経済広報

『経済広報』(2014年3月号)掲載

CC時代のインナーコミュニケーション(2)
社内SNS「Nexti」の活用によるセクショナリズムの打破

(株)NTTデータ

 NTTデータでは、2006年に社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を導入し、ボトムアップ型の社内コミュニケーションを活性化させてきた。また、グループのグローバル化に伴い、2013年には新たな経営ビジョンと行動ガイドラインを策定し、社員への浸透を図っている。同社の社内コミュニケーションへの取り組みを紹介する。

社内SNS「Nexti」発足のきっかけ

 NTTデータは2005年に初のグループビジョンである「OUR VISION」と、その実現に向けて10項目から成る「行動ガイドライン」を策定。このビジョンと「行動ガイドライン」を浸透させるため、グループ経営企画本部が主導し、社員参画型の「新・行動改革WG(ワーキンググループ)」が発足した。WGでは公募で集まった66名のメンバーで職種・世代をシャッフルして8チームを組織。チームは「行動ガイドライン」の中から項目を1つ選定し、社内への浸透施策を検討した。その際、後に社内SNS「Nexti」を立ち上げる「リスペクターズ」というチームが選定したのが「セクショナリズムを排し、仲間の知恵と力を合わせる」という項目だった。
 リスペクターズのメンバーは社内で情報が縦割り化し、チームワークの文化が根付いていないことに問題意識を感じていた。そこで、当時普及し始めていたSNSの社内版をつくり、コミュニケーションの活性化を図るという施策を提案した。そして、執行会議での承認を経て財務的なサポートをグループ経営企画本部から受けながらも、あくまで本業の傍らで活動する社内の有志メンバーによって社内SNSを立ち上げ、運営することとなった。

「ネット上のたばこ部屋」Nextiの普及

 社長メッセージなど経営側の考えを社員にフォーマルに伝える取り組みは広報部がウェブ社内報を通して行っているが、それを下支えするインフォーマルな形での社内コミュニケーションの活性化は、社内SNS「Nexti」で行われている。
 Nextiへの登録は実名を条件とし、活用の仕方は社員のモラルと自主性に任せている。これには誹謗中傷を抑制するという効果がある一方、書き込みへのハードルが上がり、サイトが盛り上がらないという懸念もあった。そこで、社員が自由に情報発信できる「ネット上のたばこ部屋」のような環境を整えるために、様々な工夫をこらした。
紹介制による普及
 リスペクターズは、社内SNSの普及を最終目的とせず、チームワーク文化を社内に根付かせるための「手段」のひとつと捉えた。そのため、参加は紹介もしくは自己申告制とし、告知や通達は一切出さずにクチコミでの普及を狙った。“横の繋がりを必要としている人”にクチコミで広げてもらう方が強制感もなく、導入の主旨に沿うと考えた。
 また、忙しい社員に参加してもらうには、社員にとって有益で魅力的な場でなければならない。そのためには最初の盛り上がりが必要と考え、導入に賛同する社員でテストユーザー会を組織し、招待機能を除いてNextiを開放した。テストユーザーにはプロフィール欄を埋め、写真の掲載や書き込みも積極的に行うなど、Nextiの理想の姿を実演してもらった。
 テストユーザー会で盛り上がりが出てきた頃合いを見計らい、招待機能を開放。すると2日間で1000人、4日間で2000人もの社員に広がった。現在はグループ会社社員も参加し、メンバー数は1万4000人に上っている。
親しみやすいサイトづくり
 リスペクターズは、「同じ社員によるボランタリーの運営」を前面に出すことで利用者との垣根を低くし、書き込みのハードルを下げた。
 また、利用規定(図)は最低限の3つに絞り、業務時間中の利用や業務以外の話題を公式に認めた。登録画面にはサイト運営の目的を「こころざし」として「しばらく会っていない同期は今何してるかな、と思うことはありませんか?」「1つ上のフロアのプロジェクトが、今どんな状態か知っていますか?」などと共感を醸成するような言葉で明文化した。
 フラットなコミュニティーを実現するために、個人のページには役職名を記載せず、代わりに、グループ経営企画本部と連動した施策「THANK YOUポイント」が表示される仕組みとなっている。「THANK YOUポイント」とは、社員同士で感謝の気持ちを表す際に贈りあうポイントで、年間ポイント上位者は社長より表彰を受けることができる。

Nextiの効果

 Nextiには業務に関係するONのコミュニティーだけではなく、全く関係ないOFFのコミュニティーも多数存在する。中でも一番利用率が高いコンテンツは「Q&A」だ。ここでは業務に関係ある・なしにかかわらず社員が質問を投稿でき、それに対してほかの社員から回答が寄せられる。「とりあえずNextiで聞いてみよう」という場になりつつあり、「社内の誰に聞けばよいか分からない」という悩みの解決に繋がっている。クライアントから寄せられた疑問に、Q&Aを活用して素早く対応できたという事例も上がっている。時には社長自ら回答に参加することもある。

進むグローバル化と新たな経営ビジョン

 同社は2013年、グループのグローバル化やM&A(企業の合併・買収)の進展を踏まえ、経営ビジョンと行動ガイドラインを「Group Vision & Values」として改定。「Group Vision」では10年後に実現すべき状態を「Global IT Innovator」として示し、行動ガイドラインはGroup Visionの実現に特に重要な「Clients First」「Foresight」「Teamwork」の3項目に集約した。
インターナルコミュニケーション体制
 同社のインターナルコミュニケーションチームでは、「Global One NTT DATAの実現に向け、NTT DATAの会社や経営に対する社員の理解・共感を高める」というミッションの下、経営情報、Our Way、ビジネスナレッジを中心に社員へ伝えている。これらの情報発信は、広報部、グループ経営企画本部、グローバルビジネス事業本部、ITマネジメント室の4つの部署が全社横断チームとして連携して取り組んでいる。
国内グループ会社への取り組み
 「DATA FINDER」というウェブ社内報を社員へのキーメディアに、経営メッセージ、ニュース、ナレッジ、社内イベントなどの情報を配信している。経営メッセージに関しては、社長の発信する重要なキーワードをまとめた「社長メッセージポータル」や、社長のブログを設けている。このほか、タウンホールミーティング形式での社長の講話や、ウェブ社内報を通じた動画配信なども行っている。
 また、部長層以上の役職者全員を対象としたワークショップも開催している。これには、まず職場の上司が「Group Vision & Values」 を理解し、自らの言葉で部下に語らせるという狙いがある。
海外グループ会社との連携体制
 海外のグループ会社は各社の担当者が主体的に活動しているが、年に2回程度は国内・海外それぞれフェース・ツー・フェースで集まる場を設置し、施策や状況の共有、ディスカッションを行っている。
 基本的には、ポータルやニュースレターでの情報発信、タウンホールミーティングを海外の各地域で開催している。加えて、本社主導でイントラネット内のウェブサイト「GIP(Global Internal Portal)」による情報共有、ワークショップ「Values Day」の開催、ビデオメッセージとグローバルメールマガジンの配信を行っている。特にGIPでは、各地域の最新のビジネス活動やグループ企業の概要や社員の紹介、グループ各社が提供するソリューションの情報や、ビジネス上のノウハウを共有するためのデータベースも掲載されている。
(文:国内広報部専門研究員 鈴木恵理)
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