道路・港湾施設等を建設する際に必ず使用される、私たちの生活に欠かすことのできない資材です。
 当工場では、セメントの製造・供給はもちろん、製造過程で行なわれる廃棄物処理を通じ、資源循環型社会の構築へ貢献し続けることが、重要な社会的責任であると認識しています。
 これからも安全と環境に配慮した操業に努め、地域社会に信頼される工場を目指していく所存ですので、引き続き皆さまのご支援とご協力のほどよろしくお願い致します。

お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
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