企業と生活者懇談会
2024年12月5日 東京
出席企業:帝人
見学施設:テイジン未来スタジオ

「帝人が生み出す“世界を支えるソリューション”の秘密を学ぼう!」

12月5日、テイジン未来スタジオ(東京都千代田区)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員12名が参加しました。まず、帝人から、会社概要と同施設の概要について説明を受けた後、施設を見学し、グループ各社の最新の技術を用いた製品・サービスなどの紹介を受けました。最後に質疑懇談を行い、環境への取り組みや人財育成などのテーマについて意見交換しました。
帝人からは、コーポレートコミュニケーション部「テイジン未来スタジオ」館長本多信之氏、同部「テイジン未来スタジオ」スタッフ青柳瑞穂氏、甲斐沙優美氏、上出由紀子氏が出席しました。

帝人からの説明

■帝人の概要
 帝人は1918年、総合商社鈴木商店の大番頭・金子直吉と、研究者・久村清太、秦逸三らが日本で初めて人工絹糸レーヨンの生産技術を確立し、帝国人造絹糸として誕生しました。レーヨンは絹のような光沢と滑らかな肌触りが特徴で、着物や洋服などの素材として人々の生活に広く浸透していきました。山口県岩国市、広島県三原市などに工場を開業し、1930年代にはレーヨン生産量で国内トップとなり、日本の繊維産業をけん引する企業になりました。
 1950年代には、ポリエステル繊維「テトロン®」の開発に成功します。高い耐久性と速乾性、シワ回復力などを持ち、洗濯の手間を省くことができるため、衣料品だけでなく産業資材としても幅広く利用されるようになりました。
 1960年代には、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れたポリカーボネート樹脂の生産を開始します。当時は高度経済成長期にあたり、プラスチック製品の需要が大幅に増加しており、高性能なプラスチック素材が求められていました。のちにポリカーボネート樹脂は、自動車、電気・電子機器、建築など幅広い分野で活用されることになります。また、この頃に社名が現在の帝人に変更されました。
 1970年代には、石油開発、化粧品、外車輸入販売、医薬品など、本業の枠を超え事業の多角化を進めました。その大半は数年内に撤収を余儀なくされる中、医薬品・ヘルスケア分野は現在も継続し、主要な事業となっています。
 1980年代以降は、さらなる高機能素材の開発に挑戦し、アラミド繊維「テクノーラ®」の開発に成功するなど、高機能素材メーカーとして事業を拡大していきます。アラミド繊維は非常に高い強度と耐熱性、寸法安定性などの特徴によって、国内外で幅広く採用されていきました。最近では航空宇宙産業や産業用素材の分野で用いられ、同社の代表的な製品の一つとなっています。
 1980年代後半にはヘルスケア分野に本格的に進出し、医薬品や医療機器の開発・製造、そして在宅医療サービスの提供へと事業領域を拡大していきます。特に、在宅医療分野では日本におけるパイオニアとしての地位を築いています。医師の指導のもと、患者が自宅で生活をしながら受ける在宅医療サービスにおいて、同社では製品の販売だけでなく、専任担当者が医師とともに患者をフォローする地域密着型の全国ネットワークを構築しています。患者一人ひとりの命を守り、生活の質を高めることを使命として、在宅医療を支えています。
 中期経営計画2024-2025では、重要産業セクターを 「モビリティ」 「インフラ&インダストリアル」 「ヘルスケア」と定めました。「モビリティ」ではCO2削減、航続距離延長、電子化、「インフラ&インダストリアル」では再生可能エネルギーやサステナビリティへの対応、「ヘルスケア」では希少疾患や難病への治療薬や患者サポートに取り組んでいくとしています。
 帝人グループは2024年にパーパスを「Pioneering solutions together for a healthy planet」としました。地球の健康を優先し、環境を守り、循環型社会を支えるとともに、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決することで、「未来の社会を支える会社」になることを目指し、これからも挑戦を続けます。

 

■テイジン未来スタジオの概要・特徴
 テイジン未来スタジオは、帝人東京本社が入居するビルの別棟3階にあるショールームです。施設は、「Mobility(モビリティ)」「Safety(セーフティ)」「Healthcare(ヘルスケア)」「Life Style(ライフスタイル)」の4つのエリアに分かれています。それぞれのエリアにグループ各社の技術展示や取引先企業に採用された製品などが多数展示されており、来場者は同社への理解を深め、未来の社会における可能性を感じることができます。また、会議スペースが設置されており、企業同士の新たなコラボレーション創出の場としても活用されています。
 ショールームは原則一般公開されていませんが、2007年のオープン以来、帝人グループのステークホルダー約5万人が来場しており、同社が描く未来を広く発信してきました。2019年には全面リニューアルを行い、展示内容の刷新と合わせて、同社の製品・技術を実際にショールーム内にビルトインした展示手法も採り入れました。例えば、支柱のない受付カウンターはアラミド繊維「テクノーラ®」製のロープでつられており、窓ガラス面にはポリカーボネート樹脂を使用した採光ブラインドが使用されています。ショールームの展示と内装から、同社の製品や技術について深く知ることができます。

 

見学の様子

■「Mobility」エリア
 入場するとまず見えてくるのが、ほぼ全て帝人グループの素材で製作されたオリジナルコンセプトカー「PU_PAⅢ」です。赤を基調としたボディーの電気自動車は二人乗りで、内部には小さなハンドルとタブレット型の液晶パネルのみがあり、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキはありません。自動運転を意識したこの車は実際に動かすことができ、試験場を走行したことがあるそうです。
 ボディーには、その成形材が鉄の約10倍の強度を持ち、重さが約4分の1という炭素繊維「テナックスTM」を使用しています。炭素繊維は、合成繊維を高温で熱し炭化させてつくられる素材で、高い強度と軽量性、耐熱性、電気伝導性といった特徴を活かして、スポーツ用品、航空機、自動車などに使用されています。
 ブースには体験型展示も併設されています。参加者はまず、同じ大きさ・厚さのスチール板、アルミ板、同社の炭素繊維板をそれぞれ持ち上げて、炭素繊維板の軽量性を実感しました。スチール板は持つとずっしりした重みがありますが、炭素繊維板は扇子のようにあおぐことができるほど軽量です。次に、アルミ板単体と、その表裏両面に0.1ミリメートルの炭素繊維シートを貼ったアルミ板をそれぞれ折り曲げて、強度を比較しました。アルミ板は簡単に曲がってしまいますが、炭素繊維を貼った板は全く曲がりません。最後に、炭素繊維と樹脂でつくられた、実際の航空機に使用されているパーツの約半分の長さである約3メートルの構造材を持ち上げました。見た目はとても重そうな部品ですが、1人でも持ち上げられる軽さです。参加者は、炭素繊維の特徴を、見て触れて体験し、その強度と軽量性に驚いていました。
 「Mobility」エリアには他にも、アラミド繊維「テクノーラ®」「トワロン®」を使用した自動車用タイヤやブレーキパッドなどが展示されています。アラミド繊維は耐熱性、難燃性、耐摩耗性に優れており、その成形物は軽量でありながら非常に高い強度を持ちます。摩擦によってすり減らないことから、自動車の安全な運用を支えています。
 「テクノーラ®」は米航空宇宙局(NASA)が2020年に打ち上げた無人火星探査機に搭載された着陸用パラシュートのサスペンション・コード(パラシュートと探査機をつなぐコード)にも採用されました。実験では30トンを超える荷重、平均気温マイナス63度の低温環境、砂塵嵐や大気電気といった過酷な条件にも耐え得ると実証されています。参加者は、様々な産業で活躍する同社の製品について広く関心を寄せていました。

 

■「Safety」「Healthcare」「Life Style」エリア
 続く「Safety」エリアでは、安全・安心・防災に関わる製品を紹介しています。最初の展示は、アラミド繊維「コーネックス®」「コーネックス®ネオ」を使用した消防服と、電気自動車カーレース「フォーミュラE」で使用されているレーシングスーツです。耐熱性、難燃性といった特徴を持ち、400度以上の熱でも衣服が溶けることはなく、過酷な現場で働く人たちを守ります。
 次に説明を受けたのは、木材に炭素繊維を複合させた建築用材「LIVELY WOOD(ライブリーウッド)」です。通常の木材の2倍以上の強度を実現しており、参加者が床に置かれた通常の木材と、同じ外寸の「LIVELY WOOD」製の板とを乗り比べたところ、「LIVELY WOOD」は全くたわみませんでした。見た目は木材と変わらないため、木の質感や温かみを残しながら頑丈な建築が可能になります。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の一部パビリオンでも使用されているとのことです。
 「Healthcare」エリアには医薬品・医療機器などが展示されています。目を引いたのは、酸素濃縮装置の「ハイサンソ®」と睡眠時無呼吸症候群治療器(CPAP)の「スリープメイト®」です。これらの製品においては、小型化・軽量化の取り組みが進んでおり、現在では旅行や出張といった外出の際に持ち運びが可能なサイズも実現しています。最新の機器はタッチパネル操作が可能で、利便性が格段に向上しています。また、通信機能も付帯しているため、日々計測された数値を遠隔でモニタリングすることができ、患者情報を医師にフィードバックする機能として活用されています。
 「Life Style」エリアにはスポーツ用品・衣服などが紹介されています。印象的だったのは、傷のつきにくい人工皮革「TAFGARD®(タフガード)」と通気性の高い人工皮革「AIRY®(エアリー)」を使用したランドセルです。背あて部分の通気性を確保しながら軽量性、防水性、耐久性を実現する構造で、実際に持ち上げてみると非常に軽く、子どもでも使いやすいと分かります。参加者は、真ちゅうブラシで「TAFGARD®」の表面をこする体験をしました。ブラシを強く当てても傷一つつかず、素材の強度に驚いていました。

懇談会の概要

社会広聴会員:
「こんなところに帝人の製品が」といった例があれば教えてください。
帝人:
阪神甲子園球場のアルプススタンドのラバーフェンスのクッション材は、帝人グループが開発しています。2012年から、球場内で使用されたビール用プラスチックカップを球場と共同で分別回収し、球場イベントで配布されるノベルティや球場内で使用するゴミ袋などにリサイクルする取り組みを行ってきました。こうしたご縁もあり、プラスチックカップ由来のリサイクルポリエステルを用いたクッション材を採用いただいています。

 

社会広聴会員:
繊維素材分野では、どのような社会貢献活動をされているのですか。
帝人:
マイクロプラスチック増加の一因として、合繊製衣類の洗濯時に発生する繊維くずが排水とともに海に流出することが挙げられています。そこで、海洋プラスチック問題の解決に資するべく、繊維くずの抜け落ちを減らす素材の開発に取り組んでいます。新技術の確立や既存技術の応用・発展を通じて、社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

参加者からの感想

●従来から化学繊維のパイオニアという企業イメージを持っていましたが、ヘルスケア、樹脂、建築用材といった分野への注力を知り、大変勉強になりました。今後、衣料用品店に行った際などに、素材を意識することが楽しみになりました。
●普段あまり知ることのない帝人の製品・素材が、いかに日常生活や産業で活用されているのかを知り、社会を支えていることを学ぶことができ、有意義な時間を過ごすことができました。
●様々な素材や商品を生み出す研究開発力の素晴らしさに驚かされました。開発後、まだ製品化されていない素材があるとのことで、これからどのように使われるのか、期待と楽しみでワクワクしています。

帝人ご担当者より

 帝人グループは、日頃、一般消費者の皆さまには認識されにくい様々なシーンで社会との接点を持たせていただいております。今回は、そうした中のほんの一端でも、皆さまに知っていただく貴重な機会をいただき、大変ありがたく思います。私どもは、社会のお困りごとを解決し続けることで、「未来の社会を支える会社」になることを目指しております。今後も帝人グループの活動にご注目・ご支援いただけましたら幸いです。

 

お問い合わせ先
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