その他広報活動

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 企業活動に関連する分野の理解促進や、企業活動を展開しやすくするための環境の整備も広報部門の活動領域といえる。それには学術支援、文化活動、社会貢献活動、施設見学会、企業の文化施設の常設、企業出版、周年事業、社史編さん、出前授業などがある。
 経済広報センターが2014年に実施した『第12回企業の広報活動に関する意識実態調査』によると、本社広報部門で、そうした文化活動・社会貢献活動を行っているとの回答は42.4%に達している。

1.学術支援

 学術支援には、資金提供による支援が圧倒的に多い。財団をはじめとした調査・研究機関や大学に対する資金支援(研究助成など)が多く見られる。
 自社の事業にかかわりの深い学問について研究している機関への支援をすることも多い。例えば、医薬品業界の企業であれば医学や薬学、食品業界の企業であれば化学、また、コンピューター業界の企業であれば工学系の研究機関を支援するといったようにである。
 もうひとつは、未開拓の研究テーマや、まだ評価の定まらない新進気鋭の研究者などを支援していくことも、学術支援の本来の趣旨に沿ったものであるといえる。例えば、ヤクルト本社は腸内フローラ*と人の健康に関する研究を積極的に推進・助成するため、ヤクルト・バイオサイエンス研究財団を設立し、国際的な研究交流への助成や、シンポジウムを毎年開催するなど、腸内フローラ研究の普及・啓発に取り組んでいる。
  *人や動物の腸には、いろいろな細菌が住んでおり、顕微鏡で見ると、まるで花畑のように見えることから、腸内フローラと呼ばれている。

2.文化活動

 文化活動には、企業自らが主体となって活動する場合と、企業が第三者の文化活動を支援する場合がある。
 企業が主体となって展開する文化活動の代表的なものとして、コンサート、コンクールなどがある。また、展示会やギャラリーを開催・開設している企業も多い。例えば、トヨタ自動車は音楽を通じて地域文化の振興に貢献することを目的に、日本アマチュアオーケストラ連盟と連携し"トヨタコミュニティコンサート"を開催している。
 文化活動も芸術文化活動(メセナ活動)も、地道に継続的に行っていくことが、いずれ将来社会に認められ、企業イメージの向上と企業の本業にメリットをもたらすのである。

3.社会貢献活動

 企業の社会貢献活動は、内容も様々である。社会貢献と社会福祉活動(募金・寄付、チャリティーイベント、障害者用施設の設置など)、環境問題への取り組み(リサイクル、クリーン運動など)、奨学金や研究費など、教育・研究に対する助成も社会貢献活動のうちのひとつである。社員のボランティア活動を支援する企業も多い。
 例えば、佐川急便は日本と東南アジア諸国との友好親善に寄与することを目的に、東南アジア諸国からの私費留学生への奨学金援助を行っている。また、京セラは中国西部地区の大学生に資金面で支援し、同地区の発展と科学技術に携わる人材育成を目的とした奨学基金を設立している。投資信託においても、社会貢献活動を含むCSRに取り組んでいる企業に優先的に投資していこうとする社会的責任投資(SRI)の動きもみられるようになっている。

4.施設見学会

 施設見学会は、各ステークホルダーに対し、企業のありのままの姿を見てもらうことができる。実際にお互いの顔を見ながら、応対ができるというのも良い面である。施設見学会は非常に有効な広報手段のひとつである。
 工場などの地域住民を対象とした施設見学会を開催すれば、施設のなかで何が行われているかを自分の目で確かめてもらえ、その施設に対する地域住民の不安感を払拭することができる。
 また、新聞記者などを対象とした施設見学会を実施すれば、取材対象である企業の表面的な活動ではなく、その土台となって企業を支える現場の活動を自身の目で見てもらえ、よりその企業に対する理解を深めてもらえる機会となる。
 電力会社であれば、発電所の見学会、飲料水製造メーカーであれば、工場の見学会などを実施している。
 また、コロナ禍で施設見学が難しくなる一方、バーチャル技術の進歩もあり、「バーチャル施設見学」を実施する企業も増加している。
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5.企業の文化施設の常設

 企業の中には、自社の歴史や自社が関係する製品などについて常設の展示館・博物館などを持っているところも多い。
 中部電力などの電力会社が運営しているエネルギー館(電力館)では、発電の仕組みについて学ぶことができ、東日本旅客鉄道や東京急行電鉄などの鉄道会社が設置している博物館では、訪れた子どもたちが昔の電車を見たり、シミュレーションで運転手気分を味わうことができる。
 三菱東京UFJ銀行は貨幣の歴史が学べる資料館を運営している。また創業者や経営者が収集したコレクションを展示する美術館を設けている企業もある。そのほか、本社・本店にギャラリーを併設している企業も数多い。

6.企業出版

 企業による出版活動は、企業の業務内容の一端を紹介するものと、純粋な文化活動としての出版の二つに分けられる。
 両者に共通しているのは、出版活動が営利目的でない点である。もちろん、書籍として販売される以上は収益もある程度期待はできようが、企業にとってはむしろ、出版活動を通じて企業イメージを向上させることこそが目的の企業が多い。

7.周年事業

 創立50周年、100周年記念行事を行う企業も多い。
 周年を機会に企業の伝統や方針、ブランドをアピールしたり、商品の宣伝に一役買うこともできる。顧客へ感謝の気持ちを伝える機会にもなる。
 具体的には次のようなことが考えられる。それらは、(1)記念式典の開催、(2)記念品の作成、(3)社史の発行、(4)記念シンポジウム、(5)冠イベントの主催、(6)記念論文募集、(7)記念増資・配当、などである。
 社内、社外(同業他社、消費者、マスコミなど)に注目される絶好の機会でもあるので、それぞれに対して効果的なメッセージを発信するよう努めなければならない。

8.社史編さん

 社史編さんは、自社の過去を振り返ることができる資料を学者やジャーナリストにより、分かりやすく、かつ系統立ててまとめてもらうケースと、社内の各部門、支店、支社にそれぞれの部門の歴史を書いてもらう方法がある。
 チームを発足させるやり方では、広報部門や資料室などに専属スタッフを置き、編集作業にあたる場合が多い。
 最近では、CD-ROMも同時に作成するケースが増えているようだ。内容としては、(1)社内報をもとに年代ごとに整理したもの(経営史)、(2)写真を多用したもの(本社周辺の町の変遷や政治・経済の動き、関連企業の動きもあわせて紹介)、(3)「新世紀への翔き」などと題し、将来展望に焦点を合せたもの、(4)自社の文化活動を中心に企業文化論をまとめたもの、(5)創業の記録と経営者の思いを中心にしたもの、(6)社会と業界と企業の関係をまとめたものなど、様々である。

9.出前授業

 企業による出前授業が教育現場で注目され始め、出前授業に取り組む企業・団体が増えつつある。自社の事業活動や自社だけでなく業界全体の理解促進のためや、食育・環境教育などをテーマに、出前授業に取り組んでいる企業が多い。
 具体的には社員が小学校などへ出向き、講義形式の授業や体験学習をしてもらうことで企業認知を高める。対象は小中高生から大学、一般の人まで様々である。
 なお、経済広報センターでは各企業・団体が実施している出前授業の内容およびその目的、対象となる地域や学年などのほか、所要時間、費用、問い合わせ先を掲載した「出前授業データブック2011」を刊行した。
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