トップ広報

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1.トップ広報の影響力

トップは最高の広報パーソン

 「トップは最高の広報パーソン」といわれている。その影響力は大きく、トップ自らが様々なステークホルダーと直接コミュニケーションを取ることで、会社の知名度をより一層、向上させ、イメージアップを図ることができる。メディアやアナリストも、会社の代表であるトップに直接会い、言葉を聞き、時には表情からも企業の姿勢を読み取り、理解することを望んでいる。メディアへの露出を高めることは、より多くの人がトップの顔を知り、身近に感じ、その企業のファンになることにもつながる。
 社外に対してだけでなく、社員やグループなどに対しても、トップ自身が積極的にコミュニケーションを取ることが重要だ。トップ自らがメッセージを発信し、直接語りかけることは、全社員の目標や理念の共有、モチベーションの向上、企業の活性化、コンプライアンス遵守や危機管理の強化などにつながる。
 トップは、経営者としての先見性や的確な判断、実行力を備えもつことは当然であるが、加えて「企業の顔」として、企業価値や理念、ビジョンを自らの言葉で示し、相手を動かすコミュニケーション能力が求められる。それ以外にも、危機管理力や緊急時の対応力など様々な資質が求められる。
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2.効果的なトップ広報

トップと広報部との関係

 トップは、社会が自社をどのように見ているか、世の中での自社の位置づけはどこか、社員が自分のことをどう思っているか、社内で何が起きているかなど、把握していなければならない。それ故、広報責任者は、トップと頻繁に話をし、耳が痛い情報もあえて伝えることが必要だ。そこには、広報管理職とトップとの信頼関係がなければならない。
 さらに広報部門は、広報のプロとして、トップをサポートしなければならない。トップが広報を行う機会、内容、場所、時期、対象者、媒体などの設定、そのために必要な情報収集、分析を事前に行い、トップを支え、トップによる広報が、最大限生かされるよう努力する。
 トップが発表を行う機会は、経営計画、M&A、新規事業発表などの経営に関するものや、株主総会やアナリスト向け説明会などIR関係、また不祥事における説明や解決策の発表などがある。社内向けには、新年の挨拶や入社式での新入社員への言葉など様々な機会がある。

メディア幹部との関係構築

 メディア幹部は客観的な視点で経済全体を捉えており、かつその企業のトップが社会からどのように見られているかを把握している。このような経験と知識が豊富なメディア幹部とトップの間で、意見交換や情報交換ができるような信頼関係を構築したい。
 当然、メディア幹部も企業のトップとの情報交換を望んでいる。広報部門がそのお膳立てをしていくのも役割の一つであろう。

メディア・トレーニング

 前述したように、トップによる広報は大きな影響力を持つ。だからこそ、トップは広報の重要性を理解し、自身のコミュニケーション能力の向上に努めなければならない。トップの不用意な発言は、企業のイメージダウンを引き起こす。特に記者会見や講演会は、生の声が直接届くので、そのインパクトは大きい。
 そこで、事前に記者会見や個別インタビューのリハーサル(メディア・トレーニング)を体験してもらい、とるべき態度や発言方法を理解し、実践を通じて身につけてもらうことは重要だ。しかし、メディア・トレーニングの意義は、単に経営陣の会見リハーサルというだけでなく、トップが社会からどのように見られているかを再認識する機会となる他、広報の重要性への理解、情報開示時の広報体制の構築と強化、広報部員のレベルアップ(公式見解・Q&A作成から発表までの準備)という目的も含む。それ故、トップだけのトレーニングではなく、広報部門全体(特に担当者)で参画し、「発表の場」だけにとどまらず、その下準備や、社内全体の広報マインドの浸透まで視野に入れて臨みたい。
 メディア・トレーニングは、緊急時の不祥事会見から通常の一斉記者発表、個別取材など、あらゆる場面を想定して行う。いずれにせよ、実際にトップに体験してもらうことが大事だ。
 そして、実際会見に臨む時は、服装・外見を確認し、予め定めた何を伝えるかを中心とした発言内容からぶれないようにし、話し方、表情、姿勢・態度にも注意を払う。広報部門は、トップが、毅然とした態度と積極的な姿勢を保ち、「企業の顔」としてより魅力ある人物に見えるようバックアップする。トップを演出するのは、広報の役割でもある。
 会見の際は、以下のポイントに注意したい。
  1. (1) 何を伝えたいか、何が目的かを明確にし、発表の際、きちんと伝える。
  2. (2) 棒読みはしない。必ず、気持ちを込めて、少しゆっくりと、自分の言葉で話す。
  3. (3) 誠実かつ毅然とした態度を保つ。
  4. (4) 記者の質問に左右されて、軸からぶれないようにする。
  5. (5) Q&Aの時間も充分に取る。可能な限りその場で記者の質問に答える。
  最も重要なのは「今回の会見(取材)は何が目的か、何を伝えるのか、社会からどう思われたいのか」を定め、方向性を明確にすることだ。会見(特に不祥事会見)の際、記者から嫌な質問や、自分が持っていきたい方向性と異なる質問が出ても、惑わされず、強い意志で自身の軸をくずしてはならない。ただし、相手を怒らせないように、丁寧に誠実に行う必要がある。自分が伝えたいと考えていたことは、たとえ質問を受けなくてもきちんと説明することが大切だ。
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