ネットワーク通信104号
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(聞き手 主任研究員 伊與花音)食堂ではモニターやテーブル上のPOPを使って、サステナブル・シーフードの取り組み内容を分かりやすく紹介取材日(6月17日)のメニュー「手作り海老かき揚げ丼(ASC認証の海老を使用)」サスシーの日だよね」といった言葉が自然と交わされるなど、取り組みが社内に根付いてきていると感じています。 そもそも社員食堂では、魚料理はあまり人気がない傾向がありました。ところが、サステナブル・シーフードを使用したメニューは、喫食率が20%を超えることもしばしばあり、多い時には40%以上に達するなど、高い支持を集めています。一般的に20%を超えると「人気メニュー」とされる中で、この数字は非常に高いものです。 中でも不動の人気を誇るのが、毎年登場する「戸倉っこカキフライ」。サステナブル・シーフードであることに加えて、しっかり“おいしい”という満足感が得エームサービス株式会社の協力のもと、味や見た目にもこだわった魅力的なメニューを提供しています。 従業員の間で、単なる食事の選択ではなく、「選んで食べる」という行動変容が起きつつあります。その成果は従業員アンケートにも表れており、「2023年度に会社で取り組んだ社会貢献活動」(日本のみ・複数回答可)に関する調査では、「社員食堂での“サスシー”の喫食」を支持した人が22%でトップになりました。まさに、日常のランチタイムが、従業員一人ひとりの環境意識を高めるきっかけになっています。 当社は、社外に向けてもサステナブル・シーフードの認知拡大と導入支援を積極的に行っており、会合やネットワークを通じて、給食事業者や企業の食堂担当者にサステナブル・シーフード導入を提案しています。また、社員食堂での導入を検討する企業や団体に対して、案内用のパネルやのぼりなどの広報物を無償で提供しているほか、認証ルールの説明やメニュー提供時の価格設定の考え方などの情報提供も行っています。さらに、実際に社員食堂を見学・喫食していただく機しみを込めて“サスシー”と呼ばれており、「今日はられると好評です。当拠点の社員食堂の運営を担う● サステナブル・シーフードの社外展開について反応を教えてください。会も設けています。 これまでに、当社の拠点やグループ企業を含め、100以上の食堂でサステナブル・シーフードが導入されるなど、広がりを見せています。導入先からの反応も非常に前向きで、アンケート調査などでも高い評価をいただいています。今後もこうしたネットワークを通じて、持続可能な水産資源の普及に貢献していきたいと考えています。● サステナブル・シーフードを導入した社員食堂の今後の展望を教えてください。 当社は、社員食堂でのサステナブル・シーフードの取り組みを一過性のものとせず、「灯を絶やさない」ことを大切にしています。 水産資源の持続可能性は、環境問題や生物多様性の保全、さらには気候変動や貧困解消など、複雑な社会課題とも密接に関わっています。こうした課題を、「食」という身近なテーマから従業員に知ってもらい、自分ごととして関心を持ってもらうことが、この取り組みの大きな意義です。社会課題に気付くことが、創業者・松下幸之助の掲げた「事業を通じて人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」という理念の実現にもつながると信じています。 今後も継続的に従業員への情報発信を行い、社内での理解を深めながら、従業員を起点として次世代へもその価値を伝えていきたいと考えています。すでに社内では、サステナブル・シーフードの取り組みが次世代育成や社外発信のモデルとしての機能も果たし始めています。今後はこのモデルを、他の社会課題にも広げていくことで、より多面的に社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。特集サステナブル・シーフード● 10パナソニック ホールディングス「サステナブル・シーフード」

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