企業と生活者懇談会
2010年5月18日 東京
出席企業:三菱地所
見学施設:新丸の内ビル

「丸の内の街づくり」

5月18日、東京都千代田区の新丸の内ビルで、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員23名が参加し、三菱地所の会社概要について説明を受けた後、丸の内の街並みを見学、続いて質疑懇談を行いました。 
三菱地所からは、執行役員の清沢光司広報部長、広報部の石川直副長、長町真理子氏、街ブランド企画部の城所勝臣副長、間瀬祐希氏、猪飼裕美氏が出席しました。
三菱地所からの説明
■三菱地所の概要■
 三菱地所の設立は1937年(昭和12年)ですが、街づくりの歴史は1890年(明治23年)に三菱社が丸の内陸軍省用地や神田三崎町練兵場土地の払い下げを受け、丸ノ内建築所を設置したのが始まりです。1893年(明治26年)には三菱二代目社長の岩崎彌之助が三菱合資会社を設立し、1894年(明治27年)、丸の内最初の事務所建築である第一号館が竣工しました。1923年(大正12年)には丸ノ内ビルが竣工、その後も100年以上にわたって街づくりに取り組んでいます。現在はビル、住宅、資産開発、海外、設計監理、注文住宅、ホテル、不動産サービスの各事業を手掛けています。 
 
■常に変化する丸の内■
 戦後の高度経済成長期やそれ以前に建てられたビルが建て替え時期を迎え、1998年(平成10年)から東京駅前周辺を中心に丸の内エリアの再構築を開始しました。1923年に建てられた丸ノ内ビルは2002年(平成14年)に建て替えられ、その後、2003年(平成15年)に日本工業倶楽部会館・三菱UFJ信託銀行本店ビル、2004年(平成16年)に丸の内オアゾ、2005年(平成17年)に東京ビル、2007年(平成19年)に新丸の内ビル、ザ・ペニンシュラ東京、2009年(平成21年)に丸の内パークビル・三菱一号館と建て替えが進んでいます。今後は有楽町から大手町エリア全域に再構築の流れを広げるとともに、丸の内がビジネス機能だけではなく、世界中から人や情報が集まり、交流することで新しい価値が生まれる多機能な街になるようさらに深化することを目指していきます。 
 
■街づくりの先進性■ 
 丸の内の街づくりは、公民協調によるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)により行われています。1988年(昭和63年)に地権者(企業者)を中心に「大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会」を設立して一緒に街づくりを考える場をつくりました。そして、街づくりを行う中で制度面の変更などが必要なことから、行政などの参加を得て、「大手町・丸の内・有楽町まちづくり懇談会」を1996年(平成8年)に設立し、エリアの街づくりの基本となる「まちづくりガイドライン」を策定しました。さらに、2002年にはNPO法人「大丸有エリアマネジメント協会」が誕生し、個人の街づくりへの参加も進めています。現在では、丸の内は企業(地権者)・就業者・行政・NPOなどがパートナーシップを築き、共通の価値観を持って街づくりを進めるという、世界でも例をみない先進的な試みに取り組んでいます。 
 
■丸の内のシンボル三菱一号館の復元■ 
 丸の内最初のオフィスビル「三菱一号館」は、1968年(昭和43年)に耐震性や地下鉄工事などの地盤問題により、いったん解体されました。丸の内の再構築を進めるに当たり、街の歴史を再確認するためにも、三菱および丸の内のシンボルである赤レンガ造りの三菱一号館が欠かせないと考えました。レンガの製法、積み方をはじめ、当時の設計図に基づき、可能な限り忠実に復元作業が進められました。こうして、三菱一号館は、元と同じ場所に文化交流拠点となる美術館としてよみがえりました。 
 
■環境に配慮した街づくり■
 丸の内の再構築では、環境にも配慮しています。具体的な事例としては、東京駅前周辺を東京湾から都心への風の通り道として活用するため、東京駅の上空を風が抜ける計画を立てています。東京駅前の行幸通りでは、東京都と協働して保水性舗装を採用し、雨水や丸ビルの再生水を流し、舗装面からの蒸散効果による地表面の温度抑制とヒートアイランド現象への配慮をしています。また、丸の内パークビル・三菱一号館の間の広場には緑や水、彫刻を配置し、就業者、来街者の毎日にゆとりをもたらす空間としています。さらに、建物の柱にも緑化対応を施し、気温が28度になると自動的にドライミストが発生するなど、「憩いと潤いの広場」を提供しています。 
見学の様子
■丸の内エリアの見学■
 丸の内の歴史についてのDVDを観賞し、千代田区全体の1000分の1の模型を見ながら街の全体像の説明を受けた後、丸の内エリアを歩きました。メーンストリートの丸の内仲通りには様々な工夫がなされていました。千代田区などと連携し、歩道と車道合わせて幅21メートルの一体的な空間となるよう、アスファルトではなく、石貼りの路面にし、街路樹も、交差点では信号待ちの人のために木陰が大きくなるように大ぶりの木を選ぶなど、様々な種類を植えています。また、様々な花を植えたプランターや彫刻などを設置して、「都市のリビングルーム」というコンセプトを実現している様子を見学できました。丸の内エリア内は、ビルの中水(雨水などの再利用水)も、街路樹への散水や路面の冷却に使い節約しています。 
 観光への取り組みとして無料で丸の内エリアを巡回する電気(ハイブリッド)で走るシャトルバスにも乗車しました。 
三菱地所への質問と回答
社会広聴会員:
三菱地所グループのコンセプトについて教えてください。 
三菱地所:
街づくりを通じて社会に貢献することを目標に、活動しています。
 
社会広聴会員:
環境配慮の具体的な取り組みは。 
三菱地所:
街づくり全体での環境対応(「風の道」など)のほか、各ビル単位でも様々な取り組みを行っています。例えば、ビルの屋上塗装を高反射型の熱をためない仕様にしたり、屋上に太陽光を追尾する装置を設置してルーバーやブラインドの角度を変えられるシステムを導入しています。窓にはペアガラスの間に風を流し、暖気を滞留させないエアフローウィンドウを採用しています。室内の照明は、高反射型の効率の良いものを利用したり、LED照明の採用、さらに基本照度は低くして各自が机上のライトで照度を調整できる仕組みを取り入れたりしています。空調は輻射空調の採用を実験的に始めました。壁や天井部分に冷水を流して壁と天井を冷やし、人間との熱移動によって体感温度を下げるもので、気温以上に涼しく感じることができます。 
 
社会広聴会員:
新丸の内ビルに生グリーン電力を導入したプロセスを教えてください。 
三菱地所:
グリーン電力は水力、バイオマス、風力、地熱などから発電し、二酸化炭素を出さない電力です。従来、グリーン電力は電力証書を買う形で取り入れていました。しかし、新丸ビルでは4月から青森県の風力、水力で発電した電力などを直接受電する仕組みをスタートしました。グリーン電力をダイレクトに受けるので「生グリーン電力」と呼んでおり、100%再生可能な電力を生グリーン電力の形で使用するのは、日本で初めての事例になります。これにより年間の二酸化炭素排出量が3万トンから1万トンに削減され、東京都の独自の条例にも対応した環境への取り組みとなっています。 
 
社会広聴会員:
コンセプトづくりで気に掛けている点を教えてください。 
三菱地所:
タイムスパンの取り方と可変性が重要ではないでしょうか。どんな街にするか、徹底的に考えることも大切ですが、実際に街をつくり、10年経過したときに当初のコンセプトと一致している部分と、そうでない部分があるのは避けられないことです。ある意味で、街づくりには正解がないともいえます。20年、30年先にどうなるかを考え、場合によっては柔軟に軌道修正できる余地を残しておくことも必要だと認識しています。また、街づくりは長期的なプロジェクトで、終わりがありません。今後もどんな人がどのように使うかをきちんとイメージし、使う人が求める働きやすい空間をつくっていきたいと思います。
 
社会広聴会員:
高齢化社会の街づくりについての考えをお聞かせください。 
三菱地所:
バリアフリーは積極的に取り組まなくてはならないと考えています。高齢者・障害者・外国人と様々な方に対応できるように案内表示の文字サイズの工夫や道の段差をなくすことなどに取り組んでいます。まだ改善の余地はあると思いますので、利用者からの意見を聞き、対応していきたいと考えています。 
 
社会広聴会員:
再構築でビルが高層化し、テナントが埋まらないことはないのでしょうか。 
三菱地所:
我々デベロッパーとしては、ビルの魅力、街の魅力を上げていく努力をしていくのが基本です。また、ご入居後もテナントさんとコミュニケーションを密に取ることが大切と考えます。ただ、より重要なのは、東京や日本の都市の魅力を上げ、アジアの諸都市と比較しても優位を築いていくことであり、その点では、国を挙げて日本の国際競争力を高めていければと思います。当社でも、グローバルな企業が働きやすい環境整備に取り組んでいきます。 
 
社会広聴会員:
ビルの耐震の対策はどうなっていますか。 
三菱地所:
ビルの耐震対策は必須の課題であり、耐震性については確認、対応済みです。また就業人口が多いため、帰宅困難者への対応が重要であり、官民連携して対応策を考えています。 
 
参加者の感想から
●三菱地所の自社の利益追求ばかりでなく、環境や日本経済全体を見据えた経営方針を伺えて大変良かったです。 
 
●「丸の内の大家さん」というキャッチフレーズにたがわず、丸の内の管理はもちろん、面倒見の良さが伝わってきました。 
 
●都心の街づくりを確かめることができ、丸の内で働く人とそこに何かを求めて集まってくる人との調和を考えたコンセプトがうまく表現できていると思いました。 
 
●かつてのビジネス街が「商業、文化、観光」の発信地に変身していました。活用度が高まり、行ってみようという機会が増えそうです。 
 
●機会があれば、丸の内街づくりのNPOに個人として参加してみたいと思いました。 
三菱地所ご担当者より
街づくりといっても、一般の方には仕事内容がイメージしにくいと思うので、私たちの熱い思いを添えて具体的にご説明することに留意しました。皆さんのご意見にこちらも新しい発見もあり、有意義な機会となりました。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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