企業と生活者懇談会
2007年10月19日 茨城
出席企業:キヤノン
見学施設:取手事業所

「グローバル企業の経営理念とその活動について」

2007年10月19日、キヤノンの取手事業所(茨城県取手市)で「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員19名が参加し、同社の事業概要、 CSRなどについて説明を受けました。その後、同事業所の説明を受け、併設する複写機製造の取手工場を見学し、質疑懇談を行いました。
キヤノンからは、本間道博広報部長、田中節子広報第二課長、斉藤茂映像事務機取手生産革新推進部担当部長、今村義広取手総務部担当部長、中野信男映像事務機取手工場管理部専任主幹、柴山邦雄取手環境管理課長、広報第二課の横山真彩氏が出席しました。
キヤノンからの説明
■キヤノンの歩み■
 1933年(昭和8年)、東京の麻布に「ライカ」に負けない高級小型カメラ作りの研究を目的とした、精機光学研究所の設立がキヤノンの歴史の始まりです。その翌年には、国産初の35ミリフォーカルプレーンシャッターカメラ「KWANON(カンノン)」を試作し、1935年(昭和10年)には「ハンザキヤノン」を発表しました。このとき、世界に向けた製品提供をすでに視野に入れ、製品名の「カンノン」を英語で「標準・規範」を意味する「Canon」へ変更しました。
 技術開発と技能鍛錬の結果、1937年(昭和12年)には、精機光学工業株式会社が創業されました。精機光学工業は、1947年(昭和22年)キヤノンカメラ株式会社へと社名変更し、カメラ以外の事業分野にも進出するとの意気込みの下、さらに1969年(昭和44年)にキヤノン株式会社に社名変更しました。
 キヤノンは今年(2007年)で創業70周年を迎えました。企業理念である「共生」と行動指針「三自の精神」(自発・自治・自覚)に基づき、売上高や株式時価総額、純利益などの主要経営指標すべてにおいて世界トップ100社に入ることを目指しています。

■キヤノンの事業概要■
 キヤノンは、2006年(平成18年)連結ベースで、売上高4兆1568億円、従業員約12万人、連結子会社219社のグローバル企業です。現在のキヤノンの事業概要は、大きく2つの側面で見ることができます。ひとつは「事業の多角化」、もうひとつは「グローバル化」です。
 事業の多角化は、1964年(昭和39年)に発売した世界初のテン(10)キー式卓上電子計算機(電卓)が出発点です。当時の電卓は、桁ごとに10個のキーがありましたが、キヤノンは、テンキー式の電卓を世界に先駆けて開発しました。しかし、数字表記の赤色ダイオードの不具合などで、苦難の時期もありました。そのような状況の中でも、カメラ製造で培われた技術開発と技能鍛錬を進めた結果、1970年代には、プリンターや複写機(コピー機)などの開発に成功し、多角化をさらに進めています。現在の売上高に占める事業別シェアは、カメラ25%、コンピュータ周辺機器34%、オフィスイメージング機器28%、光学機器10%となっています。
 グローバル化においては、創業当時の「世界一のカメラを創る」の下に、1955年(昭和30年)にニューヨーク支店を開設しました。その後、欧州や中南米にも進出し、製品と顧客サービスの徹底を進めています。売上高に占める地域別シェア(2006年)は、日本22%、米州31%、欧州32%、その他 15%となっています。従業員数では、日本43%、米州9%、欧州9%、その他39%となっています。近年は、アジアでの生産と販売が拡大傾向にあり、中国や東南アジアでの生産体制を強化しています。
 生産拠点の移行は、国内産業の空洞化が危惧されますが、キヤノンのグローバル化は、国内の生産体制も増強することでその課題を解消しています。国内の従業員を見ても、直近3年で42.6%、42.1%、42.8%とほぼ安定した状態を保っています。これは、事業規模の拡大に応じて、積極的な海外展開だけではなく、国内展開も並行していることの表れです。海外と国内生産のバランスを考えながら最適な生産配分を行うことが、キヤノンのグローバル戦略であり、「ものづくり」に対する考え方です。

■キヤノンのCSRへの取り組み■
 キヤノンのCSR活動は、「共生」の理念の下、各国、各地域の文化の多様性やニーズに沿って行う活動とともに、キヤノンの製品、人材、技術、知識などのリソースを活用することがベースです。
 企業が事業活動において、常に地球環境への配慮、環境負荷を軽減することに取り組むことや経済発展と環境保全を同時に果たすことが、21世紀に発展する企業にとって、絶対不可欠な条件と考えています。
 QCD(品質・コスト・納期)の保証に、E(Environment:環境)への保証が加わり、EQCDという考え方がグループ全体の一つの柱となっています。また、独自目標として、2000年(平成12年)を基準に2010年まで、売り上げが同じであれば、二酸化炭素の排出量を半分に削減することを掲げ、省エネ・省資源・有害物質廃除などの取り組みを進めて、資源生産性の最大化に努めています。

■取手事業所について■
 取手事業所は、1961年(昭和36年)に、カメラの量産工場として操業を開始しました。現在では、複写機やレーザビームプリンタなどキヤノンの電子写真技術の中心拠点になっています。複写機事業の設計、試作、生産、品質保証部門といった開発から製造までを1カ所に集結した事業所です。取手事業所では、複写機とプリンターなどで使用されるトナー(粉末インク)などの開発・生産もしています。
 また、第一種エネルギー管理指定工場のため、エネルギー効率と環境保全が常に管理されています。具体的には、事業所全体にモニタリングシステムを導入しています。このシステムは、エネルギー効率の状況を常に従業員全員が把握して、日々改善に努めるシステムです。

■取手工場(複写機製造)のセル生産方式■
 キヤノンが進める生産革新は3つあります。それは、(1)徹底した無駄を排除(2)市場直結型で柔軟性のある生産体制を確立(3)人材の育成、の3点です。
 取手工場の特徴は、「ベルトコンベア方式」ではなく、「セル生産方式」を採用しています。英語で「細胞」を意味する「セル」生産方式とは、少人数が1つの区画(セル)で1つの製品を完成させるシステムで、市場の要求に沿ってフレキシブルに対応できます。
 セル生産方式の導入により、顧客の注文に応じた製品のカスタマイズ化が実現しました。また、需要変動に合わせた製造が可能になり、在庫圧縮ができるようになりました。従業員を対象としたアンケートによれば、一人当たりの持ち場が増えることを負担に思う従業員がいることも分かりましたが、達成感や責任感が生まれ、活気ややりがいなどが生まれました。
  そこで、より一層モチベーションを高めることを目的に、優秀な技能者を認定するS級マイスターを頂点とした資格制度を導入しました。従業員はS級を目指して技能の鍛錬を行っています。マイスターになると、年1回、社長から会食に招待されます。これによって、工場視察の際、社長がマイスターの顔を覚えていて声を掛けるなど、モチベーションのひとつになって、技能向上の促進に向けた後輩の指導や改善の進め方などが活発に議論されるようになりました。
キヤノンへの質問と回答
社会広聴会員:

薄型テレビの新ディスプレイ技術「SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)」の開発に向けた将来の展望を教えてください。


キヤノン:

ディスプレイの新しい技術は、非常に重要と認識しています。他方、プラズマや液晶の量産化で、過剰ともいえるくらいの競争環境にあり、サバイバルゲームの様相を呈しています。SEDも投資と発売時期のタイミングを一歩間違えると、キヤノンにとって、大きなリスクになります。現在、投資も研究開発も続けていますが、訴訟と量産化の問題が解決できていません。その中で、かなり慎重に、ただし、絶対にあきらめずに開発を続けていくことが今のフェーズです。我々は、SEDの画像の素晴らしさに自信を持っています。


社会広聴会員:

取手工場で進めている「マイスター制度」は、海外の工場でも導入しているのでしょうか。


キヤノン:

マイスター制度そのものは導入していませんが、それと同等あるいは類似の認定制度が、拠点ごとにあります。海外事業会社は、独立した会社になっていますので、その国に合った認定制度を導入し、人材の育成をしています。


社会広聴会員:

『キヤノン サステナビリティ報告書 2007』によると、キヤノン全体の二酸化炭素排出量が、削減できていないようですが、その理由を教えてください。


キヤノン:

生産の拡大に伴い、工場数が増加しており、省エネルギー対策が追い付かなかったことが理由です。キヤノンは、従来の削減努力に加え、今年度からグローバル環境推進本部が一括して環境投資をすることによって、業界全体の数値目標を達成しようとしています。


社会広聴会員:

取手事業所は、様々な製品を扱っていますが、事業所ごとに収益などの目標は、あるのでしょうか。


キヤノン:

取手事業所は、EQCDと製品クレームの有無を評価の対象としています。品質やコストなど、それぞれに目標を掲げて、それに達しているかどうかを管理しています。


参加者の感想から
●キヤノンのような代表的な企業のセル生産システムを工場で直接見聞できたことは極めて有意義でした。

●取手事業所の生産現場を拝見し「三自の精神」の具現化を感じ取りました。セル生産とマイスター制度の有機的結合はその稀なるものと思います。

●最大の驚きは人材の活用でした。工場で働いている人はほとんどが若い人で、高度のマイスター制度に合格した人が男女を問わずいるということは、教育制度が優れているものと思いました。

●取手事業所の淡いグレーの制服が、ペットボトルで作られていることに温かみが感じられました。環境に配慮し、グローバルな優良企業を目指していることに強い思いが感じられました。

●「不要品を購入しない」「購入の際は廃棄のことを考慮する」「大事に長く使用する」「ほかのことに使えないかを考える」「私物は持ち込まない」という考え方は、一般家庭においても参考になりました。

●工場の静かなことに驚きました。エアー工具の排気管のにぎやかさは、現場の活気を示すという私の古い常識は吹っ飛びました。静かな方が集中でき、コミュニケーションもとりやすいと気付かされました。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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