企業と生活者懇談会
2008年2月22日 香川
出席企業:タダノ
見学施設:志度工場

「タダノの取り組むCSR活動について」

2月22日、タダノ志度工場(香川県さぬき市)で「企業と生活者懇談会」を開催しました。
生活者27名が参加し、同社の事業概要、志度工場の概要について説明を受け、工場を見学しました。その後、同社のCSR(企業の社会的責任)の取り組みについて説明を受け、質疑懇談を行いました。
タダノからは、大薮修二取締役常務、西岡幸輝執行役員志度工場長、高木啓行企画管理部部長、企画管理部CSR推進グループの中山哲チームリーダー、山本善隆氏、栗原由美子氏が出席しました。
タダノからの説明
■タダノの歩み■
 タダノは、1919年(大正8年)に多田野益雄が創業した会社です。多田野益雄は、14歳から「ものづくりで世の役に立ちたい」と考え、溶接やメッキ加工などを中心に技術を身に付けました。10代後半から20代にかけては、失敗を繰り返しながら、溶接の新技術を追求しました。
 太平洋戦争の空襲による高松市内の焼け野原を見て、人に役立つもの、不足しているものをつくって喜ばれたいと思い、当時の生活に不可欠な瓦をつくる機械(製瓦機(せいがき) )や菜種油を搾る機械を製造し、戦後の復興とともに成長しました。
 1948年(昭和23年)に、高松市藤塚町に多田野鉄工所が誕生しました。間口が4間、奥行きが8間の小規模な工場でしたが、創業以来の技術を駆使し、JRの前身である国鉄に線路の枕木を簡単に補正できる機械を納入し、国鉄総裁賞を受賞しています。
 1955年(昭和30年)、当時アメリカの雑誌に紹介されていたクレーンに着目し、試行錯誤の結果、国内初の「油圧式トラッククレーン」を完成させました。この功績は、品評会で1等賞を受賞し、その評判が広がり、現在では国内のみならず世界を代表する「No.1クレーンメーカー」として業界を牽引する企業になりました。
 創業以来、タダノの経営理念は「創造・奉仕・協力」です。「創造」は、多田野益雄の精神である工夫による前進と誇り得る品質のための創意工夫によって、新しい価値を生み出していこうとする考えです。「奉仕」は、住みよい社会づくりに貢献することを指しています。「協力」は、ステークホルダーと共生することを表しています。

■タダノグループの事業概要■
 「クレーン」は、日本語で「鶴」のことです。クレーンの動作が、鶴の首から先の動きに似ていることから、「鶴=クレーン」と呼んだといわれています。タダノの基幹事業は、建設用クレーン、車両搭載型クレーン、高所作業車の3つです。
 建設用クレーンは、ビルや橋、高速道路を建てるときに使われています。市街地の建設工事で狭い場所でも力を発揮するラフテレーンクレーン、大規模都市開発や高架・橋りょう工事を支えるオールテレーンクレーン、走行性に優れたトラッククレーンなどの種類があります。これらクレーンの国内シェアは46%で第1位です(2007年3月期現在)。
 また、1998年(平成10年)には、国内最大の550トン吊りのオールテレーンクレーンを発売しました。
 車両搭載型クレーンは、トラックの荷台にクレーンを架装しているもので、輸送、荷下ろし、現場作業を手助けしてくれます。これも国内シェア49%で第1位です。車両搭載型クレーンは、荷物を積んで工事現場に行って下ろす作業が中心です。
 高所作業車には、デッキがあり、人あるいは機材を載せて、高い所で作業する機械です。電気工事や看板、内外装の取り換えなどで使われているのが特徴です。国内シェア22%で第2位です。人を乗せたデッキがスムーズに移動できるよう、伸縮制御にはファジー技術を採用しており、機械振興協会賞も受賞しています。
 高所作業車には上昇だけではなく、橋をまたいで下に伸びる機能を搭載した機械もあります。これは橋りょうの点検に使われています。単に上にだけではなくて、下に、横に移動する技術も新しくでています。

■志度工場について■
 タダノは国内に3つの工場があります。高松工場(香川県高松市)、志度工場(香川県さぬき市)、多度津工場(香川県仲多度郡多度津町)です。
 志度工場は、1980年(昭和55年)に新設した工場です。敷地面積は約20万平方メートルで約1000名の従業員が働いています。志度工場で生産しているのは、主に建設用クレーンで、ここ数年は海外への輸出比率が急速に高まっています(2007年3月期現在、海外売り上げ比率は42.1%)。
 志度工場では、クレーンに重要なさおの部分である「ブーム」の溶接やクレーンの組み立てなどを行っています。クレーンのかなめである「ブーム」の製造には、高い技術が必要になります。そのため工場の中で、ブームを伸ばしたり縮めたりするシリンダー部分とブームを起こしたり倒したりするシリンダーの組み立て作業や塗装作業には、有能な技術者の技が必要です。

■タダノにおけるCSR(社会的責任)とは■
 タダノがCSRに取り組むきっかけとなったのは、2004年(平成16年)12月のリコール問題が契機でした。これは同年8月、逆ステアリング機能を止めないまま運転していたクレーンの運転手が岡山県で乗用車とぶつかり、死傷者5名をだす事故を起こしたことに起因するものです。会見場では、原因の説明に終始する会社側と死亡事故を起こしたことへの謝罪を求める報道陣の間に軋轢が生まれ、タダノの対応に非難が集中しました。
 クレーンは工事現場などの限られた場所で使用され、かつ免許を有するプロが使用するとの前提で、特に現場での作業効率・利便性・安全性と走行時の安定性に配慮し、真面目に一生懸命やってきたとの自負から、「クレーンは現場移動のために公道を走るのは当然」との考えになっていました。この自負が、「プロであるべき、オペレーターの誤操作が原因」との認識に傾倒させ、安全装置の不具合が発生しているものの、タダノが「悪」とされる状況を受け入れることができず、謝罪を避け、会社の主張(会社の常識)を繰り返す会見となったのです。しかし、夜を徹しての関係者の議論の中で、「道路を走るのは当然」と言ったタダノの考えに誤りがあり、「道路を走行させてもらっている」との考えに変化し、会社の常識と社会の常識とのギャップに気付かされることとなったのでした。
 その後記者会見を行い、「プロであるべきオペレーターのミスが原因」との判断に誤りがあり、「本来安全であるべき公道走行をする車両を生産していながら、一般社会の方々に不安とご心配をお掛けした」ことを謝罪しました。本件は、単にリコール制度といった法令を遵守するにとどまらず、広義のコンプライアンスを意識すべきことに繋がり、会社創立時からの『経営理念』に立ち返り、企業としての社会的責任を果たし、かつ社会に貢献できる会社づくりを目指して一からの出直しを図る「原点回帰」となり、翌年4月の組織改編において「CSR推進室」が新設されることに繋がりました。
 創業者・多田野益雄が提唱した「大調和」。これは企業が社会や人との調和の中に生かされている存在であるという考え方を表した言葉です。タダノは、社員一人ひとりが経営理念の「創造・奉仕・協力」に沿った企業活動をするべく様々なCSR活動を推進し、「大調和」の精神を脈々と受け継いでいます。

■社会への取り組み■
 タダノは、「他社には真似できないタダノらしい活動で社会に貢献したい」という考えで様々な形で社会への取り組みが行われています。中でもタダノは、独自のメセナ活動を実施しています。その始まりとなったのは、イースター島のモアイ像の修復工事でした。事の発端は、1988年(昭和63年)のテレビ放映でした。イースター島知事の「クレーンがあれば倒れたモアイ像を起こすことができる」という内容を偶然に社員が見ていたのが始まりです。
 本業に通じるメセナとして、1990年(平成2年)には駐日チリ大使へ計画を提案し、協力することが決まりました。重機の搬送方法や世界的な文化遺産の修復は、着工までに様々な問題がありましたが、1992年(平成4年)に発足した「モアイ修復委員会」のもと、世界5カ国(日本・米国・チリ・ポーランド・イタリア)の考古学者、修復専門家が集結し、作業が始まり、 1995年(平成7年)にはアフ・トンガリキの15体のモアイ像が修復されプロジェクトは終了しました。
 2007年(平成19年)には高松塚古墳の石室解体作業にも解体治具の開発および技術支援として携わりました。もとは、イースター島のモアイ像修復にかかわりお世話になった方々から依頼されたためで、16個の石を無事解体し終えたのは8月でした。
 また、2008年1月31日に記者発表されましたが、カンボジア・アンコール遺跡群での修復作業支援のためタダノの製品を寄贈しました。
タダノへの質問と回答
社会広聴会員:
クレーンとパワーショベルの製造では、どのような違いがありますか。
タダノ:
クレーンとパワーショベルは、建設機械という概念でいうと、兄弟のような感じがしますが、製品そのものが違います。一番の違いは、クレーンの方がハイテクであることです。世界で見れば、ショベルは1つの製品を世界中どこへでも持っていけます。しかし、クレーンは道路を走行するための規格、基準、法律に合致しなければなりません。米国は米国の、EUはEUの、あるいはアジアでも、そのルールは明確に決められているので、それぞれの国に対応したスペックの製品でなくてはなりません。同じ建機でも、ショベル系とは似て非なるものです。
 
社会広聴会員:
建設機械業界の将来の展望を教えてください。
タダノ:
日本の建設投資額のピークは、80兆円でした。現在は約50兆円で減少傾向です。内訳は、公共投資が減って、民間投資は回復傾向にあります。我々の認識では、公共投資はショベルや用地買収の費用が多く、クレーンへの投資の範囲は限られています。反面、民間投資に分類される設備投資が増えることは、クレーンの活躍する範囲が広がることを指します。クレーンメーカーにとって民間設備投資が回復傾向にあるので、将来を悲観することはありません。
 
社会広聴会員:
クレーンの修理などはどのように行っていますか。
タダノ:
国内には、400カ所のサービスポイントがあり、全国で対応しています。海外では、代理店制度を導入しています。最近は、ウェブで部品の注文ができるようになり、効率化が進んでいます。  志度工場や多度津工場で生産した製品が世界に出荷されますので、アフターサービスや機能説明をするサービスマンは3カ月くらい、ある一定の地域を回って、代理店のフォローをしています。特に海外の代理店に対しては、技術協力が中心です。技術協力は、現物を見ながら、リスク教育を中心に行っています。
 
参加者の感想から
●日本のクレーンの半分がタダノ製であることに驚きました。不況の1962年(昭和37年)に多田野鉄工の景気が良いと聞いたのがタダノとの出会いであり、その後40数年、順調に成長された様子が本日の見学と説明でよく分かりました。

●工場内は整とんされていて、安全に見学ができました。世界遺産にもタダノのクレーンが活躍されているとのこと、これからも続けていかれることを望みます。

●CSRへの取り組みは大変勉強になりました。地域住民や社員に対しての心遣いがよく分かりました。ここまでやるから一流企業といえるのだと思います。

●企業が見ているグローバル景気と経営、それを踏まえた経営の方向や業績動向などを、かなり丁寧に説明していただけたことが大変参考になりました。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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