ネットワーク通信103号
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特集 AIの進化と社会実装 ● 8(聞き手 主任研究員 湯村南々帆)④学習支援 ベネッセホールディングスが提供中の学習アプリ 「AI StLike(AI ストライク)」は、ユーザーの目的や取り組み状況に応じ、AIが最大2千億通りの中から最適な出題を導き出すもので、一人ひとりの学習ペースに合わせたカリキュラムの提供を実現しています。⑤疾病リスクの予測 東京海上グループと共同開発したウェブアプリは、健康診断のデータなどに基づき、糖尿病・高血圧・虚血性心疾患・脳血管疾患など重大疾病の3年以内の発症リスクを知らせてくれます。お客さまがご自身の健康状態を把握し、早めの対策につなげていかれることをサポートするシステムです。 このほかにも、内田洋行と当社が参画した埼玉県戸田市のAIを活用した不登校予測モデル、アパレル企業におけるクーポン配布の最適化など様々なサービスを、多岐にわたる業界の企業、団体、自治体でご利用いただいています。最近では、「暗黙知」(個々人の経験や勘に基づいた言語化できていない知識)を、言語系の生成AIとの対話を通じて形式化し、他者に伝達可能なものにしていく取り組みを進めています。ベテランの方々が長年お仕事の現場で磨かれてきた技術や培われてきた経験・ノウハウといった貴重な個人のアセットが次の世代に伝承されていくお手伝いになればとの思いで取り組んでいます。 どこで、どのように使うかを考えることです。特に生成AIにおいては、質問する、聞き直すといった機能が搭載されることで改善は進んでいるものの、ハルシネーション(誤認や矛盾)の発生リスクはまだなくなってはいません。ハルシネーションの話になると、AIが悪者のように語られがちで、「やはりAIは信用できない。怖い。」という言葉も耳にします。根本的なところに立ち返れば、事はそう単純ではないとお分かりいただけると思います。多少間違っていても問題にならないようなシーンを選定した上で、効率化につながるのであれば使用する、そうでなければ使用しないという判断は、人間がしなければなりません。情報の内田洋行と同社が参画した埼玉県戸田市のAIを活用した不登校予測モデル(画像提供:戸田市教育委員会)取り扱いも同様です。つまり、使われるAIだけでなく、使い手である人間も共に成長していくことが大切だと言えます。このことをしっかりと認識することは、AIを効果的に活用する上で大事なことだと思います。● PKSHA Technologyの独自性やこだわり、強みについてお聞かせください。 当社は、AI技術のPOC(新しいアイデアや技術の実現可能性を検証すること)ではなく、実際に導入・運用されるサービスの提供を重視しています。AI技術のPOCは大変重要で、当社も依頼を多く受けているのですが、それでもやはり社会実装の方に軸足を置きたい。こだわりと言えば、これがこだわりですね。AI業界では、営業担当がお客さまの要望を伺い、それをエンジニアが開発にあたる、というのが一般的です。一方当社では、開発からサービスの提供まで、ビジネス開発とエンジニアが二人三脚で推進します。つまり、お客さまの要望や困りごとを聞くと同時に、技術的な実現方法や実現可能性を検討・判断しながら開発を進めています。そうして培われてきた様々な技術を組み合わせ、お客さまに最適なサービスを提供しています。ビジネスサイドと開発サイドの発想が相乗効果を生み出しているのです。これこそが我々の独自性であり強みです。その優位性にあぐらをかくことなく、AIと人間が共に進化し、より良い未来を築いていくために、どう貢献できるか、自問を続けています。● AIと人間が共に進化する未来に向けた、成長戦略をお聞かせください。 コミュニケーション領域での事業拡大を目指しています。「人と人」または「人とソフトウエア」の間のやり取りをスムーズにする技術の開発やサービスの提供が、成長戦略の重要な軸だと考えています。また、ソフトウエアの提供にとどまらず、AIを活用してグループインした企業のビジネスを強化するバリューアップの取り組みも進めています。さらには、AIの活用が進む中、視覚的デザインやサービスの使い方が重視されるようになってきました。この分野のポテンシャル、社会にもたらすインパクトは計り知れないと見ています。そこで、デザイン会社にグループインいただき、エンジニア部門と並んでデザイン分野も強化しています。 今後も様々なステークホルダーと共に、「人とソフトウエアの共進化」というビジョンのもと、未来のソフトウエアを創造し、社会の発展に貢献していきます。● AIを活用する上で大切なことは何でしょうか。PKSHA Technologyhttps://www.pkshatech.com/

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