企業と生活者懇談会
2009年3月11日 東京
出席企業:花王
見学施設:すみだ事業場

「花王の企業文化について」

3月11日、東京都墨田区にある花王のすみだ事業場で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員20名が参加し、同社や生活者コミュニケーションセンターの概要について説明を受けた後、工場や2007年にリニューアルオープンした花王ミュージアムの見学と質疑懇談を行いました。
花王からは、堂園正毅生活者コミュニケーションセンター長、花王ミュージアムの根本利之館長、津田哲行副館長、坂倉隆仁広報部長、広報部の繁田明課長職、塩澤聡グループリーダー、奥田真知子CSR推進部主任、が出席しました。
花王からの説明
■花王グループの概要■
 花王は1887年(明治20年)に日本橋馬喰町に洋小間物商「長瀬商店」として創業し、米国製の化粧石鹸を中心に国産石鹸や輸入文具などを販売していました。当時の国産石鹸は、顔を洗えるような品質のものは少なかったため、創業から3 年後の1890年(明治23年)に、創業者の長瀬富郎が輸入石鹸に対抗できる高品質の国産ブランド化粧品「花王石鹸」をつくり発売しました。石鹸は「顔が洗える」の意味で「顔」に音をあて、「花王」と名付けられました。
 現在の花王の事業は大きく4 つに分けられます。ビューティケア事業(化粧品、シャンプー、ボディーソープや海外の美容サロン向け商品など)が売り上げ全体のほぼ半数を占め、次いでファブリック&ホームケア事業(「アタック」「ハイター」「マジックリン」など)、産業界の発展に貢献するケミカル事業(油脂、機能材料、トナーの原料、香料などの工業用向け製品)、そしてヒューマンヘルスケア事業(「エコナ」「ヘルシア」「バブ」などの健康志向商品)となっています。

■「花王ウェイ」とは■
 2004年(平成16年)にまとめられた「花王ウェイ」とは、「行動原則」「基本となる価値観」「ビジョン」と「使命」の4層から成っています。花王の「企業文化」「企業精神」のエッセンスで、社員が歩むべき道を示す「道しるべ」の役割を果たしています。
 「花王ウェイ」のルーツのひとつには、創業者の長瀬富郎の遺言「天祐は常に道を正して待つべし」があります。また、2代目が外遊時に社員に残したメッセージである「製品は大衆の要求に一致していて値段は適正か」「品質は優良か」「製品は新時代の感覚に適合するか」という言葉は、現在にも通ずるものがあり、この言葉は中興の祖といわれた丸田芳郎元社長が唱えた「消費者への奉仕」「人間平等」「叡智の結集」にも影響を与えています。モノをつくることはゴールではなく、スタートであり、消費者の視点を普段の活動に生かすことを大事にするこの精神は、今も確実に受け継がれています。

■生活者コミュニケーションセンター■
 花王の事業活動の原点は「よきモノづくり」です。「よきモノづくり」を行うためにお客さまとの双方向のコミュニケーションは欠かせないとの思いから、「相談室」ではなく、部門名にも「コミュニケーション」という言葉を使っています。
 生活者コミュニケーションセンターの歴史は、1934年(昭和9年)に立ち上げた長瀬家事科学研究所に始まります。これは、それまで婦人が行っていた家事を作業ではなく、科学的に考えようと始めた進歩的な取り組みで、花王の最初の消費者対応部門と考えています。実際には1954年(昭和29年)に消費者相談業務を開始しました。
 1978年(昭和53年)には独自に開発した消費者対応情報システム「花王エコーシステム」を導入しました。1990年代後半の消費者重視の時代が来る以前から花王は体制を整えていました。
 現在では、1年間に14万件を超えるご意見・お問い合わせにエコーシステムを活用して素早く対応し、「よきモノづくり」に生かしています。
 生活者コミュニケーションセンターでは、常に共感する姿勢を忘れずに対応しています。ご相談の回答に時間を要する際には中間報告を行い、経過をお知らせしています。また、トラブル発生の際には問題解消と事例確認のため、各部門との連携を図り、社内のエキスパートとともにお客さまのご家庭を直接訪問することもあります。こうした事例などをエコーシステムに蓄積し、情報共有をしています。相談事は片付けて一件落着ではなく、消費者とコミュニケーションを取ることが最も重要だと考えています。
 見学時に説明を受けたエコーシステムのデモンストレーション画面では、商品の問い合わせに対応するため、テレビコマーシャルでモデルが使用した化粧品の品番や衣装に関する情報まで、蓄積された膨大なデータに、参加者一同感心しました。

■花王ミュージアムの概要と見学の様子■
  2007年(平成19年)にリニューアルオープンした花王ミュージアムは「清浄文化の変遷」と「花王の歴史」を紹介する施設で、「見る花王ウェイ」ともいえます。館内は3 つのゾーンに分かれています。
 「清浄文化史ゾーン」では、古代メソポタミア時代の石鹸や洗浄剤に始まり、江戸時代の町人文化と清浄観、そして、明治、大正、昭和の日本の暮らしにまつわるものが展示されています。
 「花王の歴史ゾーン」では、創業者の遺言状や最初に発売された石鹸のほかに、商品の広告やポスターが年代別に展示され、花王の製品が日本の生活にいかにかかわってきたかがよく分かります。
 「コミュニケーションプラザ」では、「よきモノづくり」の結晶である新製品や代表的な製品がディスプレイされています。また、スキンケアやヘアケアに関する測定機器があり、肌の状態や髪の毛の痛み具合を自分でチェックできます。
 花王ミュージアムでは、特に昭和の暮らしが展示してあるコーナーが好評で、当時の花王製品とともに懐かしく見学し、あらためて花王の製品が私たちの暮らしに欠かせないものだということを実感しました。

■東京工場見学の様子■
 すみだ事業場内にある東京工場には、「ソフィーナ」など化粧品の製造ラインがあり、ファンデーションが箱詰めされる様子などの説明を受けました。ほとんどの工程が機械によりオートメーション化されていることや、清潔で明るく、想像以上にコンパクトな設備が印象的でした。

花王への質問と回答
社会広聴会員:
創業から現在まで一貫しているものは何ですか。
花王:
創業者の言葉であり、「花王ウェイ」にもある「正道を歩む」ということです。会社も社員も間違ったことはせず正しい道を歩むことで一貫しています。
創業者の、安心して顔が洗える石鹸をつくろうとする品質重視の「よきモノづくり」の精神、商品を改良する際に、高級品だった石鹸を庶民にも買える値段に変 更した2 代目の「消費者志向」というポリシー、事業を拡大した丸田元社長が唱えた「人間平等」の考え方は、今も引き継がれています。
 
社会広聴会員:
企業理念や企業の姿勢を社員へ浸透させるための取り組みを教えてください。
花王:
企業理念の教育では、人材開発部門と企業文化が一体となり、「花王ウェイ」を啓発する勉強会を各事業所で実施しています。創業以来の理念をDVDにまとめて各職場に配布し、これを教材に社員が仕事に行き詰ったときなどに「花王ウェイ」に立ち返り、壁を乗り越えてもらいたいと思っています。また、歴代の経営者が会社の歴史を次世代に引き継ぐことを責務と考え、10年ごとに社史を編さんし、全社員に配布しています。そのほか、経営トップの経営哲学をまとめた啓蒙書も作成しています。社史、啓蒙書や「見る花王ウェイ=ミュージアム」を通して、社員一人ひとりに会社の価値観を伝えています。
そのほかの教育でも、単にスキルや技術を身に付けるだけでなく、その背景にある「精神」を取り入れるようにしています。
 
社会広聴会員:
花王の月のマークにまつわる話を教えてください。
花王:
創業当時の「長瀬洋小間物商」で扱っていた鉛筆に描かれていた月のマークを、創業者が気に入りシンボルマークにし たといわれています。月が「美と清潔」のシンボルといわれてきたことにも関係するようです。
花王の月のマークは明治から昭和18年まで右向きでしたが、その後左向きに変わりました。これは、横書きの漢字表記の書き出しが右からだったのが、昭和18年ごろに左からに変更になったことがきっかけだといわれています。一方で、右向きの月は「下弦の月」で時間とともに消えてしまうのに対し、左向きの月は「上弦の月」で満月に向かって行くことから、会社としても縁起が良いので変更したという説もあります。
 
社会広聴会員:
生活者コミュニケーションセンターに寄せられる意見・相談には、どのようなものがありますか。
花王:
相談内容は年々多様化しており、社会での様々な出来事がすぐに相談に結び付くと感じます。
最近は、製品の安心・安全に関するお問い合わせが多いです。また、おむつの使い方などのご相談もあり、核家族化で家庭内の伝承の欠如を感じることもあります。コマーシャルに関してのご意見も多くいただいています。以前、テレビコマーシャルの夕飯のシーンで、ご飯茶わんとおわんの位置が左右逆だったことがあり、すぐにご指摘をいただきました。素早く修正して放映したところ、それに気付いた方から、再びお礼のご連絡をいただきました。ご意見の多少にかかわらず、お客さまの声は「宝の山」と考え、製品の改良や開発に役立てています。
 
社会広聴会員:
「花王ウェイ」のルーツである「強くて良い会社」とはどのようなものですか。
花王:
後藤卓也前会長が社長就任時に話した言葉が、現在のCSR(企業の社会的責任)の考え方を先取りしていたと思います。「強くなければ資本主義社会の厳しい競争状況の中で存続を許されない」、しかし、「良くなければ社会の中で存続を許されない」つまり、会社を存続させ るためには「強い」と「良い」の両方が必要だとの考えです。
 
参加者の感想から
●「花王ウェイ」は、どの業種にも参考になる素晴らしい理念だと思いました。どのような環境でも「強くて良い会社」を貫いてほしいと思います。そのためにも、消費者は低価格だけにとらわれるような安易な消費行動は慎み、良い企業を強く育てるという視点を忘れてはいけないと思いました。

●花王に「ものづくり日本」の頼もしさを感じました。わが家にいくつもある「最先端」の花王製品を見て、伝統があっても古さがないと思いました。

●「花王ウェイ」や花王の歩みなど、企業精神が社員に受け継がれ、事業活動の基礎となっていることがよく分かりました。

●社員一人ひとりが自信と誇りを持っていることに感銘を受けました。この会社の製品だと安心して使えます。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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