経済広報

『経済広報』(2016年9月号)掲載
社会広聴アンケート

企業には災害時、「商品・サービス提供の維持、速やかな復旧・再開」を期待
~「災害への備えと対応に関するアンケート」調査結果~

 未曽有の被害をもたらした東日本大震災から5年が経過し、被災地では多くの方々の懸命な努力により、一歩ずつ復興への道のりを歩んでいる。一方で、2016年4月に熊本県熊本地方を震源とする熊本地震が発生し、甚大な被害をもたらした。経済広報センターは、生活者における災害への備えや対応などが、どのように変化したのかを調査し、その結果を8月23日に発表した。
 調査対象は全国の様々な職種、世代で構成される社会広聴会員のうちインターネットで回答可能な3037人。1631人が回答し、回答率は53.7%だった。調査期間は2016年5月19日から5月30日。

・回答者の属性:
男女別:男性(728人、44.6%)、女性(903人、55.4%)
世代別:29歳以下(47人、2.9%)、30歳代(177人、10.9%)、40歳代(246人、15.1%)、50歳代(528人、32.4%)、60歳以上(633人、38.8%)
職業別:会社員・団体職員・公務員(671人、41.1%)、会社役員・団体役員(71人、4.4%)、自営業・自由業(124人、7.6%)、パートタイム・アルバイト(204人、12.5%)、専業主婦・夫(293人、18.0%)、学生(14人、0.9%)、無職・その他(254人、15.6%)
居住地別:東日本(1002人、61.4%)、西日本(629人、38.6%)
東日本……北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県の18都道県
西日本……富山県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の29府県
北海道(52人、3.2%)、東北地方(22人、1.3%)、関東地方(868人、53.2%)、中部地方(191人、11.7%)、近畿地方(310人、19.0%)、中国地方(59人、3.6%)、四国地方(44人、2.7%)、九州・沖縄地方(85人、5.2%)

3人に2人が、自身の災害への備えは「不十分」と認識

 自分自身の災害への備えについて、「どちらかといえば備えは不十分」が41%、「備えは不十分」が26%、と合わせて67%が「不十分」と回答している。居住地を東日本、西日本に分けて比較すると、「備えは不十分である(どちらかといえば不十分/不十分である)」との回答は、西日本(75%)が東日本(61%)を14ポイント上回っている。

災害対策の状況(年別・全体・居住地別)

3人に1人が「東日本大震災直後は防災意識が高まり、最近は徐々に薄れていたが、熊本地震により、再度、高まった」と回答

防災意識の変化(全体・男女別)

「テレビや新聞、ラジオなどで防災情報を確認」して防災意識を持続

 防災意識を持続するために、すべきことを聞いたところ、「テレビや新聞、ラジオなどで防災情報を確認」(66%)、「防災用品や備蓄品などを定期的に確認」(62%)が多く、続いて「家族や友人、近所で防災について情報交換する機会を増やす」「防災マップや避難ルート・避難所、徒歩による帰宅ルートなどを確認」が共に37%となっている。
防災意識の持続(全体)

東日本大震災発生後に「義援金・支援金の寄付」を行った人が7割を超える

 東日本大震災の被災地支援に関連して、行った・行っていることを聞いたところ、「義援金・支援金の寄付」(72%)、「被災地の産品の購入」(44%)が上位に挙がっている。一方、「特に支援活動はしていない」が13%となっている。
被災地支援の状況-東日本大震災(全体)

熊本地震に関連した支援活動は義援金の寄付に関する回答が多く寄せられる

 熊本地震に関連して、行った・行っている、また、行う予定の支援活動を聞いたところ、義援金の寄付に関する回答が多く寄せられた。被災地の産品の購入で支援をするという意見も多く見られた。また、被災地へ旅行することで支援していきたいとの声も多い。熊本城再建のための寄付や、観光で訪問したときには現地でボランティア活動も行いたいなど、被災地の観光業の立て直しを望んでいる意見も目立つ。さらに、被災自治体へのふるさと納税、チャリティーイベントへの参加・企画、所属する会社の支援活動を通じた被災地支援など、幅広い支援活動を実施、検討していることが分かった。

帰宅困難の際に職場や避難所にとどまるには、8割が「食料・水などの備蓄がある」「自身・家族などの安全が相互に確認できる」を重視

 職場・学校などで被災した際に、どのような状況・備えがあれば、職場・避難所などにとどまれるかを聞いたところ、「食料・水などの備蓄がある」(83%)、「自身・家族などの安全が相互に確認できる」(80%)が上位で、飲食物の提供と共に、家族などの安否が確認できるかを重視している。
帰宅困難者への対応で重視すること(全体)

企業の災害への備えや対応として、4人に3人が「商品・サービス提供の維持、または速やかな復旧・再開」を期待

 企業の災害への備えや対応として期待することを聞いたところ、「商品・サービス提供(工場操業、店舗営業、エネルギー供給、交通・物流網、電話・通信網などを含む)の維持、または速やかな復旧・再開」が76%と高い。

企業の災害対策に期待すること(全体) 

文:国内広報部主任研究員 西田大哉

行政の災害への備えに課題

小川 和久

小川 和久(おがわ かずひさ)
静岡県立大学 特任教授

調査結果を見ての感想は。
小川 政府、地方自治体、企業、一般国民が災害に備えてやらなければならないことがあるが、この調査は一般国民の備えと企業の対応の評価を聞いたものだ。政府、地方自治体の役割、評価は聞いていない。
 東日本大震災の後、一般国民の防災意識が高まり、しばらくすると低下した。それが熊本地震で再び意識が高まった。阪神・淡路大震災の後も同じだったが、これが現実だ。首都直下型や、東海地震が叫ばれているので、防災意識は一定レベルで維持されるかもしれないが、何もないと危機感が低下してしまうとも考えられる。いずれにせよ、国民の意識が低くなったときでも、行政が一定レベル以上の能力を発揮できるようにしなければならない。
 このアンケート結果を見ていると、備蓄などの対応は、私の家より皆さん、きちんと対応している。私も家に帰り、備品のチェックをしなければいけないと思ったほどだ。
行政の対応をどう見ているか。
小川 行政の対応には問題がある。先ほどの一般国民の備えも、あくまで行政が機能することが前提となっている。災害対策の責任者は、都道府県であれば副知事クラスにしないと機能しない。部長クラスの権限では縦割りに陥ってしまう。市町村の役割もあるが、広域にわたるので都道府県が先頭に立って地域防災計画などを見直さなければならない。きちんと防災計画通りに行動できるかも、抜き打ち訓練で検証しなければならない。人も代わるので、継続的に行わなければならない。夜中や週末に、きちんと機能するのかを確認しなければならない。儀式のような形式的な訓練では意味がない。
自衛隊の役割は大きい。
小川 全国的に動けるのは自衛隊だけだ。消防・警察には瞬発力はあるが、2週間以上の持久力を備えているのは自己完結能力を持つ自衛隊だ。戦争と比べれば、敵が攻めてこない分、作業に集中できる。日本は海岸線の長さでは世界第6位だ。人命救助の中心である陸上自衛隊の人員は、海岸線の長さを前提に考える必要があり、適正規模は25万人だが、現状は13万人しかいない。東日本大震災で国防を犠牲にして10万人規模を投入できたのは、日米同盟があったからだ。当時も中国、ロシアが様子を見にきていたが、米国が目を光らせていたから事なきを得た。
企業の対応については。
小川 コンビニが商品を配ったり、宅配企業が物資を運んだりしている点が評価されているが、スピーディに対応している企業とそうでない企業がある。いかに速く対応できるかは、企業文化としてそうした意識が定着しているかによる。それを社風にまで高めなければならない。それには訓練しかない。

(おがわ・かずひさ) 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒・航空学校修了。同志社大学中退。新聞記者、週刊誌記者などを経て日本初の軍事アナリストとして独立。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たす。現在、静岡県立大学特任教授。近著に『戦争が大嫌いな人のための正しく学ぶ安保法制』(アスペクト)、『危機管理の死角』(東洋経済新報社)がある。
聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 常務理事・国内広報部長
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