経済広報

『経済広報』(2020年1月号)掲載
視点・観点
表情リスクマネジメント
~癖は発見できれば直せる~
石川慶子

石川 慶子(いしかわ けいこ)
広報コンサルタント

 皆さんは「表情癖」を意識したことはありますか。癖は無自覚なので意識すること自体が結構難しいかもしれません。実は、この無自覚はリスクマネジメントにおいて最大のリスク。リスクは発見できなければ改善できないからです。表情は毎日の自分と向き合うことでもあります。今回は一人ひとりに身近な表情のリスクと改善方法について解説します。

第一印象は表情重視

 現在、私は新任役員、管理職のメディアトレーニングを毎週のように手掛けています。最も重視しているのは、癖の発見と改善です。その方の魅力を最大限に引き出すためには、ご本人が目指す姿を阻害する要因はできるだけ取り除く必要があるからです。
 例えば、「明るい人として見られたい」のに、眉間に皺を寄せる癖があり、笑顔に見えなければ「明るい感じ」を与えることはできません。「誠実な人に見られたい」のに、目をそらす癖があると誠実な印象を与えることはできません。「温かい人に見られたい」と思っていても、無表情であれば相手に冷たい印象を与えます。謝罪会見であれば「申し訳ない気持ちを表現したい」のに「顔が緩んで笑っているように見えてしまう」となると、相手をさらに怒らせてしまいます。印象管理の研究でも、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションが一致していれば一貫した印象形成がなされるが、不一致があると一貫した印象を形成することが困難になる、相手を不安にさせる、といわれています(ゴフマン1959)。
 このように「自分はこう見られたいのに、相手からはそう見えていない状態」を私は「外見リスク」と定義し、そのギャップを埋めるための改善行動を「外見リスクマネジメント」として提唱しました。また、外見を構成する要素として「表情」「髪型やメイク」「立ち方や姿勢」「服装や着こなし」「しぐさや歩き方」の5つに整理しました。この要素は毎日の行為であるため、外見に及ぼす影響は大きいのです。リスク分析マップでいえば、Ⅰの部分に当たり、放置するとリスクは限りなく大きくなり、誤解の原因にもなっていく可能性があります(図1)。最近は、ハラスメント問題が増えていますが、こういったことも遠因としてあるのかもしれません。

図1 リスク分析マップ

 では、表情は印象においてどの程度の影響があるのでしょうか。集合研修や社内研修など様々な形でアンケート、ヒアリングを行ったところ、いずれの時においても男女共に表情を重視する傾向が見られました(図2)。

動きの癖を自覚する

図2 2017~18年 広報・リスクマネジメント関係者129人のアンケート結果
 では、表情は改善することができるのでしょうか。できます。メディアトレーニングを15年以上行ってきていますが、コツを伝えることで改善していくことを実感しています。筋肉の使い方を工夫したり、ほぐすことで体も表情も変わります。私自身も、ウォーキングディレクター、ボイストレーナー、フェイスアナリストと共同研究することで体得してきました。
 今回はその秘訣の一部をご紹介しましょう。外見リスクマネジメント全体のステップは8ステップになりますが、表情だけに絞って、分かりやすく手順としてまとめると次の4ステップになります。

1. 撮影して歪みを発見する
2. 動きの癖の原因を観察する
3. 改善行動する
4. 改善促進のために顔のコリをほぐす

 リスクマネジメントの進め方全体で最も重要なのが「記録する」ことです。最初に撮影して記録すること、そこで発見することで現実の姿を認識します。写真や動画で、口元、目線、首、肩など、バランスを客観的に見ていきます。それを見ることで自分が自覚できることの成果は大きい。やらねばならない、といった動機が生まれます。口が歪んでいれば意地悪に見えてしまうし、肩が傾いていれば見栄えが悪いから何とかしたい、となるからです。
 次になぜ歪むのか、自分の動きの癖とその原因を観察します。目線を下げる癖のある社長は、「女性を見つめるのが失礼だ」と思い込んでいました。首が左に傾いていた人はカバンを常に右で持っていました。口元が右に曲がっている人は右での噛み癖がありました。眉間に皺が寄っていた人は眼鏡の乱視度数が合っていませんでした。無表情の人は口角を使わずに話す癖がありました。人によって動きの癖とその背後にある原因は様々ですので、なぜそうするのか自己観察をしていきます。


筆者のテレビ出演時の写真。
この写真で口の歪みを発見

 動きの癖と原因が分かれば、改善行動です。原因に合わせて様々な選択があります。思い込みの排除やアイコンタクトを楽しむ。カバンを交互に持つ、食事の際には両方の歯を使う、眼鏡の度数を調整する、「ウー」「イー」運動で口角を動かす。顔の筋肉が凝り固まっている場合もありますので、顔のマッサージや顔のツボを押す、コリをほぐすことで顔筋に働き掛けて改善促進していくことも有効です。
 私が自分の口の歪みを発見したのはテレビ出演の映像でした。最初は口が曲がっていた父の遺伝かと悩みましたが、落ち着いて自分の行動を観察したところ、食事の際に左だけで噛んでいました。自覚してからは右の歯でも噛むようにしたところ歪みが減りました。現在も豊かな表情を目指して顔のツボを押してコリをほぐしたり、フェイスマッサージなどの努力を続けています。表情癖は、撮影での発見、動きの観察と原因追究をすれば確実に改善していきます。

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