経済広報

『経済広報』(2018年2月号)掲載
企業広報研究

デジタル時代
グローバル広報の潮流

馬渕邦美

馬渕 邦美(まぶち くによし)
フライシュマン・ヒラード・ジャパン(株)
シニアバイスプレジデント&パートナー  

 経済広報センターは2017年10月25日、「企業広報講座」をKDDIホールで開催した。フライシュマン・ヒラード・ジャパンの馬渕邦美シニアバイスプレジデント&パートナーが、グローバル広報について講演した。参加者は52名。

海外メディアの特性

 海外と国内のメディアには違いがある。情報を発信していく上で、メディアの特性を知らないと適切なコミュニケーションはできない。海外メディアは署名記事が多い。記者は自分が興味を持っていることと、書きたいことを優先する。海外メディアは、担当者のコメントも実名で報道する。オフレコだとはっきり言わなければ、記事となる。日本の記者のように、あうんの呼吸は通用しない。また、海外から取材先までは距離があるので、電話でコメントする機会が多い。海外の記者は専門性があるので、記者の意向や主観が優先される。日本の事情には詳しくないため、海外の記者に日本の文化的背景や日本社会についても説明しなければいけない。海外への情報発信で重要なのは、売り込みたい分野を専門とする記者をつかまえることができるかどうかにかかっている。
 また、海外メディアの場合、本社の日本担当のエディターが東京支局に指示を出す。東京支局の記者は、本社と連絡を取りながら記事を作っていくのだが、本社側に決定権がある。
 海外メディアの記者は在日の年数や、現地採用かなどで特性が違うので、付き合い方を見極める必要がある。
 海外メディアの記者は世界との関わりの中で、日本の動向を見ている。俯瞰したときに、その情報発信が世界に与える影響は何かを確実に押さえておくことが大切だ。海外向けのプレスリリースでは、新商品の発売だけを記載しても見てもらえない。そのニュースを発信することで、世界にどのような影響を与え、社会や世界にどのような貢献をしていくのかといったコンテクストを取り入れなければ、ニュースバリューがあると判断されない。日本メディア向けに書くプレスリリースと海外メディア向けのプレスリリースでは、視点が異なる。海外向けには、客観的な内容、歴史的背景など基礎的な日本特有のコンテクストを記載しないと、記者に理解してもらえない。
 海外向けのプレスリリースは、5W1Hを冒頭に記載し、詳細情報はその後に記載する。参照したくなるような情報や図表を入れることも大切になる。図表がないだけで、リリースを読まない記者もいる。また、その事業や商品担当者のコメントも入れるべきである。写真を入れておけば、オンライン記事が増えている海外記者にとって目を引くものとなり、その後SNSなどのソーシャルメディアで拡散される可能性もある。そして、社会に与える影響をリリースに入れ込む。こうした事項を押さえていないと、プレスリリースは取り上げてもらえない。

グローバル広報戦略の立案

 グローバル広報戦略には、“グローバル・ワンボイス”がとても重要である。日本は、タテ割りの文化になっており、各部署から様々なメッセージが出てしまいがちである。一方、海外企業は1つの統一されたメッセージをもとに各部門が情報発信を展開する。全ての活動にトップメッセージを一貫して織り込み、社内に浸透させる。
 ソーシャルメディアが発展する中で、クライシスも起きやすくなってきた。様々な炎上事件もニュースで取り上げられている。クライシスの際には、メディアとの相互関係をいかにつくっているかが、とても大切となる。また、グローバルウェブサイトも重要なコミュニケーションツールとなる。海外記者は分からないことがあれば、企業のウェブサイトを閲覧する。的確な情報がない、情報の裏が取れないとなれば、印象が悪くなる。
 日本発のグローバル広報を行いつつ、並行してグローバル広報体制を構築していくことが大切だ。そのために、ウェブサイトやソーシャルメディアを充実させる。海外では、トップメッセージが重視される。在京海外メディアとの個別取材などを通して、明確なトップメッセージを発信していく。また、在京海外メディアとのラウンドテーブルの実施や、英語のプレスリリースのブラッシュアップも重要だ。ソーシャルメディアにより、プレスリリースがシェアされ拡散していく。
 グローバル広報を支える組織体制として、海外での広報機能を強化していくことが求められている。現地からリリースを発信できる体制をつくり、現地の広報担当者のトレーニングを通して、メディア対応の基礎を習得してもらい、PRイベントの企画から実施までできるようにしておく。日本の本社からの対外発信だけでは不十分である。日本発の海外情報発信をいま一度仕切り直し、グローバル広報体制をつくり上げていかなければならない。

クライシス対応は“インターナルファースト”

 クライシス対応の機能をどう充実させていくのかも重要である。危機発生時の対応についてあらかじめ準備をしておく。リスクへ備えることの重要性は、年々大きくなっている。日ごろからメディアとのリレーションを図っておくことが、素早く情報を察知することにつながる。社会に貢献するという明確なビジョンを持ち、コンプライアンスをしっかりとマネジメントし、日ごろから従業員を教育しておくことが重要である。
 海外メディアは、トップの動向を注視する。トップをいかに早く登場させるかが重要である。そのためにはメディアトレーニングが重要になる。リスク発生時には、販売店や従業員にも問い合わせがいく。そこで、“インターナルファースト”が大事となる。販売店、従業員にリスク発生時の対応について日ごろから教育を行う必要がある。

PESOメディアへの対応

 スマートフォンが普及し、発信戦略に大きな変化が見られるようになった。記者はスマートフォンを使用して情報収集するようになった。企業にも、デジタルツールを活用することが求められている。ネット回線に占めるウェブからのアクセスは減少しており、スマートフォンからのアクセスが急速に伸びている。
 広報担当者は、まず、PESOモデル(Paid、Earned、Shared、Owned)の基本を押さえておきたい。ペイド・メディアは広告戦略。アーンド・メディアは、先述したようなポイントを踏まえて、パブリシティーを洗練させていく。シェアード・メディアは、SNSのマネジメントが必要になる。フェイスブック、ツイッター、リンクトイン、インスタグラムの活用法を探る必要がある。オウンド・メディアは、自社サイトのコンテンツをいかに豊富にしていくか、企業はコンテンツ戦略を練る必要がある。コンテンツは、プロダクトアウトのような情報発信では、目に留めてもらえない。ストーリーを語ることが重要だ。これからの広報活動は、この4つのメディアを洗練させていき、それらをミックスしていくことが重要になる。
 SNSの利用者は世界規模で急速に増えている。ソーシャルメディアのアクティブユーザーは23億人というデータもある。SNSをうまく活用することで、世界の数多くの人に低コストでリーチできる。ツイッターは日本ではユーザー数が一番多いものの、海外では伸び悩んでいる。フェイスブックは、世界的に利用者が多く、特にアジアでは一強を誇っている。インスタグラムは、若年層にはやっている。
 そして、ビジネスマンに圧倒的に流行しているのがリンクトインである。リンクトインは、全世界で4億人以上が登録していて、ビジネスマンのコミュニケーション・プラットフォームとなっている。もともと名刺を登録して使う採用ツールとして活用されていたが、そこから発展してビジネスネットワークを構築するまでになった。海外では、ビジネスの交流はリンクトイン、プライベートの交友はフェイスブックとすみ分けして使われるほどだ。それほど、リンクトインを使ったコミュニケーションの重要性が増している。このツールは、直接記者にコンタクトを取る際にも活用できる。
 海外メディアの記者は、リンクトインのアカウントを持っている人がとても多い。記者の名前で検索すれば調べることができる。海外では、BtoB企業の決済担当者が、SNSを通じて交渉を行い、商談が成立するというケースも出ている。リンクトインでビジネス情報を収集し、リンクトインでネットワークを広げる。法人向けの人事採用システムとして、人材募集情報の掲載や、人材の検索、連絡といった一連の採用活動も行える。対象顧客をターゲティングし、テキスト、バナー、リッチフォーマットでの広告掲載も可能である。北米、欧州をはじめ、世界各国で幅広く活用されている。
 SNSの活用では、コンテンツをいかに作成するかが重要だ。単に新商品を紹介するだけでなく、いかに興味を引くコンテンツを作れるか。コンテンツマーケティングは、消費者が知りたいことと、企業が発信したいことのバランスが取れたコンテンツを作成しなければならない。つまらないと思われれば、ワンスクロールで飛ばされてしまう。

見られたい姿と見られている姿をどう一致させるか

 企業広報は、ステークホルダーとの対話を通じ、関係性の構築・維持・発展を促進する経営活動である。ステークホルダーとの対話を通じて、いかに企業のレピュテーションを上げていくか。グローバル化、デジタル化の中で、企業の見られたい姿と見られている姿を、いかに一致させていくか。日本企業はPRベタなところがある。海外では、日本語という言葉のバリアーもある。日本でのコミュニケーションと同じようにはいかない。グローバル広報は、まだ開拓途中といえる。企業は体制づくりを急がなければならない。
(文責:国内広報部主任研究員 遠藤 瞭太)
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