経済広報

『経済広報』(2018年12月号)掲載
特集 SNS

セコム、サントリーのSNS活用

 経済広報センターは10月19日、「企業広報講座」を経団連会館で開催した。第1部では、セコムの安田稔広報・渉外・マーケティング本部理事副本部長が、「SNS活用で広がったセコムのコミュニケーションの多様化」について、第2部では、サントリーコミュニケーションズの坪田恵子デジタルマーケティング本部課長が、「サントリーのSNS活用について」と題し講演した。参加者は85名。

SNS活用で広がったセコムのコミュニケーションの多様化
安田 稔

安田 稔(やすだ みのる)
セコム(株) 広報・渉外・マーケティング本部 理事副本部長

セコムの事業概要

 弊社は198のグループ会社があり、従業員は6万人、海外19の国と地域に展開している。連結売上高目標は1兆円で、その中心となるのは売上高の6割ほどを占めるセキュリティー事業である。セキュリティー事業の契約数は317万件。1962年に日本で初めての警備会社として創業し、2年後の1964年に東京オリンピックの選手村の警備を行い、飛躍のきっかけをつかんだ。1981年には、日本初のホームセキュリティーを発売し、家庭へと事業範囲を拡大してきた。現在、防災、メディカル、損害保険、地理情報、BPO・ICT、不動産など、事業を拡大している。「困った時はセコム」と信頼される会社を目指し、世の中の課題を解決していきたい。

SNS開始の経緯

 毎年実施している一般消費者を対象としたイメージ調査で、「セコムという社名を知っている」人が約95%に達しているものの、「事業内容まで詳しく知っている」人になると割合が減ってしまう。特に、潜在顧客との接点づくりを課題としてきた。潜在顧客に訴える手段の一つとして、SNSは欠かせないと判断し、SNSを活用した顧客との接点づくりをスタートした。
 1990年代後半から、犯罪件数が大きく増えて、2002年には285万件に達して戦後最多になった。それ以降は犯罪件数が減り、今では100万件を切るほどになっているが、一方で、1995年に阪神・淡路大震災、2011年には東日本大震災など、災害が増えて不安感が高まっている。その中で、我々が長年培ってきた経験・知識を、どのように社会に還元していくかということを意識してきた。このような経緯でツイッターを2011年1月から、フェイスブックを同年10月に、ユーチューブを2013年から開始した。現在、ツイッターのフォロワー数は71万1000件、フェイスブックは72万件となっている。
 SNSの開始を検討した際、炎上リスクへの不安もあり、部内には反対するスタッフも多かったが、私としては潜在顧客との接点を増やすため、企業情報を発信して理解度の促進につなげたいと主張し、当時の社長に直接説明して了承を得て開始した。

まじめを貫く

 まず、ツイッターを開始した。専門家のアドバイスを参考に、ツイッターは1日に3、4回程度つぶやいた。私を含めた、つぶやきを行うスタッフと、つぶやくことを1週間分紙に打ち出し、私がチェックして、発信する日にちと時間帯を大まかに割り振った。
 発信するに当たって、ツイートのスタイルを決めた。セコムのツイートであることが分かるように、ツイートの冒頭には、「【女性の防犯】」「【子どもの防犯】」など、投稿テーマを「【 】」でくくり、その後に「セコム広報です」と記載することをルール化した。セコムにしかお届けできない情報を発信したいと、ツイート内容は安全・安心のテーマに絞った。具体的には、防犯、防火、防災、子ども・女性・高齢者の安全などである。その後は、住宅・路上・旅行時の安全など、新しい話題も発信していった。
 事件、事故、災害をテーマにつぶやいても、最後には必ず、対策や注意喚起の言葉を入れている。ツイートは、140文字内に5W1Hを意識し、1話完結にしている。リンクを張ると、リンク先を見にいかないと内容が理解できず煩わしさを生んでしまうので、1話の中で理解してもらえるツイートを心掛けている。
 ツイートでは、まじめを貫いている。です・ます調で、慣れ慣れしい表現は使わない。「堅い」「まじめ」と思われても、それをセコムらしさと捉えている。「それでは、フォロワーが増えない」とアドバイスされたが、弊社はセキュリティー会社であるため、今でもこの個性を貫いている。
 ツイッターアカウントのトップには、「返信をしません」と記載している。当初、先々まで一貫した姿勢で継続するために、返信はしないと決断した。守秘義務を遵守し、未公表のもの、犯罪を助長するものを発信しないという原則を設けている。
 ツイート前には、責任者である私が目を通してチェックする。日々、事件、事故、災害が起こっている。その直後に、タイマーで発信すると、たまたま緊張感のない内容だと世間の反感を買ってしまうこともあるので、常にその時の状況を意識しながら発信している。

フォロワー数が伸びるきっかけとなった報道記事

 ツイッターを始めて2カ月ほどたった時に、東日本大震災が発生した。震災直後には、世間に悲愴感が漂っていた中で、どのようなツイートをすればよいか分からず、数日間発信を控えた。4月にフェイスブックも開始する予定であったが、10月に延期している。
 ツイッターを2年間続けたが、なかなかフォロワー数も増えていかなかった。しかし、2013年5月14日に、ハフィントンポスト日本語版で、弊社のツイッターが取り上げられた。事前取材はなかったが、非常によく書いていただいた。その記事には「セコムの公式ツイッターでは、安全・安心な生活に役立つ情報を日々ツイートしている。普段の生活の中で見落としがちなセキュリティーについてお知らせしてくれるため、フォロワーが増えている。単にリツイートで終わるのではなく、さらなるセキュリティー対策がつぶやかれ合うなど、コミュニケーションを生み出している。企業が社会にどのように還元できるかという視点からの発信もユーザーの支持を生む一つのポイントではないか」と紹介いただいた。この直後にフォロワー数が4万件に達した。この記事によって自信を深め、社内も説得しやすくなり、その後、積極策を採るようになった。

災害発生情報のタイムリーな発信

 我々は安全・安心を心掛け、事件、事故、災害から身を守っていただくために、タイムリーに発信していかなければいけないと感じた。災害発生時には関係機関から第一報の報道が出るが、スピードで勝負しようと、第二報はセコムのツイッターが出すことを目指した。それを続けているうちに、フォロワーが増えてきた。投稿は、スマートフォンからでもできるようにして、自宅で揺れを感じたら、深夜でも休日でもすぐにツイートするよう心掛けた。
 現在、テーマのカバー範囲を広げ、様々なテーマでツイートしている。特に2013年に隕石が落下する予測を公的機関の発表に基づきまとめたツイートは反響が大きかった。5000以上のリツイートがあった。そのように、反響を生むツイートが何回か続き、フォロワーが10万件を超えるようになった。我々の事業は、クーポン発行やキャンペーンプレゼントを行える業態ではない。そこで、防犯、防火、防災情報をどこよりも早く発信し続けた。それによって、今のフォロワー数に至っている。新しいコミュニケーションの輪を広げることができた。
 ツイッターは全て自前で運営している一方、フェイスブックはライターにサポートしてもらっている。午前と午後1回ずつ発信し、写真やイラスト、グラフを添付するようにしている。ツイッターは頻繁に投稿することが非常に大事である一方、フェイスブックは発信しすぎると反応が良くないため、今の頻度に落ち着いている。フェイスブックのコメントにはお礼の返信を行い、タイマーによる投稿は行っていない。
 我々の場合、SNSを販売促進に活用することが難しい。あくまで、安全・安心にこだわり、見ている人の役に立つ情報発信を継続して行うことで、「安全・安心」ならセコムのイメージが浸透すればよいと考え、社会貢献活動の一環と捉えて発信している。

サントリーのSNS活用について
坪田恵子

坪田 恵子(つぼた けいこ)
サントリーコミュニケーションズ(株) 
デジタルマーケティング本部 課長

サントリーの事業概要

 コーポレートメッセージ「水と生きる」、企業理念「人と自然と響きあう」の下、酒類や清涼飲料を中心に幅広い事業をグローバルに展開している。サントリーコミュニケーションズは、サントリーグループの横串機能会社として、グループ全体のSNS発信を請け負っている。サントリーは、全世界に312のグループ会社があり、従業員は日本で約1万8000人、国内外合計で約3万8000人となっている。

デジタル時代のコミュニケーション

 SNSの運営に当たっては、これまでの企業の情報発信スタイルとは頭の切り替えが必要であると感じる。消費者が接触するメディアのデジタル比率が高まっている。ただ、年代によって価値観は異なる。デジタルネイティブから、いまや、スマホネイティブが生まれ、今の高校生はほとんどのSNSを経験し尽くしている。企業の言葉よりも友だちの言葉を信じる時代だ。お客さまに「信頼できるソースは何ですか」と聞くと、知人からの勧めが一番に挙がる。興味のある情報だけを見る世の中では、今までのような企業目線のストーリーでは嫌われてしまう。

各種アカウントの状況

 2011年にフェイスブック、ミクシィ、2013年にツイッター、LINE、2015年にインスタグラムを立ち上げた。グループの公式アカウントとは別に、ブランドごとにアカウントがあり、ブランドアカウントの運営は事業部が行っている。
 フェイスブックは約80万人、ツイッターは約92万人、インスタグラムには約12万人のフォロワーがいる。LINEはアカウントを2種類に分け、1つはお酒情報を含めた発信、もう1つは清涼飲料の情報を発信している。
 近年、フェイスブックのアルゴリズムの影響が強くなっている。特に、企業は投稿すればするほど、リーチが下がる傾向も見られる。添付した画像に文字情報が多すぎると大きくリーチが落ちることもある。
 一方、ツイッターは、発信者の人格が大切になってきている。ツイッターの「中の人」(企業のSNSアカウント上で実際に投稿をしている担当者を表す造語)や企業コラボが様々なところで取り上げられ、「中の人」が市民権を得てきている。
 インスタグラムは、様々な新機能が登場し、IGTV(動画投稿・視聴機能)やショッピング機能などが追加され、今後が期待される。

媒体特性と情報発信の工夫

 SNSは公園のような場所ではないかと考える。公園の中に、企業が宣伝色のある立て看板を出しても、そこにいる人々には見てもらえない。そこが、どのような場で、どんな人が、何をしていて、どのようなアプローチが必要なのかを考えることが大切だ。
 フェイスブックでは、他と比較してビジネスの情報も受け取ってもらいやすい。ツイッターは投稿が面白くなければ反応してもらえない。インスタグラムはセンスのある画像、マネしたくなるものを投稿する必要がある。そのような違いがある中で、投稿内容にも工夫を凝らす必要がある。SNSは拡散してもらえなければ、本領を発揮しない。
 広報的情報発信とSNSにおける情報発信は少し異なる面がある。広報的情報発信は、ニュース発表タイミングでの発信が基本だが、SNSは盛り上がりをどう捉えるのかが大切だ。また広報的情報発信はまじめなトーンが基本となるが、SNSは体温を感じるような情報や「中の人」の存在に親近感を抱かれる。広報的情報発信は、誠実さ、信頼感が第一だが、SNSはそうした要素に加えて、面白さや自虐的な要素も併せて必要となることが多い。

サントリーのツイッター

 ツイッターは、自由奔放なメディアであり、かつコンテンツ力が不可欠なメディアといえる。よりツイッターらしいものを発信していきたいと思い、ツイッター上のトレンドや、世の中の話題をつかむ努力をしている。
 5月23日には、「6つ子の皆さん、誕生日おめでとうございます」と投稿した。その日はおそ松さんの誕生日であり、おそ松さんそれぞれの6種類のカラーと並び順を考慮して、それに合わせた製品を並べた。この投稿は今までにない盛り上がりとなり、消費者がツイートから製品へ興味を移す流れを、今までになく体感できた。
 新製品の投稿では、コンテンツにより明らかな反応の違いが出る。今年の4月に機能性表示食品である「流々茶(るるちゃ)」を発売した。「美味しい腸活 流々茶、新発売」と投稿しても、反応はいまいちであった。そこで、中国茶の日に「サントリー中国茶ブランドから発売の美味しい流々茶。美味しい〇〇流々茶。〇〇に入る言葉は何でしょう。①腸活、②朝活、③豚カツ」というクイズ形式での投稿を実施すると、極めて大きな反響があった。まじめなアプローチも大切だが、SNSでは興味を持ってもらえるような工夫も大事だ。
 また、製品のトリビアは、ツイッターの人気テーマの一つとなっている。デカビタCのラベル裏面には「ビタ子ちゃん」というキャラクターが小さく書かれている。「デカビタのラベルに、いつもほほえみを添えているこの女性の名前は?」と投稿したところ、デカビタのヘビーユーザーから大きな反応があった。今まであまり発信できなかった小さな情報も、ユーザーの興味・関心を捉えれば、SNSでは素敵な情報になる。

サントリーのフェイスブック

 フェイスブックは、ビジネスの話題も受け入れられやすい。サントリーらしい発信とは何かを考えるように心掛けている。
 新製品の発売時に、ブランド担当の若手社員に、思いの丈を書いて投稿してもらった。当初文字数が大変多い投稿を心配したが、予想以上の反応があった。
 また弊社ではサントリー天然水の森活動として「森を守る」という取り組みを行っている。しかしながら、これまでなかなか伝えることが難しい活動であった。そこで、「森を守る」の担当者が登場して、自分の仕事を自分の言葉で紹介する形で投稿したところ、極めて大きな反応を得ることができた。弊社社員の思いを伝えることは大切だと感じており、今後もこうした投稿を継続していきたい。

災害時のSNS発信

 災害時には、携帯電話やSNSがライフラインになる。どのように、被災された方々に寄り添うかということを肝に銘じて、ビジネス色を出さず、災害レベルによって対応を判断している。
 被害の全容が分からなければ、まずは発信を止める。災害時に普段の発信をしてしまっては、場をわきまえない投稿となり、最終的にはブランド毀損にもつながる。いったん発信を止め、被害の全体像を考慮しながら再開時期を考えていく。週明けに再開するパターンが多い。休日に再開してしまうと、そこでまた何か起きた時に、対応が難しくなるので、営業日に再開するようにしている。

新たな取り組み

 最近、ブイチュ-バー(Vtuber)が人気だ。ブイチューバーとは、バーチャルユーチューバーの略称で、ユーチューブなどの動画配信ツール上に登場する架空の3Dキャラクターのことだ。今年の8月、サントリーの公式VTuber「燦鳥(さんとり)ノム」がデビューした。まだ試行錯誤中だが、「燦鳥(さんとり)ノム」はトーク、歌、ゲーム実況などを展開中だ。世の中の変化に合わせて、今後も様々な取り組みにチャレンジしていきたい。
(文責:国内広報部主任研究員 遠藤瞭太)
pagetop