5月28日、日清オイリオ横浜磯子事業場(神奈川県横浜市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員14名が参加しました。まず、日清オイリオグループから、会社概要と同事業場についての説明を受けた後、食用油の製造現場を見学しました。続いて「あぶらミュージアム」では、実際の原料や製品を見学しながら、様々な油脂の種類や栄養について理解を深めました。
最後に質疑懇談を行い、油脂の可能性や今後の事業展開などについて意見交換を行いました。
日清オイリオグループからは、広報部長松山綾氏、IR部長兼広報部付石橋功太郎氏、広報部課長荒井千恵氏、横浜磯子事業場総務課神谷さおり氏が出席しました。
■日清オイリオグループの概要
日清オイリオグループは1907年、実業家の大倉喜八郎と松下久治郎によって「日清豆粕製造」の名称で創立しました。社名の「日清」は、日本の「日」と、清国(現在の中国)の「清」に由来します。東京に本社、大連に支店・工場を設け、大豆を原料とする大豆油、大豆粕の製造加工、貿易を業務としていました。1924年には日本で初めてのサラダ油「日清サラダ油」を発売しました。サラダ油は、サラダなど生でも使用できる精製度合いの高い、良質の食用油として名付けられました。
昭和初期には洋食化の進展を背景に、ドレッシングやマヨネーズの作り方を実演販売することで、家庭でのサラダ油の普及に努めました。そして、高度経済成長とともに「日清サラダ油」も家庭用サラダ油のトップブランドとして成長します。
昭和から平成にかけては、消費の多様化に対応し、健康志向、グルメ志向、高級志向とともに使いやすさにも重点を置いた新商品を展開。1992年には「日清キャノーラ油」、1996年に日本初のオリジナルブランドのオリーブオイル「BOSCOオリーブオイル」を販売しました。
2002年、日清製油・リノール油脂・ニッコー製油の3社が経営統合し、日清オイリオグループが誕生しました。その後はグローバル展開を加速させ、2024年には「日清サラダ油」が発売100周年を迎えています。
同社の主要拠点は国内拠点を含め、8カ国20社にのぼり、商品は50以上の国と地域に流通しています。食用油の国内シェア(販売量)は約35%を占め、食用油のリーディングカンパニーとして確固たる存在感を示しています。
取り扱う油は多岐にわたります。キャノーラ油などの家庭用食用油、レストランやスーパーの惣菜用などの業務用食用油、さらにマヨネーズやインスタントラーメン、パンや菓子類などを製造する食品メーカー向けの加工用食用油があります。口の中でさっと溶けるチョコレートやパンの中に入っても溶けにくいチョコレート、アイスのパリッとしたチョコレートコーチングなどは、油脂結晶の調整ならではのものです。マーガリンもその特性を活かしたもので、食パンや菓子類に幅広く利用されています。
また、元々は病院食や術後の栄養補給のために用いられていた「MCTオイル」ですが、エネルギーになりやすく、体に脂肪がつきにくいという中鎖脂肪酸の特性を活かして、今ではダイエットやスポーツ時のサポート目的でも使われるようになっています。食用にとどまらず、ファインケミカル分野にも展開しています。例えば、口紅やファンデーション、日焼け止めなどの化粧品には、伸びや発色を良くする目的で油が使われています。さらに、油を搾った後に連産品として生産する「ミール」は、牛や豚、鶏などの飼料として利用され、たんぱく源として重要な役割を果たしています。
このように日清オイリオグループの製品は、家庭の料理から加工食品、健康食品、化粧品、さらには家畜の飼料に至るまで、様々な形で生活を支えています。
日清オイリオグループは、創業来110年以上にわたって培ってきた植物油脂をはじめとする食に関わる技術をベースに、今後も「おいしくするチカラ」「健康にするチカラ」「美しくするチカラ」を追求し、植物の持つ3つのチカラを皆さまにお届けします。
■日清オイリオ横浜磯子事業場の概要
横浜磯子事業場は、日清オイリオグループの国内最大の生産拠点であり、1963年に操業を開始しました。敷地面積は横浜スタジアム約7個分、約23万3100平方メートルに及び、専用埠頭(ふとう)での原料の荷揚げから、搾油、精製、充填までを一貫して行っています。
同事業場は、食用油の製造、加工油脂や大豆たん白、化粧品の原料など多様な製品の製造拠点にとどまらず、研究開発機能も備えているのも特徴です。敷地内にある「インキュベーションスクエア」では、研究員が日々、新製品や技術開発に取り組んでいます。
環境に配慮した取り組みも積極的に進められています。廃油などは焼却処理され、発生した熱エネルギーは水蒸気に変換されて工場の製造ラインに活用されています。排出される汚泥についても、減量化と再資源化を推進し、環境負荷の低減に努めています。
そのほか、油脂の魅力を広く伝える取り組みも行っています。2025年2月にリニューアルオープンした工場見学者向けの展示施設「あぶらミュージアム」では、子どもから大人まで楽しみながら学べる体験型展示やデジタルコンテンツを充実させています。
敷地内にはグラウンドも整備されており、「横浜磯子春まつり」などのイベントが開催されるなど、地域住民とのコミュニケーションを深める場としても活用されています。
■食用油の製造現場
参加者はバスに乗り構内見学へ出発しました。最初に目にしたのは、「コージェネレーションシステム」と呼ばれるエネルギー供給設備です。ここでは都市ガスを利用して発電し、発電時に発生する熱を蒸気として活用することで、エネルギーを無駄なく利用しています。
2025年4月からは脱炭素に向けて、水素も燃料として利用することを見越した新しい設備の運用を開始しています。
続いて見えてきたのが、原料加熱機です。食用油の原料となる種子を蒸気熱で温め、搾油しやすくするための設備となっています。加熱された原料は隣接する搾油工場に送られます。搾油後に出る「ミール」は、油分・水分が少ない粉末状で、ミールサイロと呼ばれる倉庫に保管され、出荷時にはサイロから直接トラックの荷台に流し込まれる仕組みとなっています。
見学当日は、オーストラリアから原料の菜種を積んだ大型船が埠頭に接岸していました。原料は、荷揚げ機を使って吸い上げ、全ての荷揚げ作業が完了するまでには、通常3日から1週間ほどかかるそうです。荷揚げされた原料は、敷地内にある191本の原料サイロに保管されます。また、国内航路向けの埠頭は敷地内に2カ所有し、油やミールを出荷する際に使用されています。
次に見えてきたのが精製工場です。ここでは搾油した原油を精製し、製品として品質を高める工程が行われています。1日当たり1300トンの精製能力があり、家庭用の1000グラムボトルに換算して、約130万本分に相当します。精製された油は製品タンクに一時保管され、その後、充填工場へとパイプラインで直接送られます。工場内は各工程間の移送に人を介したり、空気に触れたりすることなく、衛生的に製品が運ばれるよう設計されています。
最後に、食品第3工場で充填の様子を見学しました。精製された油がボトルに自動で充填され、ラベル貼りや箱詰めまでが一連の流れで行われる工程を間近で見ることができました。充填エリアは、厳しい安全・衛生管理のもとで稼働しており、室内に立ち入ることができるのは、事前に登録された従業員のみ。入退室には顔認証システムが導入されています。入室前には作業着についた微細なごみを専用機器で吸い取り、手洗いを行った上で、風速25メートルのエアシャワーで付着物を吹き飛ばすといった徹底した対策が取られています。
敷地の一部には、かつて磯子駅から工場内まで鉄道が乗り入れていた名残があり、倉庫の一部は駅のプラットホームのような形状をしています。歴史とともに歩み、時代に合わせて進化し続ける工場の姿を、参加者は実感することができました。
■あぶらミュージアム
あぶらミュージアムは、「日清オイリオを知る」「あぶらを育てる」「あぶらをつくる」「あぶらと暮らす」の4つのコーナーに分かれており、参加者は食用油の種類やその多様な役割、魅力について学びました。
「日清オイリオを知る」― 日清オイリオグループの事業および社会や環境配慮への取り組みのモニター展示とともに、未来に向けたビジョンについて紹介する映像が上映されています。
「あぶらを育てる」― 油の原料となる菜種や大豆、オリーブなどの実物展示とともに、各作物の特性や産地の特徴が紹介されています。世界各地で育てられている多様な油について学ぶだけでなく、パネルゲームなど体験型の展示を通じて、楽しみながら学べる工夫がなされています。
「あぶらをつくる」― 横浜磯子事業場の歴史や設備機能に関する展示があり、油がどのように製造・出荷されるのかを学ぶことができます。
「あぶらと暮らす」― 私たちの生活の中で油がどのように使われているのかが紹介されています。大きな揚げ鍋にはコロッケを揚げるゲームが組み込まれ、揚げ物調理時の油温の違いによる仕上がりの変化を疑似体験できます。参加者はゲームを通しておいしい揚げ物のコツを再発見していました。また、料理に“かけて使う”オイルの役割や効果についての説明を受け、油は「調理のための素材」だけではなく、「香りや風味、栄養をプラスする調味料」であることを学びました。思いがけない組み合わせに、参加者からは驚きの声が上がっていました。
社会広聴会員:
生活者の潜在的なニーズを掘り起こし、有用な製品やサービスを生み出すための工夫や苦労を教えてください。
日清オイリオグループ :
「かけるオイル」や「味つけオイル」は、これまでになかった“食卓で使うオイル”という新しい使い方を提案するために開発しました。まだ食卓で油を使う習慣がない中、酸化しにくく使いやすいフレッシュキープボトル(二重構造ボトル)を採用し、サイズもコンパクトにして、手に取りやすいように工夫しています。また、「日清ヘルシークリア」は、「時間が経つと匂いが気になる」というお客さまの声に応えて、酸化を抑える独自技術を用い、長くおいしさを保てるようにした商品です。いずれもお客さまの声に耳を傾けながら生まれた、実用性と思いの詰まった商品です。
社会広聴会員:
遺伝子組み換え原料は使用されていますか。また、遺伝子組み換えに対する考えをお聞かせください。
日清オイリオグループ :
大豆、菜種、とうもろこし、綿実などの食料用原料は、流通過程において遺伝子組み換え原料と非組み換え原料が分別されていない 「不分別」の状態のものを使用しています。つまり、流通の過程で組み換え原料と非組み換え原料が混在した状態です。これらの遺伝子組み換え原料は、国の安全性審査を通過し、安全性に問題がないと判断されたもののみを使用しています。また、製造した植物油は、遺伝子が組み換えられた原材料のDNAおよびタンパク質が製造過程で完全に分解・除去されています。
●日清オイリオグループの企業概要などについて、担当の方が丁寧で分かりやすく説明くださいました。また、工場や「あぶらミュージアム」の見学もあり、内容をとてもよく理解することができました。今後の事業計画についても説明いただき、深く納得いたしました。大変勉強になりました。
●食用油といえば「サラダ油一択」という時代はとうに過ぎ去り、健康増進などの付加価値が重要な市場になっていることを改めて実感しました。我が家の食卓でも、いつの間にかオリーブオイルが主役になっています。また、横浜スタジアム約7個分の敷地内で、大量の製品を整然と生産している現場は、圧巻でした。
この度は、貴重な広報活動の機会をいただき、誠にありがとうございました。私たちは“植物のチカラⓇ”をコーポレートステートメントとしています。植物資源の可能性を最大限に引き出し、人々の生活をさらに豊かにしていきます。ご来場いただきました皆さまをはじめ、全ての方々に、“生きるエネルギー”をお届けする企業グループを目指しています。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。