経済広報

『経済広報』(2016年1月号)掲載
企業広報講座ダイジェスト
危機管理と広報

 今回は、危機管理をテーマに開催した企業広報講座の模様をお伝えします。
 2015年10月16日に東京で、広報・危機管理コンサルタントの山根一城氏を講師に、企業広報講座を開催しました。講演のタイトルは「危機は管理できない。周到な準備と初期対応が企業を危機から救う。危機をチャンスにするには」。興味深かったのは、どう危機を管理するかというテーマの講演会なのですが、いきなり「今まであり得なかったことが起きます。未経験の事件や災害が突如発生することもあります。誰も経験していないことなので、危機は管理できません」と切り出したことです。そして、「従来の組織、経験、資源で解決可能なこともありますので、危機が起きないような体質づくりは管理可能です」と話を続けました。
 さて、何が危機になるかという点ですが、従来指摘されている「事実に基づく判断」、つまり、製造工程上などの機能・規格上のミス、法的規制・許可上の問題、健康上の問題だけでなく、「感覚的・感情的要因に基づく判断」、具体的には、社会情勢、国民の視点、メディアの視点、常識、良識、行政との関係などに起因するものもあり、これらも忘れてはならないと強調しました。
 このような見解を述べられた後、ご自身が日本コカ・コーラ副社長として経験した緊急時の対応を具体的に時系列に沿ってお話しされました。緊張感、緊迫感が伝わってきました。
 11月27日には大阪で、山見インテグレーターの山見博康代表取締役が「広報・危機対応の基本と企業危機にいかに対応するか? 基本を学び5つの演習を通じて実践力を身に付けよう」と題して講演しました。
 山見氏は、危機を「経営上の危機」「事件・不祥事」「事故・天災(不可抗力)」に分類し、それぞれにどのように対応すべきかをフローチャートで示した後、緊急時プレスリリース作成のポイントや、クライシス時のメディア対応の原則、緊急時記者会見において網羅すべき15のポイントを具体的に説明しました。
 山見氏はまた、記者がどのような質問をしてくるかを予測する力、質問力、質問予測力が重要であると強調しました。
 最後に、ひとつだけ付け加えたいことがあります。それは、しばしば、この種のセミナーで出てくる質問ですが、「どこまでプレスリリースに書き込み、どこから質問があったときに答えればいいのか」という点です。これに関しては、いろいろな考え方があるかもしれませんが、山見氏は「記者会見で記者から質問が出ないほど書き込まれたリリースが、いいリリースだ」と話されました。「リリースは1枚で」と話す専門家もいますが、山見氏は「2枚になっても、十分に書き込んだ方がいい」とのお考えでした。
 なお、当センターでは、危機管理に関して、このほか、11月17日にはプラップジャパンのデジタルコミュニケーション部の別井孝士氏による「ソーシャルメディア対応の危機管理」という講演会も実施しました。

文:常務理事・国内広報部長 佐桑 徹
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