利用者の身体状況に合わせて設計された介護用特殊浴槽病院設備と同様の手術室で、医療環境への理解を深める歯の模型を用いた解説を通じて、歯髄再生治療の仕組みを学ぶ8K映像・周術期医療7 ● ネットワーク通信 No.104 そうした課題を解決する新しいアプローチが、「歯髄再生治療」です。この治療では、不要になった親知らずや乳歯、矯正治療で抜いた歯などに含まれる「歯髄幹細胞」を使用します。幹細胞を採取・培養し、それを歯の根の中に移植することで、自身の体の幹細胞を呼び寄せ、神経や血管を再生させるという仕組みです。つまり、歯を“生きたまま”保つことが可能になるのです。 現在はまだ保険が適用されておらず、自由診療として提供されています。治療費は1本当たり60〜100万円程度とされていますが、東京・大阪・名古屋などの都市を中心に、全国27カ所(2025年4月時点)の歯科医院で治療が始まっており、実用化が進んでいます。 また、将来的な治療に備えて、抜いた歯の幹細胞を長期保管する「歯髄幹細胞バンク」の運用も始まっています。これにより、いざというときに自分自身や家族のために幹細胞を活用できる体制が整いつつあります。 この歯髄幹細胞は歯の再生にとどまらず、骨や神経の再生、さらには脳梗塞や脊髄損傷といった全身の再生医療への応用も期待されています。ラットを使った実験では、幹細胞の移植により運動機能が回復する例も報告されており、今後の人への応用が注目されています。 同じフロアでは、衛生・介護関連製品の展示も行われており、参加者は実際の製品を見ながら説明を受けました。災害時の避難所や在宅療養などで活用されている酸素濃縮器も紹介され、コロナ禍では病院に入れず自宅やホテルで待機していた方々に対し、提供するケースもあったそうです。 また、手指消毒用のアルコールジェルや、スパイラル形状で汚れを絡め取る口腔ケア用品、ラテックス手袋などが展示されており、各製品の特徴や使い方について解説がありました。さらに、介護用の特殊浴槽についても紹介され、介護現場のニーズに即した設計がされていることを実感することができました。 見学の最後は、8K硬性内視鏡や手術前後の周術期医療についてシミュレーションで体験しながら、理解を深めました。8K硬性内視鏡で撮影された手術映像は、モニターで鮮明に再生され、血管や神経、膜の繊維まで立体的に映し出される高精細な映像です。従来の映像と比較してもその差は歴然であり、医療教育や術中の可視化において大きな効果が期待されています。特に腹腔鏡手術のように身体への負担が少ない低侵襲手術では、視野が限られるため高解像度のカメラは不可欠です。拡大してもぼやけず細部まで確認できる8K映像は、術者の判断を支える強力なツールとなります。 手術室の構造についても紹介されました。機器が多い中、電源やガス管などをペンダント(吊り下げ式)で1カ所にまとめ、コード類の絡まりを防ぐ設計が施されています。また、停電時でも命に関わる機器を守るため、非常用電源に自動的に切り替わる仕組みや、手動で扉を開けられる安全設計を参加者は体験することができました。 I C U の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 施 設 で は、 病 院 の リ
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