● 見学の様子燃料アンモニア利用における安全への取り組み貯炭場と石炭船3 ● ネットワーク通信 No.101ニアに転換し、約3カ月間で約30000トンのアンモニアを使用して発電が行われました。その結果、転換前と比較して、生態系に影響を及ぼすNOx(窒素酸化物)の排出量は同等以下であり、SOx(硫黄酸化物)の排出量は約20%減少し、温室効果の強いN2O(亜酸化窒素)は確認されず、環境に良好な結果が計測されています。 今後は、2020年代後半までに商用運転を開始する予定です。また、5号機では2028年度までに50%以上の高転換実証試験を進める予定です。最終的には、国内外の火力発電所に展開していくことで、燃料アンモニアによるグローバルな脱炭素化への貢献を目指していくとしています。 参加者はバスに乗り、碧南火力発電所の構内の様子を見学しました。初めに見えたのは1号機から5号機のタービン建屋とボイラ建屋です。高さ約35メートルのタービン建屋と高さ約80メートルのボイラ建屋の壁はいずれも防音壁になっており、内部からの音を遮断しています。1号機から3号機の出力は最大で70万キロワット、4号機と5号機は100万キロワットを誇り、各配管や設備は高温高圧の蒸気にも耐えうる設計になっています。 次に見えてきたのは燃料アンモニアを保存する球体のタンクです。直径約16メートルの銀色のタンクの内部には約1400トンのアンモニアが、マイナス33度で液化され貯蔵されています。燃焼の際には気化器でガス化して4号機のボイラへと運ばれ、石炭と一緒に燃やされます。タンクの周りは高さ約2メートルの白いコンクリートで囲まれており、万が一アンモニアが流出した場合でも外部への流出を阻止する構造になっています。この中に溜まったアンモニアが外気に触れ、拡散することを防ぐため発泡設備も設置されています。また、アンモニアタンクの横には700立方メートルの円柱形の散水タンクが備えられています。アンモニアは水溶性のため、万が一の流出時には漏洩部に散水して無害化することができます。このように、有事の際の被害拡大防止に向けた対策が複数施されています。 発電所内には至る所に監視カメラ、ガス検知器、PH計、遮断弁、消火栓などが設置されており、中央制御室からも漏洩時の早期発見や状況把握が可能となっているそうです。見学中、自転車に乗って巡回する職員とすれ違いましたが、設備の日々点検作業を行って 次に参加者は、石炭を山積みにして保存する貯炭場を車窓から見学しました。石炭粉じんの飛散防止のため、高さ18~20メートルの遮風フェンスで周囲が取り囲まれており、内側には高さ約10メートルの黒い石炭の山が一定の並列でいくつも並んでいました。炭山が複数あるのは石炭の種類ごとに発熱量や水分量、硬さなどの性状が異なることから、混ざらないように管理するためです。貯炭場の最大容量は約88万トンで、1号機から5号機が約1カ月稼働し続けられる貯炭量とのことです。天候不良などで石炭船が到着できない場合でも、発電所の稼働に支障を来さない量の石炭が常に保存されています。見学時には、石炭船から陸揚げした石炭を、大きな重機を用いて山状に積み付けする様子を眺めることができました。 最後に参加者は、海沿いに停泊する石炭船から石炭を陸揚げする様子を見学しました。船内にある石炭を、高さ約30メートルのクレーンのような揚炭機がすくい上げてベルトコンベヤーに載せ、貯炭場に送り出していきます。船は主にオーストラリアとインドネシアかいるとのことでした。異常の早期発見と被害の拡大防止を重視する安全への取り組みを知り、参加者は大変感心していました。アンモニアタンクと排煙用の煙突。タンクの周りはコンクリートで囲まれており、有事の際の安全対策が徹底されている石炭火力における燃料アンモニアを利用した発電の仕組み。石炭船(右下)とは別にタンカー(左下)でアンモニアを調達し、石炭とは異なる導管でボイラまで運ぶ
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