5月29日、カルビー北海道工場(北海道千歳市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員7名が参加しました。まず、北海道工場で生産されている同社の商品である「じゃがポックル」「ポテトチップス」などの製造ラインを見学しながら、生産工程の詳細や商品のこだわりなどについて解説を受けました。その後、同社の成長の軌跡やこれからの事業展開について説明を聞き、最後に質疑懇談を行いました。
カルビーからは、コーポレートコミュニケーション本部グループ広報部経営広報課課長古澤大輔氏、カルビージャパンリージョン東日本事業本部北海道工場生産支援課主任西川和行氏、同課北原千晶氏、高橋未莉氏が出席しました。
■カルビーの概要
カルビーの歴史は1949年、創業者の松尾孝が広島で松尾糧食工業を設立したことから始まります。「皆さまの健康に役立つ商品づくりを目指したい」という想いを込め、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせて1955年に社名をカルビー製菓としました。1973年には現在のカルビーへ社名を変更し、本社を東京に移転しています。
当初は「カルビーキャラメル」やあめなどの甘いお菓子を作る会社でした。1955年に小麦粉からあられを作ることに成功し、「かっぱあられ」を発売します。1964年に生のエビを小麦生地に丸ごと・殻ごと練りこんだ画期的なスナック菓子「かっぱえびせん」を発売すると、全国で大ヒットしました。その後、1971年にカード付スナック菓子「仮面ライダースナック」、1973年に「プロ野球スナック」を発売すると、カードの人気は社会現象となります。以降も時代の変化に対応し、「ポテトチップス」「フルグラ」「じゃがりこ」「miino(ミーノ)」などのヒット商品を次々と企画・開発・生産・販売しました。現在ではスナック菓子とシリアル食品の分野で国内市場シェア1位を獲得し、海外では9つの国と地域で事業を展開しています。
同社の強みは「時代の変化と多様なニーズを捉えた商品企画・開発力」「ばれいしょなどの原料に関する専門力」「自然素材を活かす加工技術」の3つです。「ばれいしょビジネス」では、「フィールドマン」と呼ばれるじゃがいものプロフェッショナルが、契約生産者と強い信頼関係を構築し、サポート役として生育状況の確認や品質管理を行います。加えて、気候変動や農業の担い手不足などの課題に対応し、将来にわたり持続的な生産を実現できるよう、新品種の開発や農業効率化などをしています。
同社は、持続可能な社会の実現を目指して、事業の成長と社会課題の解決の両立を達成できるよう、サステナビリティ経営にも力を入れています。2020年1月に「持続可能なパーム油のための円卓会議 (RSPO)」へ加盟し、2030年までに環境や人権に配慮したパーム油(RSPO認証パーム油)の使用率100%という目標を掲げ、2022年4月には国内全工場で切り替えが完了しました。2022年9月からは主力商品のパッケージにRSPO認証マークの表示を開始しています。
カルビーは変わらぬ企業理念の下、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造しながら様々な社会課題に対応し、人々の健やかなくらしへ貢献すべく、これからも挑戦を続けます。
■カルビー北海道工場の概要
カルビー北海道工場は、1969年の操業当初は「かっぱえびせん」を生産していましたが、その後「ポテトチップス」「堅あげポテト」「じゃがポックル」の生産を開始し、現在ではじゃがいもに特化した商品を製造しています。今年55周年を迎える同工場は、4つの建物から構成されています。前処理棟には、原料となるじゃがいもが保管されています。第1生産棟では、「ポテトチップス」「堅あげポテト」「じゃがポックル」を生産しており、その様子を2階の通路から見学できます。第2生産棟では「じゃがポックル」の製造工程の一部を工場見学者用の待合室から見ることができます。物流棟には、完成した商品が保管されています。
同工場では環境への取り組みに注力しており、2011年からは、工場で使用される水を育む水源を守るため、森林整備活動を開始しました。支笏湖周辺の千歳国有林の一部を「ミナミナの森」と名付け、2004年に台風被害を受けた地域を中心に植樹活動を行っています。他にも、フードロスを削減するため、ロスの出ない製造工程の検討や賞味期限の延長などにも取り組んでいます。
■「じゃがポックル」を作る第2生産棟
「じゃがポックル」は発売から21年を迎えた北海道発のお土産商品です。「ポックル」は、アイヌ語で「ふきの下の人」を意味する伝説上の小人「コロポックル」に由来します。夜中にこっそり食物を置いてくれるような優しい心を持ち、幸せをもたらしてくれる神様と伝えられており、「じゃがいも」と組み合わせて「じゃがポックル」の名称になりました。
「じゃがポックル」には100%北海道産のじゃがいもが使用されており、昼夜の寒暖差や爽やかな気候によって新鮮に育ったものが使われます。初めに水で洗浄し、旨み成分を残すため、皮付きのままスティック状にカットします。次に、サクサクの食感を生み出す独自の製法を用いて油で揚げ、北海道ならではの風味を醸し出すオホーツクの塩で味付けします。この塩はサロマ湖の汽水域からくみ上げた海水を釜でじっくり煮込み仕上げたもので、じゃがいもにマイルドな味わいを加えます。
第2生産棟の見学ゾーンでは、油で揚げたじゃがいもスティックから焦げたものや形の悪いものを取り除く作業、塩を用いた味付け作業、自動包装機を用いた袋詰め作業、袋の箱詰め作業などを見学することができます。フライ後の選別作業は、機械だけではなく、手作業でも行われています。取り除かれたものは、豚などの家畜の飼料として、無駄なく活用されています。味付け作業は、大きなボウルのような機械が回転しながら、満遍なくパウダーがいきわたるようにしています。味付け後のじゃがいもスティックはアーム型ロボットによってベルトコンベヤーへ運ばれた後、計量器へ移されます。計量器では1袋分の18グラムが正確に量られ、素早く個包装されていました。箱詰めはロボットが吸盤で袋を吸い付け、10袋ずつ正確に行います。見学当日は期間限定の「ほたて塩味」が生産されており、青色のパッケージの箱に次々と封入されていました。じゃがいもの水洗いから商品の包装までは約90分の工程です。
アーム型ロボットは生産工程に加えて、「じゃがポックル」を工場見学者の試食用の専用ゲートに取り分ける動きができます。参加者はロボットの正確な動きに驚くとともに、できたての温かい「じゃがポックル」を試食して「皮ごとサクホクっ」とした食感を体験しました。
■前処理棟と「ポテトチップス」を作る第1生産棟
「カルビーポテトチップス」は発売からまもなく50年を迎えるロングセラー商品です。「うすしお味」「のりしお」「コンソメパンチ」といった定番商品や、「北海道バターしょうゆ味」「関西だししょうゆ」「九州しょうゆ」といった地域限定商品などが展開されています。原料のじゃがいもは長期保存に適した品種で、見学時点では前年の秋に収穫されたものを使って生産していました。
見学ゾーンは、前処理棟の原料保管庫から始まります。ここには工場で使用される1日分のじゃがいもが保管されており、違う品種が混ざらないようコンテナで管理されています。明るい光で発芽してしまうことを防ぐため、部屋の中は薄暗く設定されていました。じゃがいもの洗浄室では太いブラシが高速で回転するブラシウォッシャーによって、土や汚れを落とします。そして、洗濯槽を横にした形状の回転する皮むき機(ピーラー)に吸い込まれ、内側に付いたやすりが皮を剝がします。皮をむかれたじゃがいもは傷が付かないよう水に浮かべられ、第1生産棟へ移動していきました。
第1生産棟での作業は、じゃがいもの傷みや芽を取り除く「トリミング」から始まります。工場の従業員が手作業で、素早くナイフで削っていました。大き過ぎるじゃがいもは半分に切って、中に穴が開いていないかを確認します。選別され取り除かれたものは、でんぷん粉の生産に使用されており、無駄なく活用されています。工場内は温度がかなり高く、見学用の窓ガラスを触ると熱気が伝わってきます。パイプからの冷風を身体に当てながらじゃがいもを切り取る人たちの手際の良さに、参加者は感嘆していました。
続く工程では高速で回転する円柱形のスライサーがじゃがいもをチップ状にカットします。回転の遠心力で側面についた刃に当たり、細かくスライスされて隙間から飛び出る仕組みになっています。刃の種類を替えることで、様々な形にカットすることができ、ギザギザの「ポテトチップス」はここで作られています。カットされたじゃがいもは、オートフライヤーを用いて160~180度の油で約2分間こんがり色がつくまでフライされます。参加者はここで味付け前の揚げたて「ポテトチップス」を試食し、じゃがいもの素材本来の味を知る貴重な機会となりました。
次は「ピッキング」の工程です。ここでは焦げてしまった「ポテトチップス」を色彩選別機で見つけ、エアーでベルトコンベヤーからはじき出しています。機械が除ききれなかった分は人が手作業で選別します。油で揚げたばかりの「ポテトチップス」はとても熱く、従業員は手袋を二重に着けて選別作業をしていました。選別後は「味付け」の工程に移動し、回転するタンブラーの中で満遍なく味付けされます。商品によって振りかけるパウダーの種類と量が異なるため、数レーンに分かれて移動していきます。北海道工場には全国で唯一チョコレートをかけるレーンがあるそうです。
味付け後は計量器で1袋分の60グラムが正確に量られ、自動包装機で袋詰めされます。外装フィルムの中に窒素を注入し、賞味期限が印字されると完成です。じゃがいもの水洗いから包装まで、約20分の工程です。箱詰めはロボットが吸盤で袋を吸い付け、段ボールの中に正確に運びます。梱包された「ポテトチップス」はベルトコンベヤーで隣の物流棟へ運ばれていきました。
外装フィルムには様々な情報が記載されています。裏面にある製造所固有記号は、どの工場で生産された商品なのかが一目で分かる記号で、北海道工場には千歳市の「C」が割り振られています。「じゃがいも丸ごと!プロフィール」の二次元コードを読み取ると、その「ポテトチップス」に使われているじゃがいもの産地・品種・製造工場・生産者が表示されます。生産者からのメッセージやこだわりなども記載されていて、「ポテトチップス」を深く知ることができます。「折りパケ運動」は、食べ終わった後のパッケージを袋に書かれた手順で畳む取り組みです。完成した「折りパケ」を専用アプリでスキャンすると「ポイント」が貯まり、集めたポイントで体験プログラムなどに応募することができます。「折りパケ運動」によって、家庭内のごみのかさを減らし、ごみ袋の使用量削減を推進しています。
参加者は見学の最後に、味付けをしたばかりの「堅あげポテト うすしお味」を試食し、生産工程を思い出しながら出来立ての味を楽しみました。
社会広聴会員:
「じゃがりこ」にはなぜカップ型容器が採用されたのですか。
カルビー:
「じゃがりこ」は「女子高生がカバンに入れて持ち歩けるようなお菓子」というコンセプトで1995年に誕生した商品です。「持ち歩けるスナック」を実現するため、袋ではなくカップが使用されています。
社会広聴会員:
「じゃがポックル」の開発秘話を教えてください。
カルビー:
「じゃがポックル」の発案者は、創業者の松尾孝です。「じゃがりこ」の発売時、「スナック菓子はサクサク柔らかで口どけが良いもの」という信念を持っていた彼は発売に反対をしており、フレンチフライをイメージした商品の開発を命じました。これがのちの「じゃがポックル」の原型となりました。
●大変親切な案内と説明に、工場内が清潔で合理的で環境に配慮されていることがよく理解できました。カルビーが日本を代表する頼もしい存在に進化を続けていること、品質の向上に努力され海外へ目を向けて発展されているグローバル企業だということを再認識いたしました。
●カルビーの製造ラインを見学させていただき、食品の安全・安心が守られている様子がよく分かりました。また、「ポテトチップス」の揚げ油にパーム油が採用されていることを初めて知りました。ステークホルダーを意識し、RSPO認証パーム油を用いて持続可能な生産活動を行っており、より安心して商品を購入することができると感じました。
この度は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。
私たちは、1949年の創立以来75年にわたり、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしへの貢献を実践してきました。変わらぬ企業理念の下、100年を超えてなお挑戦を続ける企業になるべく、様々な社会課題の解決に取り組んでいます。
今後も当社グループの活動にご理解、ご支援いただけましたら幸いです。