経済広報

『経済広報』(2017年10月号)掲載
企業広報研究

ソーシャルメディア時代の危機対応
~ネット炎上への対応~

清水陽平

清水 陽平(しみず ようへい)
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

 経済広報センターは7月31日、「企業広報講座」を経団連会館で開催した。法律事務所アルシエンの清水陽平共同代表パートナーが、ネット炎上への対応について講演した。参加者は83名。

ソーシャルメディアとSNSの違い

 まず、基本的事項の確認だが、ソーシャルメディアとSNSはどう違うのか。
 ソーシャルメディアは、誰もが参加できる広範的な情報発信技術を用いて、社会的相互性を通じて広がっていくように設計されたメディアである。双方向のコミュニケーションができる。
 一方、SNSは、Social Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の略で、アカウントを登録することでサービスが利用でき、サービス利用者同士が公開・非公開を設定して交流することができるのが特徴だ。両者は似ているものの、ソーシャルメディアの枠組みの中に、SNSが組み込まれているという関係だ。ソーシャルメディアには、ブログや掲示板、YouTube、ニコニコ動画などが分類され、SNSには、Twitter、Facebook、LINE、mixiなどが入る。ただし、この両者の違いは流動的であり、社会の進化と共に分類も変わっていく。

炎上参加者はユーザーの0.5%か?

 そして、炎上はソーシャルメディアやSNSから生じるものが多い。
 「炎上において書き込みをするのは、インターネットユーザーの0.5%」ともいわれている。“炎上”と聞くと、否定的なコメントが多数書かれるというイメージを持つ。しかし、実際の“炎上”を観察してみると、擁護的なコメントや擁護的なコメントに対する批判的なコメント、無関係だったりにぎやかしだったりのコメントも見受けられる。単に誹謗中傷的なコメントだけでなく、炎上にはそういったコメントも含まれている。
 そこで、「多くの人がある事柄に関心を寄せ、それに対する批判的な内容を中心とした自分なりの批評・論評・意見・感想などが多数発信されている状況」と定義した。確かに炎上は批判的な内容が中心であるものの、批判的なもの以外の擁護的、中立的な書き込みも補足しなければ、炎上全体の状況を正しく把握できないのである。先ほどの0.5%という数字は、誹謗中傷のみ行う人だけを対象としている。しかし実際には、擁護を行う人たちのコメントがさらなる批判を呼ぶなどしている。彼らは無意識に炎上に参加してしまっているのである。

マスメディア発とインターネット発の炎上

 炎上を類型化すると、大きく2つに分類できる。マスメディアの報道から発生する炎上とインターネットから発生する炎上である。
 インターネットから発生する炎上を、より細かく分類すると、(1)ネット告発型(不祥事・不満などをきっかけにしているもの)、(2)失言型(特に企業のトップ層の失言)、(3)悪ノリ型(社会的非難を受ける行動をきっかけとするもので、いわゆる“バカッター”など)、(4)デマ型(デマを契機に広がるもの)、がある。ただし、これらは複合している場合もあるので、必ずしも、いずれかの分類に当てはまるというわけではない。
 インターネット発の炎上は、SNSで投稿や発言が広がっていき、それが話題を生むと2ちゃんねるに書き込まれる。そして、それがまとめサイトに掲載され、注目されるとネットニュースにも掲載されていく。それをマスメディアが報道し、それが再びSNSで共有され拡散していくという、負のサイクルを繰り返し、炎上は加速的に大きくなっていく。
 一般的に、炎上と聞くと、インターネット発のものを想像するかもしれないが、実はマスメディア発の方が影響は大きくなる。マスメディアは発信力が大きく、一気に拡散が進んでしまうのだ。そもそも、マスメディアは多くの人が関心のあることを報じる。そういうスクリーニングを経た情報なので、人々の関心を生んでしまうのだ。

炎上は基本的に放置するべきではない

 炎上は様々な理由で日々発生しており、大きな事例で比較的目につきやすいのは食品に関するものだが、特に最近はそれ以外の事例も増えている。そのため、どの企業にとっても、身近なものになっているのが現状だ。
 では、炎上対応はどのように行えばよいか。炎上は数日間、長くても1カ月間程度で収まるので、放置しておいても、いつかは終息する。対応の手間と費用を節約できるので、“スルーする”という選択肢もあり得る。
 しかし、炎上の根本的な問題は、多くの人の目に触れ、ネガティブな印象を残すことにより、企業の社会的信用が毀損されてしまうことだ。インターネット上の情報は残り続けるだけでなく、拡散されてしまうリスクさえある。また、「無反応は有罪である」とみなされてしまう。さらに、“スルーする”ことによって、反論の機会を失ってしまう。また、何も対応しなければ、「危機対応がなっていない会社」との烙印を押されることもある。従って、よほど軽微な炎上でなければ、何かしらの対応を取るべきである。
 炎上してしまった場合、状況の把握に続いて、事実確認を行う。炎上の原因となった者への接触やヒアリングを行い、証拠物を確保しておく。そして、社内の関係各署へのヒアリングと状況確認という順序で行っていく。注意点として、担当者は自己保身のため都合の良い報告しかしない場合もある。そのためにも、文書やデータなどの客観的証拠が重要となってくる。
 炎上の対応方法としては3つある。1つ目は「無視」すること。先述のように、これはあまり良い手段ではない。2つ目に「反論」すること。3つ目に「謝罪」すること。
 無視以外では、対外的な発表をすることになるが、その際は、正確な事実関係を把握し、誠実な態度で対応することが重要だ。なるべく公表したくない、重大な問題ではない、と思いたくなる気持ちは理解できるものの、そういった姿勢は消費者に容易に見透かされる。また、公表や公表後の対応が迅速であることも大切だ。炎上しているということは、一般消費者は不安や疑心暗鬼を抱えているということだ。早期の不安解消が重要となる。そして、議論をしようとしてはいけない。議論が白熱すれば強い表現が用いられることもあり、不要な怒りを買ってしまうことがあるほか、揚げ足取りなど本来とは異なるところで、新たな火種を生んでしまう恐れがある。

「反論」におけるポイント

 2つ目の「反論」について掘り下げたい。反論は難しいものの、成功している事例も見受けられる。反論が成功するポイントは2つある。
 まず、炎上に至る前か炎上直後の対応であることだ。初期対応が重要で、広まってからでは火消しが困難になる。対応が遅いと、言い訳していると受け取られてしまう。そして、反論の根拠が明示できることが重要だ。社内の論理を振りかざしても世間、社会一般には理解されない。客観性を持たせることができるかが重要だ。このいずれもを満たすことができる毅然とした対応が取れた場合、批判が評価する声に転換する。

「謝罪」のポイント

 次に、「謝罪」についてだが、企業が謝罪する方法は3つある。1つ目は、個々の被害者に対して謝罪を行うというもの。被害者が少数で、発表の必要性が低い場合に適切だ。2つ目が、ニュースリリースによる謝罪。会社のトップページに、「お知らせ」という形式で載せるケースが多い。そして、3つ目が記者会見による謝罪である。記者会見は最終手段と思ってもらってよい。
 2つ目のニュースリリースによる謝罪では、冒頭で謝罪を行い、事実関係を詳細に説明し、原因と再発防止策を発表して、処分について記載する。「炎上したから謝罪する」のではなく、「世間を騒がせた」「心配をおかけした」から謝罪するという認識を持つこと。「法的責任が問われるかもしれないので、謝罪したくない」とよく聞くが、そんなことはない。社会的責任と法的責任は、必ずしも一致しない。法的責任とは不法行為であるということ。不法行為は、個人に対して損害を与えていないと成立しない。炎上することだけでは、個人に必ずしも損害を与えているわけではない。
 NGワードは、「遺憾に思う」「誤解を招いた」「結果として」「不快にさせたなら謝る」といったもの。「遺憾に思う」は、残念に思うという意味の言葉であり、そもそも謝罪の要素が入っていない。「誤解を招いた」は、意図を説明せずに使うと、そもそも何が誤解かが分からず、煙に巻いたと捉えられてしまう。「結果として」や「不快にさせたなら謝る」は、根底に自社は悪くないというニュアンスが出てしまう。
 憶測による説明をしないことも重要だ。憶測が「事実」として報じられることがあり、憶測で話した事項が後になって想定外に大きな被害を生じさせているとなれば、隠蔽していたと捉えられてしまう。「現時点では分からないので、追って説明いたします」と説明すべきだ。また、「自社の説明」を行い、他社や自分の見解について回答してはいけない。例えば、「社長の個人的見解は?」というような質問をされることがあるが、そこで回答したことは、会社としての公式見解と捉えられてしまう。「会社としては」と述べ、「個人の意見については、この場で述べることは適切ではない」や「会社の意見と同様である」と説明すべきである。
 炎上原因が従業員の個人的な問題にあったとしても、会社の体制に問題があると捉えることが重要。また、精神論で解決しようとしてはいけない。「再発防止に努めます」と書くだけでは、原因をはっきり分析できておらず、具体的な再発防止策を記載していない。世間は、同じことがまた起こるのではないかと思ってしまう。
 役員や従業員が原因で炎上が発生していれば、内容によってその責任を追及すべきだ。できれば、何かしらのタイミングで発表した方がよい。
 ただし、あまりに早い時点で処分をすると、「トカゲの尻尾切り」という批判が出てしまう可能性があるので注意が必要だ。従業員のアカウントから炎上した場合、従業員のアカウントは炎上原因のアカウント以外のアカウントも含め、いち早く削除させるべきである。炎上したアカウントには、それ以前の内容も記載があり、さらなる炎上につながる格好のネタを提供してしまう。
 また、それぞれのアカウントは、他のアカウントとひも付いていることもある。炎上しているアカウントが1つでもあったら、他のアカウントも削除してしまうことが大事だ。逆に、企業の公式アカウントは削除するべきでない。役員のアカウントが炎上した場合は、なるべく削除しない方がよい。役員も立場上、会社と一体であると見られていることが多いからである。削除せずに維持したまま、今後の対応を情報発信すべきである。
 炎上中は、企業への「電凸」や「メル凸」(電話やメールでの問い合わせ)は避けることができない。その際、企業の社会的責任として、問い合わせ(電凸、メル凸)には対応するべきである。ただ、炎上が起きると、本社だけでなく、関連会社や子会社に至るまで問い合わせがくることがある。
 それぞれがバラバラの回答をしてしまうと、情報統制がまったくできず、様々な情報が出回ってしまう。まずは、対応窓口を一元化すべきである。そうすることで、各従業員に勝手な回答をさせないことを徹底する必要がある。また、対応・回答の準備をしておくべきだ。問い合わせをする人は、会話を録音している可能性が高い。企業としてはネットに公開される前提で対応する必要がある。そして、即答しないこと。連絡先を聞いておき、後で折り返し回答することを基本(3日以内の回答が限度)とする。
 また、炎上が終息したからといって、ニュースリリースは削除しない方がよい。削除したいと考えるのは、「炎上をなかったことにしたい」という意識が強く働くからだろう。しかし、炎上の記録はインターネット上に残り続ける。リリースを削除したからといって、「なかったこと」にはできない。むしろ、きちんとした対応をしたことを表示し続けた方がよい。

炎上を未然防止する体制づくり

 炎上を未然に防ぐ体制づくりが、どの企業にとっても重要な時代になった。
 炎上の未然防止には、何よりインターネットを常時監視しておくことが重要である。企業のサイトの監視を行う会社もあるので、外部委託などを活用し、常時監視している担当を設けておく必要がある。炎上は意外なところから発生することもある。初期消火ができるほど被害が小さくなり、むしろ称賛されることすらある。
 規定などを整備しておくことも重要だ。守秘義務契約書に、何が守るべき秘密なのかを具体的に記載する。
 具体的には、「開示」とはどのような行為を含むのか、退職後も有効であるといったことなどを確認する。また、就業規則も整備する。貸与品の私的利用の禁止、貸与した機器などの調査、就業時間中の私的行為の禁止、秘密保持義務の明示、懲戒事由、削除の指示に従うべきことなどである。
 従業員にSNSをやらせたくないとよく相談を受けることがあるが、スマホ・PCなどの貸与機器に対し、私的利用を禁止するのは当然だが、私用機器での利用を禁止するのは難しい。もちろん、就業時間中なら可能である。なお、SNSの事前届出制を導入している企業もあるようだが、私的な利用を制限するものである以上、有効性に疑義があり、また、別アカウントを作られる結果になると想定され、実効性については疑問がある。
 制度も重要だが、ソーシャルメディアポリシーを作成し、従業員を教育することによって炎上を防止することが必要だ。具体的には、従業員には、会社の一員であるという自覚や公開されていること、特定される可能性があること、誹謗中傷、プライバシー侵害、差別的発言の禁止、違法行為の自慢の禁止、デマの禁止、発言の取り消しの困難性、炎上発生時の報告窓口といったことを教育する必要がある。
 また、公式アカウントを持っている場合は、公式アカウント運用者向けのソーシャルメディアポリシーも作成しておくとよいだろう。会社として、投稿する際のルールや方針を決めておき、それを遵守してもらう。
 具体的には、投稿ミスを避けるためにどうするべきか、投稿内容に関する批判を受けないためにどうするべきか、リツイート、シェアなどの基準をどうするべきか、炎上したときの緊急時の連絡フローをどうするべきかなどの視点を盛り込んでおく。
 投稿ミスを避けるためには、例えば、投稿する機器の限定、飲酒時の使用禁止、複数人によるチェックなどが挙げられる。緊急時連絡フローは、対応できていない企業が多いのが現状である。どこに、誰に連絡を取るのかはっきりしていないと、対応が後手になってしまう。
 ソーシャルメディアやSNSの普及によって、炎上が日々発生している。業種・業態に限らず、企業にとって炎上対策は必須のものとなった。炎上を未然に防ぐ仕組みと、起きてしまっても迅速な対応を取れる体制づくりが急がれる。
(文責:国内広報部主任研究員 遠藤瞭太)
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