企業と生活者懇談会
2009年10月5日 東京
出席企業:大林組
見学施設:東京スカイツリー建設現場

「技術と総合力で未知の高さに挑む」

2009年10月5日、大林組の東京スカイツリー建設現場(東京都墨田区)にて、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員18名が参加し、大 林組の企業概要や環境保全活動、東京スカイツリーの工事概要などについての説明を受けた後、建設中の東京スカイツリーを見学し、質疑懇談を行いました。
大林組からは、岸田誠専務取締役東京建築事業部長、新タワー建設工事事務所の鳥居茂執行役員総合所長、田渕成明作業所長、技術本部の田村達一専門技師、地球環境室の出羽伸次室長、水野良治課長、広報室の田口信彦室長、田籠裕子課長が出席しました。
大林組からの説明
■大林組のあゆみ■
 大林組は、創業者の大林芳五郎が最初に受注した、阿部製紙所工場の工事着工の年、1892年(明治25年)を創業の年としています。当時の社名は土木建築請負業「大林店」で、1904年(明治37年)に現在の「大林組」と改めました。
 同社が大きく発展する契機となったのが、大阪市築港大桟橋の工事です。これは当時の大阪市の年間予算20年分を費やす大工事で、この主要な部分を受注したことが、後の発展につながりました。その後、関西の事業者として唯一入札に参加した東京中央停車場(現在の東京駅)の工事を落札・受注し、首都圏への本格的な進出を果たしました。また、最近では、東京湾アクアラインや明石海峡大橋、六本木ヒルズの森タワーなどの工事を施工しました。

■建設工事の概要■
 建設工事は、工事を計画し、発注する発注者と、その計画を図面に起こす設計者、そして、その設計図に基づき、施工を担当する建設会社の3者によって、通常行われます。東京スカイツリーの場合は、発注者は東武タワースカイツリー、設計者は日建設計、施工者が大林組です。

■大林組の環境保全活動■
 大林組は環境保全のために、地球温暖化対策や建設廃棄物対策など、様々な対策を実施しています。
 地球温暖化対策については、建設現場での二酸化炭素排出削減の取り組みとして、省燃費運転を実施しています。関係者が徹底して、急発進や急減速、波状運転などを控えることで、平均して2 ~ 4 割の燃費改善効果が出ています。また、建設後の運用段階で排出される二酸化炭素を削減するため、省エネビル総合評価システム「エコナビ」を提案しています。これは、省エネ投資の費用対効果を調べ、その環境保全性と経済性の総合的な観点から、ベストの投資を提案するもので、顧客の事情に合わせた効果的な削減を可能にするサービスです。
 建設廃棄物対策では、建設資機材の梱包の簡素化や資材の繰り返し使用、分別の徹底などにより、廃棄物を削減し、最終処分量ゼロを目指す「ゼロエミッション活動」にも取り組んでいます。

■東京スカイツリーの概要■
 東京スカイツリーの一番の特徴は、地上630メートルを超える、自立式電波塔としては世界一の高さです。そして、この最上部には、テレビ各局のデジタル放送用アンテナを取り付けるための細い塔体「ゲイン塔」がつくられます。このゲイン塔によって、タワーは電波塔としての重要な役割を果たします。また、このタワーにはもう一つ、観光施設、展望台としての役割があります。地上350メートルに第1 展望台を建設し、3フロアにカフェやショップなどの店舗スペースを設けて、そこに憩いの空間をつくる計画です。また、地上450メートルには第2展望台を建設します。ここは2フロアで構成され、その外側にはスパイラル状の空中回廊を設ける計画で、この回廊をぐるっと回ると、まるで空中を散歩しているような感覚で世界一の展望が楽しめます。

■東京スカイツリーの構造と安全性■
 630 メートルを超える高さのタワーを支えるのは、一辺が約70mの正三角の各頂点に配置された3箇所の塔脚と、その脚を地下で支える、大林組が開発した最新の基礎杭技術「ナックル・ウォール」です。
 ナックル・ウォールは、スパイクシューズの刃の様に配置され、各塔脚を地中で一直線に結ぶ地中連続壁杭(OWS杭)とともに、地面を支える力に優れ、地震の揺れに非常に強いという特徴を持っています。ただ、それほどに長い壁(OWS杭)を一度につくるの は困難で、何度かに分割して地面に孔を掘りコンクリートを打設してつくる必要があり、その建造には大変高度な技術を要します。この連続壁の建造において、大林組は国内最高水準の技術と実績を持っています。
 また、このタワーのもう一つの特徴は、構造物の中心部にある「心柱(しんばしら)」です。この心柱は、周りの鉄塔と構造的に分離した「重り」の機能を持ち、地震が起きたときに、別の動きで周りの鉄塔の揺れを吸収する制振装置として作用します。この機能は、日本の伝統建築である五重塔の心柱になぞらえて、「心柱制振」と名付けられています。

■技術の粋を尽くしたダイナミックな工法■
 東京スカイツリーの建設計画では、高度な技術の粋を尽くした工法がいくつも使われます。その一つが、「リフトアップ工法」です。これは、タワー最上部のゲイン塔をつくるための工法で、鉄骨の中央にある心柱をつくるための空間を使い、心柱をつくる前に、先にその空きスペースでゲイン塔を組み立て、それを上に引っ張り上げて最上部まで持っていくというダイナミックな工法です。これによって、作業が効率化し、工期を短縮できるほか、建造作業が地上部でできるため、安全と品質が確保できるというメリットがあります。もし、ゲイン塔をそのまま最上部で組み立てるとすると、地上 500メートルを超える未知の高さでの作業となるため、想定外の風や湿度などの影響が危惧されます。このリフトアップ工法によって、そうした不安定な要素が排除され、確実な工事を行うことができます。

見学の様子
 東京スカイツリーの建設現場を歩くと、大工事の割には音がとても静かで、環境対策に配慮している様子を感じました。それは、低騒音・低振動型の機械を多く 取り入れ使用しているほか、防音シートを使って、溶接作業などに伴う騒音の発生を抑えるなど、近隣住民や周辺環境に配慮した様々な取り組みをしているため で、そこからは「地元に愛されるタワー」にしようという大林組の姿勢が伝わってきました。
 また、タワーの3箇所の塔脚を構成する4 本の柱を見ると、その直径は2.3メートルもの太さで、これだけ大きな断面の柱は、通常の建築では使われないそうです。重量も1 メートル当たり6トンと非常に重く、搬入・組立に際しては細分化して現場に運び、現場で溶接しなければなりません。この溶接作業が非常に困難なため、現場には溶接技能試験をクリアしたトップレベルの技術者・作業員だけが集まって作業している という話を伺いました。世界一のタワーは、日本の最高水準の建築技術によってつくられていることを改めて実感しました。

大林組への質問と回答
社会広聴会員:
600メートル超という未知の高さへの挑戦については、どのような思いを抱いていますか。
大林組:
日本では、今まで300メートルクラスまでしか建築の経験がありません。それ以上の高さになると、気象条件や揺れの制御の仕方など、考えなければならない ことが山ほど出てきます。また、建設に従事する作業員の安全も徹底しなければなりません。失敗が許されないという緊張感のなか、考えられることは、すべて 考えて建設しています。ただ、東京スカイツリーをつくれるということには、現場社員を含め、みんなが誇りや使命感をもって取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
今回のタワーの高さは600メートル超ですが、日本の技術では、どのくらいまで高く建設できますか。
大林組:
技術上の検討レベルでは、2000メートルぐらいの高さまで、具体的にシミュレーション計画をしたことがあります。ただ、高い建物をつくるには、柱を太くしたり、裾野を広くしたり、また、エレベーターを数多く設置するなどしなければならないため、非効率でコストがとても高くなります。
 
社会広聴会員:
工事現場の安全確保については、どのように取り組んでいますか。
大林組:
現場の事故の大半はヒューマンエラーです。そのため、鉄骨にはネットを張りめぐらせるなど、万が一、足を滑らせても大怪我をしないような対策をとっています。事前に危険なポイントを検討して、回避するリスクアセスメントに力を入れています。さらに、現場を回り、当社の社員も協力会社も関係なく、お互いに声を掛け合って意識を高めるようにしています。最後はみんなで協力して取り組まなければ、成果は出ないと考えています。
 
社会広聴会員:
ゼロエミッション活動には、どのくらいコストが掛かりますか。
大林組:
ゼロエミッション活動は、コストというよりも作業の手間が掛かると考えています。もちろん、時間がかかるという意 味ではコストも増えますが、現場の作業員にその意義を説明し、ゴミの分別などに伴う作業の負担増を理解してもらうなど、関係者、社員一丸となって取り組む ようにしています。
 
参加者の感想から
●限られたスペースで、世界一の高さの塔を立てるため、その計画には数々の新技術や最新のコンピューターシミュレーションによる安全確認などが駆使されて いることを知りました。

●大林組の方々のプロジェクトに対する熱い思いが伝わってきました。また、そのチャレンジしている姿がとても楽しそうだったことが印象的です。

●このスカイツリーが、日本経済の復活に寄与することを期待するとともに、こうした後世にも残る歴史的建造物の建設現場を見学できたことを誇りに思いま す。

●設計、施工の工程における緻密な計算や技術、効率性の追求に加え、環境・安全・騒音に対しても徹底的な配慮がされており、建物を造ることはトータルな考 え方でなされていることを改めて感じました。

●日本の車や家電製品、アニメが世界で受け入れられ、浸透していることはニュースなどで知っていましたが、日本の建設会社が世界で様々な工事を受注し、こ んなに活躍しているとは知りませんでした。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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