企業と生活者懇談会
2013年12月13日 山口
出席企業:宇部興産
見学施設:宇部本社

「石炭から広がるUBEの化学製品」

12月13日、宇部興産宇部本社(山口県宇部市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者17名が参加しました。同社概要について説明を受け、「UBEアイプラザ」やアンモニアを生産する工場などを見学。その後、質疑懇談を行いました。
宇部興産からは、久保田隆昌常務執行役員、総務部の佐々木政伸部長、宇部渉外部の金次孝部長、環境安全部の来田成利部長、宇部ケミカル工場の星野健治次長、環境安全部の広島聖環境安全グループリーダー、宇部渉外部の縄田信夫主席部員、IR広報部の中山真吾主席部員、宇部渉外部の吉永龍男氏が出席しました。
 

宇部興産からの説明
■宇部興産の沿革■
 宇部興産は、1897年(明治30年)に、地元の人々の出資でつくられた匿名組合「沖ノ山炭鉱」から始まりました。組合の頭取であった、創業者渡邊祐策(わたなべすけさく)は、企業と地元の発展のため、“有限の石炭から無限の工業へ”の理念のもと、次々と事業開発と社会資本の整備に努めました。1914年(大正3年)に宇部新川鉄工所、1919年(大正8年)に宇部セメント製造、1933年(昭和8年)に宇部窒素工業がそれぞれ設立され、1942年(昭和17年)に、沖の山炭鉱、宇部窒素工業、宇部セメント製造、宇部鉄工所の4社が合併して宇部興産が設立されました。
 石炭を源流とする宇部興産は、この4社を礎に、現在、エネルギー・環境、化成品・樹脂、機能品・ファイン、医薬、建設資材、機械・金属成形の各事業を展開しています。現在では、製造拠点を海外へと広げ、グローバル企業として進化を続けています。
 
■宇部地区で展開されている事業■
 宇部地区では、6つの事業を展開しています。1つはエネルギー・環境事業、2つ目は化成品・樹脂事業、3つ目は機能品・ファイン事業、4つ目は医薬品事業、その他、建設資材事業、機械・金属成形事業です。
 エネルギー・環境事業では、国内最大規模の石炭中継基地「沖の山コールセンター」を有し、海外の石炭を輸入・販売しています。また、この石炭を使用した自家発電所と卸供給発電所によって、グループ企業と電力会社に電力を供給しています。
 化成品・樹脂事業では、ナイロンの原料となるカプロラクタムやナイロン樹脂などを生産。ナイロンは、食品包装フィルムや自動車のエンジン部品の材料などになります。現在、宇部興産は世界でもトップクラスに入るカプロラクタムメーカーとなっており、カプロラクタムの副生品である硫安は農業用肥料として国内外で広く利用されています。
 機能品・ファイン事業では、携帯電話の基板や航空宇宙材料などに使われるポリイミドフィルムや、リチウムイオン電池の電解液原料やセパレーターなどを生産しています。
 医薬事業では、製薬メーカーに医薬品の原体や中間体を提供しています。主要な製品には、抗アレルギー剤や血圧降下剤などがあります。
 
■環境保全・地域貢献活動■
 宇部興産は、環境保全と地域貢献にも積極的に取り組んでいます。全国に先駆け、1951年(昭和26年)から取り組んだ、市民・行政・企業・学識経験者が協力して環境問題に対応した「宇部方式」は、世界に高く評価されています。1997年(平成9年)、宇部市は「グローバル500賞」を受賞しました。この賞は、UNEP(国連環境計画)が、持続可能な開発の基盤である環境の保護および改善に功績のあった個人または団体を表彰するものです。また、地域貢献では、地域の病院、ホテル、ゴルフ場など社会インフラの整備や、文化活動や若手研究者の支援も実施しています。
見学の様子
■“練炭から宇宙素材まで”「UBEアイプラザ」■
 「UBEアイプラザ」は、宇部興産の歴史や製品・技術を紹介する施設です。
 宇部興産の事業は、海底から採掘された発熱量の低い石炭(低品位炭)を、練炭などの家庭用燃料として販売したことから始まりました。同社の今の製品が、自動車のエンジン、リチウムイオン電池、スポーツシューズ、バレーボール、ランドセル、香水など、私たちの身の回りにある様々な製品の材料や原料となっていることや、最先端の宇宙素材を開発していることを知ることができました。 

■石炭の中継基地「沖の山コールセンター」■
 国内最大規模の石炭中継基地である「沖の山コールセンター」は、1980年(昭和55年)に創業しました。敷地面積は50万平方メートルあります。9万トン級の船が接岸できる専用岸壁を設け、主にオーストラリアやインドネシアから30~40種類の石炭を輸入しており、国内の取引先に提供しています。
 一方、大型トレーラーにセメントの原料となる石炭を1日約2000トン積載し、私道である宇部興産専用道路を経由して伊佐セメント工場に運搬しています。
 また、石炭を燃焼させた時に灰をほとんど排出しない独自の技術により、浄水や冷蔵庫の脱臭に使われる活性炭の原料を生産するなど、石炭の付加価値化にも取り組んでいます。雨水を再利用して、石炭の自然発火の防止や道路への散水などに活用していることも知ることができました。

■アンモニアを生産している「宇部藤曲工場」■
 宇部藤曲工場では、世界初の石炭ガス化プラントにより、主に化学工業の基礎原料となるアンモニアを年間36万トン生産しています。2013年(平成25年)10月、最適生産とコスト競争力の一層の強化を図るため、宇部アンモニア工業(創業1969年(昭和44年))から、宇部興産が生産受託し、宇部藤曲工場が設立されました。同工場の敷地面積は、約17万平方メートル。従業員は約100人です。
 「沖の山コールセンター」に貯炭された石炭やペトロコークス(原油の精製過程で生成した残渣物)は、ガス化炉で40気圧、1400℃の高温高圧下で瞬時にガス化され、その後、精製・合成の過程を経て液化アンモニアとなります。生産された液化アンモニアは、外販されると同時に、パイプラインを通じて隣接するケミカル工場に供給され、ナイロン樹脂やナイロン繊維の主な原料となっています。
 なお、生産の過程で発生した副生物は無駄なく有効利用されており、例えば、ガス化炉から排出されるスラグ(残渣物)は、宇部セメント工場の原燃料になり、炭酸ガス(CO2)は、炭酸飲料の原料として活用されています。見学者は、黒い石のようなペトロコークスを手に取って見ることができました。
 
■「宇部ケミカル工場」■
 宇部興産の化学部門は、国内に3つの工場を有しています。マザー工場に位置付けられている「宇部ケミカル工場」は、1933年に創業を開始しました。敷地面積は、約66万平方メートル。東京ドーム14個分あります。売上高は約1000億円。従業員は関係会社を含めて約1800人。化成品・樹脂の売り上げが3分の2を占めています。扱い製品数は約120です。
 創業当時から製造しているのは、硫安(肥料)です。硫安は、石炭から生産されるアンモニアを原料としています。その後、化学品の基礎原料となる硫酸、硝酸、蓚酸などをつくり始め、1950年頃からナイロンの原料であるカプロラクタムを製造。ナイロンをつくり始めたのは1960年代です。1970年頃には、電子材料の原料となるファインケミカル製品の製造に入り、1980年代には機能性材料を製造。1990年代になると付加価値の高い医薬品に着手しました。ナイロン樹脂工場では、生産されたナイロンの包装・出荷設備を見学しました。
懇談会の概要
社会広聴会員:
宇部に事業拠点を設けたメリットとデメリットは何ですか。
宇部興産:
メリットは、主に4つあります。1つは、地震や台風などの大きな災害が少ないこと。2つ目は、物流拠点として良好な港があること。3つ目は、事業立地として十分なスペースがあり、鉄道や空港などの事業インフラが整っていること。4つ目は、地元企業として市民からの支援があることです。デメリットとしては、研究拠点として若干刺激が少ないことや、かつては研究開発において、自前主義の傾向が残っていたことなどが挙げられます。現在は外部の力を活用するオープンイノベーションによる取り組みを積極的に進めています。
 

社会広聴会員:
これから目指す事業分野についてお聞かせください。
宇部興産:
合成ゴムやナイロン樹脂関連などの事業は、「中核基盤事業」として位置付け、積極的に拡大を図っていくとともに、今後成長が見込まれる医薬や電池材料などの事業は、「成長戦略事業」に位置付け、経営資源を積極的に投入していこうと考えています。また、航空宇宙や環境・エネルギーなど、将来大きく成長する可能性の高い分野は「育成領域」として考えています。
 

社会広聴会員:
環境に配慮した事業活動について聞かせてください。
宇部興産:
持続可能な社会の実現に向け、企業の社会的責任として、主に3つの取り組みを実施しています。ひとつは、温室効果ガスの削減です。省エネの推進や廃棄物利用拡大などにより、CO排出量の削減に努めています。2つ目は、環境貢献型技術・製品の開発です。例えば、次世代エネルギー関連の素材や省エネに貢献する製品などが挙げられます。3つ目は、生物多様性保全への取り組みです。例えば、森林整備活動などがこれに該当します。
 

社会広聴会員:
工場設備のメンテナンスはどのようにしていますか。
宇部興産:
 配管や回転機器などの寿命予測に基づき、リスクの高い設備を優先して、予防的な保守・保全を行っています。
 

社会広聴会員:
障がい者支援にはどのように取り組んでいますか。
宇部興産:
 当社は、ダイバーシティの観点から、専門的な部署を設け、障がい者雇用に積極的に取り組んでいます。特例子会社「リベルタス興産」では、主に印刷や清掃関連の事業を行っています。障がいの状況を見極め、それぞれが適性に見合った業務を行っています。
 

社会広聴会員:
農業生産の分野に進出することは考えていますか。
宇部興産:
現在のところ考えていません。以前、農薬を生産していたことがありましたが、すでに撤退しています。
 
社会広聴会員:
雨水を再利用して火災発生時の消火に使うことは考えていますか。
宇部興産:
宇部ケミカル工場は川の水を消火用水として使用します。工場内にある赤いポンプや配管が消火設備です。化学プラントでは、水だけでの消火方法を採用していません。泡状の液体で火を封じ込め、酸欠状態にして消火します。
参加者の感想から

●石炭からスタートし、時代に沿った化学製品をつくり続けていることに驚きました。宇部興産の製品が、ストッキングやランドセルなどの大事な一部になっていることを知り、身近に感じることができました。

●今回のような工場見学は、とても新鮮で、違った楽しさがありました。ラインが止まっていたのは残念でしたが、生産に至る過程を直接見ることができて興味がわきました。

●初めての参加だったので貴重な体験ができました。宇部興産は山口でも有名な会社ですが、見学し、あらためて会社の規模の大きさに驚きました。

●以前、宇部興産本社の製品展示ルームに来たことがありますが、その時と比べて製品も増えていることが分かりました。興産道路を初めて通行し、感激しました。ますます発展して環境にやさしい企業として国のために役立つ会社で在り続けてほしいと思います。

●宇部興産は宇部にとって歴史を共にした企業であり、自慢の会社で、私たち市民にとってはありがたい存在です。「共存同栄」の歴史の中で発展の努力がよく分かりました。同社の製品は様々なモノの材料や原料になっていることをあらためて感じることができました。

●私は化学がとても苦手でした。子どもや中学・高校時代にこんな体験と夢のある企業が存在することを知っていたら、人生が変わっていたのではと感じます。30数種類の石炭があることやアンモニアの力など、たくさんの発見をありがとうございました。

宇部興産ご担当者より
このたびは、当社工場にお越しいただきありがとうございました。最終消費者向け製品の少ない当社が、実はデジタル家電や家庭用品、自動車部品、医薬品等、皆さまにとって身近な製品の素材を提供していることをご説明できたことは非常に意義深いことでした。今後ともお寄せいただいたご意見を参考にしながら、創業以来の理念である、関係するすべての方との「共存同栄」を意識し、社会的責任を果たしていきたいと思います。
お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
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