企業と生活者懇談会
2011年11月2日 北海道
出席企業:大成建設
見学施設:大成札幌ビル

「社会の持続的発展に貢献する建設技術」

2011年11月2日、北海道札幌市の大成建設大成札幌ビルで、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者12名が参加しました。同社および大成札幌ビルの概要の説明を受けた後、大成札幌ビルを見学し質疑懇談を行いました。
大成建設からは、札幌支店の小西克己管理部長、川股早苗設計部長、角谷隆之管理部管理室長、伊藤肇設計部シニア・エンジニア、井上智宏管理部管理室課長代理、佐藤政広管理部管理室主事、本社の社長室コーポレート・コミュニケーション部CSR推進室の小林修次長が出席しました。
大成建設からの説明
■大成建設の概要 ■
 大成建設は、建築・土木を中核に、都市開発事業、エンジニアリング事業などを展開するゼネラル・コントラクターです。企画設計から施工、完工後の補修、解体・建て替えに至る建造物のライフサイクルすべてに携わり、海外にも活動の場を広げています。 
 前身の大倉組商会は創業の7年後(1880年(明治13年))には北海道に進出し、樺戸集治監(樺戸郡月形町)を着工しました。以来130年余りにわたり北海道の開拓・発展とともに歩んできました。全国に知られる大倉山シャンツェ、札幌ドームも当社の施工です。 
 
■大成札幌ビルの概要■
 大成建設グループは「人がいきいきとする環境を創造する」をグループ理念に掲げ、持続可能な社会の構築を目指しています。オフィスビルの環境性能を高めることを重要課題と認識し、技術を磨いてきました。 
 大成札幌ビルは、当社が推進する「スーパーエコビルプロジェクト」の第一号です。2010年度(平成22年度)には他社に先駆けてハーフ・カーボン建築(二酸化炭素(CO)排出量52%削減)を達成しました。CASBEE(環境配慮、快適性や景観への配慮などを含む建物品質を総合評価するシステム)でも最高のSランクに格付けされています。 
 地下1階、地上8階、敷地面積863平方メートル、一部鉄骨を含む特殊鉄筋コンクリート造です。施工に際しては旧ビルの地下躯体を山留め(周囲地盤の崩壊防止)に利用することで産業廃棄物の削減や工程短縮につなげ、2006年(平成18年)7月より業務を開始しました。 
 外観は、縦方向に貫く複数のコンクリートの壁柱と細長い窓が特徴です。窓面積比率を19%までに抑えているのは外気温からの影響を防ぐためです。連立する壁柱、オイルダンパー、そして壁柱同士をつなぐ鋼材ダンパーの3要素で構成された構造システムが、知的制振システム「TASMO」です。高い耐震安全性と、柱の少ない開放的な空間をもたらしています。 
 高い環境性能を実現する技術のひとつが「北国空調システム」です。外断熱方式を採用し、窓には高遮熱高断熱ガラスを使用。床には冷温水配管を埋め込み、躯体を直接冷却・加熱できます。こうした技術により空調機は小規模で済んでいます。夏はフリークーリング(冷却塔による冷水製造)や自然換気など、北海道ならではの冷涼な外気を有効活用します。 
 4階から8階までの吹き抜け空間「エコボイド」は、環境配慮型ビルの象徴です。自然エネルギーを有効に活用する技術が凝縮されています。一つは太陽光を室内に送るシステム「T-Soleil」。屋上に設置した太陽光自動追尾型のミラーが、太陽の光をエコボイド内のミラーに照射し室内の奥まで光を届けます。照明用電力の20~30%の削減に貢献しています。もう一つは自然換気システム。トップライトの換気窓は自動開閉します。各階の窓下に設けられた外気取入口を開けると、煙突効果でエコボイド内に上昇気流が発生し、気持ちのいい風が吹き込みます。 
見学の様子
 コンクリート打ち放しの壁柱とスケルトン天井に架かる長い梁。構造の機能美が際立つ室内空間です。エコボイドに進むと陽の光が溢れます。T-Soleilはトップライトだけの採光に比べ、執務スペースに自然光を効果的に採り入れられるようになり、特殊なミラーのおかげでまぶし過ぎることもありません。省エネのため窓が小さくなっている点は、T-Soleilによって十分に補われていました。
 建物1階ではTASMOを見学しました。機械の一部のような大型オイルダンパーが、動かないはずのビルに組み合わされている様子は新鮮で、多くの参加者が仕組みを熱心に質問していました。 
大成建設への質問と回答
社会広聴会員:
ハーフ・カーボン建築達成に向けての、努力や苦労を教えてください。 
大成建設:
省エネルギー法のすべての基準値をぎりぎりで満たす仮想のビルのエネルギー消費量を計算し、計画時はその40%削減の消費量を目指しました。半減達成のためには、設計上の工夫のみならず、竣工後のビル運用面の努力も求められました。 
2007年度(平成19年度)実績は41%と当初の目標を達成しましたが、その後順調に消費量を減らし、2010年度に52%を達成しました。照明を小まめに点・消灯したり、外気を上手に利用するなど空調の運用がこなれてきたことが改善の背景にあります。 
 
社会広聴会員:
このビルの環境技術は、大成建設が施工した他のビルでも採用されていますか。 
大成建設:
2010年竣工の横浜のみなとみらいセンタービルではT-Soleilの発展型を採用しています。また、大成札幌ビルには採用していませんが、「場所打ち杭利用地中熱空調システム」という省エネルギー建築技術を使用したビル(前川製作所新本社ビル)が2008年(平成20年)に竣工しました。基礎杭に沿って這わせたパイプを通じて、外気温度より安定している地中の熱を冷暖房に応用する空調システムです。いずれのビルもCASBEEのSランク認証を取得しています。 
なお、当社が北海道で施工したビルのなかで、最新の省エネルギー建築技術を採用したものは、現時点ではこの大成札幌ビルのみとなっています。
 

社会広聴会員:
環境性能の高い建築技術を持つ国はどこですか。 
大成建設:
建物の省エネルギー基準が厳しく、国民の環境意識も高いドイツが先進国といわれます。英国、米国も、日本に次ぐ技術を有すると考えられています。
 

社会広聴会員:
ダンパーを利用した制振技術は初めて目にしましたが、仕組みを教えてください。耐震補強用として古いビルの外壁に組み込まれている「筋交い」の鉄骨とは違うのですか。 
大成建設:
ダンパーを使用する制振技術は他社にもありますが、当社のTASMOはダンパー(オイルダンパー・鋼材ダンパー)と壁柱との組み合わせにより実現する点で独自の制振システムです。 
普通のビルは、柱と梁を接合した長方形の骨組みで構成されており、重力方向の縦の力と、地震が引き起こす水平方向の力の両方をこの骨組みで引き受けます。古いビルの筋交いや耐震壁はこの骨組みに生じる地震の揺れを防ぐためのものです。 
一方TASMOは、壁柱・梁といった躯体は重力方向の力だけを負い、水平方向の力はダンパーが吸収し、揺れを制する仕組みです。鋼材ダンパーは比較的軟らかい鋼でできており、変形することで地震エネルギーを吸収します。その変形度合い・疲労度はひずみ計により常時モニターし、万一必要があれば交換できるようになっています。また、TASMOのダンパーは、古いビルの耐震補強用としても使用することができます。
 
社会広聴会員:
ここのビルについて、社員の方に不評な点があれば教えてください。 
大成建設:
夏場にしばしば、上の階から「暑い」というクレームが寄せられました。吹き抜け構造ゆえに温かい空気が上階に昇りやすいのです。フロア別に温度設定を変えることにより、改善が進みました。 
 
社会広聴会員:
環境経営の考え方や進め方を教えてください。 
大成建設:
環境経営目標である「大成アジェンダ」を毎年設定し、項目別に活動内容と目標値を立てて、実績を管理・評価しています。一例ですが、CO排出量の削減という項目に対して「施工段階のCO排出量の削減(1990年度比で40%)」という目標があります。その目標はさらに、各本部、作業所における「CO排出量の把握・管理」「エコドライブ研修会の実施」といった業務として取り込まれ、遂行されています。 
社員一人ひとりが問題意識を持てるよう、様々な機会や仕掛けを通じて啓発に努めています。希望する社員が日常生活のCO排出量をカーボンオフセットの対象として1トン以上の排出権を購入できる仕組み「Taisei 1ton Club」もそのひとつです。会社が個人の分と自社分とを合わせて一括購入することで、社員のカーボンオフセット運動への参加を容易にする日本で初めての試みです。
参加者の感想から
●開拓期から実績を重ねてきた大成建設、21世紀は環境に配慮したFRONT OFFICEで北海道の未来を築いていると感じました。モダンな内装の会議室に神棚があるのが建築会社らしく、少しほっとしました。 
 
●ユニークな外壁デザインの中に様々な新機能が導入されていることを知りました。大成建設のデザイン・機能性に対するプロフェッショナルな思想が凝縮されたビルだと感じました。 
 
●北海道との深いつながりを知り、大成建設をとても身近に感じます。大成札幌ビルの省エネ技術が、今後札幌市内に広がっていくことを期待しています。 
 
●海外で手掛けたプロジェクトの紹介映像を見ながら「この建物も大成建設なのか」とびっくりしました。今後も『地図に残る仕事。』を期待しています。
大成建設ご担当者より
 「企業と生活者懇談会」は、ステークホルダーとの対話を通じ、社会に原点をおいて企業の在り方を考える機会であると思います。参加者の方々から頂いたご質問やご意見は私どもにとって貴重な情報になりました。また、応援のお言葉も頂戴し勇気も頂きました。社会とともに持続的成長を目指すために、建設業に対する期待は高く、責任の重さをあらためて感じています。今後も「企業と生活者懇談会」に継続的に参加し、社会とのコミュニケーションを図りたいと思います。 
お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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