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メディア・リレーションズ

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1.マスコミの記者との付き合い方

マスコミの記者対応の4つのポイント

 メディアには様々な種類がある。まずはそれぞれの特徴を理解し、相手の求めている情報(読者・消費者にとって価値あるもの。社会への影響力があるもの。読者の関心を引くもの。など)を、そのメディアの特性に沿った形で、タイミングよく提供していくと報道してもらえる機会も増える。そのためには、相手をよく知ること、常日頃からコミュニケーションを密にして、信頼関係を築いておくことが重要だ。そのためには、次の4つの対応を心掛けたい。
(1)公平な対応
経験が浅い記者、ベテランの記者に関係なく、またメディアによって差をつけることなく公平に接すること。対応が悪いと、その噂は、記者仲間にすぐに広がってしまう。
(2)嘘はつかない。曖昧な話はしない。
公表できない話は、理由を添えて「言えない」ことを明確に伝える。その場限りに適当なことを話したり、中途半端な知識で伝えないこと。
(3)分かりやすく簡潔な説明
事前に資料や写真・映像などを用意し、説明は簡潔・明瞭に行う。また、数字や固有名詞に間違いがないか注意を払うこと。
(4)迅速な対応
即答できない場合は、いつまでに回答できるか伝えたうえで、確実に調べて連絡する。間に合わない場合は、再度、回答時間を連絡しておくこと。また記者からの問い合わせに対しては、たらい回しはしない。
 以上4つの対応を常に心がけ記者に接しよう。これが基本といえる。それに加えて、自社のみならず業界全般の知識を身につければ、自然と記者から頼りにされるようになる。
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2.マスコミへの効果的な発表

 マスコミへの情報提供には、公式に同じタイミングで複数メディアに一斉に発表する記者発表・記者会見、非公式に特定のメディア(1社あるいは数社)のみ情報を提供するリーク、個別に取材を受けた時に提供する場合(取材対応)などいくつかあるが、ここでは公式な記者発表について説明したい。
 最も記事になりやすく注目も集めるのが、トップによる記者発表であるが、これは頻繁にできるわけではない。広報担当者にとって一番馴染みがあるのが、資料での情報提供(リリース発表)である。これには資料配布を行う際、案件担当者が直接記者に説明を行うレクチャー付きの場合もあるが、一番多いのが資料だけ配布するケース(資料配布)だ。レクチャーが付かないので、どのような文章で、どう見せるかが担当者の腕の見せ所となる。
 いずれの方法でも、発表のタイミングが重要であり、話題となる時期を上手く見計らって発表したい。タイミングを待ったほうがよいケースもあるが、不祥事が発生した場合は、出来る限り早く発表することが望ましい。

ニュースリリース

リリースの基本モデル
 大体の企業には、自社のレターヘッド入りの定型フォームがあると思うが、基本のスタイルを掲載しておくので参考にしてほしい。【図表 1】
 リリースは、まず記者の目にとまって読んでもらえることが大切。その次に、内容がすぐに理解できて、必要なことが網羅されていること、そして「記事になる!」と思わせるニュース性があることだ。そのためのポイントは、以下の通り。
 
  1. 何がニュースか一目で分かるタイトル。
  2. 最初に結論を。後半に詳細を。
  3. 5W(誰が、誰を対象に/いつ/どこで/なにを/どういう理由で)1H(どのように)を入れるのは基本。
    さらに金額、数量、期限などの数値や、将来の展開なども入れる。
  4. 新規性、独自性を持たせる。また、話題性や社会との関連性を盛り込む。
  5. 全体的に分かり易く、簡潔に書く。
    (1)箇条書きを活用する
    (2)長い固有名詞の繰り返しは避け2度目からは略語を用いる
     【例:株式会社Keizai Koho Center(以下KKC)】
    (3)外国語はカナ表記(または訳語)とし、原語を付ける
    (4)専門用語は避け、用いる場合には解説を
  6. ヴィジュアル面での工夫を。写真、データ、図表、また見やすいレイアウトも大事。
 気をつけたいのは、少しでもニュース性や効果を表現したいために「世界初」や「日本一」など使いたくなるが、それらの表現を用いる場合、例えば、その商品のどの部分(どの範囲)が世界初なのかを明確に記す必要がある。その言葉を証明する書類(裏付けのデータや権威ある人の証明など)を添えるケースもみられる。また、曖昧な表現は使わないこと。何通りかの解釈をされてしまうような文章は避けたい。
 一度出したリリースは、簡単に訂正できない。誤字脱字もリリースの信頼性を低くする。また、間違ったリリースを配布してしまった場合は、すぐに訂正しないと通信社がすぐに配信してしまい、取り返しがつかなくなってしまう。

 またメディアによってリリースの表現を変えたほうが効果が上がる。新聞だと一般紙と業界紙(専門紙)、前者はどのような人が読んでも分かるように、後者は業界に携る人が読者なので、簡潔であることは変わりなく、より具体的、専門的な内容が求められる。新聞の場合、ニュース性が重要であるが、雑誌の場合、これに加え、ストーリー性(どういう経緯で、どんな人たちが、どういう努力をしてつくり上げたかなど)が求められる。また、テレビは映像が主となるので、映像の提供や、映像がイメージできる写真などの資料を添付するとよい。さらに、テレビで放映してインパクトがあるか、おもしろいかも問われるところだ。

リリース配布方法

 企業が自社サイトを持つようになってからは、マスコミを介さずともリリースを発表することが可能となった。しかし、マスコミに掲載されると、社会への影響度、浸透度はぐんと高くなる。
 マスコミへの主な配布の方法は以下の通り。
  1. FAX(電話連絡と併用)
  2. 電子メール(WORDではなくPDFで送付。電話連絡と併用)
  3. 記者クラブへの投げ込み
  4. 郵送(一斉発表の場合、バイク便などで発表日に到着させる)
  5. 手渡し
 【FAX】と【電子メール】は、他社の資料の中に紛れたり、見逃される可能性もあるので、電話連絡と併用することが好ましい。親しくしている記者であれば尚更だ。【郵送】は、雑誌など時間的に余裕がある場合や、テレビなど映像が求められる場合にDVDを送付する時などに活用したい。

記者会見

記者会見までの流れ
 資料(リリース)配布に比べ、直接、経営陣やトップがマスコミに伝える記者会見はインパクトが強く、記事になる割合も高い。それだけに失敗しないよう、周到に準備することが求められる。
 記者会見までの流れは、【図表 2】を参照してほしい。
 記者会見の発表者は、会社を代表し責任を持って話すことができる者でなければならない。内容によっては社長や経営陣が発表者となることが求められる。記者会見の成否は、発表者の話し方、雰囲気、相手(社会)を魅了する人間性なども関係してくる。広報部が作成する想定問答集も重要である。想定問答集作成には、自社の知識は当然のことながら、常日頃から記者と接し、彼らがどの部分に興味を抱くか把握しているか、社会の動向、世間の考え方を理解しているかなどが求められ、それらを考慮し、作成しなければならないのだ。

誤報への対応

 せっかく報道されても、正しく報道されないことがある。こうした誤報は、企業とメディア、双方にとって不幸なことであり、場合によっては市場を乱すような大きな影響をもたらす。企業は、記者が間違いを犯さないように、相手の理解度に合わせて分かり易く、細心の配慮をもって伝えなければならない。
 しかし不幸にして誤報が起きてしまった場合は、どう対応すべきか。
 数字や固有名詞の間違いなど明確な誤報の場合、訂正が掲載されるケースもあるので、まずは記事を書いた本人に間違いを連絡する。記者の解釈や認識の誤りによる誤報に関しては「お詫びと訂正」は難しい。しかし、企業にとって重大な誤報である場合は、広報責任者の名前で、編集局長や部長宛に抗議文や、訂正記事の依頼状を送ることも必要になってくる。一方で、企業としては「公式コメント」を発表し、ウェブサイトなどに事実を掲載する必要も出てくる。
 いずれにせよ、訂正記事が掲載されても一度載ってしまった誤報は消すことはできない。常日頃から細心の注意を払い、確認を怠らないようにすると同時に、記者とも誤解が生じないような関係をつくっておくことが重要だ。また社内の取材時には、必ず広報担当者が立ち会い、注意を払うことで、誤報を防止することができる。

3.マスコミ以外のメディア対応

ソーシャルメディアの発展

 ソーシャルメディアの発展により、一般の人たちがブログやSNSを使って情報を発信するメディアと化しており、企業広報のメディア・リレーションの対象は、従来のマスコミに加えて、ソーシャルメディアへの対応も必要となっている。
 生活者が一般的な社会の動きを知ろうとするときに利用する情報源としては、「テレビ」(80%)と「新聞(インターネット版を除く)」(74%)が高い。次いで「インターネット(マスコミのニュースサイト、ソーシャルメディアを除く)」の利用が56%と、各世代で5割を超えている。「ソーシャルメディア」は、若い世代ほど情報源として利用しており、29 歳以下では 50%と突出している。
 企業の「事業内容など」の情報収集には「企業のホームページ」(61%)が最大の情報源。「商品・サービスの内容(価格を含む)」「環境、CSR、社会貢献活動」でも企業のホームページが活用される。一方、「事故、不祥事など危機への対応」では、「新聞(インターネット版を除く)」「テレビ」などマスコミ情報を活用する割合が多い。また、「商品・サービスの評価やイメージ」は「インターネット(マスコミのニュースサイト、ソーシャルメディア、企業が運営するソーシャルメディア、企業のホームページを除く)」が主な情報源となっている。

インフルエンサーへの対応

 ソーシャルメディア上で情報発信を行う個人には、他の消費者に対して大きな影響力を持つ“インフルエンサー”と呼ばれる存在がある。インフルエンサーは、特定業界の専門家や知識人、オピニオンリーダー、著名ブロガー、好感度の高い芸能人やスポーツ選手など様々であり、誰がインフルエンサーとなるかはターゲット層によって異なる。インフルエンサーが発信する情報は消費者に高い信頼性を持って受け止められる傾向が強いことから、広報のソーシャルメディア対応においては、このインフルエンサーへの対応が特に重要である。
 企業は今後、自らソーシャルメディアに参画することで自社にとってのインフルエンサーを見出し、彼らと相互の関係性を構築することが必要となってくる。インフルエンサーの声に積極的に耳を傾け、消費者同士の対話に参加することによって、従来のマスコミを介した一方通行型のコミュニケーションに加えて、双方向型のコミュニケーションを行うことが可能となる。この2つのアプローチを組み合わせることによって、最も効果的なコミュニケーションを実現することができるのである。

透明性確保の重要性

 インフルエンサーの影響力が高まる一方で、例えば企業が著名ブロガーに報酬を与えてソーシャルメディア上に自社に有利な情報を書かせるといったケースも出ている。こうした「やらせ」行為は、発覚すれば消費者の反感を買うだけでなく、企業自体の信頼を損なうリスクを伴う。インフルエンサーに対するアプローチにおいては、透明性の確保が不可欠である。「やらせ」行為のような不適切な情報操作を行わないことはもとより、企業がインフルエンサーに対して製品・サービスを提供したり、イベントに招待したりした場合には、インフルエンサーがその内容に関する情報発信を行う際にその旨を明記してもらうなど、情報の透明性や中立性を確保することが大切である。

コロナ禍で変化するメディア・リレーションズ

 これまで、メディアと直接会って、取材、懇親、記者会見するのが当たり前であったが、新型コロナウィルス感染症の拡大で、オンラインによる取材、記者会見を余儀なくされた。もちろん、「移動時間が節約できる」「遠方から出席できる」「複雑でない発表ならば問題ない」とメリットを指摘する声もあるが、一方で「もともと面識がある記者と広報マンならばオンラインでも支障がないが初対面同士だとなかなか信頼関係を築けない」との指摘もある。
 コロナが収まった後、対面に戻るものと、引き続きオンラインで効率的に行えるものがあると思われる。
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