経済広報

『経済広報』(2019年10月号)掲載
企業広報研究
炎上に備えて普段しておくべきこと
―ウェブサイトの危機管理―
平田大治

平田 大治(ひらた だいじ)
シックス・アパート(株) 取締役CTO

ネットに無縁の会社にも起きる“炎上”

 スマートフォンが一般に広まったことに伴う、最近のSNSの普及には目を見張るものがある。最近では、若年層を中心に、ツイッターの盛り上がりが復活してきている。ツイッターを起点にいろいろな話題が盛り上がったりしているが、いわゆる炎上状態になって、対応を迫られる企業も出てきている。ツイッターでの盛り上がりの特徴は、そのスピード。話題が提起されてから、一般の人に知れ渡るまで、1日かからないこともしばしばだ。注目の話題は「トレンド」で紹介され、ネット上だけでなく、テレビや新聞などのマスメディアにまで広がることも珍しくはない。炎上状態になると、流言なども発生することもあり、正しい情報提供を迅速に行う必要に迫られる。以前は、ネットやITサービスに関連がある業界が中心だったが、一般にネットが普及するにつれ、今では普段、ネットとは全く無縁にしている会社にも起きるようになってきた。

巻き込まれたらどうしたらよいのか

 このような状況に自社が巻き込まれてしまった時、どうすればいいのか。ネット上での情報拡散に対抗するには、提供する情報の情報源、いわゆる「ソース」の確認ができることがとても重要だ。普段やっていないツイッターアカウントを作成しても、本物である認証済みアカウントをすぐに取得できるとは限らない。既に認証済みのツイッターアカウントを持っているなら、信頼感を持って発信することもできるが、文字数に限りがあり、長文では読みづらくなる場合もある。自社のウェブサイトから「公式」にしっかりと情報を提供することが望ましい。

巻き込まれた時に備えて

 騒動が起きると、短時間での対応を求められるため、ウェブサイトの更新も迅速に行う必要がある。普段であれば、あらかじめ原稿やコンテンツを準備して、ウェブページの作成を専門家に依頼することもあるかと思うが、依頼や作成に時間がかかる。一刻を争う状態であったり、休日での対応が必要になった時に、ウェブサイトの更新を関係者のみで実行できる体制は整っているだろうか。
 また、ウェブサイトにCMS(コンテンツ管理システム)など、管理用のサービスやソフトウェアが導入されている場合には、その操作方法にも習熟しておく必要がある。急を要する場合にも更新が迅速に可能だろうか。トップページやお知らせなど、必要な範囲について普段から把握しておく必要がある。
 近年では、ウェブサイトの情報セキュリティー対策のため、更新できる担当者を限定したり、更新できる端末やネットワークアクセスに制限を設けるなど、更新のプロセスに一定のルールを設けている企業が多い。迅速な更新と安全性が両立するようなプロセスになっていることが求められる。ウェブサイトのセキュリティー対策がおろそかであると、ウェブサイトの改ざんなどのリスクとなり、信頼性の喪失につながる。普段からの対策が重要である。

重要なアクセス負荷対策

 また、情報の提供元となるウェブサイトのアクセス負荷への対策も重要となる場合がある。話題になることで、想定していなかったような大量のアクセスが一時に集中し、サイトが停止してしまったり、閲覧できなくなったりすることがある。こうなると、せっかく情報を提供しようとしても、発信することができないし、更新もできなくなってしまう場合すらある。不祥事の場合などでは、サイトが閲覧できなくなると「都合が悪くなったから、ウェブサイトを封鎖した」などの流言のきっかけにもなる可能性があり、平時から、どの程度のアクセスに耐えられるのか、確認、把握をしておくとよいだろう。大量のアクセスに対しては、CDN (コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)のような負荷対策のためのサービスを導入しておくことも効果的だ。近年は、従量制で提供する事業者も増えており、平時のコスト負担も少なく抑えられる。

重要な透明性の高い情報発信プロセス

 提供する情報、コンテンツの扱いも重要である。インターネットアクセスが増大するタイミングでは、テキストで発信するのが一番よいだろう。ツイッターユーザーの大半はスマートフォンでアクセスしており、簡潔に情報発信することが望まれる。また、発信した時間や、変更の履歴もきちんと残すと、信頼性が高まる。ネット上には、検索サービスのキャッシュ(一時的な情報のコピー)やウェブサイトのコピーを保存する「ウェブ魚拓」といったサービスもあるため、変更や削除などが行われると、変更の履歴も確認することができる。今では、一般のユーザーも普通にスマートフォンの画面をスクリーンショットで保存するようになっているので、「都合が悪いから消した」などの流言を防ぐ意味でも、透明性の高い情報発信のプロセスが求められる。
 PDFファイルで発信する場合には、ファイルに埋め込まれたプロパティ情報にも注意する。PDFファイルの作成時には、通常、メタデータとして、元ファイルの名前やファイルの作成日時や作成者などの情報が埋め込まれる。埋め込まれた情報から憶測を招くことがないよう注意するべきである。

必要な時に役立てることができるウェブサイトに

 さらに、ネット上でどのような情報が流通しているか、どのような情報提供が適切かを判断するため、自社の名前やサービス名などでサーチする「エゴサーチ」を実施することも大切だ。ネット上での論点は、業界などでの長年の慣習とは異なる場合もよくある。発信する側の理屈ではなく、情報を受け取る側の気持ちやリテラシーに沿った文脈での発信が求められる。
 スマートフォンとSNSの普及で、誰でも匿名で情報をリークしたり、告発することも簡単にできる時代になってしまった。SNSではちょっとした情報でも、あっという間に拡散してしまう。どんな時でも会社の公式発表ができるコミュニケーションメディアとして、自社のウェブサイトの価値を見直し、必要な時に役立てることができるよう、普段から把握しておくことをお勧めする。
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