経済広報

『経済広報』(2014年11月号)掲載

メディアに聞く

先端技術の実用化を積極的に紹介

鹿児島昌樹

 

鹿児島 昌樹(かごしま・まさき)日本経済新聞社 編集局 科学技術部長
科学技術部とはどのような組織か。
鹿児島 1973年の日経産業新聞創刊に合わせて、日本経済新聞社に「科学技術部」が誕生した。科学技術部は東京に約20人、関西に数人で計20人強の組織である。以前は理系出身の記者だけだったが、今は文系出身も増えている。しかも、文系出身の新入社員で科学技術部を志願する者もいる。担当分野は、IT、バイオ、エネルギー、環境、ロボット、自然災害、宇宙など多岐にわたる。ある記者は医療、バイオ担当、またある記者はIT、情報機器担当と分けて、ニュースを追い掛けている。急にニュースが発生したら、関連分野の担当記者が集まり、特集記事などは分担して取材している。紙面としては、日経新聞の科学技術面や健康面、ニュースな科学面、日経産業新聞では先端技術面など、毎週10ページは科学技術部が担当している。
 最近はエネルギー関連の記事など、科学の話題が紙面の第1面を飾ることも多いが、これらも科学技術部が担当している。科学の話題に対する読者の関心は高まっており、社内でも科学技術分野を強化する方向にある。科学技術部では、基礎研究だけでなく企業の技術開発を取材しており、特に、日経産業新聞では先端技術を積極的に取り上げている。研究の推移だけでなく、開発の成果が実用化にどのように繋がっていくかに非常に関心があり、それが記事にする際の重要なポイントだ。これが、組織の名称を“科学部”ではなく“科学技術部”としているゆえんである。
科学技術の記事を書く際のスタンスは。
鹿児島 科学技術の記事は新発見や新発明といった内容が多く、読者は予備知識がない。よって、記者には子どもやお年寄りが1回読んですぐ理解できる表現にするように指示している。記者にとって、これは非常に困難な作業だが、日経新聞だけなく、専門家が読んでいる日経産業新聞においても同じスタンスであり、分かりやすい表現を心掛けるよう記者に注意している。
 大きな研究発表を記事にする際は、まず、内容を的確に判断することが重要である。記者は研究者ではないし、時間的な制約もあるので、それまでの取材で蓄積した知識や経験を生かし、また、発表した研究者の実績などを評価し、さらに第三者の研究者の見解も交えた上で、正確性、信憑性を判断している。
企業の技術広報に望むことは。
鹿児島 知的財産権の問題で公開が難しいのは理解しているが、企業には技術情報を数多く発信してほしい。また、最終製品だけでなく、製品を支えている部品や要素となる技術に関して、もっと詳しいリリースを出してほしい。科学技術部としては、部品や要素技術を掘り下げて取材するとともに、開発への取り組みなども紹介したい。大きな最終製品のキーテクノロジーは、製品の中の部品によって実現されていて、その部品を作っているのはどこの日本企業の何という研究組織であり、中心メンバーが誰であり、どのような思いでどんな試行錯誤を経験したのかを読者に伝えたい。これらを伝えることで、単に世の中への技術紹介というだけでなく、次世代の研究者やエンジニアの卵である子どもたちが興味を持つきっかけになればと思う。
1986年日本経済新聞社入社。東京本社産業部、科学技術部、大阪本社経済部などを経て、1999年より東京本社科学技術部。次長、編集委員を経て2012年から現職。
(聞き手:国内広報部長 佐桑 徹)
(文責:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
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