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インターネット・SNS広報

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1.ソーシャルメディアの普及と課題

縮まる企業と生活者の距離感

 企業は、インターネットの普及により、メディアを介さず、様々なステークホルダーに情報発信することが可能となった。また、一方通行の発信だけでなく、ステークホルダーからの質問や意見などを直接受け、それを公開する双方向コミュニケーションへと変化した。2000年初め頃から、企業はマスメディアだけでなく、一般生活者との直接コミュニケーションを重要と考えるようになった。近年ではソーシャルメディアの普及が後押しとなり、企業としてソーシャルメディアのアカウントを取得するなど、企業と生活者の距離が近くなっている。
 ソーシャルメディアの発展により、一般の人たちが、情報を発信するメディアと化している。かつては、影響力の大きな有識者のことを、オピニオンリーダーといっていたが、ネット社会では、影響力の大きなブロガーなどを、“インフルエンサー”と呼ぶ。広報(パブリック・リレーション)には、メディア・リレーション、インベスター・リレーション、エンプロイー・リレーションなどがあるが、これにブロガー(インフルエンサー)・リレーション等が新たに加わった。
 個人ブログ(日記形式のウェブページ。アメーバブログなど)、掲示板(ネット上で特定のテーマについて意見交換を行う場など)、SNS(Social Networking Service/会員制のコミュニティサイト。フェイスブック、ツイッター、ミクシィなど)などで情報を発信する個人が増えている。これらは、パソコンやスマホ、携帯電話から簡単に自分のページを立ち上げることができる。個人ブログは物事に対しての感想や意見、主張を自由に発信することができ、インフルエンサーが数多く誕生した。また、日記代わりに活用したり、趣味の話題や好きな写真をアップできるなど、用途は多岐にわたっている。掲示板は、特定のテーマについて自由に意見を書き込むことができるが、匿名で投稿されることが多いため、真面目なものばかりでなく、誹謗・中傷・嘘など様々な意見が書き込まれる。SNSは、実名の登録を要するもの(フェイスブック)、文字数の制限内で簡易に情報発信するもの(ツイッター)、ゲームに特化したもの(グリー、モバゲー)、ビジネス上のネットワーク構築に特化したもの(リンクトイン)など、それぞれの特徴を持ったプラットフォームを構築している。
 CGMは情報発信者が一般の人であるため、書かれる内容については、誰もコントロールができない。また、一度悪評がでると短期間で広まり、不買運動が起きるなどのリスクもある。
 これらCGMのリスクに対しては、常日頃からネット上での問い合わせに「迅速」「丁寧」「誠実」に対応し、また積極的に情報を開示することで、彼らのネット上での話題を、正確かつ肯定的なものにしてもらう努力を続けることだ。そして必要に応じて、中傷や嘘に対しては、迅速に対応することが大切である。
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2.ソーシャルメディアを活用した企業広報

 ソーシャルメディアを活用して消費者とコミュニケーションを図り、積極的に広報やマーケティングに活用している企業もある。
 企業によるソーシャルメディア活用の目的は、次のように分けることができる。
 (1)ブランド認知(2)グーグルなどでの検索結果順位の上昇(3)集客・ウェブサイトへの誘導(4)ブランドへの愛着心(5)販促(6)販売(7)顧客サービス(8)企業イメージアップ(9)市場調査(10)商品企画・製品開発(11)人材採用

3.企業のウェブサイト

企業サイトの構築と運営

 また、企業にとって自社サイトの構築・運営は、重要な広報活動の一つとなった。広報活動全体の中で、コーポレートサイトをどう位置づけるか、どのように活用していくかを明確にし、構築していくことが大切だ。
 自社サイトを立ち上げ、運営していく際、必要なポイントは以下の通り。
(1)内容・デザイン
  1. ・ 自社の強み、アイデンティティーを明確にし、それを柱として作成する。
    どのような会社か、目指す方向はどこかが、すぐに分かるようなサイトにする。
  2. ・ ヴィジュアル面も同様に、企業イメージに沿ったデザインにする。
  3. ・ ターゲットを明確にし、彼らが必要な情報を提供する。サイトのターゲットは、顧客、潜在顧客、取引先、投資家、記者、社員、学生とその親などで、それぞれが異なる情報を必要としていると考えられる。ターゲットや情報に優先順位をつけることも必要。
  4. ・ 正確で最新の情報(常に更新に気を配る)を提供する。業者に依頼せずとも自社で簡単、タイムリーに内容を更新できるシステム、CMS(Contents Management System)を導入するなど工夫してもよい。
(2)誘導・機能
  1. ・ 膨大にあるサイトから自社サイトを埋没させないためにも、誘導面を工夫する。
     SEO(Search Engine Optimization/検索結果で上位に表示されるよう特定のウェブサイトの表記方法を検索エンジン向けに最適化すること、またはその技術)や、SEM(Search Engine Marketing/検索キーワード連動型広告や有料リスティングサービスなどによる広告の掲載など)といった対策を検討するのもよい。
  2. ・ 見やすく、使いやすいこと。見出しや分類を工夫する。
  3. ・ 必要な情報に到達しやすい構造にする。
  4. ・ サイト内の検索機能の充実。
  5. ・ 関連サイトにリンクをはるなどして、さらに広範な情報提供を行う。
  6. ・ ターゲットからの評判や改善点・クレームなどきちんと把握するためにも、簡単に投稿できる仕組みを取り入れる。
  7. ・ ブログ形式のコンテンツを導入し、社長や、商品開発担当者のブログを提供してもいい。企業の「人」が出てくることで、親しみを感じてもらい、企業のファンになってもらう。企業側の人だけでなく、一般消費者の新製品についての意見をブログに載せるなど、より身近に感じてもらうことも可能だ。
 自社サイトの構築は、ウェブサイトの持つ特徴(調べやすい、豊富でタイムリーな情報、双方向性、多機能など)を最大限に生かしつつ、他社との差別化、自社の独自性を図ることが大切だ。
 また、当然のことながら、ウェブサイトを立ち上げた後は、アクセス件数や、閲覧者の声などを分析し、常に改善を試みる必要がある。

今後のクロスメディア

 既存のメディアと自社ウェブサイト、様々なプラットフォームのソーシャルメディアを組み合わせていく広報戦略は重要である。今後、パソコンの閲覧だけでなく、常に傍らに置き、見たいときにいつでも見ることができるメディア、モバイル(スマートフォンも含む)も視野に入れた発信を考えていくことが大切だ。モバイルの特徴「いつでもどこでも」で、パソコンによるウェブの閲覧より、さらに距離感が縮まり、リアルとの連動が可能になる。
 常日頃から関連情報にアンテナを張っておく必要がある。その変化に気づかずにいると、競合企業からだけでなく、生活者、社会からも取り残されてしまうかもしれない。
 デジタル化に頼り過ぎてもいけない。デジタル化が進むと、アナログを軽視する傾向が出てくるが、実際はアナログ的コミュニケーションに優れている企業が、デジタルの世界でも成功をおさめているという。あくまで、内容(記事や表現など)が優れていることが基本だからだ。発信する内容を分かり易く魅力ある表現にすること(事実であることはいうまでもない)、その上で、いかにツールを上手く使いこなしていくかが、広報としての常に考えていくべき課題であろう。
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4.マスメディアのネットとの融合

 近年は、特に若者の間で、一般のニュースや企業情報をネットから入手する人が増加している。このことから新聞の購読者が減少しつつあるのに加え、リーマン・ショックによる世界同時不況、欧州債務危機、東日本大震災の影響で、さらに広告費も減少している。これらの影響で新聞、雑誌、テレビといった主要メディアは厳しい状況に立たされている。
 従来の取り組みだけでは危機感を感じたメディアは、積極的にネットとの融合を進めている。しかし、収益に結び付くには至らず苦戦しているのが現状だ。顧客へのサービスを目的に、新聞各社がネット上の無料ニュースをスタートしたが、無料から有料へのハードルは高そうだ。一般のブロガーが記者の役割を果たし、既存の新聞社が報道できないようなニュースや情報を発信して人気を博しているケースもある。しかし、その一方で、新聞の組織力と専門性をもつ取材力は、ニュースの正確性、継続性、内容の深さなど、ブロガー記者がかなわない面があるのも事実である。
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